雪氷と氷雪の言葉について
「雪氷」も「氷雪」も、“雪と氷”を意味する言葉であって、両者の間に特に区別はありません。ただ、学術の世界では、「雪氷」ということが多いようですが、これも特に理由はないと思います。
しかし、この言葉は、ちょっと不思議な表現であることを指摘しておきたいと思います。雪と氷というと、両者を並列に並べていることになりますが、雪も氷もH₂Oという物質の結晶体(固体)という意味では、同一のものです。このことを考えると、両者を重ねて一つの言葉として使うことには、すこし違和感があります。
一方、雪は、上空の雲の中で水蒸気から直接できたH₂Oの結晶体であるのに対し、氷はH₂Oの水(液体)から直接できた結晶体であるという違いがあります。すなわち、同じH₂Oの結晶体であっても、そのでき方が違うのです。その意味では、雪と氷は区別できるので、この2つを並べた言葉も成立するのかなと思います。
では、地球上には大量のH₂Oが存在します。大部分は、液体の水の形で存在しますが、特に地球寒冷圏ではその一部が結晶体(固体)となっています。ここでは、その結晶体の多くは、もともとは雪として地上に降り落ちたものであることを指摘しておきたいと思います。まさに空から降り落ちてくる雪は、上空の雲の中で水蒸気からできたものですので、それが積もった積雪も、もともとは水蒸気から生成されたものです。では、南極などの極寒地には、氷床と呼ばれる氷の塊が存在するという意見がでそうです。しかし、この氷床の氷も、もともとは降り積もった雪が長年の間に圧縮されて氷の塊になったものです。したがって、その最初はやはり水蒸気からできたものということになります。こう考えると、地球上に存在するH₂Oの結晶体は、その多くがもともとは雪であったと言うことができます。
(回答掲載日:2024年12月12日)