雪の結晶が成長する方向について
雪の結晶の形が気温と水蒸気の量で変化するというのは実験事実ですが、なぜ結晶の形が変化するのかという理由に答えることは簡単ではありません。長年にわたって多くの研究がなされてきましたし、今も最先端の方法を使って研究が行われています。雪の結晶に限らず、そもそも結晶というのは、最初に極めて小さな結晶の粒が生まれて、それが時間とともに成長して大きくなり、その結果として形が決まります。したがって、結晶の形が決まるしくみを明らかにするには、結晶の粒からある形を持つ結晶までの成長の過程を解明する事が必要になるからです。このような研究を専門に行っているのが、結晶成長学という学問領域になります。
さて、雪の結晶に戻りましょう。雪の結晶の最初の粒は、目に見えないほど小さな六角柱の氷であると考えられます。この氷が成長するにしたがって、さまざまな形の雪の結晶を生成していくのです。例えば、この六角柱の氷が横方向に成長するのか縦方向に成長するのかを考えるだけでも、結果的に結晶の形は大きく変わりますね。前者は、平たい六角の板状の結晶形になるし、後者は細長い柱状の結晶になります。この変化は、結晶の周囲にある水蒸気が、雪の結晶に流れ込んでくるときに、その水蒸気が結晶のどの部分に取り込まれ易いかに関係しています。すなわち、六角柱の六角の面に取り込まれやすいのか、横の四角の面に取り込まれやすいのかで、板状になったり柱状になったりするはずです。
では、この水蒸気の取り込まれやすさ、の違いはなぜ起きるのかですが、結晶の表面での水分子の並び方に関係すると考えられます。しかし、氷の結晶の表面での水分子の動きを直接観察する、実は最新の観察技術をもってしても簡単ではありません。このため、まだまだよくわからないことが残っています。しかし、北海道大学の低温科学研究所では、世界に先がけて氷の結晶の表面を分子のレベルで精密に観察することが可能になっています。(Q14やQ33の回答も参考にしてください)この謎が解明されるのもそう遠いことではないと思います。
最後に、雪の結晶は、六角板や六角柱だけではなく、樹枝状結晶や針状結晶と呼ばれるような複雑な形のものが多いですね。これは、雪の結晶に水蒸気が流れ込むときに、結晶の尖った部分(結晶の角や縁)には水蒸気が集まりやすいという性質があるためです。このため、尖った部分には、水蒸気がたくさん取り込まれるために、この部分はだんだん尖ってきて、前方に突き出すことになります。一度前方に突き出すと、さらに水蒸気が集まってきやすくなり、さらに先端が尖るということになります。この過程が繰り返されると、結晶の形はだんだん複雑になってきて、最終的に樹枝状や針状の結晶となるのです。
(回答掲載日:2023年2月14日)