雪と氷のQ&A
カテゴリー:その他の現象

Q19

雪が青や緑に見える条件について

大雪が降った日に雪が青く見えました。とても不思議に思って雪の表面や中心部、地面近くなどの温度やその雪の状態を記録しました。その時の雪の表面の温度(青く見えた部分)は-23度でした。 そして2回目の雪が青く見えて多く雪が降った日にも記録しました。温度は-5度と1回目の記録と比べてみて降り積もった雪の温度は雪が青く見える理由とあまり関係がなかったと言うことがわかりました。2回目の大雪の記録をつける時に固めた雪と固めていない雪とで青く見えるのかということを比べてみました。すると固めた雪は緑色に見えました。同じ場所でも湿度などの条件を揃えられていなかったので結果が正しいのか分かりませんが、雪の密度が関係しているではないかと思いました。 雪は本来色がついておらず透明で光の反射や吸収により青い光を反射すると言う事は分かるのですがなぜ青く見えるのか、その条件は何なのかと言う事を知りたいです。(Machiさん / 富山県・11歳)

 雪といえば真っ白なイメージですが、それが青く(時には、緑色に?)見えることがあるというのは、不思議ですね。質問の中にある「雪は本来色がついておらず透明で光の反射や吸収により青い光を反射する」というのを、もう少し詳しく説明しましょう。

 雪が青く見えるという場所は、太陽の光が直接あたっている積雪の表面ではなく、積雪の断面にあいたくぼみのような少し影になった場所だと思います。実際、このくぼみの内側から外の光を透かすように見たときに、青みがかかって見えることが多いはずです。すなわち、この青い光は、積雪の中を透過してきた光を見た場合にしか見えません。

 さて、積雪は細かな氷の粒の集まりでできています。はじめに、氷を太陽の光(白色光)が透過するときに、光の強さがどう変わるかを見てみましょう。太陽からの光をガラスのプリズムで屈折させると、赤い光から紫の光まで7色に別れますね。光は波の性質を持っていますので、この色の違いは光の波長に対応しています。氷は無色透明と言いますが、実際には完全に透明ではなく、入射した光はごくわずかですが氷に吸収されます。この光が吸収される割合が、光の波長(すなわち、光の色)によって異なります。実際は、赤い(波長の長い)光のほうが青い(波長の短い)光よりも、吸収されやすいという特性があります。すなわち、氷の中を通過する太陽光(白色)は、赤い光がより早く弱くなることになり、割合として青い光のほうが強くなります。このため、青みがかかるのです。最初に述べたように、積雪も氷の粒でできていますから、光が積雪を通過するときにも、この性質が現れてきます。積雪のくぼみから外を透かして見る場合しか青く見えないのも、理由がわかりますね。

 これと同じ現象は、氷の塊でできた氷河や南極の氷山などでも見ることができます。この場合は、まさに氷の塊の中を光が通過しますので、青い光の成分の割合より多くなり、積雪の場合よりもっと青みがかかって見えることがあります。また、水中が青く見えるというのも同じ原理です。イタリアのカプリ島には、「青の洞窟」という有名な場所があります。ここは、海岸の切り立った崖の波打ち際にできた洞窟で、その内部に海水が流れ込んでいます。この洞窟の中に入ると海水が真っ青に輝くことで、この名前がついています。これは、太陽光が海水を通過して洞窟の入口から内部に差し込むときに、赤い光の成分が海水に吸収されやすいためにおきる現象です。氷と海水の違いはありますが、どちらも同じ原理で青く見えているのです。

 最後に、積雪が青く見える条件ですが、氷を通過する光の吸収は特に温度による大きな変化はありません。また、積雪の密度が高いと光の散乱(散乱は氷の表面での反射が主な原因で、青く見えることと直接は関係ありません)のため、通過してくる光の強さは素早く減少します。しかし、一方で密度が高いと、氷の粒の中を通過する長さは増えるはずで、より青みがかかることになります。両方の効果が複雑に関係しますので、その条件を明確に述べることは困難です。

(回答掲載日:2021年3月30日)

その他の現象 #光#雪の不思議#雪の色
Q18

雲が凍らない理由

上空は寒いのに、雲が凍らないのはなぜですか?また、雲が空に浮かんでいられるのはなぜですか?教えてください。(Kitutukiさん / 岐阜県・13歳)

 雲は、小さな水滴(雲粒)がたくさん集まってできています。雲粒の大きさは、直径で3〜10μm(すなわち、0.003〜0.01mm)程度でとても小さいものです。上空に行くと気温は下がり、やがて0℃より低くなります。雲粒は小さいとは言っても水でできていますから、このような温度になると凍ってしまってもおかしくないですね。

 実際には、気温が0℃以下であっても、雲粒は凍らずに水滴のままでいることができます。これは、水のもつ「過冷却」という性質によります。中谷宇吉郎雪の科学館では、ペットボトルに入れた水を冷凍庫で−5℃程度まで冷やしても、凍らずに液体のままでいることを示す実験を毎日行っています。この実験で作っている水が「過冷却水」と呼ばれるものです。この過冷却水は、ペットボトルを叩いたり、振ったりすると、簡単に過冷却の状態が破れて凍ってしまいます。それは、ペットボトルに与えた振動が氷を作るきっかけになるためです。また、振動がなくても、水の中に含まれているゴミやペットボトルの容器についた傷などがきっかけになって、やがて凍ってしまいます。

 しかし、雲粒の場合は、非常に小さいのでその内部にはゴミなどが入っていることはあまりありません。また、空気中に浮かんでいるので、容器の傷などの影響もありません。このため、ペットボトルで作る過冷却水より、もっと低い温度まで簡単に過冷却してしまいます。条件が良いときには、雲粒は−40℃程度まで凍らずに、液体の状態でいることができます。雲は、驚くほど低温になっても、凍らずにいることができるのですね。

 最後に、雲が空に浮かんでいられる理由ですが、雲を作る雲粒が非常に小さいことに関係しています。雲粒は、小さいとは言っても、もちろん地上に向かってゆっくり落下していきます。しかし、雲ができるときには、大気が上に向かって上昇していることが多いので、小さな雲粒も大気の流れに沿って上昇していきます。このバランスが取れているため、雲は空に浮かんでいることができるのです。

(回答掲載日:2021年3月30日)

その他の現象 #雲#過冷却水#水の不思議
Q11

植物は凍らない?

冬のとても寒い日でも椿などの花が咲いていたり草が生えていたりしますが、0度以下でも植物は凍らないのでしょうか?(なっちゃんさん / 石川県)

 生き物は、植物でも動物でも体が凍ると普通は死んでしまいますね。このため、寒い冬を凍らずに生き延びて、次の春にまた活動ができるように、生き物たちは特別なしくみを持っているのです。植物と動物では、そのしくみは異なりますので、まず植物について見てみましょう。

 植物が凍らないしくみのひとつは、冬になるとその体の中にたくさんの糖分やアルコール分などの成分を生成することです。水道水などのきれいな真水を冷やすと、通常は0度になると凍ってしまいます。しかし、水に糖分やアルコール分などが含まれていると、0度では凍らずに氷点下の温度になっても液体のままでいることができます。少し難しい言葉ですが、このことは「氷点降下(ひょうてんこうか)」と呼ばれていて、水に含まれる物質の濃度が高くなるほど、水が氷に変わる温度が低くなるという現象です。冷凍庫などに甘いジュースなどのペットボトルを入れておくと、真水のボトルよりも凍りにくくなりますが、これはジュースに大量に含まれる砂糖による氷点降下のためです。野外にいる植物も、冬が近づいてだんだん寒くなると、体内に糖分やアルコール分などを溜め込んで、この氷点降下のために体内の水が凍るのを防いでいるのです。実際、冬の寒さが厳しくなると野菜の甘さが増して、おいしくなると言われますね。これは、寒さに対抗するために、その体内に糖分を溜め込むためなのです。

 いっぽう、動物にも寒い冬を凍らずに越して、翌年また活動を再開するものがたくさんいます。人間と同じような哺乳類などは、自分で体温を調整する事ができます。しかし、魚や昆虫などの変温動物は自分では体温調節ができません。このような動物の体温は、周囲の環境の気温とほぼ同じになっていますので、冬になると氷点下まで下がります。それでも、多くの動物は凍ることなく、寒い冬を生き延びることができます。このような動物は、植物よりももっと複雑なしくみで体が凍ることを防いでいることが知られています。そのひとつは、動物の体内には不凍タンパク質と呼ばれる特別なタンパク質が含まれているからなのです。このタンパク質は、動物の体内での氷の生成を制御して、体が凍ることを防ぐという機能を持っているのです。おなじ動物でも、夏の間はこのタンパク質が含まれていないので、急に氷点下の温度にすると、体は凍ってしまうことが知られています。冬が近づくと、体内でこのタンパク質を生成して、寒さに備えた体に体質改善しているのですね。

 このように、氷点下の環境に住む生き物たちは、自分の体をいかにして凍らせないかという複雑なしくみを持っているのです。逆に、そのようなしくみを獲得した生き物だけが、冬の寒さの中でも生き残ることができたとも言えるでしょう。ここにも、生物の命のしくみが隠されているのですね。

(回答掲載日:2020年12月14日)

その他の現象 #植物#氷点降下#自然現象
Q8

絶対零度と氷について

氷だったものが、マイナス273度になると、なぜ気体になるのですか?氷のままの物質もありますか?( 標識君 / 東京都・7歳 )

 はじめに、マイナス273度という温度は、どんな温度かを説明しましょう。この温度は、これ以上はもう下がらないギリギリの温度で、絶対零度とも呼ばれています。

 マイナス273度を説明するまえに、温度というのはどういうものかを考えてみましょう。

 氷は、水の分子が順番にきれいにならんでできた固体ですね。結晶ということばを聞いたことがあると思いますが、このような分子がきれいにならんだ固体のことを呼びます。しかし、水分子は結晶の中にあっても完全に止まっているのではなくて、かならずブルブルと振動をしています。この氷の中の水分子のようすを動画でしめしたものが、産業技術総合研究所の灘浩樹先生のホームページにありますので、参考にして下さい ⇒ コチラをクリック

 このブルブル振動の大きさが、じつは温度にあたります。温度が高いほど、水分子はより大きくブルブルしているのですね。では、温度が下がるとどうなるでしょう。この水分子のブルブル振動は、だんだんおさまってきて、ある温度になると完全に止まってしまうはずですね。この分子のブルブルが止まってしまう温度が、マイナス273度なのです。いったん分子のブルブルが止まると、それ以上温度は下がりませんので、マイナス273度より低い温度はないということになります。

 さて、ご質問の「マイナス273度になると気体になるのですか」ということについては、実はどんな物質でもマイナス273度では気体ではなくて固体になっています。そして、その中の分子のブルブルも完全に止まった状態になっています。氷は、温度が高いと水蒸気になっていますね。しかし、水蒸気は温度が下がると水に変わります。コップに冷たい水を入れると外側がくもるのは、水蒸気が水滴となってコップにつくからです。この水滴は、もっと温度が下がると氷に変わります。この氷の温度をさらにどんどん下げていくと、やがてマイナス273度まで冷やせるはずですが、その時にもういちど気体にもどることはありません。ずっと、氷のままで冷えていくだけです。氷以外のどんな物質でも、温度が下がると、水と同じように気体が液体に、そして結晶へと変わっていきます。したがって、マイナス273度では、どんな物質であっても気体に変わることはなく、結晶のままでいると考えられています。

 マイナス273度という温度は、とても不思議ですね。この温度では、今回のご質問のほかにも、とても面白いことがたくさん起きることが知られています。ぜひこれからも興味をもって、いろいろと調べてみてください。

(*漢字のふりがなつき回答はこちら)

(回答掲載日:2020年10月22日)

その他の現象 #氷の不思議#温度
Q6

器に入れた土では霜柱が作れない理由

冬になると,庭の湿った土や苔が生えている場所や裏庭に霜柱ができます。自分で霜柱を作りたくて発泡スチロールの器に湿らせた土を入れ、庭の霜柱が良くできる場所に置いてみましたが、土ごと凍結するだけで霜柱はできませんでした。また,小さな冷凍庫を用意して、その中でも実験をしてみたのですが,冬に外に置いていたのと同じで土ごと凍るだけでした。器をプチプチで包むといいと聞いたのでやってみましたが、やっぱり土がカチカチになるだけで霜柱は見当たりません。どうやったら、家の冷凍庫でニョキニョキ生える霜柱ができますか?冷凍庫は-8度から-10度くらい。土は花壇の土を使っています。(氷博士になりたいにゃーこさん / 栃木県・11歳)

 とても面白い実験にチャレンジしていますね。感心しました。

 さて、土を冷やすだけでは残念ながら霜柱を作ることはできません。その理由を説明する前に、庭の霜柱はどのような条件でできているかをもう一度考えてみましょう。

 霜柱は、冬の晴れた夜に地表付近の大気が冷やされて、気温が氷点下に下がった時に良くできます。しかし、気温が氷点下になった時でも、霜柱のできた土の温度はまだプラスですので、土そのものは凍っていません。すなわち、まだ凍っていない土が、気温が下がることで表面から冷やされた時に霜柱がよくできるということになります。さらに、地表面にできた霜柱は、地面に直立するように細長く伸びていますが、その先端で成長するのではなく地面と接した根もとで成長しているのです。まだ凍っていない湿った土に接している霜柱の根もとでは、土の中の水分を吸い寄せながら氷が成長すると言う性質を持っています。このため、根もとから氷の塊をまっすぐに持ち上げるようにして、霜柱ができるのです。

 地面の土の中まで凍ってしまうほど寒い時には、土の表面にはもはや霜柱はできなくなってしまいます。土自体が凍ってしまったものは、凍土と呼ばれています。北海道などのように気温が低い地方では、霜柱より凍土になってしまう場合が多くなります。

 では、実験の話に戻りましょう。容器に詰めた湿った土を冷凍庫に入れると、土全体が急に冷やされますので、すぐに全体が凍ってしまいます。この時には、上で説明したような湿った土の表面だけが冷やされるという霜柱ができるための条件が実現できません。プチプチで包むと確かに冷える速さは遅くなりますが、土全体が冷えて凍ってしまうということには変わりがありませんので、やはり霜柱はなかなかできません。冷凍庫の中で霜柱を作ろうとすると、湿った土を凍らせないように何らかの方法でプラスの温度に保ちながら、土の表面だけが冷凍庫の冷気にさらされるような工夫をすることが大事です。すなわち、湿った土の温度と冷気の温度が、十分大きく異なるようにすることが鍵です。

 研究室などで行われている実験でも同様な工夫がなされて、初めて霜柱を作ることができます。実験としては大変難しいのですが、是非チャレンジしてみてください。

(回答掲載日:2020年8月24日)

生活・文化その他の現象 #実験#研究#自然現象#自由研究#霜柱
Q4

透明な氷のつくりかた

一度、沸騰させた水で氷を作ると透明度が高くなるのはなぜですか?他に、透明な氷をつくる良い方法はありますか?(かほくのアマビエさん / 石川県・38歳)

 通常、水には空気が大量に溶け込んでいますので、それを凍らせると空気は気泡として氷の中に取り込まれてしまいます。このため、氷は白く濁って透明度が低くなってしまうのです。

 水を冷やす前にいちど沸騰させると、水に溶けた空気は追い出されてしまいます。このため、気泡として取り込まれる空気の量が少ないので透明度が高くなるのです。透明な氷を作る工夫はこの他にもいろいろありますが、どの方法も氷に取り込まれる気泡の数を減らす工夫です。

 まず、水をゆっくり冷やすと、氷ができる速度も遅くなります。このため凍る時に気泡が発生してもすぐに逃げてしまい、氷には取りこまれないようになります。家庭の冷凍庫で氷を作るときは、沸騰させた水を使うことはもちろんですが、製氷皿の下に熱を伝えにくいものを敷く、あるいはタオルで製氷皿を包むなどをすると、氷がゆっくり出来ますので気泡の少ない透明な氷になります。しかし、氷を作るのにかかる時間は大幅に延びてしまいます。

 また、凍る時に発生した気泡が逃げやすくするためには、水の容器全体を均等に冷やすのではなく、ある一定の方向に凍らせることも有効です。氷屋さんで売っている氷は、全く気泡がなく非常に透明です。これは、工場でできるだけ時間をかけて、一定方向からゆっくり凍らせることで、気泡を入りにくくしているのです。

 また、水をかき混ぜるなどの方法で、発生した気泡を素早く取り除いてしまうなどの工夫もされています。

(回答掲載日:2020年8月17日)

その他の現象 #単結晶#実験#氷のつくりかた#氷の不思議
Q1

雪に色はある?

雪の色は当たり前に白いと思っていますが本当に白いのでしょうか。雪に色がないのはなぜですか?(yo-yoさん/東京都・45歳)

 雪と言えば白いものの代表格ですが、雪を作っているものは小さな氷の粒ですので、それ自体は無色透明です。氷の粒がたくさん集まると白く見えるのですが、その理由は簡単ではありません。

 光が氷の小さな粒に当たると、いろいろな方向に反射します。反射した光は、またすぐそばにある氷の粒に当たり、さらにいろいろな方向に反射します。このような過程を繰り返すと、雪全体では光を様々な方向に乱反射することになります。

 一方、光は波の性質を持っていますので、太陽からの光はいろいろな波長の光の集合体です。いろいろな波長の光が均等に混じり合っていると、私たちの目には白く見えます。したがって、小さな氷の粒の集合である雪は、太陽からくる様々な波長の光を乱反射させるので、白く見えるのです。

 私たちの身の回りには、雪以外にも白く見えるものはたくさんあります。例えば、空に浮かぶ雲は、無数の小さな雲粒が集合してできています。この雲粒は、水滴ですので無色透明ですが、これらに太陽光が当たると雪と同じように乱反射するので白く見えます。

 雪の科学館の中庭の「グリーンランド氷河の原」では、人工の霧を見ることができます。霧が白く見えるのも、雲の白と同じしくみなのです。

(回答掲載日:2020年7月31日)

生活・文化その他の現象 #光#雪の不思議#雪の色

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