永久凍土の中の微生物について

 大多数の微生物は、氷点下の環境におくと、その生命機能を停止して休眠の状態になるか、徐々に死滅していくかのいずれかになると考えられます。しかし、中には氷点下の環境でも、生き残ることができるものがいることも知られています。それらの微生物は、低温に耐える特別なしくみを持っていると予想されます。

 では、永久凍土の中はどうでしょう。永久凍土は、出来てから何万年もの間凍りついたままですので、その中に含まれていた微生物は、すでに死に絶えたものが多いと思われます。しかし、近年では永久凍土が融けたときに発生するメタンを生成する微生物(メタン生成菌)が発見されるなど、凍土の中に含まれる微生物の研究が盛んに行われるようになっています。しかし、その発見は容易ではありません。死んだ微生物からも検出できるDNAを分析し、永久凍土の中に昔どんな微生物がいたかを探るような研究も行われています。

 とは言っても、永久凍土に閉じ込められていた微生物が、温暖化により永久凍土が融けたときに、再活動を始めるものがいるかどうかは、まだ十分には解明されていません。もし、永久凍土が融けて復活を遂げる微生物がいるとすると、それらは人間にとって重大な危機をもたらす可能性も捨てきれません。これから温暖化がますます進行し、永久凍土がさらに融け出す事態になったとき、このような微生物に対する備えを整えておくこともとても重要ですね。

 最後に、このような低温の環境で生き延びることができる生物(微生物だけに限りませんが)の生命の仕組みを知ることは、地球以外の惑星や衛星にも類似の生物が存在するかどうかという興味深い問題にも関係しています。このような惑星や衛星は、地球よりも太陽から遠いので表面の温度も低く、もし生物がいるとすると、低温の環境で生き延びていることになるからです。

 また、おもしろい実験の結果を教えて下さいね。

(回答掲載日:2023年1月6日)