雪と氷のちがい
まず、雪も氷もH2O(1個の酸素原子(O)と2個の水素原子(H))という物質の固体(結晶)であるということから説明を始めましょう。H2Oに限らず、様々な物質は、温度と圧力によって液体であったり固体であったり、そして気体であったりします。この、温度と圧力の条件で、物質がどの状態を取るかを示す図は「相図」と呼ばれて、科学研究の場ではきわめて重要なものです。H2Oの3つの相( 3態とも呼びます)については、それぞれ「水」、「氷」、および「水蒸気」と特別な呼び方で呼ばれます。すなわち、H2Oという物質の固体としては、それがどのようにして出来たか(水が凍ってできたのか、水蒸気が凝華(注)してできたのか)や形状(かたまりなのか、細かな粒状なのか)とは全く関連なく、常に「氷」と呼ばれます。したがって、物質として見た場合は、「氷」という呼び方がより上位の言葉と言えます。
しかし、最初に述べたように、実際には雪と氷は並列に記載されることも多く、時には混乱を招いていることも事実です。ご質問にあるように、細かい氷が「雪」ということもできますが、氷を削って作ったかき氷は、細かな粒の氷であっても雪とは呼びません。
一般には、そのできかたによって区別していることが多いように思われます。すなわち、水蒸気からできた氷の結晶を「雪」、液体の水が凍ってできた氷の結晶はそのまま「氷」と呼んでいます。雪が降って積もったものは「積雪」と呼び、やはり雪の一種ということになります。
ただ、この区別にも例外がないわけではありません。たとえば、南極やグリーンランドなどで見られる巨大な氷の塊である氷床は、表面に降り積もった積雪がだんだん深くなると、自重で圧縮されて氷に変わります。これは、積雪が圧縮される過程で、その内部でまだ空気の流通(通気性)がある場合は「積雪」と呼び、さらに圧縮されて空気の流通がなくなると「氷」に変わるというように分けられます。すなわち、もともとは水蒸気からできた雪であっても、積雪になって圧縮されると「氷」に変わるということになります。
このように、雪と氷の違いを明確に分けようとすると、それには当てはまらないものが出てきてしまいます。雪と氷、もともとは同じものですので、これは仕方がないことかもしれませんね。
(注)逆に、氷が直接水蒸気に変わる場合は「昇華」と言います。水蒸気から氷が生成する場合も、従来は同じ言葉が使われていました。しかし、混乱を避けるために、近年この言葉が提案され徐々に使われるようになっています。
(回答掲載日:2021年3月6日)