雪と氷のQ&A
タグ:雪の結晶

Q94

今積りゆく雪の結晶は同じタイプ?

雪の結晶には、様々な形があることは承知していますが、今、この枝に降り積もっていく雪の結晶は、同じタイプなのでしょうか?(雪吊りフアンさん / 石川県・70歳)

 雪の結晶の形と言うと、千差万別で2つと同じものはない、とよく言われます。もちろん、これはその通りなのですが、その意味合いには少し注意が必要です。と言うのは、千差万別であるということには、一つの条件があります。すなわち、時間や場所をいろいろと変えて、多くの雪の結晶を観察したときに、その形はさまざまであって、2つと同じものはないということです。頂いたご質問は、“雪の結晶の形は、千差万別と言っているけれども、どんな条件でも言えるのでしょうか?”とも言い換えることができると思います。本当は、この条件のことを説明した上で、この言葉を使わないといけないのですが、ついつい疎かになっていて、皆さんに誤解を招く結果になっていると私も反省しているところです。

 では、もう少し具体的にご説明しましょう。すなわち、ここで言う千差万別は、時間や場所を変えて雪の結晶を多数観察したときに、その形はさまざまなタイプあると言うことで、ある瞬間にある場所で降っている雪の結晶のタイプがさまざまなものを含んでいると言うことはではありません。実際、雪の結晶の観察をしてみると、ある瞬間にある場所では、ほとんど同じタイプの結晶が降っているのが普通です。例えば、樹枝状に枝が発展したタイプの結晶が降っているときには、細長い針状のタイプの結晶などが混じっていることはありえません。

 その理由は、ある瞬間にある場所で降っている雪の結晶は、ほぼすべてが同じような気象条件(すなわち、結晶の形を決める条件)で生成されたものであると考えられるからです。個々の雪の結晶の形は、上空で誕生した微細な氷の結晶の粒が、地上に落下するまでに、その落下経路に沿って気象条件がどのように変化したかを反映して決まります。結晶ごとに異なる経路をたどっているので、結晶の形はそれぞれ異なることになります。しかしながら、上空のほぼ同じところで誕生した氷の粒は、気流の流れに沿って落下してくるので、雪の結晶としてほぼ同じ場所に降り落ちるはずです。すなわち、地上である瞬間に同じ場所で降っている雪の結晶は、似通った気象条件の変化を受けて生成されたと考えるのが妥当です。このため、同じタイプの結晶ばかりが降り落ちると言うことになります。

 中谷宇吉郎は、「雪の結晶は天から送られた手紙である」と言う言葉を残しました。これは、地上で雪の結晶の形を観察すれば上空の気象条件を推定することができると言うことを意味していますが、まさにある瞬間にある場所に降り落ちる雪の結晶は、ほぼ同じタイプであるということが条件になっているのです。

  (回答掲載日:2024年8月23日)

#雪の結晶#雪#雪の不思議
Q88

雪の結晶の形についての質問

雪の結晶はどうして平面の六角形になるのですか?(じんみさん / 富山県・30歳)

 雪の結晶の形やそのでき方については、すでにこのQ&Aの中でも何度も取り上げてきました。まずは、その回答を参考にして下さい。例えば、Q.2Q.27Q.31Q.45Q.65Q.67などが関連します。ここでは、これらとは少し異なる視点で、回答したいと思います。

 雪の結晶の写真を見ると、綺麗な六角の平面状のものが非常に多く、この形のものが唯一の結晶形のように思われることがあります。しかし、実際には、雪の結晶の形は実にさまざまで、平面状と言っても樹枝状や六角板状のもの、さらには六角柱や針状、これらの組み合わさったものなど千差万別です。しかし、これらに共通する特徴は、雪の結晶形の基本は、微細な六角柱であることです。すなわち、これが雪の結晶の赤ちゃんで、この赤ちゃん結晶が横方向に成長したもの(すなわち、六角の平面状の結晶形)や縦方向に成長したもの(すなわち、細長い針状の結晶形)が、実際に空から降ってくる雪の結晶になります。

 では、なぜ六角形なのかですが、これは雪の結晶(すなわち、氷の結晶です)は、水の分子が立体的に規則正しく並んで、六方の対称性を作っているためと説明されます。もちろん、これで間違いではないのですが、例えば1個の雪の結晶を見た場合、1本の枝の先端からその反対側の枝の先端の間までに並ぶ水分子の数は、およそ10、000、000個と、膨大な数になります。実際には、結晶はもっと立体的な広がりがあるので、1個の結晶の中の水分子の数は、さらに大きな数になります。すなわち、水分子の並び方が結晶の外形に関連していると言っても、そう簡単には説明ができそうにもないことが分かります。結晶の形などを専門とする研究者にとっても、頭を悩ませる問題が、今も残されているのです。

 最後に、雪の結晶は、平面かどうかについても見ておきましょう。平面というと、厚みがないように思えますが、雪の結晶は決してそうではありません。一見平面に見える六角の結晶でも、0.1mm程度の厚みがあります。十分薄っぺらいようにも見えますが、先程の水分子が何個積み重なっているのかという視点では、およそ250、000個の水分子の積み重なりということになります。もう、雪の結晶は平面ではなく、十分な厚みがあると言えます。さらに、雪の結晶の写真を見ると、外形の複雑さだけではなく、結晶内部にも様々な模様が観察されます。この模様は、結晶の表面にある凸凹が、影となって見えているのです。このことも、雪の結晶は厚みのない平面とは決して言えないという根拠になります。

 このように、雪の結晶がなぜさまざまな形をとるのかは、現在もまだ完全には説明できない部分が残されているのです。雪の結晶を見たときに、綺麗だなと思うと同時に、何か不思議なことがまだまだあるんだと思っていただければ、大変有り難いです。

 

  (回答掲載日:2024年2月6日)

#雪の結晶#雪#雪の不思議
Q85

雪と塩のかんけい

雪がふったときに道路に塩をまいているのを見ました。どうして塩をまくんですか?雪と塩にはどのようなかんけいがありますか?(うーたんさん  / 富山県・8歳)

 道路に塩をまくのは、雪がふって寒い時に、道路がこおりついて車がスリップしないようにするためです。水道の水は、0度になるとこおって氷になるのは知っていますね(少しむつかしいですが、モル凝固点降下というげんしょうです。このQ&Aのなかにも説明があります。たとえば、Q.43の回答なども参考にして下さい)。しかし、水道水に塩を入れると、その水はこおりにくくなります。たとえば、冷凍庫に、塩がたくさん入ったしょっぱい食品を入れておくと、ほかの食品にくらべてこおりにくくなります。また、海水は塩をふくんでいますので、こおる温度はマイナス2度になります。このように、塩の入った水のこおる温度は、0度よりも低くなるのです。

 では、道路に塩をまくとどうなるでしょう。塩をまくと、道路の表面にある水分に塩がまじります。そうすると、その水分は0度よりも低い温度にならないとこおらなくなります。つまり、塩をまくと道路の表面には氷ができにくくなるのです。道路に塩をまくのは、道路の表面が氷でおおわれるのをふせぐことで車が安全に走れるようにするためです。道路の安全をまもるための、大切なさぎょうなのですね。

(回答掲載日:2024年1月26日)

#塩#雪の結晶#雪#雪の不思議
Q84

雪の結晶の中の線の模様について

①雪の結晶の中の線の模様について 雪の結晶を拡大したのを見ていると、雪の結晶の中に線の模様が入っています。これは結晶が大きくなる過程でできる線なのですか?なぜ、きれいに線が現れるのでしょうか。結晶の表面が線に沿ってデコボコしているのかも気になります。 ②雪の観察する時、指先の防寒対策は? 雪や霜など早朝の寒い中、外に出て観察をしています。手は手袋で防寒していますが、メモを取ったり手先で細かい作業をする時は手袋を外さないといけません。手袋を取るとすぐに手が冷たくなり作業ができなくなるのですが、皆さんはどのように寒い外での研究をしているのですか?何かいい方法があれば教えてください。(氷博士になりたいにゃーこさん  / 栃木県・14歳)

① 雪の結晶の写真を見ると、結晶の内部に線状に伸びた線などさまざまな模様を見ることが出来ます。六角形の雪の結晶は、とても薄いのですが、決してペラペラの紙のようなものではなく、しっかりとした厚みを持つ氷の結晶になっています。写真で見られる模様は、この氷の結晶の内部に出来ているのではなく、結晶の表面にある凸凹が模様となって見えているのです。すなわち、顕微鏡などで結晶を見るときは結晶の後ろから照明の光を当てますので、表面の凸凹が影になって見えるのです。この凸凹が出来る理由は、結晶が成長する時に結晶の尖ったところや角のところから成長しやすいと言う性質があることと関係があります。特に、筋状の模様は、結晶の角や枝の先端が伸びる時にその成長の痕跡として残されることがあります。、結晶は、成長してそのサイズが大きくなるとともに、外形も結晶の表面もだんだん複雑な構造を取るようになり、結晶外形だけではなく内部にも綺麗な模様が出来上がるのです。しかし、凸凹と言っていますが、結晶の表面が実際には凸なのか、凹なのかは、実は簡単には判別できません。これを調べるには、普通の顕微鏡ではなく、結晶の表面で反射してくる光で観察できるような特殊な顕微鏡を使うことが必要です。さらに、凸凹の深さを測るには、光の波の長さを基準として測定することができる干渉顕微鏡と呼ばれる精密な測定装置なども必要です。この凸凹の謎を解明するために、今も観察を行っている研究者もいます。

 最後に、少し難しくなりますが、結晶の外形や内部の模様ができるしくみは、「結晶形の形態不安定化」と呼ばれます。結晶は、本来は平らな面で囲まれた多面体の形をしています。この多面体の形を保ったままで成長する場合は安定成長と言います。一方、雪の樹枝状結晶のように、結晶が成長するとともに外形がだんだん複雑になっていくような場合は不安定成長と呼びます。安定成長が不安定成長に移り変わるしくみが形態不安定化で、結晶の形や模様を研究する上で非常に大事な考え方になっているのです。

② また、雪や霜の結晶を野外で観察するときには、どうしても手がかじかんでしまって、うまくいかないことがよくありますね。分厚い手袋をはめてしまうと、メモを取るときや細かな作業をするときには、いちいち手袋を外さないと出来ません。これで絶対大丈夫という解決法は実は無いのですが、私達は白い薄手の綿手袋をはめたりしています。これを使うと、指先が比較的自由に使えますので、いちいち手袋を外すことも不要になります。しかし、防寒には十分ではありませんので、防寒用の厚い手袋もそばにおいておくと良いと思います。

 また、雪や霜の結晶を観察するときには、黒い布(私達は、ビロードという毛羽立った布)を30cm角ぐらいの板に貼り付けたものを用意します。この板で雪や霜の結晶を受け止めるのです。そうすると、コントラストが付いて結晶をとても見やすくなります。さらに、面相筆(できるだけ穂先の細い筆)を用意すると、結晶にさわったり、ひっくり返したりすることが容易にできます。また、穂先に引っ掛けると、結晶を顕微鏡のステージにのせるときや、結晶のレプリカ作成などの作業にも役立ちます。このような方法は、中谷宇吉郎先生たちが90年前に雪の結晶の研究を始めた頃から使われていました。こう言うと進歩がないように思えますが、実は寒い野外での作業であることを考えると、もっとも合理的な方法なのです。防寒に気をつけながら、いろいろと工夫して、雪や霜の結晶の観察にチャレンジしてみてください。

(回答掲載日:2024年1月26日)

#雪の結晶#雪#観察#雪の不思議
Q83

ゆきのけっしょう

ゆきのけっしょうはどうやったらみれますか?どこに行ったらみれますか?(しゅうすけさん  / 石川県・6歳)

 ゆきのけっしょうは、ちょっけいが3ミリより大きいものもありますので、くろいかみやぬのなどで、けっしょうをうけとめれば、そのままでも見ることができます。もし、むしめがねなどをもっていたら、それでのぞいてみると、もっとはっきり見ることができます。ゆきのけっしょうを見るためには、できるだけさむい日をえらんでください。しかし、いしかわけんなどでは、へいちではじゅうぶんにきおんがさがらないので、ゆきがふっていても、けっしょうは、はんぶんとけだしていたり、ぼたんゆきとよばれるかたまりになっていることが、おおくなります。このときは、けっしょうを見るのは、なかなかむつかしいかもしれません。スキーじょうなどのある、すこしたかいところにいくと、きおんもさがり、けっしょうを見やすくなります。ぜひ、ためしてみてください。

(回答掲載日:2024年1月26日)

#雪の結晶#雪#雪の不思議
Q81

音と雪の結晶について

かなり昔雑誌(週刊紙)で見たのですが、雪の結晶が出来る時の音で雪の結晶の美醜があると記述と写真でみました。きれいな言葉だと美しい結晶、汚ない言葉だと結晶どころか壊れた雪の形だったと記憶しています。今でもその雪の結晶のことが気になって記事や画像を検索しても見当たらず本当なのか知りたいです。(夏。みかんさん  / 石川県・49歳)

 

 音や言葉で、雪の結晶の形が影響を受けることはありません。

 この話は、1990年代後半から2010年代初めにかけて流行った「水からの伝言」ということに関連しています。これは、水に言葉をかけると、その内容によって結晶の形が変わるということを主張したものです。しかし、物質である水の性質に人の言葉が影響を与えるなどは、科学的にはありえません。いわゆる、ニセ科学の典型として、当時大きな問題となりました。

 それは、この話が多くの小学校で道徳の授業の教材として取り上げられるということが起こったためです。すなわち、「水にきれいな言葉をかけるときれいな結晶になり、汚い言葉をかけると汚い結晶になります。人間の体にはたくさんの水が含まれています。だから皆さん、きれいな言葉を使いましょう」という流れで、授業に取り入れられました。しかし、結晶の形には言葉の良し悪しなど関係がないことははじめに述べたとおりで、科学的根拠があるように見せかけた間違った内容で授業を行っていたということになります。そもそも、結晶の形がきれいかどうかの判断基準は、人それぞれに異なるはずです。さらには、言葉使いの良し悪しという判断を、まったく関係のない水という物質に委ねていることになります。一見論理的に見えても、非常に底の浅い内容ということができます。

 なぜこのようなことが起こったのでしょうか。この話の前提として、一応結晶を作るという実験を行っているので、すっかり科学的事実であると思い込む人が続出してしまったことに大きな原因があります。しかし、科学実験とは、主観を排除して客観的な事実のみを捉えて議論をすることが基本です。さらには、他の研究者がその実験を再現でき、同じ結果を得られることも重要です。したがって、科学実験の結果には、結晶がきれいとか汚いという主観的な基準が入り込むことはありえません。すなわち、この話のもとになっている実験には、科学的な根拠がないのです。

 私達の周りには、この話以外にもニセ科学やオカルトなどに当たるものがいろいろとあって、時には人々を惑わす原因となっています。このような怪しい言説に騙されないためには、正しい根拠に基づく科学的な思考をする力を鍛えることがとても重要なのです。 

(回答掲載日:2023年12月24日)

 

#雪の結晶#雪
Q80

雪の結晶について

古生代や中生代にも雪は降っていましたか?また、その時代の雪の結晶は、現在分類されているような柱状結晶群や板状結晶群だったのでしょうか? そう言った事を自分で調べる場合は、雪氷学、古気候学、気象学、古生物学などの学問だと、どの学問になりますか?(ノートの罫線さん / 大阪府・34歳)

 今から46億年前に地球が誕生して以来、地球の気候は大きく変動してきました。その間には、安定な気候の状態として、地球全体が氷床で覆われた寒冷な気候の時期、地球上から氷床が消えた温暖な気候の時期、そして部分的に氷床で覆われた比較的温暖な気候の時期を繰り返してきたと考えられています。特に、寒冷な気候の時期は、地球全体が雪だるまのように真っ白な球体になっていて、全球凍結(スノーボール・アース)と呼ばれています。地球の歴史の中で、2回あるいは3回、このような状態に陥ったと考えられています。

 さて、このようなことを考えると、当然地球が誕生してからいつも地球のどこかでは雪が降っていたと予想されます。しかしながら、その時に生成される雪の結晶の形は、結晶が生成するときの気温や水蒸気の量などの全く物理的な因子で決まります。すなわち、どんな時代であっても、この物理的な因子は変わりませんので、昔も今も雪の結晶の基本的な形は同じです。

 さらに、雪の結晶は降り積もったあとすぐに融けてしまったり、形が変化してしまったりするので、結晶の最初の形は保存されません。したがって、古代の雪の結晶の形を議論するのはあまり意味を持ちません。

 しかし、少し広く考えて、古代の地球の環境や気候変動の研究というのは、地球の進化や生命の進化とも密接に関連する重要な課題です。このような研究は、実際にはさまざまな研究分野にまたがって行われています。既存の研究分野は、そのような研究を行うための導入としては重要ですが、それにこだわる必要はないと思います。

(回答掲載日:2023年9月10日)

#歴史#雪の結晶#雪の不思議
Q77

雪の結晶が一種類しかなかったら…

私は、雪はとても軽くて優しいものだと感じていますが、もしも雪の結晶が一種類しかない場合に、自然現象にどう影響するでしょうか?結晶が大きくなりすぎて、地上で生きる私たちにとって不都合なほど危険なものになったりはしませんか?(中村一之さん / 埼玉県・59歳)

 雪の結晶の形がたとえ1種類しかなくても、それが自然現象に大きな影響を与えるとは考えられません。雪の結晶は、上空の雲の中で誕生した極めて小さな氷の粒が周囲の水蒸気を集めて、時間とともに大きくなる(成長する)ことで生成されます。地上で観察される結晶の大きさは、その結晶がどれくらいの時間かかって生成されたかによって決まります。、氷の粒が誕生してから雪の結晶として地上に達するまでにかかる時間は、普通30分から1時間程度と言われています。この時間で成長できる雪の結晶の大きさは、当然限界があります。例えば、成長速度の速い樹枝状結晶であっても直径10mm程度にまでしか成長することができません。他の結晶形の場合は、もっと小さなサイズの結晶にしかなれません。したがって、ご心配のような私達に不都合なほど大きな結晶に成長する心配はありません。

(いわゆるぼたん雪と言われるものはもっと大きいものが降ってくることは珍しくありません。しかし、これは多数の雪の結晶が落下中に絡み合ってできたもので、その中の個々の雪の結晶は大きくても10mm程度です)

(回答掲載日:2023年7月27日)

#雪の結晶#雪#雪の不思議
Q67

雪の結晶が成長する方向について

Q31やQ32で、気温と大気中の水蒸気の量によって雪の結晶の育ち方が違うことを知りました。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。氷晶に水蒸気が昇華してくっつく場所によって、くっつきやすいけど水蒸気に戻りやすいため、大気が湿っているときに成長しやすい部分。くっつきにくいけど水蒸気に戻りにくいため、大気が乾燥しているときに成長しやすい部分。などの違いがあるのでしょうか。( よつばさん / 東京都・25歳)

 雪の結晶の形が気温と水蒸気の量で変化するというのは実験事実ですが、なぜ結晶の形が変化するのかという理由に答えることは簡単ではありません。長年にわたって多くの研究がなされてきましたし、今も最先端の方法を使って研究が行われています。雪の結晶に限らず、そもそも結晶というのは、最初に極めて小さな結晶の粒が生まれて、それが時間とともに成長して大きくなり、その結果として形が決まります。したがって、結晶の形が決まるしくみを明らかにするには、結晶の粒からある形を持つ結晶までの成長の過程を解明する事が必要になるからです。このような研究を専門に行っているのが、結晶成長学という学問領域になります。

 さて、雪の結晶に戻りましょう。雪の結晶の最初の粒は、目に見えないほど小さな六角柱の氷であると考えられます。この氷が成長するにしたがって、さまざまな形の雪の結晶を生成していくのです。例えば、この六角柱の氷が横方向に成長するのか縦方向に成長するのかを考えるだけでも、結果的に結晶の形は大きく変わりますね。前者は、平たい六角の板状の結晶形になるし、後者は細長い柱状の結晶になります。この変化は、結晶の周囲にある水蒸気が、雪の結晶に流れ込んでくるときに、その水蒸気が結晶のどの部分に取り込まれ易いかに関係しています。すなわち、六角柱の六角の面に取り込まれやすいのか、横の四角の面に取り込まれやすいのかで、板状になったり柱状になったりするはずです。

では、この水蒸気の取り込まれやすさ、の違いはなぜ起きるのかですが、結晶の表面での水分子の並び方に関係すると考えられます。しかし、氷の結晶の表面での水分子の動きを直接観察する、実は最新の観察技術をもってしても簡単ではありません。このため、まだまだよくわからないことが残っています。しかし、北海道大学の低温科学研究所では、世界に先がけて氷の結晶の表面を分子のレベルで精密に観察することが可能になっています。(Q14Q33の回答も参考にしてください)この謎が解明されるのもそう遠いことではないと思います。

 最後に、雪の結晶は、六角板や六角柱だけではなく、樹枝状結晶や針状結晶と呼ばれるような複雑な形のものが多いですね。これは、雪の結晶に水蒸気が流れ込むときに、結晶の尖った部分(結晶の角や縁)には水蒸気が集まりやすいという性質があるためです。このため、尖った部分には、水蒸気がたくさん取り込まれるために、この部分はだんだん尖ってきて、前方に突き出すことになります。一度前方に突き出すと、さらに水蒸気が集まってきやすくなり、さらに先端が尖るということになります。この過程が繰り返されると、結晶の形はだんだん複雑になってきて、最終的に樹枝状や針状の結晶となるのです。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#雪の結晶#研究#雪の不思議
Q65

雪の結晶の形について

雪の結晶は、どうしていろんな形があるんですか。( けろChanさん / 石川県・12歳)

 雪の結晶の形は、結晶ができるときに周囲にある空気の温度と湿度(水蒸気の量)で決まります。また、雪の結晶は、上空の雲の中でできることも習ったと思います。この雲の中の空気は、その場所や高さによって、温度や湿度が大きく変化します。ということは、雪の結晶の形は、その結晶ができたところの温度と湿度で決まっていると言えますね。私たちが地上で観察する雪の結晶は、上空の雲のいろいろなところでできた結晶が混じり合って降ってきたものです。このため、雪の結晶にはいろいろな形があるということになります。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#雪の結晶#雪の不思議

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