雪の結晶のそだちかた

 とてもおもしろいところに気がつきましたね。動画をよく観察してくれていると感心しました。

 そうですね。よく目にする雪の結晶が成長する動画では、手(手の1本1本が木の枝のような形をしていますので、“枝”と呼ぶことが多いです)がのびていく速さがそれぞれ違っていますね。でも、よく写真で見るようなきれいな天然の結晶では、どの手の長さも同じですし、6本の手の形もよく似たものになっています。これは、動画で観察している雪の結晶は、実験室のなかで人工的につくっているものであることと関係しています。天然の雪の結晶のできかたと、人工の雪の結晶のできかたとをくらべてみると、質問のこたえにたどりつけると思います。

 少しむずかしいお話になりますので、ちかくの大人の方といっしょに読んでください。はじめに、雪の結晶は、結晶の周りの空気中にある水蒸気を原料として、だんだん大きくなっていきます(このQ&AのQ21の回答も、参考にしてください)。これを結晶が成長するといいます。すなわち、雪の結晶の6本の手のさきに水蒸気がどれだけ集まるかによって、手ののびる速さが変わるのです。とうぜん、水蒸気がたくさん集まる手のほうが、よりはやくのびることになりますね。

 では、まず天然の雪の結晶のできかたを考えてみましょう。天然の結晶は、上空の雲の中で空中に浮かんだままで成長します。この結晶は、空中で自由に動きまわることができますので、結晶の手に集まってくる水蒸気の量は、6本の手でまったく同じになるはずですね。したがって、せんぶの手ののびる速さが同じになります。このため、結晶が大きくなったときも、6本の手の長さや形がおなじになるはずですね。

 いっぽう、映像で見ている人工の雪の結晶では、結晶を細い糸などにつるして成長させます。こうしないと、結晶は下に落ちてしまいますので、成長の様子を観察することができません。すなわち、糸につるされた結晶は、天然の結晶のように自由に動き回ることができないのです。このため、6本の手の先に集まってくる水蒸気の量は、手によってどうしても少しずつの違いが出てきてしまうので、ながい手やみじかい手ができてしまうのです。

 このように、人工的につくった雪の結晶と天然の雪の結晶では、すこしだけですができるときのようすがちがいます。これが、結晶の手の長さや形のちがいを生みだしているのです。中谷宇吉郎先生が世界で初めて人工的に雪の結晶を作ることに成功してから、すでに80年以上になります。しかしそれでも、雪の結晶が成長するしくみや形が決まるしくみには、まだ明らかになっていないたくさんの謎が残されています。これからも、雪の結晶に興味を持っていてくださいね。

(回答掲載日:2021年8月31日)