雪と氷のQ&A
タグ:自然現象

Q41

霜はどこからおりてきますか?

寒い朝、地面が白くなっていました。おかあさんに霜がおりたからと教えてもらいましたが、霜はどこからおりて来たのかわからないので教えてください。(孝太郎さん / 富山県・10歳)

  晴れわたった冬の寒い朝には、あたり一面が真っ白になっていることがあります。たしかに、これを「霜がおりる」と表現しますが、とても素敵な言い方ですね。では、はじめに霜はどのようにしてできるのかを考えてみましょう。

 霜は、地面や地表にあるさまざまな物体にできた氷の結晶です。氷の結晶ができるためには、原料になる水分が必要です。こう考えると、地面にできた水たまりのようなところに霜ができそうですが、じっさいには水たまりには透明な氷ができるだけで霜はついていません。霜は、かえって水たまりなどがないところにできていることに気がつきます。

 では、霜の原料である水分はどこからくるのでしょう。この水分は、じつは空気中に含まれる水蒸気なのです。この水蒸気は、空気が冷やされるともう空気中にはとどまることができずに、液体の水や固体の氷として現れるという性質をもっています。たとえば、コップに氷を入れると、コップの外側がくもります。これは、冷えたコップのガラスのすぐ外側の空気も冷やされるため、空気中にあった水蒸気が細かな水滴としてくっついたからです。同じように、冷凍庫でキンキンに冷やしたコップを外に出すと、こんどはコップの表面にうすいまくが張るように氷ができて、真っ白になると思います。これが、水蒸気からできた氷で、霜と同じものなのです。

 もともと気温の低い冬の季節には、風もなく晴れていると夜間に地面が急に冷やされて、氷点下になることがあります。このようなときには、地面に近い空気も冷やされますので、その中に含まれていた水蒸気が地面に氷となって現れます。これが霜のできるしくみです。ちなみに、霜は空気中の水蒸気を原料としてできるのですが、空から降ってくる雪の結晶も同じように水蒸気からできます。霜と雪はでき方が同じということになりますので、霜を虫眼鏡で見てみると雪の結晶と同じようなきれいな枝が見えることもあります。

 このように、霜は晴れた寒い朝にどこからともなく現れますので、「霜がおりる」という言い方をするようになったのではと思います。ブルッとするほどの寒い朝に、あたり一面が真っ白になっているというようすを、とても良く表現していると思いませんか?

(回答掲載日:2022年2月28日)

その他の現象 #霜#自然現象
Q40

つららの不思議

つららの表面がデコボコしているのは凍ったり融けたりして出来るからですか。教えてください。(ボーゲンさん / 長野県・10歳)

 軒先にぶら下がったつららは、ときには1m以上の長さにもなり、晴天をバックにするととてもきれいですね。つららの表面は確かにデコボコしていて、奇妙な形をしています。このデコボコのできる理由は、つららのでき方に関係するかなり難しいしくみを考えないといけません。

 もし今度、つららを見つけたら、その表面のデコボコの特徴をもう一度よく見てみましょう。すると、つららの長さや太さとは関係なく、デコボコのデコとデコの間隔がどれもほとんど同じであることに気がつくと思います。この間隔はおよそ1cmであることが知られています。

 このデコボコができるしくみを考える前に、つららがどのようにして大きくなるか(成長するか)を説明しましょう。つららは、建物の屋根に雪が積もっているときに、その軒先から伸びていることが多いと思います。建物の内部は暖房が入っていますので、屋根から熱が伝わり、積もった雪を下(屋根の側)からゆっくり融かします。すると、融け水は、屋根の傾きのために軒先に向かって流れていき、軒先で外気にさらされると再び冷やされて凍り始めます。こうして、小さな氷のかたまりが軒先にぶら下がります。軒先には屋根からつぎつぎと融け水が流れてきますので、この水は軒先の氷のかたまりの表面に薄い水の膜を作りながら流れ落ち、最後にかたまりの下からしたたり落ちます。この膜を作って流れる水は、氷点下の外気で冷やされますので、水の膜の内側(氷の側)から凍りついて、中の氷をゆっくり太らせます。さらには、かたまりの先からも凍っていきます。こうして、氷のかたまりはだんだん太さを増すとともに長さも長くなっていき、つららになります。

つまり、つららが大きくなるときには、必ずその表面に薄い水の膜ができていなければなりません。このときには、表面のデコボコのデコの部分にもボコの部分にも、同じように水の膜ができているはずですので、どちらの部分でも少しずつ凍りついて、氷が太くなっていきます。決して、凍ったり融けたりしているわけではなく、つららの表面ではどこも凍っていくばかりで、融けるところはないことに注意してください。では、デコボコはどうしてできるのかですが、デコの部分とボコの部分ではほんの少しだけ水の膜の厚みが違います。デコの部分が水の膜が少し薄いので、外気で冷やされやすく、凍るのが速くなります。こうして時間がたつと、つららの表面にはデコボコの模様ができてしまうのです。

 最後に、デコボコの間隔がおよそ1cmであるというのは、つららの表面にある水の膜の中での流れや外気からの冷やされ方などを考えると、うまく説明できることが明らかになっています。つららについては、参考に上げたコラムにも説明があります。

参考 http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/publish/11oriori36.pdf 

(回答掲載日:2022年2月28日)

その他の現象 #つらら#自然現象
Q39

ひょうやあられが降る条件

ひょうやあられは、どういう時に降るものですか?(怜さん / 長野県)

 ひょう(雹)やあられ(霰)は、よくひとくくりで呼ばれますが、その特徴や成因はかなり異なります。それぞれについて、違いを見てみましょう。

雪の結晶は、大量に浮かんだ雲粒(直径が0.01ミリ以下の大きさの水滴)の中に発生した氷の粒が、時間とともに周囲の水蒸気をもとに大きく成長することで作られます。雪の結晶は、成長するとともに重さが増すので落下速度も大きくなります。すると、結晶の周りの空気の流れにより、結晶に雲粒が衝突して粒のままで凍りつく場合があります。このような雪の結晶は、雪の結晶の分類表にもある「雲粒付きの雪結晶」ということになります。このとき、雲が非常に濃い(雲粒の数が非常に多い状態)場合には、雲粒がつぎつぎと衝突して凍りつきます。最後には、もとの雪の結晶はもはや見えなくなり、凍りついた雲粒の塊になってしまいます。これが、「霰」と呼ばれるものです。実際に降り落ちた霰を拾い上げて、凍りついた雲粒を丁寧に外していくと、最後には元になった雪の結晶が残っているのを確かめることができます。

 一方、雹は、白い霰とは異なり、透明な氷の塊として降ってきます。これは、霰ができるときよりも、もっと大量に雲粒が衝突すると、衝突した雲粒はもはやその場で凍りつくことができず、氷の表面を水の膜で覆ってしまうほどになります。雹は、この水の膜が凍ることで、透明な氷の塊としてだんだん大きく成長することで生成されるのです。したがって、氷の塊である雹は非常に重く、雲の中を高速で落下することになります。雹が大きく成長するためには、雹の落下速度に匹敵するような強い上昇気流があることが重要です。これによって、雹は長い時間雲の中に滞在することができ、大きな塊に成長できます。このような強力な上昇気流が生じるには、極端に発達した積乱雲が必要で、竜巻などを引き起こすこともまれではありません。雹は、竜巻などの発生と合わせて観測されることが多いのは、このためです。雹といっても、大きさはせいぜい直径で1センチ程度のものがふつうですが、場合によってはゴルフボール程度の大きさになることもあります。また、まれに直径が10センチを超えるものが観察されたという記録もあります。さらに、雹は必ずしも冬の季節に特有なわけではなく、積乱雲の発達しやすい夏の猛暑のときに降ることも少なくありません。落下速度があまりに大きいため、上昇気流から抜け出すとあっという間に地面に到達してしまうので、真夏の気温でも融けて水にもどるひまがないからです。

(回答掲載日:2022年2月17日)

その他の現象 #霰#雹#自然現象
Q38

飛行機の上空で窓に雪の結晶のようなものが?

国際線の飛行機に搭乗したとき、上空で窓に雪の結晶のようなものが張り付いていましたが、あれはどのような現象だったのか教えて下さい。(雪男さん / 石川県・40歳)

 飛行機の窓は、アクリル樹脂の板でできていて、3層の構造になっています。国際線の飛行機は、高度が10キロメートル以上を飛行するので、外気の気温は−50℃以下にもなります。このため、外気に直接触れている一番外側の窓板は、急激に冷やされた状態になっていて、3層の窓板の隙間にある大気に含まれる水蒸気が氷として凍りつくことがあります。これが、雪の結晶のようなものが張り付いたものの正体で、窓霜と呼ばれるものです。窓霜は、北海道などの寒冷な地域では窓ガラスの表面にできるものとして知られていますが、断熱の行き届いた建物ではめったに見かけなくなりました。飛行機の窓で見られるというのは、快適な機内と外気との温度差がいかに大きいのかを物語っています。飛行機が空港にいるときやそれほど高度の大きくない国内線での飛行では、外気温はそれほど下がりませんので、このような現象が見られる機会は少ないと思います。窓霜についての詳しい説明は、本Q&AのQ35の回答を御覧ください。

 ちなみに、飛行機の窓は3層になっているというお話をしました。これは機内の気圧を保つために十分な強度を持つ窓とすることが主な役割ですが、この窓霜の発生をできるだけ抑えるという工夫もあります。窓板を注意深く見ると、どこかに小さな穴があけてあるのに気がつくと思います。この穴は、3層の窓の中間の窓板にあいていて,窓板と窓板の隙間の空気を出し入れする役割をもっています。飛行機の機内の空気は、非常に乾いた状態にあるので、この空気が出入りすることで窓霜の発生を抑制することができるのです。

(回答掲載日:2022年2月4日)

その他の現象 #窓霜#自然現象
Q37

雪の溶け方

大雪が降った後の二日後に見かけたものです。誰も踏まれていない路面の雪が溶け、泡泡のようなとてもかわいい形になっています。指で突くと、とても薄くてすぐに破れました。なんで雪が溶けると、こんな形になるんでしょうか?(ナナハチさん / 東京都)

 最初に、氷屋さんで売っているような透明な氷の塊を急いで溶(融)かしたいときにどうするかを考えてみましょう。塊のままでおいておくとなかなか溶けませんが、塊を砕いて小さな粒にすると早く溶けます。これは、氷が溶けるときには必ず塊の表面から溶けるからで、同じ氷の量で較べると粒が小さいほど表面がたくさんあるので、早く溶けることになります。さらに、最初はギザギザした形の氷の塊を溶かすと、溶けるとともに全体に丸みを帯びてくるということもよく経験することです。これは、粒の尖ったところほど溶けやすいという性質があるからです。

 さて、ご質問にある積雪は、雪の結晶が降り積もったものですので、小さな氷の粒でできています。したがって、積もったあとで気温が0℃以上になると、表面から溶け出すことになります。表面ほど溶けやすいはずですので、小さな雪の粒は更に小さくなっていきます。また、雪が溶けない氷点下の気温であっても、小さな氷の粒は直接水蒸気へと蒸発(科学的には、“昇華”と呼ぶのが正しいのですが、ここでは分かりやすく蒸発を使います)し、溶ける場合と同じように表面が多いほど蒸発しやすくなります。こうして、積もった雪の粒は、時間とともに小さくなり、やがて消えていくのです。このような過程で、泡が重なったようなかわいらしい形が現れたと考えられます。さらに、溶けたり蒸発したりすることで、雪粒どうしの結びつきが弱くなるので、指でつつくと簡単に壊れてしまうのです。

(回答掲載日:2022年1月31日)

#自然現象#雪の不思議
Q36

雪の気配

明日は雪が降るよ、という予報が流れた日は、あたりがしんと静まり返っていて、誰もいないような気がします。雪には気配というものはあるのでしょうか?(hiraさん / 東京都)

「気配」という言葉は、科学の世界では使いませんので、「予兆(あるいは、前兆)」などで置き換えて考えてみましょう。最近では、地震の発生や火山の噴火などの自然現象が起きる時に、予兆があるかどうかが議論されたりしますので、ときどき耳にする言葉かと思います。さて、ご質問の「雪が降る」という現象にもこのような予兆があるかと言うと、その可能性は小さいと思われます。天気予報も、地球の大気の動きなどを予測して、未来の天気の変化を予報するもので、予兆とは異なります。しかし、東京のように一冬に一、二度しか雪が降らない地域では、普段は現れない特別な気象条件になっていることが多いかと思います。すなわち、少なくとも雪が降るには気温が氷点下、あるいはプラスでも0℃に非常に近い状態になっている必要がありますし、天候の悪化に向けて気圧が急に下がるなどということもあると思います。このような急激な気象変化があると、体調の変化を感じたり、普段とはどこか違うという感覚を持つ方もいます。

 この質問に回答するにあたり、東京や加賀市に住む何人かの人に、雪が降る前になにか普段と違う感じがするかどうか聞いてみました。多くに皆さんは、あまりそのような感じはしないということでした。しかし中には、「「雪が降る」という予報がでるのは東京ではかなり珍しいので、なんとなく周囲もそわそわして「早く帰らなきゃ」という雰囲気になったり、帰り道でいつもとは段違いの冷え込みと静けさを感じた記憶があります。」と回答をくださった方がいます。質問者の方が感じられたことも、おそらくこのような感覚ではないかと思います。

 一方、雪が積もってしまうと、あたりがとても静かになった感じがするというのは多くの方が経験されることと思います。これは、積もった雪が音の伝わりや反射を弱めるためと考えられます。詳しい説明は、Q30の回答を参照してください。

(回答掲載日:2022年1月31日)

#雪と音#自然現象#雪の不思議
Q35

窓霜

窓霜の模様は何種類ありますか。教えてください。(まどしもさん / 秋田県・12歳)

 窓霜とは、外気で冷やされた窓ガラスの表面にできる霜のことです。最近では、建物の断熱性能も上がり、めったに見ることができなくなりましたね。

 窓霜の模様については、雪の結晶の分類表のようなものはありません。しかし、窓ガラスの表面にできた氷には、実は2つの種類があることを説明したいと思います。一つは、窓ガラスの表面に水蒸気(気体)から直接氷の結晶が生成したものです。冬の寒い朝などに、地表にあるさまざまな物体の上にできる霜とでき方が同じですので、窓霜と呼びます。一方、窓ガラスの表面に氷ではなく水滴ができ、ガラス表面全体が水の膜で覆われた状態になることがあります。その水の膜が、更に冷却されて凍ると、氷の薄い膜ができる場合があります。これは、窓氷と呼ばれるもので、窓霜とは異なります。窓霜と同じように、やはり複雑な模様ができます。両者は、成因が違いますので本来区別しないといけないのですが、同じよう模様をひと目で区別するのはなかなか難しいこともあり、区別せずにどちらも窓霜(あるいは窓氷)と呼んでいる場合も少なくありません。

 ところで、窓霜は気体である水蒸気から生成されると説明しましたが、このしくみは実はエピタキシャル成長と呼ばれる最先端の結晶成長法と関連します。エピタキシャル成長とは、基盤となる結晶の上に薄膜状の結晶を作る方法のことで、半導体結晶の生成などで広く使われる重要な先端技術です。この薄膜結晶の方位や特性は、基板の結晶の特性で大きく変わります。氷の場合でも、ガラスではなくヨウ化銀(AgI)やコベリン(CuS)などの結晶表面で水蒸気から氷結晶を成長させると、方位が決まった氷の薄膜結晶ができることが知られています。身近な窓霜の生成のしくみが、最先端の半導体技術と共通点があることは驚きですね。

(回答掲載日:2022年1月7日)

その他の現象 #窓霜#自然現象
Q34

晴れている時に降る雨や雪

時々、日が照っているのに雨が降ったり雪が降ったりすることがありますが(私の住んでいる地域では「狐の嫁入り」「狸の嫁入り」と呼んだりします)、何故このような現象が起こるのですか?仕組みを知りたいです。(翠さん / 東京都・17歳)

 日が照っているのに雨が降る、いわゆる「天気雨」という気象現象ですね。この天気雨(雪の場合も現象としては同じですが、天気雪とはあまり言いません。)が起きるしくみは、いくつか考えられます。雨は、上空の雲の中で生成された雪が下層に落下し、溶けて水滴となったものです。しかしながら、雪が雨となって地上に達するまでには、ある程度の時間がかかります。この間に、上空の雲が消滅してしまうと、雨が地上に降り落ちるときには、太陽が現れて日が差しているということが起こります。また、上空にかなり強い風が吹いていると、雨粒が地上に達するまでに雲が風に吹き飛ばされてしまい、太陽が顔を出していることもあります。このようなときに、日が照っているのに雨が降るという現象が起こります。

 一方、地上の気温が0℃以下(プラスでも0℃に近い場合は、溶けずに雪のままで降る場合があります。Q7の回答参照)では、上空の雲で生成した雪が溶けずに地上に達します。同じように、雪が地上に達するまでに上空の雲が消滅したり、吹き飛ばされたりすると、“天気雪”の状態になります。特に、雪は雨粒に較べてゆっくり落下するので、上空の雲で雪が生まれてから地上に達するまでに30分から1時間ぐらいの時間がかかります。もし、上空に風速10m/秒の風が吹いていると、雪は誕生から落下するまでに30kmから60kmも水平方向に飛ばされることになります。こうなると、自分のいるところは晴れていても雪が舞うということも十分に起こりそうですね。

(天気雨という気象現象を「狐の嫁入り」や「狸の嫁入り」などと呼ぶというのは面白いですね。これは、「日が照っているのに雨が降るなど、普通ではありえないほど不思議」という意味で、同じようにありえない不思議な現象である「狐の嫁入り」や「狸の嫁入り」になぞらえていると考えられます。)

(回答掲載日:2022年1月7日)

その他の現象 #自然現象
Q21

雪結晶の大きさについて

天然で観察された雪結晶の最大の大きさはどの位ですか。また、人工雪ではどの位まで大きいものがつくれますか。大きさをきめるものは何ですか。(ゆきんこさん / 新潟県)

 手のひらにのるような大きな雪結晶が空から降ってきたら楽しいですね。しかし、私たちの地球上ではこんな大きな結晶は、残念ながら降ってきません。天然で見られる最も典型的な樹枝状結晶でも多くは直径2〜3ミリで、最大でも7〜8ミリ程度の大きさです。私も何度も北海道の大雪山で雪結晶の観察を行いましたが、やはりこのサイズより大きいものは見たことがありません。そのほかのさまざまな形の雪結晶は、これよりもずっと小さいのが普通です。

 この結晶の大きさは、どのようにして決まるのでしょうか?雪結晶は、上空の雲の中で生まれた小さな氷晶(大きさは1/100ミリ以下)が、そのまま落下しながら周囲の水蒸気を集めて大きくなる(成長する)ことで生成されます。したがって、地上で観察される結晶の大きさは、結晶が大きくなる速度(成長速度)と成長にかかった時間(氷晶の誕生から地上に達するまでの時間)との積算で決まります。成長速度は、結晶周囲の温度や水蒸気量、さらには結晶の特性などさまざまな条件で変化します。また、成長時間は、氷晶が誕生してから雪の結晶として地上に達するまでの時間とすると、せいぜい1時間程度と推測されます。これらから結晶の大きさを推定すると、成長速度がもっとも大きい樹枝状結晶でも、最大で直径10ミリ程度までが限界です。

 では、人工の雪結晶ではどうでしょうか?この場合も、成長速度と成長時間の関係で大きさが決まるのは同じです。したがって、天然の結晶よりも長い時間成長させることができれば、もっと大きな結晶を作ることは不可能ではありません。もし国際宇宙ステーションの内部で実現される無重力の環境で、結晶を長時間空中に浮かべたままで成長させることができたならば、原理的にはいくらでも大きな結晶を作ることができます。しかし、そのためには、巨大な成長装置を用意するなど別な制約が加わりますので、実現するのは簡単ではありません。

 一方、雪結晶と同じように水蒸気から成長する霜の結晶では、もっと大きいものがしばしば目撃されます。たとえば、冷凍食品を保存するような冷凍倉庫の中では、手のひらの大きさにもなる霜の結晶が成長することがあります。霜の結晶の成長速度は小さいのですが、落下しないので何週間、あるいは何ヶ月もの長いあいだ成長を継続できます。こうすると、多少成長速度が遅くても巨大な結晶が生成できるのです。

【樹枝状結晶】 撮影:古川 義純

(回答掲載日:2021年5月15日)

#人工雪#自然現象#雪の不思議
Q11

植物は凍らない?

冬のとても寒い日でも椿などの花が咲いていたり草が生えていたりしますが、0度以下でも植物は凍らないのでしょうか?(なっちゃんさん / 石川県)

 生き物は、植物でも動物でも体が凍ると普通は死んでしまいますね。このため、寒い冬を凍らずに生き延びて、次の春にまた活動ができるように、生き物たちは特別なしくみを持っているのです。植物と動物では、そのしくみは異なりますので、まず植物について見てみましょう。

 植物が凍らないしくみのひとつは、冬になるとその体の中にたくさんの糖分やアルコール分などの成分を生成することです。水道水などのきれいな真水を冷やすと、通常は0度になると凍ってしまいます。しかし、水に糖分やアルコール分などが含まれていると、0度では凍らずに氷点下の温度になっても液体のままでいることができます。少し難しい言葉ですが、このことは「氷点降下(ひょうてんこうか)」と呼ばれていて、水に含まれる物質の濃度が高くなるほど、水が氷に変わる温度が低くなるという現象です。冷凍庫などに甘いジュースなどのペットボトルを入れておくと、真水のボトルよりも凍りにくくなりますが、これはジュースに大量に含まれる砂糖による氷点降下のためです。野外にいる植物も、冬が近づいてだんだん寒くなると、体内に糖分やアルコール分などを溜め込んで、この氷点降下のために体内の水が凍るのを防いでいるのです。実際、冬の寒さが厳しくなると野菜の甘さが増して、おいしくなると言われますね。これは、寒さに対抗するために、その体内に糖分を溜め込むためなのです。

 いっぽう、動物にも寒い冬を凍らずに越して、翌年また活動を再開するものがたくさんいます。人間と同じような哺乳類などは、自分で体温を調整する事ができます。しかし、魚や昆虫などの変温動物は自分では体温調節ができません。このような動物の体温は、周囲の環境の気温とほぼ同じになっていますので、冬になると氷点下まで下がります。それでも、多くの動物は凍ることなく、寒い冬を生き延びることができます。このような動物は、植物よりももっと複雑なしくみで体が凍ることを防いでいることが知られています。そのひとつは、動物の体内には不凍タンパク質と呼ばれる特別なタンパク質が含まれているからなのです。このタンパク質は、動物の体内での氷の生成を制御して、体が凍ることを防ぐという機能を持っているのです。おなじ動物でも、夏の間はこのタンパク質が含まれていないので、急に氷点下の温度にすると、体は凍ってしまうことが知られています。冬が近づくと、体内でこのタンパク質を生成して、寒さに備えた体に体質改善しているのですね。

 このように、氷点下の環境に住む生き物たちは、自分の体をいかにして凍らせないかという複雑なしくみを持っているのです。逆に、そのようなしくみを獲得した生き物だけが、冬の寒さの中でも生き残ることができたとも言えるでしょう。ここにも、生物の命のしくみが隠されているのですね。

(回答掲載日:2020年12月14日)

その他の現象 #植物#氷点降下#自然現象
Q9

国や場所によって雪の結晶の形は違う?

いろんな形の雪の結晶がありますが、場所によって降る雪の形は違うのですか?たとえば石川県に降る雪はどんな形が多いとかアメリカはこんな形とかあるのですか?(しゅんさん / 石川県・13歳)

  雪の結晶の形は、結晶が生成するときの大気の温度(気温)と水蒸気の量(湿度)によって決まります。雪の結晶は、上空の雲の中で生成されますので、そこでの気温と湿度が形に反映されているのですね。中谷宇吉郎が人工雪の実験をもとに、結晶形と気温・湿度の関係を示したものが良く知られたナカヤ・ダイヤグラム (※画像1) です。

 ご質問にある「場所によって降る雪の形が違うのか」ということですが、異なる場所であっても結晶が生成される雲の中の条件が同じであれば結晶形も同じになりますので、基本的に場所による違いはありません。一方、同じ場所で結晶を観察していても、上空の雲の中の条件は刻々と変化しますので、それに応じて形も変化します。

 中谷宇吉郎は、雪の研究を開始した当初に、北海道の十勝岳で数年の間におよそ3000枚の雪の結晶の写真を撮影しました。そして、それらをもとに、代表的な雪の結晶の形として約40種類に分類しました。その後、多くの研究者が世界各地で雪の結晶の観察を継続しましたが、この中谷の分類表にはほとんどすべての結晶形が含まれていたことが明らかになっています。これは、一つの場所であっても長期間にわたって観察を続ければ、ほとんどすべての雪の結晶形を見ることができることを意味しています。この事実も、雪の結晶が降る場所によって形が異なることは無いということを示しています。

 ただし、例えば南極や北極のように、普通は人が住まないような平均気温が極端に低い場所では、そこでの結晶の成長条件に合った結晶形が降りやすいということは起こります。実際に、南極の昭和基地では、日本やアメリカのような中緯度の地域に降る結晶形とは異なる、特別な形の雪結晶が発見されています。その後の研究で、これらは気温が極端に低いときに生成される結晶形であることも明らかになっています。したがって、これも場所による違いというよりも、場所によって結晶の生成条件が異なっていたという方がより正確ということになります。

(回答掲載日:2020年11月1日)

#結晶の不思議#自然現象#雪の不思議#雪の形
Q7

降雪と大気の湿度の関係について

上空から降ってくる雪の粒は地上付近の気温がある程度高いと溶けて雨になってしまうということは知っていたのですが、地上付近の気温がある程度高くても湿度が高いと氷のまま降ってくるという話を聞きました。この原理について考えてみたのですが上手く説明できなかったので館長さんの説明を聞いてみたいです。よろしくお願いします。(折部やすなさん / 東京都・16歳)

 ご質問にある「地上付近の気温がある程度高くても湿度が高いと氷のまま降ってくる」という現象があることは、私も初めて伺いました。いろいろと考えてみましたが、うまく説明できる理由は見つかりません。

 しかし、これとは逆の現象、すなわち「地上付近の気温がある程度高くても湿度が低いと氷のまま降ってくる」ということであれば、大いに可能です。すなわち、上空から降り落ちる雪の結晶は、落下途中で湿度が飽和点より低くなると昇華(固体である雪の結晶が直接水蒸気に変化する現象)を開始します。昇華のためには大量の熱(昇華熱と呼ばれます)が必要になりますので、その結果として結晶そのものが冷やされ、温度が下がってしまいます。したがって、地上付近で気温が0より高くなっても、結晶の温度はまだ0より低い状態に保たれる場合があり、雪の結晶は溶けずに氷のままで降ってくるということになります。

 大気の湿度が低くなればなるほど昇華は激しく起こりますので、雪の結晶の温度はより大きく下がることになります。これを気温の側から見ると、湿度が低いほど、より気温が高くなるまで雪の結晶が溶けずに降ってくるということになります。気象学の分野では、湿度と降雪との関係について様々な観測や研究が行われています。実際,湿度が50%以下になると、気温がプラス5以上でも雪の結晶は溶けずに降ってくるという観測結果もあります。

 最後に、氷の昇華に必要な熱は、一体どれくらいの大きさでしょうか。例えば、0の氷1gを昇華するために必要な熱は、100gの水の温度を6.8℃上げるために必要な熱とほぼ同じになります。たった1gの氷が昇華するだけで、こんなにたくさんの熱を吸収するのです。昇華による雪の結晶の冷却効果が、いかに大きいかが分かりますね。

(回答掲載日:2020年8月25日)

#昇華#自然現象#雪の不思議
Q6

器に入れた土では霜柱が作れない理由

冬になると,庭の湿った土や苔が生えている場所や裏庭に霜柱ができます。自分で霜柱を作りたくて発泡スチロールの器に湿らせた土を入れ、庭の霜柱が良くできる場所に置いてみましたが、土ごと凍結するだけで霜柱はできませんでした。また,小さな冷凍庫を用意して、その中でも実験をしてみたのですが,冬に外に置いていたのと同じで土ごと凍るだけでした。器をプチプチで包むといいと聞いたのでやってみましたが、やっぱり土がカチカチになるだけで霜柱は見当たりません。どうやったら、家の冷凍庫でニョキニョキ生える霜柱ができますか?冷凍庫は-8度から-10度くらい。土は花壇の土を使っています。(氷博士になりたいにゃーこさん / 栃木県・11歳)

 とても面白い実験にチャレンジしていますね。感心しました。

 さて、土を冷やすだけでは残念ながら霜柱を作ることはできません。その理由を説明する前に、庭の霜柱はどのような条件でできているかをもう一度考えてみましょう。

 霜柱は、冬の晴れた夜に地表付近の大気が冷やされて、気温が氷点下に下がった時に良くできます。しかし、気温が氷点下になった時でも、霜柱のできた土の温度はまだプラスですので、土そのものは凍っていません。すなわち、まだ凍っていない土が、気温が下がることで表面から冷やされた時に霜柱がよくできるということになります。さらに、地表面にできた霜柱は、地面に直立するように細長く伸びていますが、その先端で成長するのではなく地面と接した根もとで成長しているのです。まだ凍っていない湿った土に接している霜柱の根もとでは、土の中の水分を吸い寄せながら氷が成長すると言う性質を持っています。このため、根もとから氷の塊をまっすぐに持ち上げるようにして、霜柱ができるのです。

 地面の土の中まで凍ってしまうほど寒い時には、土の表面にはもはや霜柱はできなくなってしまいます。土自体が凍ってしまったものは、凍土と呼ばれています。北海道などのように気温が低い地方では、霜柱より凍土になってしまう場合が多くなります。

 では、実験の話に戻りましょう。容器に詰めた湿った土を冷凍庫に入れると、土全体が急に冷やされますので、すぐに全体が凍ってしまいます。この時には、上で説明したような湿った土の表面だけが冷やされるという霜柱ができるための条件が実現できません。プチプチで包むと確かに冷える速さは遅くなりますが、土全体が冷えて凍ってしまうということには変わりがありませんので、やはり霜柱はなかなかできません。冷凍庫の中で霜柱を作ろうとすると、湿った土を凍らせないように何らかの方法でプラスの温度に保ちながら、土の表面だけが冷凍庫の冷気にさらされるような工夫をすることが大事です。すなわち、湿った土の温度と冷気の温度が、十分大きく異なるようにすることが鍵です。

 研究室などで行われている実験でも同様な工夫がなされて、初めて霜柱を作ることができます。実験としては大変難しいのですが、是非チャレンジしてみてください。

(回答掲載日:2020年8月24日)

生活・文化その他の現象 #実験#研究#自然現象#自由研究#霜柱
Q3

雪質について

粉雪や玉雪など降雪における雪の状態の差は、どのような構造の差として観察されるのでしょうか。またその差は如何にして生まれるのでしょうか。(きすけさん / 岐阜県・30歳)

 粉雪や玉雪というのは、降雪における雪の呼び方としては科学の世界で使われる言葉ではありませんが、前者はかなり小さな雪粒がバラバラで降っている状態、後者は多数の雪粒がくっついて一塊になって降っている雪を示すと思われます。

 上空の雲の中で生まれた雪の結晶は、雲の中で水蒸気を集めて落下しながら成長し、やがて地上に達します。このとき、地表付近の気温がまだ充分に低く氷点下の場合は、雪の結晶はそのままバラバラの状態で地上に達します。これが粉雪の正体です。

 一方、地上付近の気温が0℃前後になると、雪の結晶の表面は薄い水の膜で覆われた状態になります。このような結晶が落下の途中で衝突すると、水膜を通して互いにくっつき、少し大きな雪粒になります。このような雪粒どうしの衝突が繰り返し起きると、最後には数百個もの雪の結晶が一塊になった巨大な雪粒が生成されます。これは、いわゆるボタン雪と呼ばれるもので、大きなものは数センチにも達し、降っている時には玉のように見えますので、これを玉雪と呼んでいるものと思います。

 それでは、なぜ気温が高いと雪粒どうしがくっつき合うのでしょうか。氷の粒である雪は0で溶けます。したがって、温度がプラスになると雪は半分溶けて濡れた状態になります。さらに、気温がマイナスであっても0に近いと、氷の表面は薄い水の膜で覆われていると考えられています。雪粒の表面にこのような水膜が存在すると、雪粒どうしが衝突すると、水膜を通してくっついてしまうのです。海岸で砂の像を作る時に乾いた砂ではうまく作れませんが、湿った砂では簡単に作ることができます。これも、砂粒の表面に水の膜があると砂粒どうしがくっつき易くなるからです。積もった雪でも、気温が低いとパウダースノーになったり雪だるまが作りにくくなったりします。これも雪粒の表面での水膜と関係しているのです。

(回答掲載日:2020年8月12日)

#自然現象#雪の不思議#雪の形#雪の種類

Q&A検索

Q&Aは検索けんさくができます。
検索けんさくは「キーワード」「カテゴリー」「タグ」の3つの方法ほうほうがあります。

キーワード検索

キーワードを入力して検索けんさくしてください。
カテゴリーをえらぶとそのカテゴリーのなかからキーワードと一致いっちするQ&Aをさがすことができます。

カテゴリー検索

になるカテゴリーをえらんでください。
そのカテゴリーにてはまるQ&Aをさがすことができます。