雪と氷のQ&A
タグ:窓霜
窓霜(窓氷)ついて
きれいな窓霜(窓氷)を作りたくて実験をしています。車の中に寝る前に熱いお湯を鍋に入れて置くと-5度くらいの日は羽毛のようなお花のような窓氷が車の内側にできました。色々な模様や綺麗な窓氷を作りたくて、折り紙を貼ってみたりしましたがあまりうまくいきません。−5度くらいの気温でもきれいな窓霜(窓氷)ができる方法を教えてください。色々な窓霜(窓氷)をたくさん作って写真に集めたいです。(くろまめさん / 北海道・10歳)
北海道といっても、最近は窓の断熱性能が良くなり、窓霜や窓氷などもあまり目にすることがありません。スキー場などに行くと、少し古いロッジなどではまだ見ることができますね。
さて、窓霜や窓氷(注1)を作るには、十分に冷えたガラスの表面が水蒸気をたっぷり含んだ空気に触れることが条件です。“車の中に寝る前に車内に熱いお湯を鍋に入れて置く”というのは、この条件を作り出すには良い方法です(注2)。窓霜や窓氷ができるためには、外気温、ガラスの表面の温度、ガラス面に触れる空気の温度や湿度、さらにはガラスの表面が綺麗かどうか、傷があるかどうかなど、たくさんの条件が関係します。したがって、どの条件で実験を行えば、どんな形のものができるかを簡単に述べることは難しいです(注3)。
ですので、発想を変えて、窓霜・窓氷を作るときの気温やお湯の温度などを測定して記録に残し、そのときどんな形のものができたかを写真に残したらどうでしょう。ガラスを綺麗にみがいたり汚れたままにしたりでも、でき方が変わるはずです。最近は、温度計や湿度計なども比較的安く入手できますので、それらをいくつか用意して、どんな条件であったかを測りながら実験を進めると、面白い結果が得られるかもしれません。また、ガラスの蓋がついた密閉した容器に水を少しだけ入れて、冷凍庫に入れておくだけでも、窓霜あるいは窓氷を作ることもできます。この場合は、冷凍庫の温度を変えたり、容器の中の水の量や温度を変えたりすると、良い条件をさがすこともできると思います。いろいろと工夫をしてみてください。接写写真や早送り映像(タイムラプス撮影)など、窓霜・窓氷の観察に適した撮影法も、今はスマホなどで簡単にできます。面白い実験の結果が出たら、ぜひ教えてください。
注1:窓霜や窓氷については、本Q&AのQ35、Q38、 Q82などの回答も参考にしてください。
注2:ただし、車の窓の内側に窓霜や窓氷ができると、窓の外がよく見えなくなります。そのままで車を動かすととても危険ですので、車を使うときは車を運転するご両親ともよく相談してください。車でなくても、玄関フードや屋外に接する窓がある物置など、窓が曇っても危険がない場所があったら、それを利用すると安心です。
注3:当館で紹介する中谷宇吉郎先生は、今から70年以上前(1948年)に「霜の花」という科学映画を作成しています。この映画では、窓霜や窓氷のできる様子を早送りの映像でたくさん紹介しています。この現象を記録した映画としては、世界初のものです。この中で、中谷先生は、気温や湿度さらにはガラスの表面の状態を変えて、そのときにどんな窓霜、窓氷ができたかを記録しています。雪の科学館では、時々上映会を開催しています。
(回答掲載日:2025年1月16日)
その他の現象 #窓氷#霜#窓霜#実験#氷雪の結晶と霜の模様について
僕は雪の結晶がきれいだなと思って雪が降ると観察しています。この間、ガラスに霜がついてきれいな模様ができていました。大きさは違うけれど、雪の結晶と形がすごく似ていました。なぜ雪の結晶と霜の模様は形が似ているのですか?霜の模様は雪の結晶の仲間ですか、それとも違うものですか?(さときちさん / 北海道・9歳)
北海道などでは、寒い朝に窓ガラスにきれいな模様の氷がついていることがありますね。このQ&Aの中のQ.35やQ.38にも、関連する質問がありますので、その回答も参考にしてください。
ガラスについた氷には、窓霜と窓氷と呼ばれる2つの種類があります。窓霜は、雪の結晶と同じように、ガラス窓周辺の水蒸気が直接結晶に変わったものです。これに対して、窓氷は、水蒸気がいったん液体の水として凝結し、その水の膜が冷却されて凍ったものです。雪の結晶と似た模様として観察されたのは、窓霜のほうであったと考えられます。雪の結晶も窓霜も、水蒸気から直接結晶ができるので、基本的なでき方は同じです。この意味では、仲間どうしと言えます。雪の結晶ができるときは、結晶は空中に浮かんでいるので、周りから均等に水蒸気を集めます。このため、とても対称的な形になります。しかし、窓霜の方は、ガラス窓の表面という少し特別な場所でできていますので、水蒸気を均等に集めることが難しくなります。このため、雪の結晶に比べると、かなり歪んだ形になっていることが多くなります。また、ガラスの表面に対して、結晶のできる向きが少し斜めになっていると、丸みを帯びた枝が伸びることもあります。また、ガラスの表面の性質によっても、その上にできる窓霜の形などが異なることも知られています。
(回答掲載日:2024年1月26日)
その他の現象 #窓氷#雪#霜#窓霜飛行機の上空で窓に雪の結晶のようなものが?
国際線の飛行機に搭乗したとき、上空で窓に雪の結晶のようなものが張り付いていましたが、あれはどのような現象だったのか教えて下さい。(雪男さん / 石川県・40歳)
飛行機の窓は、アクリル樹脂の板でできていて、3層の構造になっています。国際線の飛行機は、高度が10キロメートル以上を飛行するので、外気の気温は−50℃以下にもなります。このため、外気に直接触れている一番外側の窓板は、急激に冷やされた状態になっていて、3層の窓板の隙間にある大気に含まれる水蒸気が氷として凍りつくことがあります。これが、雪の結晶のようなものが張り付いたものの正体で、窓霜と呼ばれるものです。窓霜は、北海道などの寒冷な地域では窓ガラスの表面にできるものとして知られていますが、断熱の行き届いた建物ではめったに見かけなくなりました。飛行機の窓で見られるというのは、快適な機内と外気との温度差がいかに大きいのかを物語っています。飛行機が空港にいるときやそれほど高度の大きくない国内線での飛行では、外気温はそれほど下がりませんので、このような現象が見られる機会は少ないと思います。窓霜についての詳しい説明は、本Q&AのQ35の回答を御覧ください。
ちなみに、飛行機の窓は3層になっているというお話をしました。これは機内の気圧を保つために十分な強度を持つ窓とすることが主な役割ですが、この窓霜の発生をできるだけ抑えるという工夫もあります。窓板を注意深く見ると、どこかに小さな穴があけてあるのに気がつくと思います。この穴は、3層の窓の中間の窓板にあいていて,窓板と窓板の隙間の空気を出し入れする役割をもっています。飛行機の機内の空気は、非常に乾いた状態にあるので、この空気が出入りすることで窓霜の発生を抑制することができるのです。
(回答掲載日:2022年2月4日)
その他の現象 #窓霜#自然現象窓霜
窓霜の模様は何種類ありますか。教えてください。(まどしもさん / 秋田県・12歳)
窓霜とは、外気で冷やされた窓ガラスの表面にできる霜のことです。最近では、建物の断熱性能も上がり、めったに見ることができなくなりましたね。
窓霜の模様については、雪の結晶の分類表のようなものはありません。しかし、窓ガラスの表面にできた氷には、実は2つの種類があることを説明したいと思います。一つは、窓ガラスの表面に水蒸気(気体)から直接氷の結晶が生成したものです。冬の寒い朝などに、地表にあるさまざまな物体の上にできる霜とでき方が同じですので、窓霜と呼びます。一方、窓ガラスの表面に氷ではなく水滴ができ、ガラス表面全体が水の膜で覆われた状態になることがあります。その水の膜が、更に冷却されて凍ると、氷の薄い膜ができる場合があります。これは、窓氷と呼ばれるもので、窓霜とは異なります。窓霜と同じように、やはり複雑な模様ができます。両者は、成因が違いますので本来区別しないといけないのですが、同じよう模様をひと目で区別するのはなかなか難しいこともあり、区別せずにどちらも窓霜(あるいは窓氷)と呼んでいる場合も少なくありません。
ところで、窓霜は気体である水蒸気から生成されると説明しましたが、このしくみは実はエピタキシャル成長と呼ばれる最先端の結晶成長法と関連します。エピタキシャル成長とは、基盤となる結晶の上に薄膜状の結晶を作る方法のことで、半導体結晶の生成などで広く使われる重要な先端技術です。この薄膜結晶の方位や特性は、基板の結晶の特性で大きく変わります。氷の場合でも、ガラスではなくヨウ化銀(AgI)やコベリン(CuS)などの結晶表面で水蒸気から氷結晶を成長させると、方位が決まった氷の薄膜結晶ができることが知られています。身近な窓霜の生成のしくみが、最先端の半導体技術と共通点があることは驚きですね。
(回答掲載日:2022年1月7日)
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