雲が凍らない理由
雲は、小さな水滴(雲粒)がたくさん集まってできています。雲粒の大きさは、直径で3〜10μm(すなわち、0.003〜0.01mm)程度でとても小さいものです。上空に行くと気温は下がり、やがて0℃より低くなります。雲粒は小さいとは言っても水でできていますから、このような温度になると凍ってしまってもおかしくないですね。
実際には、気温が0℃以下であっても、雲粒は凍らずに水滴のままでいることができます。これは、水のもつ「過冷却」という性質によります。中谷宇吉郎雪の科学館では、ペットボトルに入れた水を冷凍庫で−5℃程度まで冷やしても、凍らずに液体のままでいることを示す実験を毎日行っています。この実験で作っている水が「過冷却水」と呼ばれるものです。この過冷却水は、ペットボトルを叩いたり、振ったりすると、簡単に過冷却の状態が破れて凍ってしまいます。それは、ペットボトルに与えた振動が氷を作るきっかけになるためです。また、振動がなくても、水の中に含まれているゴミやペットボトルの容器についた傷などがきっかけになって、やがて凍ってしまいます。
しかし、雲粒の場合は、非常に小さいのでその内部にはゴミなどが入っていることはあまりありません。また、空気中に浮かんでいるので、容器の傷などの影響もありません。このため、ペットボトルで作る過冷却水より、もっと低い温度まで簡単に過冷却してしまいます。条件が良いときには、雲粒は−40℃程度まで凍らずに、液体の状態でいることができます。雲は、驚くほど低温になっても、凍らずにいることができるのですね。
最後に、雲が空に浮かんでいられる理由ですが、雲を作る雲粒が非常に小さいことに関係しています。雲粒は、小さいとは言っても、もちろん地上に向かってゆっくり落下していきます。しかし、雲ができるときには、大気が上に向かって上昇していることが多いので、小さな雲粒も大気の流れに沿って上昇していきます。このバランスが取れているため、雲は空に浮かんでいることができるのです。
(回答掲載日:2021年3月30日)