氷の結晶について

 麦茶を冷やしたときに六角の氷結晶が観察されたとのことですが、もちろんこのような結晶が生成することはありえることです。このご質問だけでは、結晶ができていた状況が明確ではありませんが、観察された結晶が麦茶の内部でできていた(麦茶が凍ってできた)と考えて、回答いたします。

 液体の水を容器に入れて冷却すると、水はやがて過冷却の状態(0℃以下でも凍結せず、液体のままの状態)になります。その中に、氷の微結晶が生成されると、雪の結晶と同じように、六角の結晶形に発達することは良く知られています。このような結晶の生成については、これまでに多くの研究が行われています。六角の枝のできるしくみや六角の対称性が生じる理由なども明らかにされています。近年では、国際宇宙ステーションの中での氷の結晶の生成実験なども行われました。ごく最近では、氷の結晶が成長する様子を分子の大きさの分解能で観察する試みも行われるようになってきました。

 しかし、過冷却水中で氷の結晶の生成過程を観察することは、通常ではそう簡単ではありません。それは、過冷却の度合いを制御することが困難であることや、水中で同時にたくさんの微結晶が発生すると互いに影響をしあってきれいな結晶形になりにくいことなどの理由が考えられます。ご質問の場合では、容器に入れた麦茶がゆっくりと冷やされていく途中で、たまたま、ごく少数の氷の微結晶が生成されて、それらが独立して成長したのだと考えます。なぜこのようなことが起きたのかは明確には答える事ができませんが、決してありえない現象ではありません。

 最後に、純水と麦茶を使った場合の違いですが、麦茶の場合は純水よりも凍る温度が少しだけ低くなっている可能性があります。しかし、結晶のでき方などには大きな違いが生じているとは考えにくいので、純水からの氷の生成と同じであると考えて差し支えありません。

 

 (回答掲載日:2024年5月12日)