雪と氷のQ&A
タグ:雪の形

Q31

雪の形状

雪には様々な形がありましたが、雪が作られるときに、一番多い形はなんですか(とうろもこし™さん / 石川県・11歳)

 雪の結晶の形は、結晶ができるときの気温と大気中の水蒸気の量(一般には湿度と言いますが、結晶ができるためには湿度は100%以上でなければいけません。)の条件で決まります。したがって、雪が生成されている上空の雲の中がどのような条件かで、できる結晶の形も変化し、その結晶が一番多い形であると言えます。

 このことは正しいのですが、実際にはそう簡単な話ではありません。まず、雲の中の条件と言っても、雲の上層部と下層部では気温も水蒸気の量も大きく異なります。一般には、上層ほど気温が低くなります。雪の結晶は、このような雲の中を上層から下層に向かって落下しながら生成されますので、結晶のできる条件は時々刻々変化します。このため、私達が地上で観察する結晶の形は、その結晶がどのような経路をたどってきたか、すなわちどのような生成条件の変化を経験してきたかで、大きく異なります。

 しかし、地上で観察する雪の結晶では、いわゆる樹枝状結晶と呼ばれる綺麗な六本の枝が伸びた結晶が多いと思います。これは、マイナス15℃前後の狭い気温条件で生成されます。この樹枝状結晶は、細い枝の先端がどんどん伸びるので、他の温度領域と比べて、結晶のサイズの増加が急速であるという特徴があります。私達が住んでいる地域では、地上の気温が−15度よりも下がることはめったにありませんので、上空の雲の中には必ずこのマイナス15度の気温の領域が存在します。このため、雪の結晶は、落下途中にこの気温の領域を必ず通過することになります。このとき、一気に樹枝状に成長するので、どうしてもこの結晶が観察される機会が多くなると言えます。

 一方、南極などのもっと気温の低い地域では、上空にはマイナス15度という温度領域が存在しない場合もあります。このようなときには、樹枝状結晶はあまり見られず、もっと低温で生成されるような結晶形が増加することもあります。

 このように、その時に降っている雪の結晶のうち一番多い形は、上空の雲の中の条件によって変化するということになります。中谷宇吉郎先生の有名な言葉に、「雪は天から送られた手紙である」というのがあります。これは、上空の雲の中の気象条件が、地上で観察される雪の結晶の形に影響を与えているということを示しています。でも、この手紙を読み取るのは、そう簡単なことではなさそうと言うことがわかると思います。

(回答掲載日:2021年12月24日)

#雪の不思議#雪の形
Q9

国や場所によって雪の結晶の形は違う?

いろんな形の雪の結晶がありますが、場所によって降る雪の形は違うのですか?たとえば石川県に降る雪はどんな形が多いとかアメリカはこんな形とかあるのですか?(しゅんさん / 石川県・13歳)

  雪の結晶の形は、結晶が生成するときの大気の温度(気温)と水蒸気の量(湿度)によって決まります。雪の結晶は、上空の雲の中で生成されますので、そこでの気温と湿度が形に反映されているのですね。中谷宇吉郎が人工雪の実験をもとに、結晶形と気温・湿度の関係を示したものが良く知られたナカヤ・ダイヤグラム (※画像1) です。

 ご質問にある「場所によって降る雪の形が違うのか」ということですが、異なる場所であっても結晶が生成される雲の中の条件が同じであれば結晶形も同じになりますので、基本的に場所による違いはありません。一方、同じ場所で結晶を観察していても、上空の雲の中の条件は刻々と変化しますので、それに応じて形も変化します。

 中谷宇吉郎は、雪の研究を開始した当初に、北海道の十勝岳で数年の間におよそ3000枚の雪の結晶の写真を撮影しました。そして、それらをもとに、代表的な雪の結晶の形として約40種類に分類しました。その後、多くの研究者が世界各地で雪の結晶の観察を継続しましたが、この中谷の分類表にはほとんどすべての結晶形が含まれていたことが明らかになっています。これは、一つの場所であっても長期間にわたって観察を続ければ、ほとんどすべての雪の結晶形を見ることができることを意味しています。この事実も、雪の結晶が降る場所によって形が異なることは無いということを示しています。

 ただし、例えば南極や北極のように、普通は人が住まないような平均気温が極端に低い場所では、そこでの結晶の成長条件に合った結晶形が降りやすいということは起こります。実際に、南極の昭和基地では、日本やアメリカのような中緯度の地域に降る結晶形とは異なる、特別な形の雪結晶が発見されています。その後の研究で、これらは気温が極端に低いときに生成される結晶形であることも明らかになっています。したがって、これも場所による違いというよりも、場所によって結晶の生成条件が異なっていたという方がより正確ということになります。

(回答掲載日:2020年11月1日)

#結晶の不思議#自然現象#雪の不思議#雪の形
Q3

雪質について

粉雪や玉雪など降雪における雪の状態の差は、どのような構造の差として観察されるのでしょうか。またその差は如何にして生まれるのでしょうか。(きすけさん / 岐阜県・30歳)

 粉雪や玉雪というのは、降雪における雪の呼び方としては科学の世界で使われる言葉ではありませんが、前者はかなり小さな雪粒がバラバラで降っている状態、後者は多数の雪粒がくっついて一塊になって降っている雪を示すと思われます。

 上空の雲の中で生まれた雪の結晶は、雲の中で水蒸気を集めて落下しながら成長し、やがて地上に達します。このとき、地表付近の気温がまだ充分に低く氷点下の場合は、雪の結晶はそのままバラバラの状態で地上に達します。これが粉雪の正体です。

 一方、地上付近の気温が0℃前後になると、雪の結晶の表面は薄い水の膜で覆われた状態になります。このような結晶が落下の途中で衝突すると、水膜を通して互いにくっつき、少し大きな雪粒になります。このような雪粒どうしの衝突が繰り返し起きると、最後には数百個もの雪の結晶が一塊になった巨大な雪粒が生成されます。これは、いわゆるボタン雪と呼ばれるもので、大きなものは数センチにも達し、降っている時には玉のように見えますので、これを玉雪と呼んでいるものと思います。

 それでは、なぜ気温が高いと雪粒どうしがくっつき合うのでしょうか。氷の粒である雪は0で溶けます。したがって、温度がプラスになると雪は半分溶けて濡れた状態になります。さらに、気温がマイナスであっても0に近いと、氷の表面は薄い水の膜で覆われていると考えられています。雪粒の表面にこのような水膜が存在すると、雪粒どうしが衝突すると、水膜を通してくっついてしまうのです。海岸で砂の像を作る時に乾いた砂ではうまく作れませんが、湿った砂では簡単に作ることができます。これも、砂粒の表面に水の膜があると砂粒どうしがくっつき易くなるからです。積もった雪でも、気温が低いとパウダースノーになったり雪だるまが作りにくくなったりします。これも雪粒の表面での水膜と関係しているのです。

(回答掲載日:2020年8月12日)

#自然現象#雪の不思議#雪の形#雪の種類
Q2

雪の結晶パターン

雪の結晶には色々なパターンがあるのはなぜですか。(224さん/神奈川県・12歳)

 雪の結晶は、ひとつひとつ形(パターン)が異なっているとよく言われます。とても不思議ですね。これは、雪の結晶がどのようにしてできるのかに関係しています。

 雪の結晶は、上空の雲の中に目に見えないほどの小さな氷の粒である雪の赤ちゃんが生まれることから始まります。この雪の赤ちゃんは、雲の中を落下しながら、周りの水蒸気を吸収して徐々に大きく成長します。そして、雲の下にいる私たちの目に触れる頃には、目に見えるほどの大きさになっているのです。

 この時に、雪の結晶がどんな条件で大きくなったかで結晶の形は違ってくるのです。雲の中を落ちてくる結晶は、ひとつひとつその道筋が異なりますので、結晶ができる条件も結晶ごとに異なるはずですね。

 私たちが目にする結晶は、すでに長い道筋をたどって成長してきたものですので、いろいろなパターンの結晶が観察されるのです。

(回答掲載日:2020年7月31日)

#結晶の不思議#雪の不思議#雪の形

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