雪と氷のQ&A
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凝固点降下と過冷却
過冷却と凝固点降下について教えてください。過冷却は凍るとき核となる何かきっかけがあって凍り始めるのであれば、なぜ不純物(核?)がたくさん溶けている水は0度以下ですぐ凍り出さないのでしょうか?過冷却の核と不純物は違うのでしょうか?凝固点降下の状態の方が過冷却より起こりやすい現象なのでしょうか?(ゆきまるさん / 富山県・18歳)
過冷却も凝固点降下も液体が凍る温度(凝固点、注参照)に関連するので、混乱しますね。しかし、この2つは、全く別の現象です。また、これらの現象はどのような液体でも起きるのですが、ここでは質問にあるように液体として水を考えます。
まず、過冷却から考えてみましょう。過冷却とは、液体の水をゆっくり冷やしていったとき、水の凝固点(0℃)になっても凍結を開始せず、凝固点以下の温度でも液体のままで存在する現象です。したがって、水の凝固点自体には、変化はありません。過冷却の状態にある水は、本来はその温度では固体の氷になっている方が安定なので、何かきっかけがあれば凍りたがっている状態といえます。このきっかけは、過冷却水中にある大きさをもった氷の固まり(すなわち、「氷の核」)ができることで、核生成と呼ばれる現象です。過冷却水中にこの氷の核が1個でもできると、一気に全体が凍り始めるのです。
さて、ここで「氷の核」と言いましたが、過冷却水中にいきなり氷の核が発生するのはとても困難なことです。しかしながら、水中に細かな粒子が含まれていたり、容器の表面に傷があったりすると、この氷の核ができやすくなるという性質を持っています。氷の核の生成を助けるような粒子などを、氷晶核や凍結核などと“核”をつけて呼ぶことも多いですが、これはいわゆる「氷の核」そのものではないことに注意が必要です。
一方、凝固点降下というのは、水に不純物が“溶け込んでいる”状態、すなわち水溶液になっている場合に、凝固点そのものが下がる現象です。通常は、モル凝固点降下と呼ばれていて、水中に溶けた不純物をモル濃度で表示すると、それに比例して凝固点が降下します。例えば、海水には塩が含まれていますので、凝固点は−1.9℃程度になります。したがって、0℃と−1.9℃の間の温度では、海水は決して過冷却状態ではないことになります。
最後に、この海水の温度をもっと下げていくと、どうなるかを考えてみましょう。海水の凝固点である−1.9℃までは、もちろん液体のままですが、もっと温度が低くなると、過冷却状態となり、やはり液体のままで存在できます。過冷却の大きさ(過冷却度と言います)は、凝固点からどれだけ温度が低下しているかで定義しますので、同じ温度の過冷却状態であっても、過冷却度は純水のほうが大きいということになります。過冷却した海水が凍り始めるときも、純水と同じく氷の核が必要です。水に溶けている不純物の分子はあまりにも小さいので、氷の核の生成を助けるものには、ならないのです。
(注:この説明では、液体が固体に変わる温度として、“凝固点”という語を使いました。しかし、逆に固体が液体に変わるときには、“融点”という語を使います。両者は、全く同一の温度ですので、どちらを使っても構いません。)
(回答掲載日:2022年3月8日)
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