雪と氷のQ&A
タグ:雪融け

Q75

雪がとけるときの性状の変化について

雪のとけ方を調べています。 家の周りで30cm積もった雪がとけていく様子を、数日間観察していると、新雪→しまり雪→ざらめ雪の順に性状が変化していくことがわかりました。また、豪雪地域で1mほどの積雪を掘ると、雪の層があり、上層から新雪→しまり雪→ざらめ雪の順に下の層ほど粒が大きくなっていると調べてわかりました。つまり、私が観察した性状変化と「層」の性状の順番は一致しているようでした。 雪に層ができる理由として、次の2つを考えましたが、わかっていることがあれば教えてください。 ①地面に近い雪ほど先に降ったため、地面の熱(0℃)の影響を受ける時間が長くなり、とけている。 ②下の層ほど、雪の重量の圧力が強くかかるため、氷(固体)の水分子間の水素結合の切断が起こり液体化している。(はるのはなさん /島根県・14歳)

 積もった雪が、その内部構造の変化を伴いながら融けていくということ、とても面白いことに気づきましたね。

 積雪は、積もった直後はふわふわの新雪の状態ですが、時間が経過するとその内部はどんどん変化していきます。これは、積もった雪粒が、融けたり凍ったり、さらには昇華(雪粒が直接水蒸気に変わる)したり成長したり(*注)して、降り落ちた最初の状態からどんどん変化してしまうからです。その変化のしかたは、雪が降ったり止んだりという積もる過程、積もってからの気温の変化、雪の深さごとの温度の変化など、さまざまな要因で影響されます。その結果として、積雪の中に異なる性質(雪質)をもつ雪が生成され、層状の構造を作るのです。

 このような変化を引き起こす元になっている原因の一つである、積雪内部の温度分布を考えてみましょう。気温の低い(氷点下の)地方では、積雪の表面の温度は0℃以下になっています。一方、地面と接する底の部分は、地熱のために雪が融け出していて、雪の融ける温度である0℃になっています。すなわち、積雪の内部では、表面から底に向かってだんだん温度が高くなっている(温度分布がある)ことになります。このような温度分布があると、積雪の中の雪粒は、その形や大きさが急激に変化します。一方、気温が比較的高い(氷点下ではない)地方では、積雪の中にこのような温度分布は生じません。積雪全体の温度が0℃となっていて、積雪全体が徐々に融け出していると考えられます。

 このことを基本として、ご質問に回答しましょう。

 まず①の質問は、気温の低い地方での積雪では、当てはまると思います。ただし、地面の温度が0℃という言い方は必ずしも正確ではありません。地面から熱が流れてくるために、地面と接している積雪の底では雪が融け出しています。このために、積雪の底では温度が0℃(雪の融ける温度)になっているのです。

 ②の質問については、氷に圧力が加わると融点が低くなる(すなわち、氷が融ける)ということはよく知られています。しかし、圧力の大きさに対する融点の低下は、ごくわずかです。例えば、南極大陸は2000mを超える厚さの氷(氷床)で覆われています。その氷床の底でも、氷の融点低下は、せいぜい1.5℃程度です。積雪についても、積雪の重さにより底での圧力が高くなり、融点が低下するのはそのとおりです。しかし、私達がふだん目にする積雪では、どんなに大雪でもせいぜい数mの高さですので、圧力による融点の低下はごくわずかです。したがって、この効果は考える必要はありません。

(*注)これは、少し難しいので詳しくは説明していませんが、積雪の中にある雪の粒は、周囲より温度の高い部分が昇華して水蒸気となり、その水蒸気が周囲より温度の低い部分に凝華するということを繰り返して、どんどん形や大きさが変化していきます。この現象は、積雪の中に温度分布があると顕著に起こります。

(回答掲載日:2023年6月8日)

#雪融け#雪の不思議
Q71

足跡や木の周りなどの雪が早く溶けるのはなぜ?

先月大雪で30cmくらいの積雪がありました。朝ついた足跡が、夕方に見ると足跡の部分だけはやく雪がとけていました。また、木や草が1本飛び出している場所なども、その周辺から早く雪が解けています。足跡で雪が圧縮されていても、周りと雪の量は同じだし、気温も同じなのに、そこだけ早く溶ける理由が知りたいです。(はるのはなさん /島根県・14歳)

  同じように積もった雪でも、融けるときには、融け方やそれにかかる時間が、場所によって異なりますね。雪が融けるには、さまざまなことが関係していますので、その理由を一つだけ述べることは、なかなか困難です。ご質問についても、いくつもの理由が考えられますが、以下の回答は一つの可能な答えとお考え下さい。

 まず、基本的なことから始めましょう。雪は小さな氷の粒が集まってできています。しかし、ある分量の雪が融けるために必要な熱の量は、同じ重さの氷の固まりが融けるときに必要な熱の量と同じはずですね。しかし、同じ場所に置いた雪と氷では、雪のほうが明らかに早く融けてしまいます。すなわち、雪や氷が融けるためには、必要な熱の量の違いだけではなく、それらに熱がどのようにして伝わるか、の違いが大事になります。

 このことを頭において、ご質問の答えを考えてみましょう。朝に降った雪を踏んで足跡をつけると、雪が圧縮されて固くなります。この固くなるということだけでは、逆に融けにくくなりそうですが、鳥取県のように比較的気温が高いと、踏み固められた雪は積もった雪の下にある水分を吸い上げて、黒っぽく見えるのではないかと思います。こうなると、雪は、少し暖かい水を含むことになりますので、周囲よりも早く融けても不思議ではなさそうですね。さらに、踏み固められた雪に水分が染み込むと、黒っぽくなりますので、そこに太陽の光が当たると熱を吸収しやすくなります。このことも、より早く融けるという理由の一つとも考えられます。このように、雪が融けるときに必要な熱が、どこからどのように来るのかを考えると、融ける早さの違いを自分で説明できると思います。

 最後に、木や草が1本飛び出している場所などでも、周囲の雪は早く融けるようだということ、確かにそうですね。これは、木や草は、地面から暖かい水を吸い上げているので、その幹の温度が周囲より高くなっているからと考えられます。すなわち、踏み固めた雪と同じで、吸い上げた水が暖かいということがその理由ですね。さらには、太陽からの熱は、木や草の黒っぽいものには吸収されやすく、それによっても幹の温度が上昇します。これも、幹の周囲の雪が早く融け出す理由になりそうですね。私は、雪の融け方を調べたことはありませんが、このような現象は「根開き」と呼んで、春先の雪融け時には顕著に見られるとのことです。

(回答掲載日:2023年3月10日)

#雪融け#雪の不思議

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