窓霜
窓霜とは、外気で冷やされた窓ガラスの表面にできる霜のことです。最近では、建物の断熱性能も上がり、めったに見ることができなくなりましたね。
窓霜の模様については、雪の結晶の分類表のようなものはありません。しかし、窓ガラスの表面にできた氷には、実は2つの種類があることを説明したいと思います。一つは、窓ガラスの表面に水蒸気(気体)から直接氷の結晶が生成したものです。冬の寒い朝などに、地表にあるさまざまな物体の上にできる霜とでき方が同じですので、窓霜と呼びます。一方、窓ガラスの表面に氷ではなく水滴ができ、ガラス表面全体が水の膜で覆われた状態になることがあります。その水の膜が、更に冷却されて凍ると、氷の薄い膜ができる場合があります。これは、窓氷と呼ばれるもので、窓霜とは異なります。窓霜と同じように、やはり複雑な模様ができます。両者は、成因が違いますので本来区別しないといけないのですが、同じよう模様をひと目で区別するのはなかなか難しいこともあり、区別せずにどちらも窓霜(あるいは窓氷)と呼んでいる場合も少なくありません。
ところで、窓霜は気体である水蒸気から生成されると説明しましたが、このしくみは実はエピタキシャル成長と呼ばれる最先端の結晶成長法と関連します。エピタキシャル成長とは、基盤となる結晶の上に薄膜状の結晶を作る方法のことで、半導体結晶の生成などで広く使われる重要な先端技術です。この薄膜結晶の方位や特性は、基板の結晶の特性で大きく変わります。氷の場合でも、ガラスではなくヨウ化銀(AgI)やコベリン(CuS)などの結晶表面で水蒸気から氷結晶を成長させると、方位が決まった氷の薄膜結晶ができることが知られています。身近な窓霜の生成のしくみが、最先端の半導体技術と共通点があることは驚きですね。
(回答掲載日:2022年1月7日)