皆さまから寄せられた雪や氷の質問・疑問に、古川館長がお答えしました!
古川 義純(ふるかわ よしのり)先生
中谷宇吉郎雪の科学館 館長 / 北海道大学 名誉教授
日本結晶成長学会の会長や、北海道大学の低温科学研究所の所長などを歴任し、国際宇宙ステーション「きぼう」で氷の成長の宇宙実験を行ったことでも知られています。
Q&Aは検索ができます。 検索は「キーワード」「カテゴリー」「タグ」の3つの方法があります。
キーワードを入力して検索してください。
カテゴリーを選ぶとそのカテゴリーの中からキーワードと一致するQ&Aを探すことができます。
気になるタグを選んでください。
そのタグに当てはまるQ&Aを探すことができます。
雪氷と氷雪の言葉について
「雪氷」という言葉の他に「氷雪」という言葉もありますが、この二つの言葉の違い(使い分け)は何でしょうか。(スノーアイスさん / 東京都・30歳)
「雪氷」も「氷雪」も、“雪と氷”を意味する言葉であって、両者の間に特に区別はありません。ただ、学術の世界では、「雪氷」ということが多いようですが、これも特に理由はないと思います。
しかし、この言葉は、ちょっと不思議な表現であることを指摘しておきたいと思います。雪と氷というと、両者を並列に並べていることになりますが、雪も氷もH₂Oという物質の結晶体(固体)という意味では、同一のものです。このことを考えると、両者を重ねて一つの言葉として使うことには、すこし違和感があります。
一方、雪は、上空の雲の中で水蒸気から直接できたH₂Oの結晶体であるのに対し、氷はH₂Oの水(液体)から直接できた結晶体であるという違いがあります。すなわち、同じH₂Oの結晶体であっても、そのでき方が違うのです。その意味では、雪と氷は区別できるので、この2つを並べた言葉も成立するのかなと思います。
では、地球上には大量のH₂Oが存在します。大部分は、液体の水の形で存在しますが、特に地球寒冷圏ではその一部が結晶体(固体)となっています。ここでは、その結晶体の多くは、もともとは雪として地上に降り落ちたものであることを指摘しておきたいと思います。まさに空から降り落ちてくる雪は、上空の雲の中で水蒸気からできたものですので、それが積もった積雪も、もともとは水蒸気から生成されたものです。では、南極などの極寒地には、氷床と呼ばれる氷の塊が存在するという意見がでそうです。しかし、この氷床の氷も、もともとは降り積もった雪が長年の間に圧縮されて氷の塊になったものです。したがって、その最初はやはり水蒸気からできたものということになります。こう考えると、地球上に存在するH₂Oの結晶体は、その多くがもともとは雪であったと言うことができます。
(回答掲載日:2024年12月12日)
雪氷 #氷の不思議#雪の不思議宇宙の水(氷)の総体や身体の氷
①以前、「宇宙の水の総体はかわらず、循環しながら水はあるので、太古の水を私たちは雨や雪などを通して飲んでいるのだそうですよ」と教えていただいたことがあります。その通りでしょうか? ②循環した水が、氷となって雪となって空から降ってくる時に植物や動物やいろいろなものを通過した氷や雪も、水のように記憶を運びますか?その時は結晶やなにか固有の特性はありますか?(Cuuさん / 岐阜県)
水は、水素と酸素が結合した分子(H2O、水分子)でできた物質です。したがって、水そのものには、太古のものや現在のものというような区別は、存在しません。現在私達の周りのある水は、宇宙が誕生し進化する過程で、ある時に大量の水分子が生成され、それらが現在の地球や宇宙空間にそのままで残されているというのは、もちろんそのとおりです。しかし、最初に述べたように、水は一つの物質に過ぎないので、宇宙で初めて生成された頃の水と現在私達の周りにある水の間には何ら違いがなく、両者を区別することも意味のないことです。
また、一つの物質に過ぎない水には、それが記憶を持つというようなことも、なんらかの意図を持つといったことも、絶対にありえません。したがって、水がどのような循環をしたとしても、水にその記録が残ると言ったこともありません。さらに、雪や氷は、水という物質が固体の状態になって存在しているだけですので、その水が過去にどのような循環をしたかということは、雪や氷の特性に影響を与えることもありません。雪や氷の結晶形や特性は、その結晶がどのような過程を経てできたかに依存します。しかし、これは科学的な考察の結果としては、結晶ができるときの気象条件によって形が変化するということであって、決して人間の意図や記憶、意識といったものを反映するものではないことも明らかです。
水、氷、雪というと、私達のきわめて身近にあることや、生き物の生命維持に重要な役割を果たしているというようなことから、水そのものが何らかの記憶を持つとか、人間の意図を理解できるというような怪しい言説が流布されることがあります。しかし、水という物質そのものが、そのような性質を持つことは、科学的に絶対にありえないので注意が必要です。このことに関連する質問の回答が、本Q&AのQ.81にもありますので、そちらも合わせて御覧ください。
(回答掲載日:2024年9月6日)
人工雪について
私は学校の課題研究で雪について研究しているのですが、人工雪の仕組みや人工雪のコスト、環境問題などを知りたいです!また、先生はこの先もスキーをすることは可能だと思いますか?もし最新の人工雪について知っていることがあれば教えて欲しいです!!(おくとさん / 神奈川県・15歳)
ご質問は、スキー場などで雪が不足している時に使われる人工降雪機で作成された雪のことについてだと思います。残念ながら、私は、人工降雪機については詳しくありませんので、その原理的なことしかお答えすることはできません。
まず、人工降雪機とは、次のような原理で雪を作っています。まず、氷点下になった大気中に高圧ノズルを使って水を噴霧させることで大量の微水滴を空中に浮遊させます。すると、その微水滴は冷やされて凍結し、小さな氷の粒に変わります。この氷の粒を大量に降り積もらせることで雪を作成しています。この装置で作られた人工の積雪は、水滴が凍ることでできた大量の氷の粒でできているので、空から降ってきた雪の結晶が降り積もってできる天然の積雪とは、全く異なった性質のものになります。天然の雪の結晶は、上空の雲の中で生成された微細な氷の粒が、雲の中を落下しながら周囲の空気中に含まれた水蒸気を直接取り込むことで生成されます。このため、雪の結晶は、非常に複雑な形をしていて、これが降り積もった積雪は、ふわふわでとても柔らかいものになります。これに対し、人工降雪装置で作成した雪は、水滴が凍ってできた丸い氷の粒でできているので、天然の積雪に比べると固くしまったものになります。そもそも、積雪のでき方が天然と人工では異なることが、このような特性の違いを生み出しているのです。
また、この先もスキーができるかどうかですが、恐らく地球温暖化の進行による気温の上昇による影響を心配されているのだと思います。現在のまま地球温暖化が進行すると、当然多くのスキー場で雪が不足し、スキーもできなくなるでしょう。いつまでもスキーができる環境を維持するには、私達一人ひとりが、地球温暖化を食い止めるために、何をすべきかを考え、直ちにそれを実行することが大事です。私達にできることは何か、ぜひいろいろな方法で調べてみてください。
(回答掲載日:2024年9月6日)
雪 #スキー#雪#人工雪#雪の不思議雲の仕組みと氷、雪との関係性について
私は小学5年生で、夏休みの課題で図書館の本を使った調べ学習というのを「雲」というテーマで調べています。本を読んでいくうちに、過冷却の仕組みが、雲から雪になるイメージと関係あることが分かったのですが、そちらのホームページでも、0℃でも水が凍らない理由から過冷却の仕組みが理解できました。でもとても難しくて、完ぺきな理解は出来てません。他にも、雲と氷、雪の関係性にあてはまる言葉や仕組みなどをいろいろ調べたのですが、最後は結果どのようなことだったのかっていうまとめの所にまだたどりつくことが出来てません。雲、雪、氷と全体を見ようとすると、とても難しいなと思っています。雲と結びつくような言葉だったり、氷と雪の関係性などをもう少しくわしく分かりやすく知りたいな、教えてもらいたいなと思って問い合わせをしました。(めーたすさん / 石川県・10歳)
とてもよく調べて勉強していますね。大事なポイントに気がついていて、感心しました。過冷却という現象が、雲、雪や氷の生成などと密接に関連しているとよく説明されます。しかし、ではどんな関係があるのかは、とても難しい問題で、なかなかうまく説明することができません。ここに何か問題がありそうだということに気がついただけでも、素晴らしいと思います。ご質問に関連する話題で、いくつか説明しましょう。
まず、雪の結晶は上空の雲の中で作られます、と説明され、あまり疑問に思うことがありません。しかし、このことは、液体の水の過冷却と雪の結晶の成長との関連について考えることで、その理由がわかります。雪の結晶は、その結晶の周りにある空気中にある水蒸気から、直接できてきます。しかし、雪の結晶が大きくなるためには、周囲の水蒸気が使われますので、結晶の周りの水蒸気の量はだんだん減ってくるはずですね。雪の結晶がさらに大きくなるためには、この水蒸気がどこかから追加されないといけません。この水蒸気を追加するしくみに、実はこの過冷却という現象が大事な役割を果たしているのです。すなわち、雲の中にある雪の結晶の周囲には、水蒸気だけではなく、たくさんの雲粒(過冷却した水でできた小さな水滴)が存在しています。この雲粒は、だんだん蒸発をして、周囲の空気に水蒸気を追加する役割を果たしているのです。すなわち、過冷却した雲粒から雪の結晶に向かって水蒸気の流れができていて、この流れによって雪の結晶は大きくなり続けることができるということになります。この雪の結晶が大きくなり続けることを「結晶の成長」と言いますが、雲の中でこれが起きる理由になります。(なぜ、過冷却した雲粒から雪の結晶に向かう水蒸気の流れができるのかというのも、疑問ですね。そのことも説明できるのですが、さらにむずかしいお話になってしまいますので、また他の機会に説明しましょう。)
また、雪と氷と言うことについても、少し説明しておきましょう。雪も氷も、どちらも融ければ液体の水ですので、どちらも、全く同じ物質です。ではなぜ、この2つの呼び方があるのかということを考えてみましょう。一般に、雪と呼ぶときには、雪の結晶やそれが降り積もった雪(積雪)などがあります。これらの共通点は、上空の雲の中で“水蒸気から直接氷の結晶ができたもの”が、もとになっているということです。一方、氷は、液体の水を冷やして凍らせることでできたものと言うことができます。氷を削ってかき氷にすると、雪のように真っ白でふわふわになりますが、これを雪とは呼ばないのはこのためです。このように、本来は全く同じものであるのに、そのでき方の違いで呼び方が変わるのは、とてもおもしろいと思いませんか?雪や氷以外のものでは、このようなことは絶対にありません。また、この他にも自然界にある雪や氷には、その状況の変化によって、さまざまな呼び方があります。それらがどのようにしてできたのかを調べると、雪と分類すべきか氷と分類すべきかを分けることができると思います。このような視点で雪や氷を眺めて見るのも、とても興味深いのではないかと思います。
(回答掲載日:2024年8月25日)
雪氷 #雪#氷#氷の不思議#雪の不思議未来に繋がる研究
中谷宇吉郎の研究は、現代における私たちの身近な部分でどんな役にたってるの?事例が知りたい!(ひーさん / 京都府・21歳)
中谷宇吉郎は、今から90年以上前に雪や氷に関する物理的研究を開始したことでよく知られています。現代から見るとずいぶん古い研究でもあり、一時期はすでに完結した研究と言われたこともあります。しかし、雪や氷に関する研究というのは、現代でも、いや現代になってさらに重要な位置を占めるようになっています。そのいくつかを紹介します。
まず、雪や氷、もう少し広く言って寒冷圏に関する科学は、地球科学や環境科学などの分野で極めて重要です。たとえば、我々人類にとっての喫緊の課題である地球温暖化に伴う気象や気候の変動は、寒冷圏になるほど顕著な影響が現れると考えられています。ヨーロッパアルプスにおいて氷河が縮小していたり、北極海の海氷が消えてなくなりそうになっていたり、南極の氷が融け出していたりという話は、最近良く耳にします。これらの現象は、雪や氷が0℃を境に固体と液体の状態をとるという特性と密接に関連しています。すなわち、雪や氷の成長や融解などの相転移と呼ばれる現象の理解が、このグリーバルな現象の理解や解決を図るうえで重要な鍵になります。中谷宇吉郎が研究を行った頃は、地球温暖化などの問題はありませんでした。しかし、中谷はその随筆の中で、二酸化炭素のガスが地球の温暖化の引き金になる可能性をすでに指摘してます。雪や氷の研究を通じて、地球に起きる将来の大問題を予見していたとも言えるでしょう。
さらに、雪や氷の特性に関する研究も、現代科学のさまざまな分野で生かされています。例えば、中谷の人工雪の研究は、結晶はどのようなしくみで成長するのかということを研究する結晶成長学の分野でも、その先駆的な研究として知られています。驚くことに、中谷が研究を行った1930年代には、結晶は時間とともに成長していくという基本的な概念がまだ一般的になる前になされたものであることです。雪や氷の結晶をもとに結晶の成長のしくみを明らかにすることで、どんな結晶にも当てはまるこの現象の基礎的な知識を得ることができるのです。この研究分野は、新たな基盤材料の開発や半導体基板のベースとなる人工結晶の生成など、日本の戦後の科学技術の発展を支えました。雪や氷という身近に存在する結晶の研究で得られた基礎知識が、現代の私達が享受する科学技術の発展とも関連があるのです。
さらには、近年では、我々の住む地球だけではなく、惑星空間にも大量の氷が存在することが知られています。このような氷は、惑星系の進化にともなう新しい分子の生成や生命の起源とも深く関連し、さらに人類が宇宙探査に出かけるときの水の確保などでも、極めて重要なものです。中谷が研究を行った頃には、もちろんこのような事実さえ知られていませんでした。しかし、ここでも中谷の行った研究が、その源流として今も息づいていることに、もうお気づきのことと思います。氷と宇宙、そして生命進化との関わりについては、本科学館で行われた講演会の様子を紹介する記録もあり、YouTubeチャンネルにおいて公開されています。
中谷宇吉郎が研究を行ったのは、1930-60年代の間です。もちろん、中谷の研究成果が現代の研究と直接的に関連することは少なくなってきました。しかし、現代の新しい科学のルーツを探ると中谷の研究に行き着くということが、今日でもよくあります。中谷宇吉郎が創設に関わった北海道大学附置の低温科学研究所では、雪や氷、そして地球から惑星空間にまで拡がる寒冷圏で起きるさまざま現象、さらには寒冷圏と生物の関連に関する研究に至るまで、非常広い分野の研究が行われて、大きな成果を上げています。ここでは、まさに、中谷の行った研究が、今も息づいているのです。
最後に、物理学者であった中谷の研究が、現代物理学とどのような関連にあるのかも、大変興味深いポイントです。これについては、岩波書店発行の雑誌「科学」の巻頭エッセイ(下記のサイト)に説明がありますので、これも参考にしてください。
(回答掲載日:2024年8月27日)
その他の現象 #中谷宇吉郎今積りゆく雪の結晶は同じタイプ?
雪の結晶には、様々な形があることは承知していますが、今、この枝に降り積もっていく雪の結晶は、同じタイプなのでしょうか?(雪吊りフアンさん / 石川県・70歳)
雪の結晶の形と言うと、千差万別で2つと同じものはない、とよく言われます。もちろん、これはその通りなのですが、その意味合いには少し注意が必要です。と言うのは、千差万別であるということには、一つの条件があります。すなわち、時間や場所をいろいろと変えて、多くの雪の結晶を観察したときに、その形はさまざまであって、2つと同じものはないということです。頂いたご質問は、“雪の結晶の形は、千差万別と言っているけれども、どんな条件でも言えるのでしょうか?”とも言い換えることができると思います。本当は、この条件のことを説明した上で、この言葉を使わないといけないのですが、ついつい疎かになっていて、皆さんに誤解を招く結果になっていると私も反省しているところです。
では、もう少し具体的にご説明しましょう。すなわち、ここで言う千差万別は、時間や場所を変えて雪の結晶を多数観察したときに、その形はさまざまなタイプあると言うことで、ある瞬間にある場所で降っている雪の結晶のタイプがさまざまなものを含んでいると言うことはではありません。実際、雪の結晶の観察をしてみると、ある瞬間にある場所では、ほとんど同じタイプの結晶が降っているのが普通です。例えば、樹枝状に枝が発展したタイプの結晶が降っているときには、細長い針状のタイプの結晶などが混じっていることはありえません。
その理由は、ある瞬間にある場所で降っている雪の結晶は、ほぼすべてが同じような気象条件(すなわち、結晶の形を決める条件)で生成されたものであると考えられるからです。個々の雪の結晶の形は、上空で誕生した微細な氷の結晶の粒が、地上に落下するまでに、その落下経路に沿って気象条件がどのように変化したかを反映して決まります。結晶ごとに異なる経路をたどっているので、結晶の形はそれぞれ異なることになります。しかしながら、上空のほぼ同じところで誕生した氷の粒は、気流の流れに沿って落下してくるので、雪の結晶としてほぼ同じ場所に降り落ちるはずです。すなわち、地上である瞬間に同じ場所で降っている雪の結晶は、似通った気象条件の変化を受けて生成されたと考えるのが妥当です。このため、同じタイプの結晶ばかりが降り落ちると言うことになります。
中谷宇吉郎は、「雪の結晶は天から送られた手紙である」と言う言葉を残しました。これは、地上で雪の結晶の形を観察すれば上空の気象条件を推定することができると言うことを意味していますが、まさにある瞬間にある場所に降り落ちる雪の結晶は、ほぼ同じタイプであるということが条件になっているのです。
(回答掲載日:2024年8月23日)
雪 #雪の結晶#雪#雪の不思議飲める水と飲めない水に結晶の差はある?
飲める水と飲めない水に結晶の差はありますか? この結晶があれば飲める、または、飲めないの判断が出来る結晶はありますか?(furucocoさん / 石川県・11歳)
水は、私達の身体の中にも大量に含まれていて、体重のおよそ60%が水分です。したがって、水そのものには毒性はなく、飲める水と飲めない水などの区別はありません。しかし、“この水は飲めない”ということは、よく言ったり聞いたりする言葉ですね。これは、水そのものというわけではなくて、その水にどんなものが溶け込んでいるのかということが、その違いの原因です。私達が飲む水には、必ず何かが溶け込んでいます。溶けているものに毒性がなく、なおかつ食品として使われるものであれば、その水を飲んでも問題はありません。逆に、食品でないものや私達の身体に害を及ぼすものが溶けこんだ水は飲むことはできません。
さて、ご質問にあるような水が凍ってできた氷の結晶については、それが飲める水と飲めない水の区別できるかということですが、その目的には使うことはできません。もちろん、何も溶けていない水からできた氷と、何かが溶けている水からできた氷に、その特性や形に違いが起こることはありえます。それは、結晶ができるときに、水に溶け込んでいるものが影響を及ぼすからです。しかし、それは溶けているものが無害なのか有害なのかには関係ありませんので、結晶を観察したとしても、その結果で飲める水か飲めない水かの判断はできません。
(回答掲載日:2024年8月4日)
氷水 #水#結晶#水の不思議#氷#氷の不思議冬眠の不思議
冬眠中、体温を保つためにエネルギーが必要かと思いますが、眠っているとどんどん体力が低下しませんか?冬眠中の生きものは意識があるのでしょうか。メカニズムが知りたいです。(ジャニさん / 石川県・13歳)
寒い冬になると、熊(哺乳類)、カエル(両生類)、カメやトカゲ(爬虫類)など、さまざまな動物が冬眠に入るというのは、とても不思議で興味深いですね。冬眠のしくみや冬眠中の動物の様子など、私も知りたいことがたくさんあります。また、映画の世界などでは、将来人間が長期間の宇宙旅行をするときに、人工的に冬眠の状態になるという話などもあります。本当にそんな事ができるのかも知りたいですね。しかしながら、私は物理学が専門ですので、今回頂いたご質問には確かなお答えをすることができません。ごく一般的な回答ですが、お許しください。
冬眠をする動物としては、最近人里への出没が話題になる熊が、特によく知られています。熊は、秋の実りの時期に栄養のある食べ物を大量に摂取して体に栄養分を蓄えてから冬眠に入ると言われています。冬眠中は、この蓄えた栄養分をエネルギー源として、体力を維持し体温も保っていると考えられます。もちろん、蓄えた栄養分を消化してくると体力もだんだん低下するはずです。春の冬眠明けの熊はやせ細っているという話は、よく耳にしますね。また、熊は、冬眠中に出産をして子育てをします。冬眠中とは言っても、決して眠りこけて意識がないわけではないと想像できます。一方で、シマリスやコウモリなどの小型の動物では、冬眠中は体温が大きく下がって全く身動きできなくなるそうです。こうした状態では、いわゆる私たちが考えるところの「意識はない」状態になっていると考えられています。一口に冬眠と言っても、動物ごとにさまざまな事情があり、まだまだ分からないことがたくさん残されているようですね。ぜひ、これからも興味を持ち続けて、調べてください。
ところで、中谷宇吉郎雪の科学館は、北海道大学の低温科学研究所と連携協定を結んでいます。この低温科学研究所には、冬眠の研究で有名な山口良文先生がいらっしゃいます。先生の研究室は、少し難しいですが「冬眠代謝生理発達分野」と呼ばれ、哺乳類の冬眠の仕組みを明らかにするための研究を行っています。研究室名に「冬眠」がつく世界でも数少ない研究室です。先生の研究室のホームページでは、冬眠についての説明が掲載されていますので、そちらをぜひ参考にしてください。
http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/hibernation/
(本回答の作成には、山口先生にいろいろと教えていただきました。)
(回答掲載日:2024年6月1日)
その他の現象 #生態#生き物#冬眠湿雪の種類
雪は乾雪と湿雪に分けられ、その違いは含水率だと知りました。その中でも湿雪は、綿雪、餠雪、牡丹雪、べた雪、水雪と種類があることが分かったのですが、それぞれの含水率はどれくらいなのでしょうか?(なぎさん / 福岡県・21歳)
一般的な意味での含水率とは、ある物質に含まれる水分の割合を示します。通常は、その物質の重量に対して含まれる水分の重量の比率で表示されます。例えば、よく使われる土壌の含水率などは、土壌を構成する土の成分の量に対する水分の量ということになります。すなわち、水とはまったく異なる物質の中に含まれる水分の量を表します。
さて、雪(積雪)の含水率というのは、この定義からは少し外れていることに注意が必要です。と言うのも、積雪というのは、固体である氷の部分と液体である水の部分の混合物であると言うことです。氷も水も物質としては同じですので、積雪の含水率というのは、ある重量の積雪に含まれる氷と水の重量比ということになります。すなわち、同じ積雪の重量であっても、氷が溶けて水に変わると含水率は上がり、水が凍って氷が多くなると含水率は下がります。
では、この含水率というのは、どのようにすれば測定できるかを考えてみましょう。最初に述べた土壌のようなものであれば、最初に水分を含む土壌の重量を測り、その土壌をカラカラに乾燥させて再度重量を測れば、その差額から含水率を決めることができます。土壌の中の土の成分の重量は、含まれる水分量とは関係なく一定であるからです。しかし、積雪の場合は、それを構成する氷と水の重量は連動して変化しますので、、この方法で含水率を決めることはできません。もちろん、積雪の含水率の測定方法は、古くからさまざまな方法が提案されていますが、かなり特別な方法で簡単ではありません。さらには、同じ積雪であっても、周囲の温度が少しでも変動すると、内部の氷と水の重量比(すなわち、含水率)はすぐに変化してしまいます。測定条件をよほど一定に保たないと、測定値には意味がなくなってしまいます。このようなことから、積雪の状態によって含水率がどのような値になるのかを具体的に答えることは、困難です。
最後に、湿雪か乾雪(水分が0%、あるいはごくわずか)かの区別だけは、その積雪の温度を測るだけでも比較的簡単に判断できることを紹介しておきます。すなわち、湿雪では、氷と水が共存している状態ですので、その温度は0℃ですが、乾雪では水分は含まれず氷のみで構成されるので、その温度は0℃以下のはずです。積雪の温度を測定するだけで、湿雪か乾雪かの判断基準として使えそうです。
(回答掲載日:2024年5月20日)
雪 #湿雪#乾雪#雪の不思議氷の結晶について
今から60年前の頃のお話しですが、麦茶を製氷室にいれて早く冷やそうとして、取り出すのを忘れていた時のことです。 麦茶を入れていた容器は1リットル程度が入る半透明のプラスチック製の横長の、注ぎ口が広口の8cmほどあるタイプのものでした。 まだ凍った様子がなかったので、そのまま コップに注ごうとした時に、容器の淵に雪印のマークと同じ形の直径1.5cm程度の氷の結晶を見つけました。 手で摘まんで採ろうと試みましたが、駄目でした。 このことを父に話したところ、氷の核になる元は麦茶の中には無数にあるため、大きな結晶に成長する可能性はあり得ないと一喝され、大変落ち込んだ経験があります。 雪の結晶が、液体の水の中で成長することが実際ある訳で、こうした事例の研究がされているのか、教えていただきたいです。岡田龍雄さん / 大阪府・72歳)
麦茶を冷やしたときに六角の氷結晶が観察されたとのことですが、もちろんこのような結晶が生成することはありえることです。このご質問だけでは、結晶ができていた状況が明確ではありませんが、観察された結晶が麦茶の内部でできていた(麦茶が凍ってできた)と考えて、回答いたします。
液体の水を容器に入れて冷却すると、水はやがて過冷却の状態(0℃以下でも凍結せず、液体のままの状態)になります。その中に、氷の微結晶が生成されると、雪の結晶と同じように、六角の結晶形に発達することは良く知られています。このような結晶の生成については、これまでに多くの研究が行われています。六角の枝のできるしくみや六角の対称性が生じる理由なども明らかにされています。近年では、国際宇宙ステーションの中での氷の結晶の生成実験なども行われました。ごく最近では、氷の結晶が成長する様子を分子の大きさの分解能で観察する試みも行われるようになってきました。
しかし、過冷却水中で氷の結晶の生成過程を観察することは、通常ではそう簡単ではありません。それは、過冷却の度合いを制御することが困難であることや、水中で同時にたくさんの微結晶が発生すると互いに影響をしあってきれいな結晶形になりにくいことなどの理由が考えられます。ご質問の場合では、容器に入れた麦茶がゆっくりと冷やされていく途中で、たまたま、ごく少数の氷の微結晶が生成されて、それらが独立して成長したのだと考えます。なぜこのようなことが起きたのかは明確には答える事ができませんが、決してありえない現象ではありません。
最後に、純水と麦茶を使った場合の違いですが、麦茶の場合は純水よりも凍る温度が少しだけ低くなっている可能性があります。しかし、結晶のでき方などには大きな違いが生じているとは考えにくいので、純水からの氷の生成と同じであると考えて差し支えありません。
(回答掲載日:2024年5月12日)
氷 #円盤結晶#氷#氷の不思議氷の中の白い部分
家で氷を作ったとき、とうめいにならず、真ん中に白い部分ができます。白いものはなんですか?(マークさん / 大阪府・8歳)
れいとうこで水を冷やして、氷を作ると、外がわはとうめいなのに、真ん中あたりは白くにごっていて、とうめいにはなりません。これは、水がこおるときに、水に溶けていた空気が、あわとしてあらわれて、それが氷の中にとじこめられているからなのです。このあわがたくさんあると、そこにさしこんだ光がいろいろな方向にはね返されるので、白く見えるのです。
と言っても、少しむずかしいですね。氷の中にあわがたくさんできると白く見えるということを、2つのことに分けて考えてみましょう。
まず、さいしょは、氷の中に空気のあわができるのはなぜか、です。コップにきれいな水道水を入れて、さとうやしおを入れるときれいにとけてしまいますね。これとおなじように、空気も水の中にたくさんとけているのです。水は、いつでも空気にさらされていますので、知らないうちにたくさんの空気がとけています。この水を、れいとうこの中にいれてこおらせると氷になるのですが、水とははんたいに、この氷には空気はほとんどとけることができません。このため、空気がとけた水が氷にかわるとき、よぶんな空気ができてしまうことになります。このよぶんな空気が、小さなあわとなってでてくるのです。このあわが氷の中に入ってしまったものが、真ん中の白く見える部分になります。
では、つぎに、あわが入っていると白く見えるのはなぜかを考えてみましょう。あわの中みは空気ですので、あわが白くなっているわけではありません。しかし、氷の中にあわがあると、さしこんだ光がはね返されて(ちょっとむずかしいことばでは、反射(はんしゃ)と言います)くるので、そこにあわがあることがわかります。この光をはねかえす小さなあわが、氷の中にたくさんあるときは、一つのあわではねかえされた光が、近くにあるほかのあわで、またはねかえされるということが、おこります。こうすると、光がいろいろな向きにはねかえされることになって、あわがたくさんあつまったところが、白く見えるようになるのです。これを、光の散乱(さんらん)とよびます。
ところで、冬になると、空から真っ白な雪がふってきます。つもった雪もまっ白ですね。この雪は、小さな氷のつぶでできていることは、知っていますね。氷はとうめいですので、雪をつくっている氷のつぶを一つだけとりだすと、やっぱりとうめいで、白くはありません。しかし、この氷のつぶがたくさんあつまると、そこにさしこんだ光がいろいろな方向にはねかえされて、白く見えるようになるのです。氷の中のあわが白く見えるのと、そのしくみは同じですね。
何かが白く見えるからと言って、それがいつも白いものでできているというわけではないというのは、とてもおもしろいですね。
(回答掲載日:2024年4月26日)
氷 #氷#氷の不思議雪の結晶の形についての質問
雪の結晶はどうして平面の六角形になるのですか?(じんみさん / 富山県・30歳)
雪の結晶の形やそのでき方については、すでにこのQ&Aの中でも何度も取り上げてきました。まずは、その回答を参考にして下さい。例えば、Q.2、Q.27、Q.31、Q.45、Q.65、Q.67などが関連します。ここでは、これらとは少し異なる視点で、回答したいと思います。
雪の結晶の写真を見ると、綺麗な六角の平面状のものが非常に多く、この形のものが唯一の結晶形のように思われることがあります。しかし、実際には、雪の結晶の形は実にさまざまで、平面状と言っても樹枝状や六角板状のもの、さらには六角柱や針状、これらの組み合わさったものなど千差万別です。しかし、これらに共通する特徴は、雪の結晶形の基本は、微細な六角柱であることです。すなわち、これが雪の結晶の赤ちゃんで、この赤ちゃん結晶が横方向に成長したもの(すなわち、六角の平面状の結晶形)や縦方向に成長したもの(すなわち、細長い針状の結晶形)が、実際に空から降ってくる雪の結晶になります。
では、なぜ六角形なのかですが、これは雪の結晶(すなわち、氷の結晶です)は、水の分子が立体的に規則正しく並んで、六方の対称性を作っているためと説明されます。もちろん、これで間違いではないのですが、例えば1個の雪の結晶を見た場合、1本の枝の先端からその反対側の枝の先端の間までに並ぶ水分子の数は、およそ10、000、000個と、膨大な数になります。実際には、結晶はもっと立体的な広がりがあるので、1個の結晶の中の水分子の数は、さらに大きな数になります。すなわち、水分子の並び方が結晶の外形に関連していると言っても、そう簡単には説明ができそうにもないことが分かります。結晶の形などを専門とする研究者にとっても、頭を悩ませる問題が、今も残されているのです。
最後に、雪の結晶は、平面かどうかについても見ておきましょう。平面というと、厚みがないように思えますが、雪の結晶は決してそうではありません。一見平面に見える六角の結晶でも、0.1mm程度の厚みがあります。十分薄っぺらいようにも見えますが、先程の水分子が何個積み重なっているのかという視点では、およそ250、000個の水分子の積み重なりということになります。もう、雪の結晶は平面ではなく、十分な厚みがあると言えます。さらに、雪の結晶の写真を見ると、外形の複雑さだけではなく、結晶内部にも様々な模様が観察されます。この模様は、結晶の表面にある凸凹が、影となって見えているのです。このことも、雪の結晶は厚みのない平面とは決して言えないという根拠になります。
このように、雪の結晶がなぜさまざまな形をとるのかは、現在もまだ完全には説明できない部分が残されているのです。雪の結晶を見たときに、綺麗だなと思うと同時に、何か不思議なことがまだまだあるんだと思っていただければ、大変有り難いです。
(回答掲載日:2024年2月6日)
雪 #雪の結晶#雪#雪の不思議雪とあられの違いはなんですか?
雪が降るとき、あられが降るときのメカニズムを教えてください。単純にあられは氷なのでこっちの方が気温が低いように感じます。が、実際は違っている為知りたいです。(ムライさん / 福井県・55歳)
雪とあられは、ともに上空から降り落ちる氷の粒ですが、そのでき方に違いがあります。気温は上空に行くほど低くなりますので、地上の気温がプラスであっても、ある高さ以上の上空は氷点下の気温になっています。雪やあられを降らせる雲は、空間に散らばった微小な水滴(雲粒)でできています。この雲粒は、0℃以下の温度になっても凍結せずに液体のまま(すなわち、過冷却の状態で)でいることができるという性質を持っています。この雲粒でできた雲の中に、微細な氷の結晶(氷晶)が生まれると、それらは周囲の水蒸気を集めて、徐々に大きくなり(成長し)はじめます。このようにして、氷晶が“直接水蒸気から成長”したものが雪の結晶です。その形は、結晶ができる雲の中の気温や水蒸気の量で様々に変化することはよく知られています。
大きく成長した雪の結晶は、だんだん重さが増して、空中に落下し始めます。雲を構成する雲粒の数(空間密度)が多くなければ、そのまま綺麗な結晶形のままで地上に達します。しかし、雲粒の数が増えてくると、雪の結晶は落下に伴って雲粒と衝突するようになります。このとき、雲粒は過冷却状態にあるので、雪の結晶に衝突するとその場ですぐに凍りついてしまいます。すると、きれいな結晶の上に ぱらぱらと雲粒の付いた結晶となります。雪の結晶の分類表には、雲粒付き結晶というものが記載されていますが、これらは、このようにしてできたものです。
さらに雲粒の数が大きくなると、雪の結晶には次々と雲粒が衝突して凍りつくようになります。こうして、多数の雲粒が凍りついてできた氷の固まり、すなわちあられとなるのです。こうなると、もう元の雪の結晶の形は見えなくなってしまいます。しかし、そうは言っても出発点は雪の結晶であったので、あられを作っている凍りついた雲粒をひと粒ずつ丁寧に外すなどして注意深く観察すると、もとの雪の結晶の痕跡が見つかる場合もあります。
すなわち、雪の結晶になるのかあられになるのかは、気温の高低というよりも、上空の雲を構成する雲粒の数がより大きく関連していると考えられます。
(回答掲載日:2024年2月1日)
雪 #あられ#雪#雪の不思議大量の雪を早く溶かす方法
大量の雪を溶かす方法で大きなハウスの中に雪を入れハウスの中の温度をヒーターなどで温めて溶かすことは可能でしょうか?(平田学さん / 北海道・57歳)
雪を融かすには、大量の熱が必要です。どのくらいの熱量が必要なのかをまず見てみましょう。最初に、1Kgの水の温度を1度Cだけ上昇させるために必要な熱量(すなわち、水の比熱)は、4186[J/kg・K]になります。しかし、0度Cの氷1Kgを融かして0度Cの水にする時に必要な熱量(すなわち、融解熱)は、333.6×1000[J/kg]に達します。水の温度を1度C上昇させるのに必要な熱量のおよそ80倍という、極めて大きな値になります。雪は、氷でできていますので、これらの数値はそのまま雪に当てはまります。すなわち、雪を融かすには、このように大量の熱が必要となるのです。
ご質問にあるように、ハウスの中などに雪を入れて、ハウス全体をヒーターなどで温度を上げれば、もちろん雪を融かすことはできます。しかし、雪、を融かすために必要な熱量は決まっていますので、その熱量をいかにして作り出し、そしてその熱をどのように雪に伝えるのかが、重要なポイントになります。ハウスなどでは、ヒーターで供給される熱に加えて太陽からの熱なども有効に使えるかも知れません。一方で、断熱の効果があまりないハウスのカバーからは、大量の熱が外部に逃げ出してしまうことも考えられます。熱の供給量と、その熱が雪を融かすために実質的に使われる効率を考えた上で、どれだけの熱量が雪を融かしきるために必要なのかを考える必要があります。
(回答掲載日:2024年1月26日)
雪 #雪#雪の不思議雪と塩のかんけい
雪がふったときに道路に塩をまいているのを見ました。どうして塩をまくんですか?雪と塩にはどのようなかんけいがありますか?(うーたんさん / 富山県・8歳)
道路に塩をまくのは、雪がふって寒い時に、道路がこおりついて車がスリップしないようにするためです。水道の水は、0度になるとこおって氷になるのは知っていますね(少しむつかしいですが、モル凝固点降下というげんしょうです。このQ&Aのなかにも説明があります。たとえば、Q.43の回答なども参考にして下さい)。しかし、水道水に塩を入れると、その水はこおりにくくなります。たとえば、冷凍庫に、塩がたくさん入ったしょっぱい食品を入れておくと、ほかの食品にくらべてこおりにくくなります。また、海水は塩をふくんでいますので、こおる温度はマイナス2度になります。このように、塩の入った水のこおる温度は、0度よりも低くなるのです。
では、道路に塩をまくとどうなるでしょう。塩をまくと、道路の表面にある水分に塩がまじります。そうすると、その水分は0度よりも低い温度にならないとこおらなくなります。つまり、塩をまくと道路の表面には氷ができにくくなるのです。道路に塩をまくのは、道路の表面が氷でおおわれるのをふせぐことで車が安全に走れるようにするためです。道路の安全をまもるための、大切なさぎょうなのですね。
(回答掲載日:2024年1月26日)
雪 #塩#雪の結晶#雪#雪の不思議雪の結晶の中の線の模様について
①雪の結晶の中の線の模様について 雪の結晶を拡大したのを見ていると、雪の結晶の中に線の模様が入っています。これは結晶が大きくなる過程でできる線なのですか?なぜ、きれいに線が現れるのでしょうか。結晶の表面が線に沿ってデコボコしているのかも気になります。 ②雪の観察する時、指先の防寒対策は? 雪や霜など早朝の寒い中、外に出て観察をしています。手は手袋で防寒していますが、メモを取ったり手先で細かい作業をする時は手袋を外さないといけません。手袋を取るとすぐに手が冷たくなり作業ができなくなるのですが、皆さんはどのように寒い外での研究をしているのですか?何かいい方法があれば教えてください。(氷博士になりたいにゃーこさん / 栃木県・14歳)
① 雪の結晶の写真を見ると、結晶の内部に線状に伸びた線などさまざまな模様を見ることが出来ます。六角形の雪の結晶は、とても薄いのですが、決してペラペラの紙のようなものではなく、しっかりとした厚みを持つ氷の結晶になっています。写真で見られる模様は、この氷の結晶の内部に出来ているのではなく、結晶の表面にある凸凹が模様となって見えているのです。すなわち、顕微鏡などで結晶を見るときは結晶の後ろから照明の光を当てますので、表面の凸凹が影になって見えるのです。この凸凹が出来る理由は、結晶が成長する時に結晶の尖ったところや角のところから成長しやすいと言う性質があることと関係があります。特に、筋状の模様は、結晶の角や枝の先端が伸びる時にその成長の痕跡として残されることがあります。、結晶は、成長してそのサイズが大きくなるとともに、外形も結晶の表面もだんだん複雑な構造を取るようになり、結晶外形だけではなく内部にも綺麗な模様が出来上がるのです。しかし、凸凹と言っていますが、結晶の表面が実際には凸なのか、凹なのかは、実は簡単には判別できません。これを調べるには、普通の顕微鏡ではなく、結晶の表面で反射してくる光で観察できるような特殊な顕微鏡を使うことが必要です。さらに、凸凹の深さを測るには、光の波の長さを基準として測定することができる干渉顕微鏡と呼ばれる精密な測定装置なども必要です。この凸凹の謎を解明するために、今も観察を行っている研究者もいます。
最後に、少し難しくなりますが、結晶の外形や内部の模様ができるしくみは、「結晶形の形態不安定化」と呼ばれます。結晶は、本来は平らな面で囲まれた多面体の形をしています。この多面体の形を保ったままで成長する場合は安定成長と言います。一方、雪の樹枝状結晶のように、結晶が成長するとともに外形がだんだん複雑になっていくような場合は不安定成長と呼びます。安定成長が不安定成長に移り変わるしくみが形態不安定化で、結晶の形や模様を研究する上で非常に大事な考え方になっているのです。
② また、雪や霜の結晶を野外で観察するときには、どうしても手がかじかんでしまって、うまくいかないことがよくありますね。分厚い手袋をはめてしまうと、メモを取るときや細かな作業をするときには、いちいち手袋を外さないと出来ません。これで絶対大丈夫という解決法は実は無いのですが、私達は白い薄手の綿手袋をはめたりしています。これを使うと、指先が比較的自由に使えますので、いちいち手袋を外すことも不要になります。しかし、防寒には十分ではありませんので、防寒用の厚い手袋もそばにおいておくと良いと思います。
また、雪や霜の結晶を観察するときには、黒い布(私達は、ビロードという毛羽立った布)を30cm角ぐらいの板に貼り付けたものを用意します。この板で雪や霜の結晶を受け止めるのです。そうすると、コントラストが付いて結晶をとても見やすくなります。さらに、面相筆(できるだけ穂先の細い筆)を用意すると、結晶にさわったり、ひっくり返したりすることが容易にできます。また、穂先に引っ掛けると、結晶を顕微鏡のステージにのせるときや、結晶のレプリカ作成などの作業にも役立ちます。このような方法は、中谷宇吉郎先生たちが90年前に雪の結晶の研究を始めた頃から使われていました。こう言うと進歩がないように思えますが、実は寒い野外での作業であることを考えると、もっとも合理的な方法なのです。防寒に気をつけながら、いろいろと工夫して、雪や霜の結晶の観察にチャレンジしてみてください。
(回答掲載日:2024年1月26日)
雪 #雪の結晶#雪#観察#雪の不思議ゆきのけっしょう
ゆきのけっしょうはどうやったらみれますか?どこに行ったらみれますか?(しゅうすけさん / 石川県・6歳)
ゆきのけっしょうは、ちょっけいが3ミリより大きいものもありますので、くろいかみやぬのなどで、けっしょうをうけとめれば、そのままでも見ることができます。もし、むしめがねなどをもっていたら、それでのぞいてみると、もっとはっきり見ることができます。ゆきのけっしょうを見るためには、できるだけさむい日をえらんでください。しかし、いしかわけんなどでは、へいちではじゅうぶんにきおんがさがらないので、ゆきがふっていても、けっしょうは、はんぶんとけだしていたり、ぼたんゆきとよばれるかたまりになっていることが、おおくなります。このときは、けっしょうを見るのは、なかなかむつかしいかもしれません。スキーじょうなどのある、すこしたかいところにいくと、きおんもさがり、けっしょうを見やすくなります。ぜひ、ためしてみてください。
(回答掲載日:2024年1月26日)
雪 #雪の結晶#雪#雪の不思議雪の結晶と霜の模様について
僕は雪の結晶がきれいだなと思って雪が降ると観察しています。この間、ガラスに霜がついてきれいな模様ができていました。大きさは違うけれど、雪の結晶と形がすごく似ていました。なぜ雪の結晶と霜の模様は形が似ているのですか?霜の模様は雪の結晶の仲間ですか、それとも違うものですか?(さときちさん / 北海道・9歳)
北海道などでは、寒い朝に窓ガラスにきれいな模様の氷がついていることがありますね。このQ&Aの中のQ.35やQ.38にも、関連する質問がありますので、その回答も参考にしてください。
ガラスについた氷には、窓霜と窓氷と呼ばれる2つの種類があります。窓霜は、雪の結晶と同じように、ガラス窓周辺の水蒸気が直接結晶に変わったものです。これに対して、窓氷は、水蒸気がいったん液体の水として凝結し、その水の膜が冷却されて凍ったものです。雪の結晶と似た模様として観察されたのは、窓霜のほうであったと考えられます。雪の結晶も窓霜も、水蒸気から直接結晶ができるので、基本的なでき方は同じです。この意味では、仲間どうしと言えます。雪の結晶ができるときは、結晶は空中に浮かんでいるので、周りから均等に水蒸気を集めます。このため、とても対称的な形になります。しかし、窓霜の方は、ガラス窓の表面という少し特別な場所でできていますので、水蒸気を均等に集めることが難しくなります。このため、雪の結晶に比べると、かなり歪んだ形になっていることが多くなります。また、ガラスの表面に対して、結晶のできる向きが少し斜めになっていると、丸みを帯びた枝が伸びることもあります。また、ガラスの表面の性質によっても、その上にできる窓霜の形などが異なることも知られています。
(回答掲載日:2024年1月26日)
その他の現象 #窓氷#雪#霜#窓霜音と雪の結晶について
かなり昔雑誌(週刊紙)で見たのですが、雪の結晶が出来る時の音で雪の結晶の美醜があると記述と写真でみました。きれいな言葉だと美しい結晶、汚ない言葉だと結晶どころか壊れた雪の形だったと記憶しています。今でもその雪の結晶のことが気になって記事や画像を検索しても見当たらず本当なのか知りたいです。(夏。みかんさん / 石川県・49歳)
音や言葉で、雪の結晶の形が影響を受けることはありません。
この話は、1990年代後半から2010年代初めにかけて流行った「水からの伝言」ということに関連しています。これは、水に言葉をかけると、その内容によって結晶の形が変わるということを主張したものです。しかし、物質である水の性質に人の言葉が影響を与えるなどは、科学的にはありえません。いわゆる、ニセ科学の典型として、当時大きな問題となりました。
それは、この話が多くの小学校で道徳の授業の教材として取り上げられるということが起こったためです。すなわち、「水にきれいな言葉をかけるときれいな結晶になり、汚い言葉をかけると汚い結晶になります。人間の体にはたくさんの水が含まれています。だから皆さん、きれいな言葉を使いましょう」という流れで、授業に取り入れられました。しかし、結晶の形には言葉の良し悪しなど関係がないことははじめに述べたとおりで、科学的根拠があるように見せかけた間違った内容で授業を行っていたということになります。そもそも、結晶の形がきれいかどうかの判断基準は、人それぞれに異なるはずです。さらには、言葉使いの良し悪しという判断を、まったく関係のない水という物質に委ねていることになります。一見論理的に見えても、非常に底の浅い内容ということができます。
なぜこのようなことが起こったのでしょうか。この話の前提として、一応結晶を作るという実験を行っているので、すっかり科学的事実であると思い込む人が続出してしまったことに大きな原因があります。しかし、科学実験とは、主観を排除して客観的な事実のみを捉えて議論をすることが基本です。さらには、他の研究者がその実験を再現でき、同じ結果を得られることも重要です。したがって、科学実験の結果には、結晶がきれいとか汚いという主観的な基準が入り込むことはありえません。すなわち、この話のもとになっている実験には、科学的な根拠がないのです。
私達の周りには、この話以外にもニセ科学やオカルトなどに当たるものがいろいろとあって、時には人々を惑わす原因となっています。このような怪しい言説に騙されないためには、正しい根拠に基づく科学的な思考をする力を鍛えることがとても重要なのです。
(回答掲載日:2023年12月24日)
雪 #雪の結晶#雪
雪の結晶について
古生代や中生代にも雪は降っていましたか?また、その時代の雪の結晶は、現在分類されているような柱状結晶群や板状結晶群だったのでしょうか? そう言った事を自分で調べる場合は、雪氷学、古気候学、気象学、古生物学などの学問だと、どの学問になりますか?(ノートの罫線さん / 大阪府・34歳)
今から46億年前に地球が誕生して以来、地球の気候は大きく変動してきました。その間には、安定な気候の状態として、地球全体が氷床で覆われた寒冷な気候の時期、地球上から氷床が消えた温暖な気候の時期、そして部分的に氷床で覆われた比較的温暖な気候の時期を繰り返してきたと考えられています。特に、寒冷な気候の時期は、地球全体が雪だるまのように真っ白な球体になっていて、全球凍結(スノーボール・アース)と呼ばれています。地球の歴史の中で、2回あるいは3回、このような状態に陥ったと考えられています。
さて、このようなことを考えると、当然地球が誕生してからいつも地球のどこかでは雪が降っていたと予想されます。しかしながら、その時に生成される雪の結晶の形は、結晶が生成するときの気温や水蒸気の量などの全く物理的な因子で決まります。すなわち、どんな時代であっても、この物理的な因子は変わりませんので、昔も今も雪の結晶の基本的な形は同じです。
さらに、雪の結晶は降り積もったあとすぐに融けてしまったり、形が変化してしまったりするので、結晶の最初の形は保存されません。したがって、古代の雪の結晶の形を議論するのはあまり意味を持ちません。
しかし、少し広く考えて、古代の地球の環境や気候変動の研究というのは、地球の進化や生命の進化とも密接に関連する重要な課題です。このような研究は、実際にはさまざまな研究分野にまたがって行われています。既存の研究分野は、そのような研究を行うための導入としては重要ですが、それにこだわる必要はないと思います。
(回答掲載日:2023年9月10日)
雪 #歴史#雪の結晶#雪の不思議