足跡や木の周りなどの雪が早く溶けるのはなぜ?

  同じように積もった雪でも、融けるときには、融け方やそれにかかる時間が、場所によって異なりますね。雪が融けるには、さまざまなことが関係していますので、その理由を一つだけ述べることは、なかなか困難です。ご質問についても、いくつもの理由が考えられますが、以下の回答は一つの可能な答えとお考え下さい。

 まず、基本的なことから始めましょう。雪は小さな氷の粒が集まってできています。しかし、ある分量の雪が融けるために必要な熱の量は、同じ重さの氷の固まりが融けるときに必要な熱の量と同じはずですね。しかし、同じ場所に置いた雪と氷では、雪のほうが明らかに早く融けてしまいます。すなわち、雪や氷が融けるためには、必要な熱の量の違いだけではなく、それらに熱がどのようにして伝わるか、の違いが大事になります。

 このことを頭において、ご質問の答えを考えてみましょう。朝に降った雪を踏んで足跡をつけると、雪が圧縮されて固くなります。この固くなるということだけでは、逆に融けにくくなりそうですが、鳥取県のように比較的気温が高いと、踏み固められた雪は積もった雪の下にある水分を吸い上げて、黒っぽく見えるのではないかと思います。こうなると、雪は、少し暖かい水を含むことになりますので、周囲よりも早く融けても不思議ではなさそうですね。さらに、踏み固められた雪に水分が染み込むと、黒っぽくなりますので、そこに太陽の光が当たると熱を吸収しやすくなります。このことも、より早く融けるという理由の一つとも考えられます。このように、雪が融けるときに必要な熱が、どこからどのように来るのかを考えると、融ける早さの違いを自分で説明できると思います。

 最後に、木や草が1本飛び出している場所などでも、周囲の雪は早く融けるようだということ、確かにそうですね。これは、木や草は、地面から暖かい水を吸い上げているので、その幹の温度が周囲より高くなっているからと考えられます。すなわち、踏み固めた雪と同じで、吸い上げた水が暖かいということがその理由ですね。さらには、太陽からの熱は、木や草の黒っぽいものには吸収されやすく、それによっても幹の温度が上昇します。これも、幹の周囲の雪が早く融け出す理由になりそうですね。私は、雪の融け方を調べたことはありませんが、このような現象は「根開き」と呼んで、春先の雪融け時には顕著に見られるとのことです。

(回答掲載日:2023年3月10日)