建築
建築
⽩⼭を望み、柴⼭潟に接するという環境をとりこみ、雪をイメージした六⾓塔3つを配置して設計されました。⼿前の広く緩やかなスロープを歩きながら、視点の変化を楽しむことができます。 (スロープと反対側の階段を上がることもできます)
1994 年11 ⽉1 ⽇ 開館
設計者/ 磯崎 新 Arata Isozaki
私たちの雪や氷についての知識やイメージは、殆ど中⾕宇吉郎さんのエッセイによって組みたてられているといっていい。これは科学の解説ではなく、科学的な探究がいちじるしく⼈間的な営為であることもたくみな⽂章で私たちに伝えてくれているからだ。
この仕事の背景にたちこめる⾹りは、加賀の地にはぐぐまれた⽂化に根ざしていることも、誰もが感じとっている。それをひっくるめてひとつの建物に編成できるかどうか、これが私に課せられた役⽬であるが、私はその解決を敷地の眼前にひろがる柴⼭潟や遠くにのぞむ⽩⼭のような環境をとりこむことに求めた。建物は、そこで六⾓形の連鎖する台形の塔を残して、姿を消している。そのうえを歩きながら変わった視点がうまれる。
⾃然の光景がさまざまに窓によって切りとられる。御息⼥中⾕芙⼆⼦さんの霧の作品のたちこめる中庭もやはり外にむかって開いている。そんな光景の変化を感知しながら、展⽰室で中⾕宇吉郎さんのさまざまな芸術的な仕事や科学的研究が追体験できるようにしている。そのために、建物に使った素材も、⽊や⼟や草や⽯といった⾃然のものが⼤部分で、それがはるか昔からこの場所に建っていたと感じられたらいいと想いながら、設計をまとめていった。中⾕宇吉郎さんは「雪は天から送られた⼿紙である」といわれたが、さしづめこの建物は、その雪をうける両の掌でありたいと思っている。