特定の形状の結晶のみの生成

 雪の結晶の形と環境条件の関係を示す図として中谷ダイヤグラムがよく知られています。これは結晶ができる時の気温と周囲の空気中に含まれる水蒸気の量によって結晶の形が決まることを示しています。したがって気温と水蒸気の量を制御すればそれに応じた特定の形状を持つ結晶を作ることは可能です。しかしながら結晶の形に影響を与える条件は決して気温と水蒸気の量だけが全てではなく他にもいろいろなものが考えられます。これまで知られているものでも結晶の周囲の空気の流れ結晶の落下するときの姿勢や挙動気圧大気に含まれる不純物さらには結晶そのものの大きさや特性などさまざまなものがあります。さらには雪の結晶が最初に生成される時の条件なども影響を与える可能性があります。したがって気温と水蒸気の量だけを制御してもこれらの他の条件による影響を避けることはできないので特定の形状のみを人工的に作ることは簡単ではありません。

 また雪の結晶は何もないところに突然大きな結晶が誕生するのではありません。最初は雲の中に目に見えないほどの小さな氷の粒(氷晶)が生成されます。その氷晶は周囲の大気中の水蒸気を吸い込んでだんだん大きくなります。(成長すると言います)結晶の形はこのような結晶の成長に伴って作り上げられていくのです。すなわち結晶の形は時間とともに変化(時間発展)するものなのです。結晶の成長条件をどんなに一定に保っても結晶の形は同じ変化の過程をたどるということは保証されません。このようなことも特定の形状の雪結晶を作ることが困難である理由になります。

 また特定の形状の結晶のみを集めた雪とは積雪になったときのことを意味していると思います。もちろん降りたての積雪の中では雪の結晶は元の形を保っているかもしれません。しかしながら雪の結晶は降り積もった直後からその形はどんどん変化し元の形を保つことはできません。これは積雪内部の温度や水蒸気の分布などが雪の結晶が空中に浮かんでいるときとは全く異なるからです。積雪の性質は降り積もった直後の結晶の形状よりも積もってからの雪粒の変化によって決まります。したがって雪の結晶の形が積雪の性質にまで影響を与えるということは考えにくいと思います。

(回答掲載日:2026年8月27日)