雪と氷のQ&A
検索結果: 降雪と大気の湿度の関係について
降雪と大気の湿度の関係について
上空から降ってくる雪の粒は地上付近の気温がある程度高いと溶けて雨になってしまうということは知っていたのですが、地上付近の気温がある程度高くても湿度が高いと氷のまま降ってくるという話を聞きました。この原理について考えてみたのですが上手く説明できなかったので館長さんの説明を聞いてみたいです。よろしくお願いします。(折部やすなさん / 東京都・16歳)
ご質問にある「地上付近の気温がある程度高くても湿度が高いと氷のまま降ってくる」という現象があることは、私も初めて伺いました。いろいろと考えてみましたが、うまく説明できる理由は見つかりません。
しかし、これとは逆の現象、すなわち「地上付近の気温がある程度高くても湿度が低いと氷のまま降ってくる」ということであれば、大いに可能です。すなわち、上空から降り落ちる雪の結晶は、落下途中で湿度が飽和点より低くなると昇華(固体である雪の結晶が直接水蒸気に変化する現象)を開始します。昇華のためには大量の熱(昇華熱と呼ばれます)が必要になりますので、その結果として結晶そのものが冷やされ、温度が下がってしまいます。したがって、地上付近で気温が0℃より高くなっても、結晶の温度はまだ0℃より低い状態に保たれる場合があり、雪の結晶は溶けずに氷のままで降ってくるということになります。
大気の湿度が低くなればなるほど昇華は激しく起こりますので、雪の結晶の温度はより大きく下がることになります。これを気温の側から見ると、湿度が低いほど、より気温が高くなるまで雪の結晶が溶けずに降ってくるということになります。気象学の分野では、湿度と降雪との関係について様々な観測や研究が行われています。実際,湿度が50%以下になると、気温がプラス5℃以上でも雪の結晶は溶けずに降ってくるという観測結果もあります。
最後に、氷の昇華に必要な熱は、一体どれくらいの大きさでしょうか。例えば、0℃の氷1gを昇華するために必要な熱は、100gの水の温度を6.8℃上げるために必要な熱とほぼ同じになります。たった1gの氷が昇華するだけで、こんなにたくさんの熱を吸収するのです。昇華による雪の結晶の冷却効果が、いかに大きいかが分かりますね。
(回答掲載日:2020年8月25日)
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