国や場所によって雪の結晶の形は違う?

  雪の結晶の形は、結晶が生成するときの大気の温度(気温)と水蒸気の量(湿度)によって決まります。雪の結晶は、上空の雲の中で生成されますので、そこでの気温と湿度が形に反映されているのですね。中谷宇吉郎が人工雪の実験をもとに、結晶形と気温・湿度の関係を示したものが良く知られたナカヤ・ダイヤグラム (※画像1) です。

 ご質問にある「場所によって降る雪の形が違うのか」ということですが、異なる場所であっても結晶が生成される雲の中の条件が同じであれば結晶形も同じになりますので、基本的に場所による違いはありません。一方、同じ場所で結晶を観察していても、上空の雲の中の条件は刻々と変化しますので、それに応じて形も変化します。

 中谷宇吉郎は、雪の研究を開始した当初に、北海道の十勝岳で数年の間におよそ3000枚の雪の結晶の写真を撮影しました。そして、それらをもとに、代表的な雪の結晶の形として約40種類に分類しました。その後、多くの研究者が世界各地で雪の結晶の観察を継続しましたが、この中谷の分類表にはほとんどすべての結晶形が含まれていたことが明らかになっています。これは、一つの場所であっても長期間にわたって観察を続ければ、ほとんどすべての雪の結晶形を見ることができることを意味しています。この事実も、雪の結晶が降る場所によって形が異なることは無いということを示しています。

 ただし、例えば南極や北極のように、普通は人が住まないような平均気温が極端に低い場所では、そこでの結晶の成長条件に合った結晶形が降りやすいということは起こります。実際に、南極の昭和基地では、日本やアメリカのような中緯度の地域に降る結晶形とは異なる、特別な形の雪結晶が発見されています。その後の研究で、これらは気温が極端に低いときに生成される結晶形であることも明らかになっています。したがって、これも場所による違いというよりも、場所によって結晶の生成条件が異なっていたという方がより正確ということになります。

(回答掲載日:2020年11月1日)