雪がとけるときの性状の変化について
積もった雪が、その内部構造の変化を伴いながら融けていくということ、とても面白いことに気づきましたね。
積雪は、積もった直後はふわふわの新雪の状態ですが、時間が経過するとその内部はどんどん変化していきます。これは、積もった雪粒が、融けたり凍ったり、さらには昇華(雪粒が直接水蒸気に変わる)したり成長したり(*注)して、降り落ちた最初の状態からどんどん変化してしまうからです。その変化のしかたは、雪が降ったり止んだりという積もる過程、積もってからの気温の変化、雪の深さごとの温度の変化など、さまざまな要因で影響されます。その結果として、積雪の中に異なる性質(雪質)をもつ雪が生成され、層状の構造を作るのです。
このような変化を引き起こす元になっている原因の一つである、積雪内部の温度分布を考えてみましょう。気温の低い(氷点下の)地方では、積雪の表面の温度は0℃以下になっています。一方、地面と接する底の部分は、地熱のために雪が融け出していて、雪の融ける温度である0℃になっています。すなわち、積雪の内部では、表面から底に向かってだんだん温度が高くなっている(温度分布がある)ことになります。このような温度分布があると、積雪の中の雪粒は、その形や大きさが急激に変化します。一方、気温が比較的高い(氷点下ではない)地方では、積雪の中にこのような温度分布は生じません。積雪全体の温度が0℃となっていて、積雪全体が徐々に融け出していると考えられます。
このことを基本として、ご質問に回答しましょう。
まず①の質問は、気温の低い地方での積雪では、当てはまると思います。ただし、地面の温度が0℃という言い方は必ずしも正確ではありません。地面から熱が流れてくるために、地面と接している積雪の底では雪が融け出しています。このために、積雪の底では温度が0℃(雪の融ける温度)になっているのです。
②の質問については、氷に圧力が加わると融点が低くなる(すなわち、氷が融ける)ということはよく知られています。しかし、圧力の大きさに対する融点の低下は、ごくわずかです。例えば、南極大陸は2000mを超える厚さの氷(氷床)で覆われています。その氷床の底でも、氷の融点低下は、せいぜい1.5℃程度です。積雪についても、積雪の重さにより底での圧力が高くなり、融点が低下するのはそのとおりです。しかし、私達がふだん目にする積雪では、どんなに大雪でもせいぜい数mの高さですので、圧力による融点の低下はごくわずかです。したがって、この効果は考える必要はありません。
(*注)これは、少し難しいので詳しくは説明していませんが、積雪の中にある雪の粒は、周囲より温度の高い部分が昇華して水蒸気となり、その水蒸気が周囲より温度の低い部分に凝華するということを繰り返して、どんどん形や大きさが変化していきます。この現象は、積雪の中に温度分布があると顕著に起こります。
(回答掲載日:2023年6月8日)