教えて館長!雪と氷のQ&A

皆さまから寄せられた雪や氷の質問・疑問に、古川館長がお答えしました!

古川義純先生

古川 義純(ふるかわ よしのり)先生

中谷宇吉郎雪の科学館 館長 / 北海道大学 名誉教授


日本結晶成長学会の会長や、北海道大学の低温科学研究所の所長などを歴任し、国際宇宙ステーション「きぼう」で氷の成長の宇宙実験を行ったことでも知られています。


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Q78

フワフワのかき氷

この前見学に行って、カルピス水でかき氷を作るとフワフワになると教えてもらいました。家でやってみたら、フワフワになりました。なんで、カルピス水だと、フワフワになるのですか?(りのさん / 長野 県・8歳)

 夏の暑い日に食べるかき氷は、とても美味しいですね。カルピス氷でかき氷を作ると確かにフワフワになります。実際は、必ずしもカルピス氷ではなくても、さとう水を凍らせて作る氷でもフワフワになります。

 カルピスを溶かした水は、とても甘いので、糖分がたくさん含まれています。さらに、カルピスは牛乳から作るので乳成分も含まれています。このため、カルピスを溶かした水を冷やして凍らせると、水道水をただ凍らせた普通の氷に比べて、とても柔らかい氷ができます。これは、水中の糖分や乳成分は、水が凍るときに吐き出されて、氷の粒と粒の間に取り残されてしまうからです。このような柔らかい氷では、カンナで木を削るとできるうすいカンナくずと同じように削れます。このため、フワフワのかき氷になるのですね。

 では、糖分などを含まない水を凍らせて作った固い氷では、絶対にフワフワのかき氷にはならないのでしょうか。このような固い氷でも、ものすごくよく切れるカンナなどで、非常にうすく削ると、やはりけっこうフワフワした氷くずになります。しかし、うすく削るのはなかなかむずかしく、かき氷にできるほどたくさんの氷を削るのは簡単ではありません。

(回答掲載日:2023年8月29日)

#かき氷#氷の不思議
Q77

雪の結晶が一種類しかなかったら…

私は、雪はとても軽くて優しいものだと感じていますが、もしも雪の結晶が一種類しかない場合に、自然現象にどう影響するでしょうか?結晶が大きくなりすぎて、地上で生きる私たちにとって不都合なほど危険なものになったりはしませんか?(中村一之さん / 埼玉県・59歳)

 雪の結晶の形がたとえ1種類しかなくても、それが自然現象に大きな影響を与えるとは考えられません。雪の結晶は、上空の雲の中で誕生した極めて小さな氷の粒が周囲の水蒸気を集めて、時間とともに大きくなる(成長する)ことで生成されます。地上で観察される結晶の大きさは、その結晶がどれくらいの時間かかって生成されたかによって決まります。、氷の粒が誕生してから雪の結晶として地上に達するまでにかかる時間は、普通30分から1時間程度と言われています。この時間で成長できる雪の結晶の大きさは、当然限界があります。例えば、成長速度の速い樹枝状結晶であっても直径10mm程度にまでしか成長することができません。他の結晶形の場合は、もっと小さなサイズの結晶にしかなれません。したがって、ご心配のような私達に不都合なほど大きな結晶に成長する心配はありません。

(いわゆるぼたん雪と言われるものはもっと大きいものが降ってくることは珍しくありません。しかし、これは多数の雪の結晶が落下中に絡み合ってできたもので、その中の個々の雪の結晶は大きくても10mm程度です)

(回答掲載日:2023年7月27日)

#雪の結晶#雪#雪の不思議
Q76

雪や雲について

雲(特に積乱雲)が発生する仕組みや雪が発生する仕組みを利用した、科学技術はなにかありますでしょうか。例えば、雲が発生する仕組みを利用して砂漠で水を生み出せるとか…(しししさん / 千葉県・19歳)

 ご質問のご質問の意図は、気象現象のメカニズムを解明することで、気象を制御するための技術として活用できるかどうかということであると思います。この視点でいうと、これは極めて困難であると思います。たとえ雲の発生機構が解明されても、気象を人工的に改変することはできません。質問で指摘されているような砂漠地帯では、そもそも大気中での水分の存在量が少ないので、そこに新たに水分を生み出すことはできません。さらに、気象現象は、ある狭い領域で単独で起きるように見えても、実際は地球全体の大気の運動と連動して起きるものです。すなわち、どこかの砂漠地帯に大量に雨を降らせたとしたら、その反動で他の地域では本来降るべきであった雨が降らないということが起きてしまうでしょう。したがって、仮に地球の大気中で起きる様々な気象現象を改変する技術が生まれても、それを安易に使うことはできません。

 (回答掲載日:2023年7月27日)

その他の現象 #雪#雲#雪の不思議
Q75

雪がとけるときの性状の変化について

雪のとけ方を調べています。 家の周りで30cm積もった雪がとけていく様子を、数日間観察していると、新雪→しまり雪→ざらめ雪の順に性状が変化していくことがわかりました。また、豪雪地域で1mほどの積雪を掘ると、雪の層があり、上層から新雪→しまり雪→ざらめ雪の順に下の層ほど粒が大きくなっていると調べてわかりました。つまり、私が観察した性状変化と「層」の性状の順番は一致しているようでした。 雪に層ができる理由として、次の2つを考えましたが、わかっていることがあれば教えてください。 ①地面に近い雪ほど先に降ったため、地面の熱(0℃)の影響を受ける時間が長くなり、とけている。 ②下の層ほど、雪の重量の圧力が強くかかるため、氷(固体)の水分子間の水素結合の切断が起こり液体化している。(はるのはなさん /島根県・14歳)

 積もった雪が、その内部構造の変化を伴いながら融けていくということ、とても面白いことに気づきましたね。

 積雪は、積もった直後はふわふわの新雪の状態ですが、時間が経過するとその内部はどんどん変化していきます。これは、積もった雪粒が、融けたり凍ったり、さらには昇華(雪粒が直接水蒸気に変わる)したり成長したり(*注)して、降り落ちた最初の状態からどんどん変化してしまうからです。その変化のしかたは、雪が降ったり止んだりという積もる過程、積もってからの気温の変化、雪の深さごとの温度の変化など、さまざまな要因で影響されます。その結果として、積雪の中に異なる性質(雪質)をもつ雪が生成され、層状の構造を作るのです。

 このような変化を引き起こす元になっている原因の一つである、積雪内部の温度分布を考えてみましょう。気温の低い(氷点下の)地方では、積雪の表面の温度は0℃以下になっています。一方、地面と接する底の部分は、地熱のために雪が融け出していて、雪の融ける温度である0℃になっています。すなわち、積雪の内部では、表面から底に向かってだんだん温度が高くなっている(温度分布がある)ことになります。このような温度分布があると、積雪の中の雪粒は、その形や大きさが急激に変化します。一方、気温が比較的高い(氷点下ではない)地方では、積雪の中にこのような温度分布は生じません。積雪全体の温度が0℃となっていて、積雪全体が徐々に融け出していると考えられます。

 このことを基本として、ご質問に回答しましょう。

 まず①の質問は、気温の低い地方での積雪では、当てはまると思います。ただし、地面の温度が0℃という言い方は必ずしも正確ではありません。地面から熱が流れてくるために、地面と接している積雪の底では雪が融け出しています。このために、積雪の底では温度が0℃(雪の融ける温度)になっているのです。

 ②の質問については、氷に圧力が加わると融点が低くなる(すなわち、氷が融ける)ということはよく知られています。しかし、圧力の大きさに対する融点の低下は、ごくわずかです。例えば、南極大陸は2000mを超える厚さの氷(氷床)で覆われています。その氷床の底でも、氷の融点低下は、せいぜい1.5℃程度です。積雪についても、積雪の重さにより底での圧力が高くなり、融点が低下するのはそのとおりです。しかし、私達がふだん目にする積雪では、どんなに大雪でもせいぜい数mの高さですので、圧力による融点の低下はごくわずかです。したがって、この効果は考える必要はありません。

(*注)これは、少し難しいので詳しくは説明していませんが、積雪の中にある雪の粒は、周囲より温度の高い部分が昇華して水蒸気となり、その水蒸気が周囲より温度の低い部分に凝華するということを繰り返して、どんどん形や大きさが変化していきます。この現象は、積雪の中に温度分布があると顕著に起こります。

(回答掲載日:2023年6月8日)

#雪融け#雪の不思議
Q74

こおりのしつもん

こおりはどうしてかたまるの?(たちかわももさん /東京都・5歳)

 コップに入れた水を、冷凍庫の中に入れておくと、だんだん冷やされて、やがて固い氷になってしまいますね。冷やすだけなのに、水が固まってしまうのはとても不思議ですね。

 私達の身の回りには、水だけではなく“液体”のものがたくさんありますね。たとえば、台所には、牛乳や油、酢など、いろいろな液体があります。このような液体は、どれも冷やされると固くなってしまう性質を持っています。液体が固くなる温度は、その種類によって違います。水は、ちょうど0度で固い氷に変わります。

 ももさんのお家の台所にあるいろいろな液体を少しだけコップに入れて、冷凍庫で冷やしてみてください。水と同じように冷やされると固くなるはずです。もし、温度計があったら温度を測ってみると、どの温度で固くなるかが分かります。お父さん、お母さんといっしょに実験してみてください。 

 水が冷やされると固い氷に変わることは、この「雪と氷のQ&A」コーナーのQ23の回答にも説明があります。参考にして下さい。

 

(*漢字のふりがなつき回答はこちら)

(回答掲載日:2023年5月15日)

 

#水の不思議#氷の不思議
Q73

衝撃による氷の形成

過冷却水の入った容器に衝撃を与えたら凍るのはなぜですか。(ずみほさん /大阪府・25歳)

 容器に水を入れて冷やすと、必ずしも0℃で氷に変わるわけではなく、それ以下の温度でも液体のままで存在します。この過冷却の状態にある水は、水中のどこかに目には見えないほどの小さな氷の粒(氷の核)が発生すると、それをきっかけとして水全体が凍結を開始します。過冷却の度合い(過冷却度)が大きいほど、この氷の核のサイズが小さくなるという性質がありますので、過冷却度が大きくなるほどその状態を保つのは難しくなります。

 すなわち、過冷却水が凍ってしまうかどうかは、凍結のきっかけになる氷の核の出来やすさによって決まることになります。例えば、過冷却度は同じであっても、水中に小さなゴミなどがあると、それが氷の核の生成を助けます。また、過冷却水を入れている容器の表面に傷などがあると、やはり氷の核の生成を手助けします。すなわち、過冷却水を作りやすくするためには、ゴミを含まないきれいな水を使うことや傷などのない容器を選ぶことが鍵ということになります。

 では、このことを踏まえて、ご質問にある過冷却水の入った容器に衝撃を与えるとどうなるかを考えてみましょう。一般に、過冷却水の入った容器に衝撃を与えても、それ自体が氷の核の生成に何らかの影響を与えるかどうかは、実は良くわかっていません。容器に水を入れる時に、容器の上部には必ず隙間ができます。このため、容器を振ったり叩いたりすると、中の水は大きく揺すられて流動します。このような水の動きは、氷の核の生成を促進すると予想されます。すなわち、必ずしも“衝撃”自体が凍り始めるきっかけになるとは言い切れません。例えば、容器に完全に水を詰め込んで隙間がないほど密封すると、外部から容器に衝撃を与えても、そう簡単には凍り始めることはありません。すなわち、隙間がないので衝撃が与えられても水が流動しにくいからです。実際、私達は、ロケットの弾道飛行を利用して、無重力状態での氷結晶の成長実験を行ったことがあります。このときは、容器に密封した水を冷却して過冷却状態を作ってから打ち上げるのですが、ロケット打ち上げの激しい振動でもそれが原因で水が凍結することはありませんでした。このことからも、必ずしも衝撃そのものが、過冷却水を凍らせる原因とはならないと推測できます。

(密閉した容器に水を入れた場合、衝撃による流動は起こりにくいですが、衝撃による密度波が氷の核の生成に影響を与える可能性はあります)

(回答掲載日:2023年5月15日)

#過冷却水#水の不思議
Q72

雪が解けた後の砂のようなもの

1月に雪がたくさん積もって、すごくきれいで嬉しかったです。でも、雪かきでたくさん集めた雪が1週間くらい残って、全部解けた後に砂のようなものがたくさんあってタイル張りの地面が汚くなってしまいました。もともと雪の中に入っていたのでしょうか。(はるのゆきさん /島根県・11歳)

  あんなに白くてきれいな雪が融けたあとというのは、確かに黒いものがいっぱい残っていて、きれいとは言えないですね。これは、積もった雪の中に何かが含まれていたということになります。その何かは、空から降ってきた雪そのものにすでに含まれていたものと、雪が積もってから紛れ込んだものの両方がありそうです。

 まず、空から降ってくる雪は、周囲の空気中に含まれているちりやほこりを表面にくっつけて降ってきます。雪が降ったあと、空気がきれいになった感じがすると思いますが、このためですね。雪がたくさん積もると、このちりやほこりの量も多くなるので、雪が融けたあとに黒っぽいものが残るということになります。

 さらに、雪が積もったあとも、積雪の表面には、大気中から砂粒や土ぼこりなどいろいろなものが降り落ちてきます。積雪内部では、バクテリアなどが繁殖することもあります。このような理由で、積もった雪は、時間とともにどんどん汚くなっていきます。このため、雪が融けきったときには、汚い黒いものが残ってしまうのです。

 もちろん、車が通る道路の脇とか、人が歩く歩道などでは、さらに真っ黒に汚れた雪をよく見かけますね。これは、車の走行や人間の活動にともなって、雪の中に泥や砂などが入り込むために起きます。このようなひどい汚れは、人間の活動の結果として起きるのだと言えそうですね。

(回答掲載日:2023年3月10日)

#雪の不思議
Q71

足跡や木の周りなどの雪が早く溶けるのはなぜ?

先月大雪で30cmくらいの積雪がありました。朝ついた足跡が、夕方に見ると足跡の部分だけはやく雪がとけていました。また、木や草が1本飛び出している場所なども、その周辺から早く雪が解けています。足跡で雪が圧縮されていても、周りと雪の量は同じだし、気温も同じなのに、そこだけ早く溶ける理由が知りたいです。(はるのはなさん /島根県・14歳)

  同じように積もった雪でも、融けるときには、融け方やそれにかかる時間が、場所によって異なりますね。雪が融けるには、さまざまなことが関係していますので、その理由を一つだけ述べることは、なかなか困難です。ご質問についても、いくつもの理由が考えられますが、以下の回答は一つの可能な答えとお考え下さい。

 まず、基本的なことから始めましょう。雪は小さな氷の粒が集まってできています。しかし、ある分量の雪が融けるために必要な熱の量は、同じ重さの氷の固まりが融けるときに必要な熱の量と同じはずですね。しかし、同じ場所に置いた雪と氷では、雪のほうが明らかに早く融けてしまいます。すなわち、雪や氷が融けるためには、必要な熱の量の違いだけではなく、それらに熱がどのようにして伝わるか、の違いが大事になります。

 このことを頭において、ご質問の答えを考えてみましょう。朝に降った雪を踏んで足跡をつけると、雪が圧縮されて固くなります。この固くなるということだけでは、逆に融けにくくなりそうですが、鳥取県のように比較的気温が高いと、踏み固められた雪は積もった雪の下にある水分を吸い上げて、黒っぽく見えるのではないかと思います。こうなると、雪は、少し暖かい水を含むことになりますので、周囲よりも早く融けても不思議ではなさそうですね。さらに、踏み固められた雪に水分が染み込むと、黒っぽくなりますので、そこに太陽の光が当たると熱を吸収しやすくなります。このことも、より早く融けるという理由の一つとも考えられます。このように、雪が融けるときに必要な熱が、どこからどのように来るのかを考えると、融ける早さの違いを自分で説明できると思います。

 最後に、木や草が1本飛び出している場所などでも、周囲の雪は早く融けるようだということ、確かにそうですね。これは、木や草は、地面から暖かい水を吸い上げているので、その幹の温度が周囲より高くなっているからと考えられます。すなわち、踏み固めた雪と同じで、吸い上げた水が暖かいということがその理由ですね。さらには、太陽からの熱は、木や草の黒っぽいものには吸収されやすく、それによっても幹の温度が上昇します。これも、幹の周囲の雪が早く融け出す理由になりそうですね。私は、雪の融け方を調べたことはありませんが、このような現象は「根開き」と呼んで、春先の雪融け時には顕著に見られるとのことです。

(回答掲載日:2023年3月10日)

#雪融け#雪の不思議
Q70

氷の中に雪の結晶はできますか

こどもたちが氷の中に雪の結晶のようなものを見つけたのですが、氷の中に結晶ができることってあるのですか?(ゆりぐみさん / 静岡県・4歳)

ゆりぐみのみなさんへ

 とてもおもしろいものを、みつけましたね!すきとおったこおりなかにできているので、ちょっとみえにくいですね。でも、ちゅういして、かんさつしてくれたので、みつけられたのだとおもいます。かんしんしました。

 みなさんがみつけた、ゆきのけっしょうのようなものは、こおりのなかで、こおりがとけてできたものです。なまえは、「チンダルぞう」と、いいます。こおりに、たいようのひかりがあたると、あたためられて、こおりがとけます。こおりはすきとおっているので、なかでとけだすようすも、みえるのですね。そのとき、ゆきのけっしょうとおなじように、ふしぎと、ろっかくのかたちができるのです。これは、こおりのなかにできるので、「こおりのなかにあな」ができたということになりますね。このあなのなかには、こおりがとけてできたみずが、たまっています。

 こおりがとけてできたあなが、そらからふってくるゆきのけっしょうとおなじように、ろっかくのかたちをしているのは、とてもふしぎですね。これは、ふわふわのゆきのけっしょうと、かたいかたまりのこおりが、じっさいはおなじもの、で、できているからなのです。

 みなさんのまわりにあるしぜんのなかには、おもしろいことがたくさんかくれています。これからも、ちゅういして、おもしろいことをさがしてみてくださいね。きっと、まだまだ たくさんみつかるとおもいます。みつけたら、またおしえてください。

 

先生がたへ

 子どもたちが、とても面白いことをみつけましたね。氷に太陽の光が当たると、表面から融け出すだけではなく、氷の内部にまで射し込んだ光のために、内部でも融け出すことがあります。すなわち、氷の中にできた穴ということになりますが、内部は液体の水で満たされています。これは、一般にチンダル像とよばれるものです。(チンダルとは、19世紀に活躍したイギリスの有名の物理学者の名前で、この現象の発見者です)雪の結晶も氷ですので、チンダル像も同じように六角の形を作って融けていきます。この六角というのは、氷の持っている結晶としての性質を反映しています。また、雪の結晶は、その外形の内側が氷(固体)ですが、このチンダル像では、内部が水で外部が氷(固体)です。すなわち、両者は、正と負の関係になっています。このためチンダル像のことを、「負の結晶」と呼ぶこともあります。また、このチンダル像の中には、必ず丸い円盤のようなものがあります。これは気泡ですが、中身は水蒸気だけで満たされたています。このため、蒸気泡と呼んだりします。氷は融けて水になると、体積が減少します。(氷が水に浮かぶのも同じ理由ですね)この体積が減った分が空隙として残りますので、このような気泡ができるのです。

 この現象は、氷に光があたって融けていく過程では、しばしば起きます。しかしながら、氷の中の水の詰まった穴ですので、氷と水の区別がつきにくく、とても見えにくいですね。このため、実際にこの現象に気づく人は意外と少なくて、見過ごされがちです。子どもたちが、そんな現象を見つけたということに、とても驚かされました。これは、先生がたが子どもたちの自然への興味をうまく引き出していらっしゃるからであろうと想像し、大変感銘を受けました。

 最後に、チンダル像を実際に作ることができるかですが、今回質問にいただいたタライに入れた水を凍らせて氷を作るというのは、実はとても良い方法です。水面に張った氷を取り出し、それに強い光(太陽光や電球の光など、手をかざすと暖かい光が最適。最新のLEDライトの光は、適当ではありません)を当てて氷を融かすと、チンダル像が現れて、だんだん大きくなる様子が見えるはずです。見えにくい時は、以下のような工夫をすると見やすくなるかも知れません。氷を底が平らで透明なガラス皿に入れて、皿の下に少し隙間を開けて白紙をおきます。この氷に光を当てて融かすと、氷の中にできたチンダル像が影絵となって白紙に映るので、見えやすくなります。試してみて下さい。また、中谷宇吉郎雪の科学館では、来館者への体験実験のなかでこのチンダル像を紹介しています。機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。

(回答掲載日:2023年2月23日)

(画像提供:ゆりぐみ様)
#チンダル像#光#実験#氷の不思議
Q69

雪は白〜い🌨️

雪は白く見えていますが、触ってみると、透明です。海もそうです。なぜですか?(とっちゃん❣️ さん / 東京都・9歳)

 積もった雪は、空から降ってきた雪の粒が集まってできていますね。しかし、冷たい飲み物に入っている氷のかたまりを見ると、色はなくて透明ですね。雪も氷も同じものでできているのにとても不思議です。

 では、夏の暑い日に食べるかき氷は、どのように作るか考えてみましょう。かき氷は、氷のかたまりをけずって作ります。最初の氷の、かたまりのときには、色はなくて透明ですが、削ってかき氷にすると、とたんにまっ白になります。氷を削ったからといって、氷に白く色がつくわけではありません。

 積もった雪やかき氷が白いのは、小さな氷の粒がたくさん集まっているからなのです。氷は、光が当たるとキラキラ光ることでもわかるように、光を反射します。かたまりの氷のときは、この光の反射が弱く、氷の中を通過しますので、氷は透明に見えます。しかし、氷のつぶがたくさん集まっていると、それぞれのつぶが光をいろいろな方向に反射します。こうすると、全体として白く見えるようになるのです。難しいことばですが、これを「乱反射(らんはんしゃ)」といいます。

 このような乱反射のために、ものが白く見えるという現象は、雪だけではなくいろいろなところで起こります。たとえば、雲が白く見えるのもそうです。雲は空中に浮かんだ無数の小さな水のつぶでできています。この、水のつぶひとつひとつは、やはり白くなく透明ですが、雲のように、これがたくさん集まると、光が乱反射されて、全体として白く見えるのです。

 質問にある海については、どのようなときに見えることなのか分かりませんが、例えば波のてっぺんが白く見えることがありますね。そこに白いものが浮かんでいるのではなく、海水がかき回されて、水面が乱れてでこぼこになっていたり、泡がたくさんできていたりして、それらで光が乱反射されるためと考えられます。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#乱反射#光#雪の不思議
Q68

雪はなんでやわらかいの?

雪はなんでやわらかいの?( かみはま ちはやさん / 石川県・6歳)

 つもった雪はふわふわで、やわらかいですね。この雪は、空からふってきた雪のつぶがつもってできます。このため、雪は小さな氷のつぶがたくさんあつまったものです。この小さな氷のつぶは、おうちのれいとうこの中にある氷と同じで、とてもかたいですね。しかし、ひとつひとつのつぶがかたくても、雪のようにそれがふんわりつもっていると、とてもやわらかになるのです。

こうえんのすなばで、すなあそびをするときも、おなじようなことがおきています。すなのつぶは、とても小さいですが、石ころとおなじようにひとつひとつはとてもかたいですね。でも、それがたくさんあつまると、さらさらのやわらかいすなになります。ゆきがやわらかいのと、おなじですね。こんどすなばであそぶときには、雪とにているところや、雪とはちがっているところはどんなことか、かんがえてみてください。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#雪の不思議
Q67

雪の結晶が成長する方向について

Q31やQ32で、気温と大気中の水蒸気の量によって雪の結晶の育ち方が違うことを知りました。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。氷晶に水蒸気が昇華してくっつく場所によって、くっつきやすいけど水蒸気に戻りやすいため、大気が湿っているときに成長しやすい部分。くっつきにくいけど水蒸気に戻りにくいため、大気が乾燥しているときに成長しやすい部分。などの違いがあるのでしょうか。( よつばさん / 東京都・25歳)

 雪の結晶の形が気温と水蒸気の量で変化するというのは実験事実ですが、なぜ結晶の形が変化するのかという理由に答えることは簡単ではありません。長年にわたって多くの研究がなされてきましたし、今も最先端の方法を使って研究が行われています。雪の結晶に限らず、そもそも結晶というのは、最初に極めて小さな結晶の粒が生まれて、それが時間とともに成長して大きくなり、その結果として形が決まります。したがって、結晶の形が決まるしくみを明らかにするには、結晶の粒からある形を持つ結晶までの成長の過程を解明する事が必要になるからです。このような研究を専門に行っているのが、結晶成長学という学問領域になります。

 さて、雪の結晶に戻りましょう。雪の結晶の最初の粒は、目に見えないほど小さな六角柱の氷であると考えられます。この氷が成長するにしたがって、さまざまな形の雪の結晶を生成していくのです。例えば、この六角柱の氷が横方向に成長するのか縦方向に成長するのかを考えるだけでも、結果的に結晶の形は大きく変わりますね。前者は、平たい六角の板状の結晶形になるし、後者は細長い柱状の結晶になります。この変化は、結晶の周囲にある水蒸気が、雪の結晶に流れ込んでくるときに、その水蒸気が結晶のどの部分に取り込まれ易いかに関係しています。すなわち、六角柱の六角の面に取り込まれやすいのか、横の四角の面に取り込まれやすいのかで、板状になったり柱状になったりするはずです。

では、この水蒸気の取り込まれやすさ、の違いはなぜ起きるのかですが、結晶の表面での水分子の並び方に関係すると考えられます。しかし、氷の結晶の表面での水分子の動きを直接観察する、実は最新の観察技術をもってしても簡単ではありません。このため、まだまだよくわからないことが残っています。しかし、北海道大学の低温科学研究所では、世界に先がけて氷の結晶の表面を分子のレベルで精密に観察することが可能になっています。(Q14Q33の回答も参考にしてください)この謎が解明されるのもそう遠いことではないと思います。

 最後に、雪の結晶は、六角板や六角柱だけではなく、樹枝状結晶や針状結晶と呼ばれるような複雑な形のものが多いですね。これは、雪の結晶に水蒸気が流れ込むときに、結晶の尖った部分(結晶の角や縁)には水蒸気が集まりやすいという性質があるためです。このため、尖った部分には、水蒸気がたくさん取り込まれるために、この部分はだんだん尖ってきて、前方に突き出すことになります。一度前方に突き出すと、さらに水蒸気が集まってきやすくなり、さらに先端が尖るということになります。この過程が繰り返されると、結晶の形はだんだん複雑になってきて、最終的に樹枝状や針状の結晶となるのです。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#雪の結晶#研究#雪の不思議
Q66

氷について

ペンダントは他にも何でできますか?(いちごぱふぇさん / 石川県・12歳)

  雪の科学館では、来場した皆さんに氷のペンダントを作ってプレゼントするという実演を行っています。このようなペンダントは、もちろん氷以外のものでも作れないことはないですが、氷のペンダントのように簡単には作ることができません。氷は、0℃で融けますので、簡単に融かすことができますので、ペンダントもすぐに作れます。しかし、他の物質を使うと融かすための温度はもっと高かったり、あるいは低かったりします。そうすると、私たちの手には熱すぎたり冷たすぎたりして、さわるのもそう簡単ではないですね。氷は、私たちが素手で触っても平気な温度である0℃で融けたり凍ったりできることが、ペンダントを作りやすくしているのです。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#氷のペンダント#実験#氷の不思議
Q65

雪の結晶の形について

雪の結晶は、どうしていろんな形があるんですか。( けろChanさん / 石川県・12歳)

 雪の結晶の形は、結晶ができるときに周囲にある空気の温度と湿度(水蒸気の量)で決まります。また、雪の結晶は、上空の雲の中でできることも習ったと思います。この雲の中の空気は、その場所や高さによって、温度や湿度が大きく変化します。ということは、雪の結晶の形は、その結晶ができたところの温度と湿度で決まっていると言えますね。私たちが地上で観察する雪の結晶は、上空の雲のいろいろなところでできた結晶が混じり合って降ってきたものです。このため、雪の結晶にはいろいろな形があるということになります。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#雪の結晶#雪の不思議
Q64

過冷却の水について

過冷却の水は家でも作れますか? どうしてふると氷になるのですか?作れるなら作り方も教えて下さい!(ラスカルだよーさん / yuuka_025さん / ななTsuさん / 石川県・11-12歳)

 コップに入れた水をゆっくり冷やしていくと、0℃以下になっても凍らないで液体のままでいることがあります。これを過冷却と呼びますが、とても不思議な現象ですね。この過冷却の水は、家庭でも作ることができます。たとえば、きれいに洗浄したペットボトルの中にきれいな水を入れて、冷凍庫で冷やします。このとき、熱を伝えにくいもの(プチプチのビニールや断熱シートなど)でペットボトルをくるむなどの工夫をして、できるだけゆっくりと水を冷やすことが大事です。こうして、水温が0℃以下になるまで振ったり動かしたりしないように静かに冷やしていくと、過冷却の水ができます。

 こうしてできた過冷却の水は、本当は氷になりたがっているのですが、あまりにゆっくり冷やしたため、凍るきっかけがつかめなかったと考えてください。しかし、ペットボトルを急に振ったりすると過冷却の水がかき回されて、氷ができてしまうのです。もともと、氷になりたがっていた水ですので、いったん氷ができるとペットボトルの水全体がいっせいに氷に変わり、凍ってしまうのです。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#過冷却水#実験#水の不思議
Q63

結晶について

日常だったらどうやって作れますか。( まーさん / 石川県・12歳)

  雪の科学館では、雪や氷の結晶のことを皆さんに紹介していますが、私達の身の回りを見渡してみると、雪や氷以外にもいろいろな種類の結晶があります。例えば、台所にある塩も結晶です。塩の結晶は、虫眼鏡で見てみると簡単に観察することができます。また、濃い塩水を作ってお皿に入れてそのまま何日か置いておくと、水面に小さな塩の結晶ができるのを観察することもできます。これは、水分が蒸発して塩水の濃さがまして、塩が結晶として出てくるからです。

 さらに身の回りのものでは、氷砂糖なども結晶です。おやつに食べるチョコレートも結晶でできているのですよ。粉末の薬なども、小さな結晶の粒でできているものがたくさんあります。また、お母さんの持っている宝石なども、自然の中で作られた鉱物の結晶をきれいに削ったものでできています。さらには、テレビとかスマートフォンなどの電子機器には、いろいろな半導体と呼ばれる結晶が使われています。

 このように、私たちの身の回りには、さまざまな種類の結晶がありますが、これらを作るのは簡単ではありません。冷凍庫で水を冷やすだけで作れる氷の結晶は、実はもっとも簡単に作れる結晶なのです。

(回答掲載日:2023年2月14日)

その他の現象 #結晶#雪#氷
Q62

雪の日の夜について

雪が降った日の夜、外が少し明るいです。どうして外が明るいのですか?( 雪さん / 石川県・11歳)

 たしかに、雪の降った夜は少し明るく感じますね。これは、雪はまっ白で光を反射しやすいということに関係しています。遠くにある街灯の光であっても、積もった雪の表面では反射して、私達の目に届きます。このため、雪の降った夜は少し明るく感じるのです。実際に、雪の積もった夜に月が出ていたりすると、とても明るく感じると思います。これも、月の光が直接目に入るだけではなく、積もった雪の表面でも反射されてくるので、より明るく感じるのですね。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#光の反射#雪の不思議
Q61

氷をできるだけ冷やす

氷をできるだけ冷やしたらどれだけ大きくなるのですか。氷はどれだけ冷えるのですか。(milk さん / 石川県・11歳)

 私達の住んでいる地球には、いろいろな場所に氷があります。冬になると空から降ってくる雪の結晶も氷ですし、南極などにある巨大な白い塊も氷です。同じ氷であっても、大きさがまったく違いますね。実は、氷を冷やすだけでは、氷の大きさの違いを説明することはできません。それは、氷のでき方がどうかということに関係しています。空から降ってくる雪の結晶は、雲の中に含まれる水蒸気からできます。このため、なかなか大きくなることができず、私達が地上で見る雪の粒は、大きくても1cm程度です。一方、南極などではとても気温が低いので、降り積もった雪がとけることなくいつまでも残ります。雪は、毎年降り積もりますので、やがて巨大な雪の塊になります。すると、自分の重さで雪の粒が押されて、最後には大きな氷の塊に変わってしまいます。南極では、大陸全体が平均で2500mもの、巨大な氷のかたまりで覆われていることになります。

 このように、冷やされるということよりも、そのでき方によって氷の大きさも大きく違ってくるのですね。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#実験#氷の不思議
Q60

永久凍土の中の微生物について

冷凍庫の中で微生物が活動しにくくなるという実験をしました。そこで気になったのが、氷点下の中に長いこといる微生物は死滅しているのでしょうか?それとも活動停止しているだけなのでしょうか?何万年もの間、永久凍土の中に閉じ込められている微生物たちが、温暖化により永久凍土が溶けた時に再活動するのか教えてください。( 氷博士になりたいにゃーこさん / 栃木県・13歳)

 大多数の微生物は、氷点下の環境におくと、その生命機能を停止して休眠の状態になるか、徐々に死滅していくかのいずれかになると考えられます。しかし、中には氷点下の環境でも、生き残ることができるものがいることも知られています。それらの微生物は、低温に耐える特別なしくみを持っていると予想されます。

 では、永久凍土の中はどうでしょう。永久凍土は、出来てから何万年もの間凍りついたままですので、その中に含まれていた微生物は、すでに死に絶えたものが多いと思われます。しかし、近年では永久凍土が融けたときに発生するメタンを生成する微生物(メタン生成菌)が発見されるなど、凍土の中に含まれる微生物の研究が盛んに行われるようになっています。しかし、その発見は容易ではありません。死んだ微生物からも検出できるDNAを分析し、永久凍土の中に昔どんな微生物がいたかを探るような研究も行われています。

 とは言っても、永久凍土に閉じ込められていた微生物が、温暖化により永久凍土が融けたときに、再活動を始めるものがいるかどうかは、まだ十分には解明されていません。もし、永久凍土が融けて復活を遂げる微生物がいるとすると、それらは人間にとって重大な危機をもたらす可能性も捨てきれません。これから温暖化がますます進行し、永久凍土がさらに融け出す事態になったとき、このような微生物に対する備えを整えておくこともとても重要ですね。

 最後に、このような低温の環境で生き延びることができる生物(微生物だけに限りませんが)の生命の仕組みを知ることは、地球以外の惑星や衛星にも類似の生物が存在するかどうかという興味深い問題にも関係しています。このような惑星や衛星は、地球よりも太陽から遠いので表面の温度も低く、もし生物がいるとすると、低温の環境で生き延びていることになるからです。

 また、おもしろい実験の結果を教えて下さいね。

(回答掲載日:2023年1月6日)

その他の現象 #地球温暖化#永久凍土#冷凍庫#実験
Q59

雪の足跡

家が標高1500メートルの所にあります。散歩道やベランダで見る下記の現象について教えて下さい。動物が雪の上を歩いた後、強風や雨で周囲の雪が飛ばされたり融けたりして、踏み固められた足跡の形の雪が残ります。時には雪の上に3cm以上の高さで、爪の形が凹んだ丸い物体が点々と並びます。テンが来るベランダには、雪でできた高さ数ミリの丸い足跡だけ残ります。仮に逆足跡と呼んでいるのですが、本当は何といえば良いのでしょうか。( 小笠原恵美子さん / 長野県・69歳)

 この現象は、私も初めて伺いました。このため、実際のものを見てみないと確かな説明をすることが難しいですが、以下のように考えることができます。

 このお話は、おそらく地面にほんの数センチ雪が積もったときの現象かと想像します。積もったばかりの雪は、ふわふわの状態ですが、その上を動物などが歩くと、踏み固められた足跡が出来ます。雪が踏み固められると、周囲のふわふわの雪に較べて、風で飛ばされたり、太陽の光で溶かされたりするのに、時間がかかるようになるはずです。このため、周囲のふわふわの雪が消えてしまっても、足跡の部分だけがあとに残ると考えられます。こうして、踏み固められた雪でできた小さな足跡が、最後まで残るのではないでしょうか?

 これを「逆足跡」(“さかさあしあと”、あるいは“ぎゃくあしあと”と、読むのでしょうか?)と呼んでいらっしゃるとのこと、とてもロマンチックな感じで素敵です。このような現象をどう呼んでいるのかは、特に決まったものは無いと思います。せっかくの素敵な呼び方ですので、これからもずっとお使いになっていただきたいと思います。

(回答掲載日:2023年1月6日)

#逆足跡#雪#雪の不思議