絶対零度と氷について

 はじめに、マイナス273度という温度は、どんな温度かを説明しましょう。この温度は、これ以上はもう下がらないギリギリの温度で、絶対零度とも呼ばれています。

 マイナス273度を説明するまえに、温度というのはどういうものかを考えてみましょう。

 氷は、水の分子が順番にきれいにならんでできた固体ですね。結晶ということばを聞いたことがあると思いますが、このような分子がきれいにならんだ固体のことを呼びます。しかし、水分子は結晶の中にあっても完全に止まっているのではなくて、かならずブルブルと振動をしています。この氷の中の水分子のようすを動画でしめしたものが、産業技術総合研究所の灘浩樹先生のホームページにありますので、参考にして下さい ⇒ コチラをクリック

 このブルブル振動の大きさが、じつは温度にあたります。温度が高いほど、水分子はより大きくブルブルしているのですね。では、温度が下がるとどうなるでしょう。この水分子のブルブル振動は、だんだんおさまってきて、ある温度になると完全に止まってしまうはずですね。この分子のブルブルが止まってしまう温度が、マイナス273度なのです。いったん分子のブルブルが止まると、それ以上温度は下がりませんので、マイナス273度より低い温度はないということになります。

 さて、ご質問の「マイナス273度になると気体になるのですか」ということについては、実はどんな物質でもマイナス273度では気体ではなくて固体になっています。そして、その中の分子のブルブルも完全に止まった状態になっています。氷は、温度が高いと水蒸気になっていますね。しかし、水蒸気は温度が下がると水に変わります。コップに冷たい水を入れると外側がくもるのは、水蒸気が水滴となってコップにつくからです。この水滴は、もっと温度が下がると氷に変わります。この氷の温度をさらにどんどん下げていくと、やがてマイナス273度まで冷やせるはずですが、その時にもういちど気体にもどることはありません。ずっと、氷のままで冷えていくだけです。氷以外のどんな物質でも、温度が下がると、水と同じように気体が液体に、そして結晶へと変わっていきます。したがって、マイナス273度では、どんな物質であっても気体に変わることはなく、結晶のままでいると考えられています。

 マイナス273度という温度は、とても不思議ですね。この温度では、今回のご質問のほかにも、とても面白いことがたくさん起きることが知られています。ぜひこれからも興味をもって、いろいろと調べてみてください。

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(回答掲載日:2020年10月22日)