皆さまから寄せられた雪や氷の質問・疑問に、古川館長がお答えしました!
古川 義純(ふるかわ よしのり)先生
中谷宇吉郎雪の科学館 館長 / 北海道大学 名誉教授
日本結晶成長学会の会長や、北海道大学の低温科学研究所の所長などを歴任し、国際宇宙ステーション「きぼう」で氷の成長の宇宙実験を行ったことでも知られています。
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氷について
ペンダントは他にも何でできますか?(いちごぱふぇさん / 石川県・12歳)
雪の科学館では、来場した皆さんに氷のペンダントを作ってプレゼントするという実演を行っています。このようなペンダントは、もちろん氷以外のものでも作れないことはないですが、氷のペンダントのように簡単には作ることができません。氷は、0℃で融けますので、簡単に融かすことができますので、ペンダントもすぐに作れます。しかし、他の物質を使うと融かすための温度はもっと高かったり、あるいは低かったりします。そうすると、私たちの手には熱すぎたり冷たすぎたりして、さわるのもそう簡単ではないですね。氷は、私たちが素手で触っても平気な温度である0℃で融けたり凍ったりできることが、ペンダントを作りやすくしているのです。
(回答掲載日:2023年2月14日)
氷 #氷のペンダント#実験#氷の不思議雪の結晶の形について
雪の結晶は、どうしていろんな形があるんですか。( けろChanさん / 石川県・12歳)
過冷却の水について
過冷却の水は家でも作れますか? どうしてふると氷になるのですか?作れるなら作り方も教えて下さい!(ラスカルだよーさん / yuuka_025さん / ななTsuさん / 石川県・11-12歳)
コップに入れた水をゆっくり冷やしていくと、0℃以下になっても凍らないで液体のままでいることがあります。これを過冷却と呼びますが、とても不思議な現象ですね。この過冷却の水は、家庭でも作ることができます。たとえば、きれいに洗浄したペットボトルの中にきれいな水を入れて、冷凍庫で冷やします。このとき、熱を伝えにくいもの(プチプチのビニールや断熱シートなど)でペットボトルをくるむなどの工夫をして、できるだけゆっくりと水を冷やすことが大事です。こうして、水温が0℃以下になるまで振ったり動かしたりしないように静かに冷やしていくと、過冷却の水ができます。
こうしてできた過冷却の水は、本当は氷になりたがっているのですが、あまりにゆっくり冷やしたため、凍るきっかけがつかめなかったと考えてください。しかし、ペットボトルを急に振ったりすると過冷却の水がかき回されて、氷ができてしまうのです。もともと、氷になりたがっていた水ですので、いったん氷ができるとペットボトルの水全体がいっせいに氷に変わり、凍ってしまうのです。
(回答掲載日:2023年2月14日)
水 #過冷却水#実験#水の不思議結晶について
日常だったらどうやって作れますか。( まーさん / 石川県・12歳)
雪の科学館では、雪や氷の結晶のことを皆さんに紹介していますが、私達の身の回りを見渡してみると、雪や氷以外にもいろいろな種類の結晶があります。例えば、台所にある塩も結晶です。塩の結晶は、虫眼鏡で見てみると簡単に観察することができます。また、濃い塩水を作ってお皿に入れてそのまま何日か置いておくと、水面に小さな塩の結晶ができるのを観察することもできます。これは、水分が蒸発して塩水の濃さがまして、塩が結晶として出てくるからです。
さらに身の回りのものでは、氷砂糖なども結晶です。おやつに食べるチョコレートも結晶でできているのですよ。粉末の薬なども、小さな結晶の粒でできているものがたくさんあります。また、お母さんの持っている宝石なども、自然の中で作られた鉱物の結晶をきれいに削ったものでできています。さらには、テレビとかスマートフォンなどの電子機器には、いろいろな半導体と呼ばれる結晶が使われています。
このように、私たちの身の回りには、さまざまな種類の結晶がありますが、これらを作るのは簡単ではありません。冷凍庫で水を冷やすだけで作れる氷の結晶は、実はもっとも簡単に作れる結晶なのです。
(回答掲載日:2023年2月14日)
雪氷その他の現象 #結晶#雪#氷氷をできるだけ冷やす
氷をできるだけ冷やしたらどれだけ大きくなるのですか。氷はどれだけ冷えるのですか。(milk さん / 石川県・11歳)
私達の住んでいる地球には、いろいろな場所に氷があります。冬になると空から降ってくる雪の結晶も氷ですし、南極などにある巨大な白い塊も氷です。同じ氷であっても、大きさがまったく違いますね。実は、氷を冷やすだけでは、氷の大きさの違いを説明することはできません。それは、氷のでき方がどうかということに関係しています。空から降ってくる雪の結晶は、雲の中に含まれる水蒸気からできます。このため、なかなか大きくなることができず、私達が地上で見る雪の粒は、大きくても1cm程度です。一方、南極などではとても気温が低いので、降り積もった雪がとけることなくいつまでも残ります。雪は、毎年降り積もりますので、やがて巨大な雪の塊になります。すると、自分の重さで雪の粒が押されて、最後には大きな氷の塊に変わってしまいます。南極では、大陸全体が平均で2500mもの、巨大な氷のかたまりで覆われていることになります。
このように、冷やされるということよりも、そのでき方によって氷の大きさも大きく違ってくるのですね。
(回答掲載日:2023年2月14日)
雪氷 #実験#氷の不思議永久凍土の中の微生物について
冷凍庫の中で微生物が活動しにくくなるという実験をしました。そこで気になったのが、氷点下の中に長いこといる微生物は死滅しているのでしょうか?それとも活動停止しているだけなのでしょうか?何万年もの間、永久凍土の中に閉じ込められている微生物たちが、温暖化により永久凍土が溶けた時に再活動するのか教えてください。( 氷博士になりたいにゃーこさん / 栃木県・13歳)
大多数の微生物は、氷点下の環境におくと、その生命機能を停止して休眠の状態になるか、徐々に死滅していくかのいずれかになると考えられます。しかし、中には氷点下の環境でも、生き残ることができるものがいることも知られています。それらの微生物は、低温に耐える特別なしくみを持っていると予想されます。
では、永久凍土の中はどうでしょう。永久凍土は、出来てから何万年もの間凍りついたままですので、その中に含まれていた微生物は、すでに死に絶えたものが多いと思われます。しかし、近年では永久凍土が融けたときに発生するメタンを生成する微生物(メタン生成菌)が発見されるなど、凍土の中に含まれる微生物の研究が盛んに行われるようになっています。しかし、その発見は容易ではありません。死んだ微生物からも検出できるDNAを分析し、永久凍土の中に昔どんな微生物がいたかを探るような研究も行われています。
とは言っても、永久凍土に閉じ込められていた微生物が、温暖化により永久凍土が融けたときに、再活動を始めるものがいるかどうかは、まだ十分には解明されていません。もし、永久凍土が融けて復活を遂げる微生物がいるとすると、それらは人間にとって重大な危機をもたらす可能性も捨てきれません。これから温暖化がますます進行し、永久凍土がさらに融け出す事態になったとき、このような微生物に対する備えを整えておくこともとても重要ですね。
最後に、このような低温の環境で生き延びることができる生物(微生物だけに限りませんが)の生命の仕組みを知ることは、地球以外の惑星や衛星にも類似の生物が存在するかどうかという興味深い問題にも関係しています。このような惑星や衛星は、地球よりも太陽から遠いので表面の温度も低く、もし生物がいるとすると、低温の環境で生き延びていることになるからです。
また、おもしろい実験の結果を教えて下さいね。
(回答掲載日:2023年1月6日)
その他の現象 #地球温暖化#永久凍土#冷凍庫#実験雪の足跡
家が標高1500メートルの所にあります。散歩道やベランダで見る下記の現象について教えて下さい。動物が雪の上を歩いた後、強風や雨で周囲の雪が飛ばされたり融けたりして、踏み固められた足跡の形の雪が残ります。時には雪の上に3cm以上の高さで、爪の形が凹んだ丸い物体が点々と並びます。テンが来るベランダには、雪でできた高さ数ミリの丸い足跡だけ残ります。仮に逆足跡と呼んでいるのですが、本当は何といえば良いのでしょうか。( 小笠原恵美子さん / 長野県・69歳)
この現象は、私も初めて伺いました。このため、実際のものを見てみないと確かな説明をすることが難しいですが、以下のように考えることができます。
このお話は、おそらく地面にほんの数センチ雪が積もったときの現象かと想像します。積もったばかりの雪は、ふわふわの状態ですが、その上を動物などが歩くと、踏み固められた足跡が出来ます。雪が踏み固められると、周囲のふわふわの雪に較べて、風で飛ばされたり、太陽の光で溶かされたりするのに、時間がかかるようになるはずです。このため、周囲のふわふわの雪が消えてしまっても、足跡の部分だけがあとに残ると考えられます。こうして、踏み固められた雪でできた小さな足跡が、最後まで残るのではないでしょうか?
これを「逆足跡」(“さかさあしあと”、あるいは“ぎゃくあしあと”と、読むのでしょうか?)と呼んでいらっしゃるとのこと、とてもロマンチックな感じで素敵です。このような現象をどう呼んでいるのかは、特に決まったものは無いと思います。せっかくの素敵な呼び方ですので、これからもずっとお使いになっていただきたいと思います。
(回答掲載日:2023年1月6日)
雪 #逆足跡#雪#雪の不思議積もった雪の中の温度
降り積もった雪の中の温度は何度になるのでしょうか?また外気温が低ければ低くなるほど雪の中の温度も下がるのですか?( 石川貴也さん / 茨城県・13歳)
降り積もった雪(積雪)の内部の温度はどれくらいなのか、気になりますね。実は、積雪の中の温度はある温度に決まっているのではなく、積雪の表面から地面と接する底まで、温度の分布が出来ることが一般的です。これは、積雪の表面付近は、気温に近い温度になっているのに対し、地面と接している底の部分は、常に0℃に近い温度になっているからです。地球の中心部分は、岩石も溶けるほどの高温になっていますので、そこから地球の表面に向かって熱が伝わってきます。このため積雪の底では、この熱のために少しずつ雪が溶け出しています。雪が溶ける温度は0℃ですので、積雪の底はこの温度になっているのです。
すなわち、気温が氷点下のときは、積雪表面の温度も氷点下となって凍りついていますが、表面から深くなるとだんだん温度が上昇し、積雪の底の付近では0℃になっているはずです。一方、気温が0℃より高い場合には、積雪の表面でも雪が溶け始めますので、そこでの温度は0℃になっているはずですね。このような場合は、積雪の内部の温度は、全体として0℃になっているはずですね。このように、外気温の変動が積雪内部での温度の分布の状態にも影響を与えているのです。
積雪の中に温度の分布があるということは、実はとても大事なことです。この温度分布のために、積雪の内部では、積雪を作る粒子の構造や粒子どうしのつながり方などが、時々刻々と変化します。ときには、非常に柔らかくて弱い構造の積雪になったりすることがあります。山の斜面に積もった雪でこのようなことが起きると、そこから積雪が壊れて流れ出し、雪崩が発生する原因となったりします。
(回答掲載日:2022年12月30日)
雪 #雪#雪の不思議雪の結晶の重さ
雪の結晶一粒の重さは、平均すると何グラムぐらいですか?学術的に興味があります。(高山 さん / 長野県・56歳)
雪の結晶の大きさというと、直径や長さなどで表記することがほとんどで、一個一個の結晶の重さを測定したものはほとんどありません。その理由は、一個の雪結晶の重さは極めて小さいので、直接秤で測定することが簡単ではないことが考えられます。さらに、仮に精密な秤を用意しても、雪の結晶は複数の結晶がくっつきあっていたり、多数の雲粒が付着していたりするので、雪の結晶一個を取り出すことは簡単ではないこともその理由と考えられます。また、比較的気温の高いときには、多数の結晶の集合体であるぼたん雪になっていたりすると、個々の結晶を取り出すことも困難です。
このように雪の結晶一個の重さを測ることは簡単ではないですが、中谷宇吉郎博士は、、いったん雪の結晶を溶かして水滴にしてから、その直径を測るという方法で、重さの測定を行っています。その論文は、下記のURLから見ることが出来ます。
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/34452/1/1_P191-200.pdf
この論文を見ると、例えば樹枝状結晶では0.043mg、針状結晶では0.004mgという数値が示されています。しかし、結晶の写真を見るとかなり複雑な形をしています。したがって、雪の結晶の代表的なものとして知られる美しい樹枝状結晶などでは、この重さは更に小さくなると考えられます。雪の結晶の形は千差万別といいますが、それに伴って結晶一個一個の重さも広い範囲に散らばっていて、なかなか平均で何グラムとは言うことができません。
(回答掲載日:2022年12月30日)
雪 #雪#雪の不思議南極は息が白くならないって本当ですか?
小学3年生の娘に南極は息を吐いても白くならないのは何故と質問されましたが上手く説明できませんでした。息が白く見える理由と南極は本当に白くならないのですか、教えて下さい。(kazu さん / 福井県・33歳、小3)
私は、残念ながら南極には行ったことがないのですが、南極では吐く息はあまり白くならないという話は、確かに聞いたことがあります。吐く息に限らず、水蒸気をたっぷり含んだ空気が急に冷やされると、水蒸気は小さな水の粒として現れます。一つ一つの粒は小さいのですが、それが集団になると、光が乱反射されて白く見えるのです。上空の雲や霧なども、全く同様です。では、空気が冷やされたときに水蒸気が水の粒として現れるのはどうしてなのかを、はじめに考えてみましょう。
水の粒が現れるためには、2つの重要な条件がそろわないといけません。まず1つ目は、空気中に水蒸気が過剰に含まれることです。ある一定の体積の空気が含むことのできる最大の水蒸気の量(飽和水蒸気量と呼びます)は、決まっています。この限界まで水蒸気を含んだ空気は、湿度100%ということになります。飽和水蒸気量は、気温によって大きく変化します。たとえば、1立方メートル当たりの空気に含まれる飽和水蒸気量は、気温が40℃ではおよそ50gですが、10℃になると10g程度まで減少します。湿度が100%より低い空気であっても、その空気を冷やしていくと、ある気温で湿度100%に達することになります。その温度よりさらに冷やすと、空気中には飽和水蒸気量以上に水蒸気を含むことになります。この過剰に含まれる水蒸気量が、水の粒を作る原料となります。
一方、原料である過剰な水蒸気があっても、そう簡単には水の粒に変わることができません。水の粒を作るには、水蒸気が凝結するための核となる微細な粒子が必要なのです。このような粒子が空気中に存在することが、2つ目の条件になります。
このことをもとにして、吐く息の問題を考えてみましょう。肺から吐き出されたばかりの空気は、体温に近い温度になっていて、水蒸気もたっぷり含まれています。この空気が周囲の冷たい空気と混じり合うと、温度が急に下がります。このため、混じり合った空気中の水蒸気は、その温度での飽和水蒸気量よりも過剰になる場合があります。上に述べた1つ目の条件は、これでクリアされます。さらに、私たちが住む地域では、空気中に地面から飛び出す土の粒子や人間の活動により排出される微粒子、さらには海洋などから出る細かな塩分の粒子などが多量に含まれていて、水の粒を作るための核となります。こうして、2つ目の条件も満たされると、水の粒が発生して息が白く見えるようになるのです。
では、南極ではどうでしょう。南極の気温は、私たちの住む地域よりはるかに低いので、1つ目の条件はすぐに達成されるでしょう。しかしながら、南極では、空気中に核となる微粒子があまり含まれていません。それは、全体が氷で覆われているため地面が露出していないことや、人が住んでいないこと、さらには巨大な大陸で海から遠いことなど、微粒子を発生させる要因がないためです。すなわち、南極の空気は非常にきれいで、水の粒を作るための2つ目の条件が満たされないので、息が白くなりにくいと考えられます。「南極では吐く息が白くならない」というのは、南極の空気がいかに清浄であるかの証ともなっているのですね。
(回答掲載日:2022年10月29日)
その他の現象 #水蒸気#南極過冷却水
水道水以外で過冷却水を作ることはできますか?ジュースや牛乳でも作れるのでしょうか?(ノルさん / 福井県・10歳)
水道水のようなきれいな水は、温度が0℃以下になっても凍らずに、液体のままでいることができます。このような水を過冷却水と呼んでいます。ジュースや牛乳は、水分以外にもいろいろなものを含んでいますが、それでも過冷却した状態にすることはできます。しかし、水道水から過冷却水を作る場合とは、少し異なった性質を持ちます。
ジュースなどは、砂糖がたくさん入っていますので、0℃よりも低い温度で凍り始めるという性質があります。(溶けた砂糖の量で凍る温度も変わります。Q43も参考にしてください)このため、同じ温度に冷やした水道水とジュースでは、ジュースのほうが過冷却の度合いが小さくなります。
また、牛乳には、タンパク質や脂質、炭水化物などのさまざまな成分が含まれています。これらの成分は、それぞれ水への溶け方が異なっていて、過冷却水のでき方にも異なる影響を与えます。たとえば、タンパク質などは、砂糖と同じように水分の中に完全に溶け込むので、凍る温度が少しだけ下がります。一方、脂質などは細かなつぶつぶとなって水中に浮かんだ状態になっていますので、水の凍る温度にはあまり影響を与えません。すなわち、水道水やジュースを冷やした場合とは、かなり異なった性質をもつと考えられます。水道水、ジュース、牛乳を入れたペットボトルを用意して、冷凍庫でゆっくり冷やしてみてください。過冷却の状態のでき方や、過冷却状態が破れて凍るときの様子などが観察できれば、面白いと思います。
(関連する質問の回答も参考にしてください:Q18、Q23、Q43、Q53)
(回答掲載日:2022年10月22日)
水 #過冷却水#水の不思議打ち水
小学3年生の娘に打ち水をすると何故冷えるのか質問されました。回答をお願いいたします。(kikuoさん / 石川県・32歳)
夏の暑い日に打ち水をすると、確かに冷えて涼しくなりますね。これは、まいた水が蒸発して水蒸気になる時に、周りの熱を吸収するので冷えるのです。と言っても、ありきたりの回答ですので、一つ実験をしてみてください。最初にタオルを水で濡らして、固く絞ります。そのタオルを手のひらでつかんで大体の冷たさを覚えておいてください。次に、そのタオルの端を手に持って、ぐるぐる勢いよく回します。10回ぐらい回したら、タオルをもう一度つかんでください。さあどうなっているでしょう。
答えは、最初につかんだときより少し冷たくなっているはずです。これは、タオルに含まれていた水がぐるぐる回すことで蒸発し、そのときに熱を吸収したからです。打ち水で涼しくなると言うのも、その原理はこれと同じです。
さて、ここから少しだけ難しいお話になります。水が蒸発するとなぜ熱を吸収するのかですが、これは水を作っている水の分子がどれだけ活発に動き回っているかによります。液体の水では、水分子は容器の中に収まっていますが、これが気体の水蒸気になると空気中を水分子が自由に飛び回っている状態になります。これは、液体の中の水分子よりも水蒸気の状態の水分子のほうがより活発に動き回っていることを示しています。この水分子動きの激しさは、熱によってもたらされます。水が蒸発して水蒸気になるには、水分子の動きを活発にするための熱が必要ということになります。このため、水分の蒸発に伴って周囲の熱が吸収されるので、周囲は冷えて冷たくなるのです。
(回答掲載日:2022年9月1日)
水 #打ち水#水の不思議過冷却水
家の冷凍庫で何度か挑戦したけど上手く出来ませんでした。成功のコツを教えてください。(かえでさん / 石川県・10歳)
水を冷やすと0℃以下になっても凍らずに液体のままでいるのは、とても不思議ですね。しかし、0℃以下では、水は本来氷になっているのが普通ですので、過冷却した水は今にも凍ってしまうのをギリギリの状態で耐えていると言うことができます。このため、少しでも過冷却した水の容器を振動させたりすると、すぐに氷ができてしまいます。また、水を入れた容器の表面に細かな傷がついていたり、水中にゴミなどが含まれていたりすると、そこからも氷ができてしまいます。こうして、あっという間に水全体が凍ってしまい、過冷却の状態を保つことが難しくなります。
家庭の冷凍庫で水を冷やして過冷却水を上手に作ることは、そう簡単ではありません。なぜなら、ドアを開け閉めするだけでもかなり大きなショックが加わりますし、そもそも冷凍庫は常に振動しています。このため、過冷却の状態を保つことが難しくなるのです。さらに、水を入れる容器も大事です。ガラスコップなどは、ガラスの表面に目に見えない細かな傷がたくさんついていることが多いので、そこから氷が発生してしまいます。一方、ペットボトルなどは、内側はかなりきれいで細かな傷も少なく、ガラスの容器よりは過冷却水を作りやすいようです。また、冷やす水もできるだけきれいな水を使うことも大事です。
家庭の冷凍庫で過冷却水を簡単に作れたら、楽しいですね。上に述べた注意点を参考にして、もう一度チャレンジしてみてください。
(過冷却水についての説明は、Q18、Q23、Q43の回答にもあります。参考にしてください)
(回答掲載日:2022年9月1日)
水その他の現象 #過冷却水#雹#水の不思議雹が冷凍庫で溶けてしまった理由
先日、家の周りで雹が降り、大きめだったので何個か集めて冷凍庫で取っておきたい!と入れておきました。そしたら2、3日後には全て溶けて無くなってしまいました。雹は氷なので、冷凍庫なら溶けないと思っていたのですが、もっと低い温度じゃないと溶けてしまうものですか?(まっちゃさん / 千葉県・10歳)
雹は氷ですので、普通の氷と同じように0℃で溶けてしまいます。冷凍庫に入れておけば、温度が0℃以上になることはまずありませんので、溶け水になって流れていってしまうことはありません。
しかし、“冷凍庫に中に雹を入れておいたら、全て溶けて無くなっていた”というのは、冷凍庫の中で雹をどのようにして保管しておいたのかが関係しているように思えます。すなわち、雹をビニール袋などの密閉した容器に入れておけば、まんいち雹が溶けても溶け水はその容器の中に残っているはずです。一方、冷凍庫に中に雹を裸で入れておくと、雹は溶けなくてもその表面からどんどん蒸発して小さくなってしまいます。蒸発して水蒸気になった水分は、冷凍庫の他の部分に霜としてついたか、あるいは冷凍庫の開閉とともに外に逃げ出したりします。このため、雹はやがて冷凍庫の中から消えてしまうことになります。
ご質問にあるように、もっと低い温度が必要なのではなくて、雹を密閉した状態に置くなどの工夫をすることで、長い期間保存ができるようになると思います。
(冷凍庫に置いた氷の蒸発に関しては、Q46の回答も参照してください)
(回答掲載日:2022年9月1日)
その他の現象 #雹水質
世界には軟水や硬水などありますが、氷になる時間や硬さは変わるのでしょうか?氷の舌触りや氷の溶ける速さなどは変わるのでしょうか?(お水大好きさん / 石川県・49歳)
軟水と硬水の違いは、主にカルシウムやマグネシウムなどの含有物の量によって分けられます。WHO(世界保健機構)の基準では、硬度(水1リットルに含まれるカルシウムやマグネシウムの量)が120mg/L未満を軟水、それ以上を硬水と分けています。(※)この含有物の量は非常に少ないので、水が氷に変わっても氷の硬さにはほとんど影響はありません。また、含有物に量は、水が凍る温度を下げる働きがあるのですが(モル凝固点降下と言います。Q43を参照してください)、これも含有量が少ないのでほとんど影響はなく、氷になる時間にも変化はありません。
含有物を含む水としては、海水を思い浮かべます。海水には、主として塩化ナトリウムが含まれていて、その濃度はおおよそ30g/Lです。この濃度は、軟水や硬水の含有物の濃度の300倍前後になります。このくらいの量になると、海水の凍る温度はマイナス1℃程度まで低下し、できた氷の隙間にも塩分が入り込むので、結果として氷もやわらかくなります。
(※WHOの基準は、実際にはもう少し細かく区分けされています)
(回答掲載日:2022年9月1日)
水 #硬水#軟水#水質#水の不思議液体
凍らない液体はありますか(ねこねこさん / 栃木県・12歳)
物質は、圧力と温度の条件によって、液体であったり固体(結晶)であったり、気体であったりします。例えば、水は0℃以上では液体ですが、0℃以下になると固体である氷にかわります。一方、液体の水は蒸発して、気体である水蒸気にも変わります。固体の氷の表面からも蒸発は起こり、水蒸気に変わります。(この変化は、特に昇華と呼ばれます)この変化は、どんな物質にも共通ですので、凍らない液体というのはありません。(※)
しかし、非常にネバネバした液体では、温度が低下すると凍る前にネバネバが強くなって非常に固くなり、凍るということが起こらないままで温度が下がってしまう場合があります。その典型的なものが、ガラスです。ガラスは、非常に硬いですが、実は凍っていない液体ということができます。ネバネバがとても強くて、一見固体のように見えているのです。しかし、このネバネバの液体も、長い時間が経過すると固体である結晶になることがあります。何百年も前に作られた古いガラスの中には、固体であるガラスの結晶が生まれているのを観察できることもあります。
(※家庭にある液体というと、油などがすぐに思いつきます。しかし、家庭で使う油は、冷やしてもどこで凍ったのかがはっきりしません。これは、油はいろいろな種類の成分が混じり合ってできているからです。それぞれの成分ごとに見ると凍る温度は決まっているのですが、これが混じり合うとはっきり凍る温度が決まらなくなってしまいます)
(回答掲載日:2022年9月1日)
水 #液体#水の不思議体積の膨張
氷に関する初歩的な質問をいたします。水が氷ると体積が膨張(9%程度)しますが、氷を冷やし続けたときに膨張は止まって一定を保持すると考えてよろしいのでしょうか。(トシさん / 神奈川県・67歳)
ご質問には、二つの異なる現象が含まれています。まず、「水が氷ると体積が膨張(9%程度)します」は、液体の水と固体の氷の体積の違いを示しています。一方、後半の「氷を冷やし続けたときに膨張」は、固体である氷の体積が温度により変化する現象です。したがって、二つは分けて考えなければなりません。
まず、前者は、水が氷に変わるときに体積が9%増加することで、氷のほうが水よりも軽くなります。一般に、ある物質が液体から固体に変わると体積は小さくなります(固体は液体に沈む)ので、この性質は氷に特有なものです。氷山や流氷が海に浮かんでいるのはこのためです。この性質は、地球の気候や生命に進化などにも深く関わっています。
一方、後者は、どんな物質であっても、その固体は温度の上昇とともに膨張します。例えば、線路のレールは、真夏の暑い日は膨張して長さが伸びるのはよく知られていますが、まさにこの現象です。氷も同様で、温度の上昇とともに同じことが起こり、膨張します(逆に言えば、温度の低下とともに収縮します)。長野県の諏訪湖などで観察される御神渡りと呼ばれる現象は、湖面に張った氷が寒気で収縮して割れ目が入り、そこにできた薄い氷が気温上昇で膨張して割れて、氷がせり上がるためと考えられています。しかし、この膨張(収縮)の割合は、水が氷の変わるときの体積の増加に比べれば極めて小さい量です。(温度の変化が1℃に対して、体積は0.016%変化)したがって、氷を冷やし続けたときの体積の変化は、ほとんど起こらないように見えるのだと思います。
(回答掲載日:2022年7月1日)
氷 #体積#氷の不思議冷凍庫の霜
冷凍庫に霜がつくのはなぜですか?霜とは何なのか知りたいです。また、霜ができる冷凍庫と、霜ができない冷凍庫の違いはなんですか?(るり葉さん / 千葉県・11歳)
冷凍庫を開けると、真っ白な霜がついていることが多いですね。この霜の話に入る前に、空気中に含まれる水蒸気の量から話をはじめましょう。
毎日の天気予報を見ると、今日は湿度が低くからっとした天気とか、湿度が高く蒸し暑い天気というような説明がありますね。これは、空気には水蒸気が含まれているためで、空気が含むことができる最大の水蒸気の量(飽和水蒸気量と言います)に対して、実際に空気に含まれる水蒸気の量をパーセントで表したものが湿度です。たとえば、湿度50%というのは、最大の水蒸気量のちょうど半分の水蒸気が空気に含まれることになります。
この空気に含まれる最大の水蒸気の量は、温度が下がるとだんだん少なくなります。このため、ある一定の量の水蒸気を含む空気を冷やしていくと、湿度が上がってやがて100%になります。この温度よりさらに冷やすと、空気中の水蒸気は小さな水滴として出てくることになります。上空の白い雲は、こうしてできたたくさんの水滴からできているのですね。真夏に、コップに冷たい飲み物を入れると表面に水滴がついてくもりますが、これも冷たいコップの表面が周りの空気を冷やして、水蒸気が水滴として現れるからです。
さて、冷凍庫の中に戻りましょう。冷凍庫の中の温度は、コップの表面の温度よりずっと低く0℃以下になっています。このため、空気中の水蒸気は、もはや水滴ではなく氷の小さな粒となって現れることになります。このような氷の粒の集まりを、霜と呼びます。すなわち、霜は空気中の水蒸気が直接氷の粒として出現したもので、上空の雲の中でできる雪の結晶と同じできかたです。冷凍庫は、食品の出し入れでしょっちゅう開け締めをしますので、そのたびに外の空気が流れ込みます。このため、水蒸気もどんどん入ってきて、この水蒸気が霜となって現れるのです。
最後に、「霜ができない冷凍庫」といっても、実際は霜ができないわけではありません。冷やし方をくふうしたり空気を循環させたりして、じつは目に見えない所に霜ができるように作られているだけなのです。見えない所にできた霜は、自動的にときどきヒーターで溶かしてしまうなどのくふうもされていて、冷凍庫を便利に使えるようにしているのですね。
その他の現象 #冷凍庫#霜ファミリーレストランの氷
ファミリーレストランの飲み物に入っている氷が大きくくぼんでいるのはなぜですか?(伸一郎さん / 石川県・10歳)
確かに、レストランなどで飲み物に入っている氷には、不思議なくぼみがあるものが多いですね。この氷には、もう一つ大きな特徴がありますが気がつきましたか?その特徴は、家庭の冷凍庫で作った氷とくらべると、とても透明できれいであることです。氷にできたくぼみは、じつはこのことと関係があります。
はじめに、家庭の冷凍庫で作った氷を見てみましょう。この氷は、白っぽくてあまり透明ではありません。家庭の冷凍庫では、容器に入れた水をそのままで静かにおいて凍らせます。このときに、水に溶け込んでいた空気が細かな泡となって出てきて、氷の中に閉じ込められてしまいます。このため、できた氷は白っぽく透明ではなくなってしまいます。
では、レストランなどで使われる氷にもどりましょう。この氷は、水を凍らせるときに出てきた泡を、上手に逃してあげることができるくふうをして、作っています。そのくふうとは、氷を作る容器に最初から水を入れておくのではなく、ノズルの先端から吹き出る水を容器に吹きかけながら凍らせるのです。こうすると、水が凍りついて泡が発生しても、水の流れのために泡が吹き飛ばされてしまい、泡を含まない透明な氷ができるのです。このような氷の作り方では、容器が氷で埋められてくると、ノズルからの水で泡を吹き飛ばす効果が弱くなり、最後はどうしても空気の泡が氷に取り込まれてしまいます。このため、容器が完全に氷で埋めつくされる前に、まだくぼみが残っているときに凍らせることをやめます。このため、氷にくぼみが残ってしまうのです。くぼみが残るというのが、透明な氷を作るための秘密なのです。
(回答掲載日:2022年6月7日)
氷 #氷の不思議