氷の中に雪の結晶はできますか
ゆりぐみのみなさんへ
とてもおもしろいものを、みつけましたね!すきとおったこおりなかにできているので、ちょっとみえにくいですね。でも、ちゅういして、かんさつしてくれたので、みつけられたのだとおもいます。かんしんしました。
みなさんがみつけた、ゆきのけっしょうのようなものは、こおりのなかで、こおりがとけてできたものです。なまえは、「チンダルぞう」と、いいます。こおりに、たいようのひかりがあたると、あたためられて、こおりがとけます。こおりはすきとおっているので、なかでとけだすようすも、みえるのですね。そのとき、ゆきのけっしょうとおなじように、ふしぎと、ろっかくのかたちができるのです。これは、こおりのなかにできるので、「こおりのなかにあな」ができたということになりますね。このあなのなかには、こおりがとけてできたみずが、たまっています。
こおりがとけてできたあなが、そらからふってくるゆきのけっしょうとおなじように、ろっかくのかたちをしているのは、とてもふしぎですね。これは、ふわふわのゆきのけっしょうと、かたいかたまりのこおりが、じっさいはおなじもの、で、できているからなのです。
みなさんのまわりにあるしぜんのなかには、おもしろいことがたくさんかくれています。これからも、ちゅういして、おもしろいことをさがしてみてくださいね。きっと、まだまだ たくさんみつかるとおもいます。みつけたら、またおしえてください。
先生がたへ
子どもたちが、とても面白いことをみつけましたね。氷に太陽の光が当たると、表面から融け出すだけではなく、氷の内部にまで射し込んだ光のために、内部でも融け出すことがあります。すなわち、氷の中にできた穴ということになりますが、内部は液体の水で満たされています。これは、一般にチンダル像とよばれるものです。(チンダルとは、19世紀に活躍したイギリスの有名の物理学者の名前で、この現象の発見者です)雪の結晶も氷ですので、チンダル像も同じように六角の形を作って融けていきます。この六角というのは、氷の持っている結晶としての性質を反映しています。また、雪の結晶は、その外形の内側が氷(固体)ですが、このチンダル像では、内部が水で外部が氷(固体)です。すなわち、両者は、正と負の関係になっています。このためチンダル像のことを、「負の結晶」と呼ぶこともあります。また、このチンダル像の中には、必ず丸い円盤のようなものがあります。これは気泡ですが、中身は水蒸気だけで満たされたています。このため、蒸気泡と呼んだりします。氷は融けて水になると、体積が減少します。(氷が水に浮かぶのも同じ理由ですね)この体積が減った分が空隙として残りますので、このような気泡ができるのです。
この現象は、氷に光があたって融けていく過程では、しばしば起きます。しかしながら、氷の中の水の詰まった穴ですので、氷と水の区別がつきにくく、とても見えにくいですね。このため、実際にこの現象に気づく人は意外と少なくて、見過ごされがちです。子どもたちが、そんな現象を見つけたということに、とても驚かされました。これは、先生がたが子どもたちの自然への興味をうまく引き出していらっしゃるからであろうと想像し、大変感銘を受けました。
最後に、チンダル像を実際に作ることができるかですが、今回質問にいただいたタライに入れた水を凍らせて氷を作るというのは、実はとても良い方法です。水面に張った氷を取り出し、それに強い光(太陽光や電球の光など、手をかざすと暖かい光が最適。最新のLEDライトの光は、適当ではありません)を当てて氷を融かすと、チンダル像が現れて、だんだん大きくなる様子が見えるはずです。見えにくい時は、以下のような工夫をすると見やすくなるかも知れません。氷を底が平らで透明なガラス皿に入れて、皿の下に少し隙間を開けて白紙をおきます。この氷に光を当てて融かすと、氷の中にできたチンダル像が影絵となって白紙に映るので、見えやすくなります。試してみて下さい。また、中谷宇吉郎雪の科学館では、来館者への体験実験のなかでこのチンダル像を紹介しています。機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。
(回答掲載日:2023年2月23日)