中谷宇吉郎について

中谷宇吉郎

(1900-1962)

中⾕宇吉郎は1900 年7 ⽉4 ⽇、⽯川県加賀市⽚⼭津温泉に⽣まれる。
1925 年 東京⼤学理学部卒業後、理化学研究所で寺⽥寅彦に師事。その後イギリスに留学。
1932 年に北海道⼤学理学部教授となり雪の研究を始める。
1936 年3 ⽉12 ⽇、⼤学の低温研究室にて⼈⼯雪を作ることに世界で初めて成功。気象条件と結晶が形成される過程の関係を解明した。他にも凍上や着氷防⽌の研究など、低温科学の新しい分野をつぎつぎに開き、晩年はグリーンランドの氷の研究に⼒を注いだ。
科学研究のほか、随筆、絵画、科学映画などにも優れた作品を残している。

「⼈間の眼が、いまの⼗倍か⼆⼗倍くらいに拡⼤されたら、雪⼭など、もったいなくて、とても歩かれないであろう」 中⾕宇吉郎「誰も⽣まれないまえから雪は降っていた」より

雪の研究について

1932 年に赴任先の北海道⼤学にて雪の研究を開始します。
雪は⼈々の暮らしとさまざまな関わりがあり北海道の⼟地に合った研究テーマだと考えていた頃、アメリカの農夫・ベントレーが撮った雪の結晶の写真集が出版され、その美しさに感動し研究に着⼿しました。
博⼠は、美しい結晶ばかりでなくあらゆる形を顕微鏡写真に撮り、結晶を分類し(図1)、 気象状態がどのようなときにどんな結晶が降るかも調べました。 そして、観察によって思い浮かんだ仮説を確かめるため⼈⼯的に雪の結晶を作ることを⽬指し、低温室を作り実験しました。そして1936 年3 ⽉12 ⽇、世界で初めて⼈⼯雪を作ることに成功したのです。
⼈⼯雪の装置( 図2) は、ビーカーの⽔をヒーターであたためると⽔蒸気が上昇し、それが冷えて装置の上部につるしたうさぎの⽑に結晶ができます。 温度と⽔蒸気量の値を変えれば結晶の形が違ってくることがわかり、2 つの条件と形の関係を1つの表(図3。後に「中⾕ダイヤグラム」と呼ばれる)にまとめました。
この研究の意味を、博⼠は「雪は天から送られた⼿紙である」という有名な⾔葉で表現したのです。
その後、博⼠の研究テーマは雪や氷のさまざまな問題へと広がりました。

夜になって⾵がなく気温が零下十五度位になった時に静かに降り出す雪は特に美しかった。 真暗なヴェランダに出て懐中電燈を空に向けて見ると、底なしの暗い空の奥から、数知れぬ白い粉が後から後からと無限に続いて落ちて来る。それが大体きまった大きさの螺旋形を描きながら舞って来るのである。 そして大部分のものはキラキラと電燈の光に輝いて、結晶⾯の完全な発達を知らせてくれる。(中略) 何時までも舞い落ちて来る雪を仰いでいると、いつの間にか自分の身体が静かに空へ浮き上がって⾏くような錯覚が起きてくる。

中⾕宇吉郎「冬の華/ 雪雑記」より

(図 2)⼈⼯雪装置 (図 3)中⾕ダイヤグラム