雪と氷のQ&A
タグ:人工雪

Q45

人工の雪と自然の雪の違い

10歳の娘の質問です。人工の雪と自然の雪って何が違うか教えてください。(まきママさん / 福井県・38歳)

 雪が不足したスキー場などで、人工雪でゲレンデを整備したという話はよく聞きますね。どうやって作っているのか、そして自然に降り積もった雪とどう異なるのでしょう。

 まず、自然の雪というのは、空から降り落ちた雪の結晶が降り積もってできることは、説明するまでもありません。枝がたくさんのびて複雑な形をした雪の結晶が降り積もるので、自然の雪はふわふわの状態で、とても軽いものです。特に気温の低い高山や北海道などでは、本当に羽毛のようにふわふわの雪になって、パウダースノーなどと呼ばれることもあり、スキーヤーやスノーボーダーのあこがれです。

 一方、人工の雪は、見た目は自然の雪のように真っ白ですが、その作りかたは全く異なります。いくつかの方法がありますが、ひとつは氷屋さんで売っているような硬い氷の固まりを砕いて小さな氷の粒を作り、それを撒きちらすことで積もらせるものです。つまり、大量のかき氷を作って敷き詰めたようなものですね。もう一つは、大気が冷え込んで気温が氷点下になったときに、水をノズルから霧状に噴射させる方法です。噴射された水は小さな水滴となり、冷えた大気で急激に冷やされます。すると、水滴が地面に落下するまでの間に凍りついて、球形の氷の粒となって地面に降り積もります。(注)

 このいずれの方法でも、降り積もっているのは氷の小さな粒ですので、積もった雪は自然の雪のようにふわふわにはなりません。したがって、人工の雪は、できた最初からかなり固い雪になっています。自然の雪のような、軽くてふわふわな状態は作ることができません。

この人工の雪は、スキー場などでまだ自然の雪が十分降り積もっていないときなどに使われて、スキーヤーには喜ばれます。しかし、人工の雪を作るには大量の水や電力が必要ですので、環境に優しいとは言えませんね。スキーは、本来自然に積もったふわふわの雪の上を、さっそうと滑って楽しむスポーツですので、少し考えさせられますね。

(回答掲載日:2022年3月8日)

(注:ちなみに、スキー場などの人工雪では、氷を砕く方法の装置を人工造雪機、水を噴霧する方式の装置を人工降雪機と呼んで、区別しているようです。)

#人工雪#雪の不思議
Q27

雪の結晶のそだちかた

雪の結晶が成長する動画を見ました。そこで気付きました。のびていく手の速さがみんなそれぞれすこし違うのに(はやくのびる手があったり、少しおくれてのびる手があったりするのに)、最後はぜったいに同じ長さやかたちになるのはなぜですか。(Kaoriさん / 海外・8歳)

 とてもおもしろいところに気がつきましたね。動画をよく観察してくれていると感心しました。

 そうですね。よく目にする雪の結晶が成長する動画では、手(手の1本1本が木の枝のような形をしていますので、“枝”と呼ぶことが多いです)がのびていく速さがそれぞれ違っていますね。でも、よく写真で見るようなきれいな天然の結晶では、どの手の長さも同じですし、6本の手の形もよく似たものになっています。これは、動画で観察している雪の結晶は、実験室のなかで人工的につくっているものであることと関係しています。天然の雪の結晶のできかたと、人工の雪の結晶のできかたとをくらべてみると、質問のこたえにたどりつけると思います。

 少しむずかしいお話になりますので、ちかくの大人の方といっしょに読んでください。はじめに、雪の結晶は、結晶の周りの空気中にある水蒸気を原料として、だんだん大きくなっていきます(このQ&AのQ21の回答も、参考にしてください)。これを結晶が成長するといいます。すなわち、雪の結晶の6本の手のさきに水蒸気がどれだけ集まるかによって、手ののびる速さが変わるのです。とうぜん、水蒸気がたくさん集まる手のほうが、よりはやくのびることになりますね。

 では、まず天然の雪の結晶のできかたを考えてみましょう。天然の結晶は、上空の雲の中で空中に浮かんだままで成長します。この結晶は、空中で自由に動きまわることができますので、結晶の手に集まってくる水蒸気の量は、6本の手でまったく同じになるはずですね。したがって、せんぶの手ののびる速さが同じになります。このため、結晶が大きくなったときも、6本の手の長さや形がおなじになるはずですね。

 いっぽう、映像で見ている人工の雪の結晶では、結晶を細い糸などにつるして成長させます。こうしないと、結晶は下に落ちてしまいますので、成長の様子を観察することができません。すなわち、糸につるされた結晶は、天然の結晶のように自由に動き回ることができないのです。このため、6本の手の先に集まってくる水蒸気の量は、手によってどうしても少しずつの違いが出てきてしまうので、ながい手やみじかい手ができてしまうのです。

 このように、人工的につくった雪の結晶と天然の雪の結晶では、すこしだけですができるときのようすがちがいます。これが、結晶の手の長さや形のちがいを生みだしているのです。中谷宇吉郎先生が世界で初めて人工的に雪の結晶を作ることに成功してから、すでに80年以上になります。しかしそれでも、雪の結晶が成長するしくみや形が決まるしくみには、まだ明らかになっていないたくさんの謎が残されています。これからも、雪の結晶に興味を持っていてくださいね。

(回答掲載日:2021年8月31日)

#人工雪#結晶の不思議#雪の不思議
Q21

雪結晶の大きさについて

天然で観察された雪結晶の最大の大きさはどの位ですか。また、人工雪ではどの位まで大きいものがつくれますか。大きさをきめるものは何ですか。(ゆきんこさん / 新潟県)

 手のひらにのるような大きな雪結晶が空から降ってきたら楽しいですね。しかし、私たちの地球上ではこんな大きな結晶は、残念ながら降ってきません。天然で見られる最も典型的な樹枝状結晶でも多くは直径2〜3ミリで、最大でも7〜8ミリ程度の大きさです。私も何度も北海道の大雪山で雪結晶の観察を行いましたが、やはりこのサイズより大きいものは見たことがありません。そのほかのさまざまな形の雪結晶は、これよりもずっと小さいのが普通です。

 この結晶の大きさは、どのようにして決まるのでしょうか?雪結晶は、上空の雲の中で生まれた小さな氷晶(大きさは1/100ミリ以下)が、そのまま落下しながら周囲の水蒸気を集めて大きくなる(成長する)ことで生成されます。したがって、地上で観察される結晶の大きさは、結晶が大きくなる速度(成長速度)と成長にかかった時間(氷晶の誕生から地上に達するまでの時間)との積算で決まります。成長速度は、結晶周囲の温度や水蒸気量、さらには結晶の特性などさまざまな条件で変化します。また、成長時間は、氷晶が誕生してから雪の結晶として地上に達するまでの時間とすると、せいぜい1時間程度と推測されます。これらから結晶の大きさを推定すると、成長速度がもっとも大きい樹枝状結晶でも、最大で直径10ミリ程度までが限界です。

 では、人工の雪結晶ではどうでしょうか?この場合も、成長速度と成長時間の関係で大きさが決まるのは同じです。したがって、天然の結晶よりも長い時間成長させることができれば、もっと大きな結晶を作ることは不可能ではありません。もし国際宇宙ステーションの内部で実現される無重力の環境で、結晶を長時間空中に浮かべたままで成長させることができたならば、原理的にはいくらでも大きな結晶を作ることができます。しかし、そのためには、巨大な成長装置を用意するなど別な制約が加わりますので、実現するのは簡単ではありません。

 一方、雪結晶と同じように水蒸気から成長する霜の結晶では、もっと大きいものがしばしば目撃されます。たとえば、冷凍食品を保存するような冷凍倉庫の中では、手のひらの大きさにもなる霜の結晶が成長することがあります。霜の結晶の成長速度は小さいのですが、落下しないので何週間、あるいは何ヶ月もの長いあいだ成長を継続できます。こうすると、多少成長速度が遅くても巨大な結晶が生成できるのです。

【樹枝状結晶】 撮影:古川 義純

(回答掲載日:2021年5月15日)

#人工雪#自然現象#雪の不思議

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