教えて館長!雪と氷のQ&A

皆さまから寄せられた雪や氷の質問・疑問に、古川館長がお答えしました!

古川義純先生

古川 義純(ふるかわ よしのり)先生

中谷宇吉郎雪の科学館 館長 / 北海道大学 名誉教授


日本結晶成長学会の会長や、北海道大学の低温科学研究所の所長などを歴任し、国際宇宙ステーション「きぼう」で氷の成長の宇宙実験を行ったことでも知られています。


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Q48

冷凍庫の霜

冷凍庫に霜がつくのはなぜですか?霜とは何なのか知りたいです。また、霜ができる冷凍庫と、霜ができない冷凍庫の違いはなんですか?(るり葉さん / 千葉県・11歳)

 冷凍庫を開けると、真っ白な霜がついていることが多いですね。この霜の話に入る前に、空気中に含まれる水蒸気の量から話をはじめましょう。

 毎日の天気予報を見ると、今日は湿度が低くからっとした天気とか、湿度が高く蒸し暑い天気というような説明がありますね。これは、空気には水蒸気が含まれているためで、空気が含むことができる最大の水蒸気の量(飽和水蒸気量と言います)に対して、実際に空気に含まれる水蒸気の量をパーセントで表したものが湿度です。たとえば、湿度50%というのは、最大の水蒸気量のちょうど半分の水蒸気が空気に含まれることになります。 

 この空気に含まれる最大の水蒸気の量は、温度が下がるとだんだん少なくなります。このため、ある一定の量の水蒸気を含む空気を冷やしていくと、湿度が上がってやがて100%になります。この温度よりさらに冷やすと、空気中の水蒸気は小さな水滴として出てくることになります。上空の白い雲は、こうしてできたたくさんの水滴からできているのですね。真夏に、コップに冷たい飲み物を入れると表面に水滴がついてくもりますが、これも冷たいコップの表面が周りの空気を冷やして、水蒸気が水滴として現れるからです。

 さて、冷凍庫の中に戻りましょう。冷凍庫の中の温度は、コップの表面の温度よりずっと低く0℃以下になっています。このため、空気中の水蒸気は、もはや水滴ではなく氷の小さな粒となって現れることになります。このような氷の粒の集まりを、霜と呼びます。すなわち、霜は空気中の水蒸気が直接氷の粒として出現したもので、上空の雲の中でできる雪の結晶と同じできかたです。冷凍庫は、食品の出し入れでしょっちゅう開け締めをしますので、そのたびに外の空気が流れ込みます。このため、水蒸気もどんどん入ってきて、この水蒸気が霜となって現れるのです。

 最後に、「霜ができない冷凍庫」といっても、実際は霜ができないわけではありません。冷やし方をくふうしたり空気を循環させたりして、じつは目に見えない所に霜ができるように作られているだけなのです。見えない所にできた霜は、自動的にときどきヒーターで溶かしてしまうなどのくふうもされていて、冷凍庫を便利に使えるようにしているのですね。

その他の現象 #冷凍庫#霜
Q47

ファミリーレストランの氷

ファミリーレストランの飲み物に入っている氷が大きくくぼんでいるのはなぜですか?(伸一郎さん / 石川県・10歳)

 確かに、レストランなどで飲み物に入っている氷には、不思議なくぼみがあるものが多いですね。この氷には、もう一つ大きな特徴がありますが気がつきましたか?その特徴は、家庭の冷凍庫で作った氷とくらべると、とても透明できれいであることです。氷にできたくぼみは、じつはこのことと関係があります。

 はじめに、家庭の冷凍庫で作った氷を見てみましょう。この氷は、白っぽくてあまり透明ではありません。家庭の冷凍庫では、容器に入れた水をそのままで静かにおいて凍らせます。このときに、水に溶け込んでいた空気が細かな泡となって出てきて、氷の中に閉じ込められてしまいます。このため、できた氷は白っぽく透明ではなくなってしまいます。

 では、レストランなどで使われる氷にもどりましょう。この氷は、水を凍らせるときに出てきた泡を、上手に逃してあげることができるくふうをして、作っています。そのくふうとは、氷を作る容器に最初から水を入れておくのではなく、ノズルの先端から吹き出る水を容器に吹きかけながら凍らせるのです。こうすると、水が凍りついて泡が発生しても、水の流れのために泡が吹き飛ばされてしまい、泡を含まない透明な氷ができるのです。このような氷の作り方では、容器が氷で埋められてくると、ノズルからの水で泡を吹き飛ばす効果が弱くなり、最後はどうしても空気の泡が氷に取り込まれてしまいます。このため、容器が完全に氷で埋めつくされる前に、まだくぼみが残っているときに凍らせることをやめます。このため、氷にくぼみが残ってしまうのです。くぼみが残るというのが、透明な氷を作るための秘密なのです。

(回答掲載日:2022年6月7日)

#氷の不思議
Q46

冷凍庫の氷

氷屋さんから買った氷を2ヶ月冷凍庫に入れて置いたら小さくなってしまいました。なぜですか。(康二さん / 岐阜県・10歳)

 私たちの良く知っている水は、普通は液体の状態ですね。しかし、水は液体の状態だけではなく、氷点下の温度になると固体の氷に変わりますし、空気の中には気体の水蒸気として水分が含まれています。このように、水というのは、液体であったり、固体であったり、気体であったりと、その時の条件によっていろいろな状態に変化します。

では初めに、液体の水をコップに入れて、ふたをしないでそのままおいておくと、どうなるかを考えてみましょう。コップの水の量は、時間がたつとだんだん少なくなって、やがて消えてしまうはずです。これは、液体の水が“蒸発(じょうはつ)”して、水蒸気となって空気中に逃げていったからですね。これと同じように、冷凍庫の中に氷の固まりを入れておいても、氷の表面からは水分が水蒸気として空気中に逃げていきます。このため、氷の固まりは、融けることがなくても、だんだん小さくなってしまうのです。水分が、液体の水から気体の水蒸気になることを、蒸発と言いましたが、固体である氷から直接気体の水蒸気に変化することを、“昇華(しょうか)”と呼んで、区別しています。

この昇華という現象は、ドライアイスでも観察されます。ドライアイスは、二酸化炭素の固体ですが、室温においておくと融けることなく気体の二酸化炭素にもどり、やがて消えてしまいます。冷凍庫においた氷と、同じことが起きているのですね。

(回答掲載日:2022年3月8日)

#氷の不思議
Q45

人工の雪と自然の雪の違い

10歳の娘の質問です。人工の雪と自然の雪って何が違うか教えてください。(まきママさん / 福井県・38歳)

 雪が不足したスキー場などで、人工雪でゲレンデを整備したという話はよく聞きますね。どうやって作っているのか、そして自然に降り積もった雪とどう異なるのでしょう。

 まず、自然の雪というのは、空から降り落ちた雪の結晶が降り積もってできることは、説明するまでもありません。枝がたくさんのびて複雑な形をした雪の結晶が降り積もるので、自然の雪はふわふわの状態で、とても軽いものです。特に気温の低い高山や北海道などでは、本当に羽毛のようにふわふわの雪になって、パウダースノーなどと呼ばれることもあり、スキーヤーやスノーボーダーのあこがれです。

 一方、人工の雪は、見た目は自然の雪のように真っ白ですが、その作りかたは全く異なります。いくつかの方法がありますが、ひとつは氷屋さんで売っているような硬い氷の固まりを砕いて小さな氷の粒を作り、それを撒きちらすことで積もらせるものです。つまり、大量のかき氷を作って敷き詰めたようなものですね。もう一つは、大気が冷え込んで気温が氷点下になったときに、水をノズルから霧状に噴射させる方法です。噴射された水は小さな水滴となり、冷えた大気で急激に冷やされます。すると、水滴が地面に落下するまでの間に凍りついて、球形の氷の粒となって地面に降り積もります。(注)

 このいずれの方法でも、降り積もっているのは氷の小さな粒ですので、積もった雪は自然の雪のようにふわふわにはなりません。したがって、人工の雪は、できた最初からかなり固い雪になっています。自然の雪のような、軽くてふわふわな状態は作ることができません。

この人工の雪は、スキー場などでまだ自然の雪が十分降り積もっていないときなどに使われて、スキーヤーには喜ばれます。しかし、人工の雪を作るには大量の水や電力が必要ですので、環境に優しいとは言えませんね。スキーは、本来自然に積もったふわふわの雪の上を、さっそうと滑って楽しむスポーツですので、少し考えさせられますね。

(回答掲載日:2022年3月8日)

(注:ちなみに、スキー場などの人工雪では、氷を砕く方法の装置を人工造雪機、水を噴霧する方式の装置を人工降雪機と呼んで、区別しているようです。)

#人工雪#雪の不思議
Q44

氷の食感と溶け具合

美味しい氷は?溶けやすい氷と溶けにくい氷ってあるの?(まささん / 栃木県)

 氷を融かすには、熱が必要です。その熱の量は、融解熱と呼ばれるもので、氷の量に応じて決まります。したがって、融かす氷が、固まりであっても、ふわふわのかき氷であっても、氷の量が同じであれば必要な熱の量は同じです。にもかかわらず、実際にはふわふわのかき氷のほうが、固まりの氷よりも早く融けてしまうのはよく経験することです。これは、氷そのものが融けやすい、あるいは融けにくいということではなく、氷を融かすのに必要な熱がいかに早く氷に届くかの違いです。実際、同じ氷の固まりを二つ用意して、フライパンにのせて火にかけた場合と、そのまま室内に放置した場合を較べると、当然前者のほうが早く融けてしまいますね。これは、同じ形の氷の固まりであっても、それが融けきるのに必要な熱が、フライパンにのせたほうがすばやく氷に伝わるからです。すなわち、氷自体に融けやすい氷や融けにくい氷の区別があるのではありません。同じ量の氷に、素早く熱が加わって急速に融けるのか、逆に熱が伝わりにくくてなかなか融けないのかの違いを、このように表現しているのだと思われます。

 また、氷の形状や融け方が食感にも関連することは確かでしょう。しかし、同じ氷であっても、ふわふわのかき氷が好きな人もいれば、少しザラザラしたかき氷の方が好きな人もいるはずです。美味しいと感じるのは人それぞれですので、一概にこれということは困難です。

(回答掲載日:2022年3月8日)

#氷の不思議
Q43

凝固点降下と過冷却

過冷却と凝固点降下について教えてください。過冷却は凍るとき核となる何かきっかけがあって凍り始めるのであれば、なぜ不純物(核?)がたくさん溶けている水は0度以下ですぐ凍り出さないのでしょうか?過冷却の核と不純物は違うのでしょうか?凝固点降下の状態の方が過冷却より起こりやすい現象なのでしょうか?(ゆきまるさん / 富山県・18歳)

  過冷却も凝固点降下も液体が凍る温度(凝固点、注参照)に関連するので、混乱しますね。しかし、この2つは、全く別の現象です。また、これらの現象はどのような液体でも起きるのですが、ここでは質問にあるように液体として水を考えます。

 まず、過冷却から考えてみましょう。過冷却とは、液体の水をゆっくり冷やしていったとき、水の凝固点(0℃)になっても凍結を開始せず、凝固点以下の温度でも液体のままで存在する現象です。したがって、水の凝固点自体には、変化はありません。過冷却の状態にある水は、本来はその温度では固体の氷になっている方が安定なので、何かきっかけがあれば凍りたがっている状態といえます。このきっかけは、過冷却水中にある大きさをもった氷の固まり(すなわち、「氷の核」)ができることで、核生成と呼ばれる現象です。過冷却水中にこの氷の核が1個でもできると、一気に全体が凍り始めるのです。

 さて、ここで「氷の核」と言いましたが、過冷却水中にいきなり氷の核が発生するのはとても困難なことです。しかしながら、水中に細かな粒子が含まれていたり、容器の表面に傷があったりすると、この氷の核ができやすくなるという性質を持っています。氷の核の生成を助けるような粒子などを、氷晶核や凍結核などと“核”をつけて呼ぶことも多いですが、これはいわゆる「氷の核」そのものではないことに注意が必要です。

 一方、凝固点降下というのは、水に不純物が“溶け込んでいる”状態、すなわち水溶液になっている場合に、凝固点そのものが下がる現象です。通常は、モル凝固点降下と呼ばれていて、水中に溶けた不純物をモル濃度で表示すると、それに比例して凝固点が降下します。例えば、海水には塩が含まれていますので、凝固点は−1.9℃程度になります。したがって、0℃と−1.9℃の間の温度では、海水は決して過冷却状態ではないことになります。

 最後に、この海水の温度をもっと下げていくと、どうなるかを考えてみましょう。海水の凝固点である−1.9℃までは、もちろん液体のままですが、もっと温度が低くなると、過冷却状態となり、やはり液体のままで存在できます。過冷却の大きさ(過冷却度と言います)は、凝固点からどれだけ温度が低下しているかで定義しますので、同じ温度の過冷却状態であっても、過冷却度は純水のほうが大きいということになります。過冷却した海水が凍り始めるときも、純水と同じく氷の核が必要です。水に溶けている不純物の分子はあまりにも小さいので、氷の核の生成を助けるものには、ならないのです。

(注:この説明では、液体が固体に変わる温度として、“凝固点”という語を使いました。しかし、逆に固体が液体に変わるときには、“融点”という語を使います。両者は、全く同一の温度ですので、どちらを使っても構いません。)

(回答掲載日:2022年3月8日)

#過冷却水#凝固点降下
Q42

太陽の熱

太陽が出て屋根雪が融けるのを見て思ったのですが、太陽の熱は地球までどうやってとどくのですか?(ひなたさん / 富山県・10歳)

  雲間から太陽が顔を出して、日差しが戻ってくると急に暖かく感じます。太陽は地球からはものすごく離れたところにあるのに、太陽の熱が地球までどうやって届いているのか、不思議ですね。

 太陽の話の前に、もう少し身近にあることを考えてみましょう。例えば、バーベキューをするときの炭火や台所のガスコンロの火は、もし直接触ったらとても熱くてやけどをしてしまいます。しかし、直接触るのではなく、少し離れたところからでも手のひらをかざすだけで暖かさを感じます。これは、電磁波と呼ばれる波によって熱が伝わる現象で、放射(あるいは、輻射)と呼ばれます。電磁波という言い方は少しむずかしいですが、光は電磁波の一部ですし、テレビやラジオなどの放送に使う電波も電磁波です。すなわち、電磁波というのは、空中を伝わる電気の波と考えても良いでしょう。光や電波のちがいは、この波の一つ分の長さ(波長と言います)によります。電波は、波長が非常に長い波ですし、光は逆にものすごく波長の短い波になります。この電磁波で、特に熱を伝える性質が強い波長の部分を赤外線と呼びます。赤外線の波長は、私達の目に見える光(可視光と言います)の波長よりもかなり長めで、目で見ることはできません。しかし、炭火やガスコンロの火は、この赤外線をたくさん出しているので、手をかざすだけ暖かく感じるのです。

 さて、太陽に戻りましょう。太陽は地球からは遠く離れた位置にありますが、表面の温度は非常に高く、およそ6000度にもなっています。この太陽からは、可視光とともに大量の赤外線がでていて、宇宙空間を放射によって伝わり、地球に届くのです。このため、太陽が見える昼間はとても明るくなりますし、同様に大量の赤外線も届いています。このため、遠くにある太陽からでも十分な暖かさを感じることができ、屋根の雪も融かしてしまうのです。太陽が雲にかくれると急に気温が下がるのは、光と同じように地表に届く赤外線の量も減ってしまうからです。

(回答掲載日:2022年2月28日)

その他の現象 #電磁波#熱#放射#太陽
Q41

霜はどこからおりてきますか?

寒い朝、地面が白くなっていました。おかあさんに霜がおりたからと教えてもらいましたが、霜はどこからおりて来たのかわからないので教えてください。(孝太郎さん / 富山県・10歳)

  晴れわたった冬の寒い朝には、あたり一面が真っ白になっていることがあります。たしかに、これを「霜がおりる」と表現しますが、とても素敵な言い方ですね。では、はじめに霜はどのようにしてできるのかを考えてみましょう。

 霜は、地面や地表にあるさまざまな物体にできた氷の結晶です。氷の結晶ができるためには、原料になる水分が必要です。こう考えると、地面にできた水たまりのようなところに霜ができそうですが、じっさいには水たまりには透明な氷ができるだけで霜はついていません。霜は、かえって水たまりなどがないところにできていることに気がつきます。

 では、霜の原料である水分はどこからくるのでしょう。この水分は、じつは空気中に含まれる水蒸気なのです。この水蒸気は、空気が冷やされるともう空気中にはとどまることができずに、液体の水や固体の氷として現れるという性質をもっています。たとえば、コップに氷を入れると、コップの外側がくもります。これは、冷えたコップのガラスのすぐ外側の空気も冷やされるため、空気中にあった水蒸気が細かな水滴としてくっついたからです。同じように、冷凍庫でキンキンに冷やしたコップを外に出すと、こんどはコップの表面にうすいまくが張るように氷ができて、真っ白になると思います。これが、水蒸気からできた氷で、霜と同じものなのです。

 もともと気温の低い冬の季節には、風もなく晴れていると夜間に地面が急に冷やされて、氷点下になることがあります。このようなときには、地面に近い空気も冷やされますので、その中に含まれていた水蒸気が地面に氷となって現れます。これが霜のできるしくみです。ちなみに、霜は空気中の水蒸気を原料としてできるのですが、空から降ってくる雪の結晶も同じように水蒸気からできます。霜と雪はでき方が同じということになりますので、霜を虫眼鏡で見てみると雪の結晶と同じようなきれいな枝が見えることもあります。

 このように、霜は晴れた寒い朝にどこからともなく現れますので、「霜がおりる」という言い方をするようになったのではと思います。ブルッとするほどの寒い朝に、あたり一面が真っ白になっているというようすを、とても良く表現していると思いませんか?

(回答掲載日:2022年2月28日)

その他の現象 #霜#自然現象
Q40

つららの不思議

つららの表面がデコボコしているのは凍ったり融けたりして出来るからですか。教えてください。(ボーゲンさん / 長野県・10歳)

 軒先にぶら下がったつららは、ときには1m以上の長さにもなり、晴天をバックにするととてもきれいですね。つららの表面は確かにデコボコしていて、奇妙な形をしています。このデコボコのできる理由は、つららのでき方に関係するかなり難しいしくみを考えないといけません。

 もし今度、つららを見つけたら、その表面のデコボコの特徴をもう一度よく見てみましょう。すると、つららの長さや太さとは関係なく、デコボコのデコとデコの間隔がどれもほとんど同じであることに気がつくと思います。この間隔はおよそ1cmであることが知られています。

 このデコボコができるしくみを考える前に、つららがどのようにして大きくなるか(成長するか)を説明しましょう。つららは、建物の屋根に雪が積もっているときに、その軒先から伸びていることが多いと思います。建物の内部は暖房が入っていますので、屋根から熱が伝わり、積もった雪を下(屋根の側)からゆっくり融かします。すると、融け水は、屋根の傾きのために軒先に向かって流れていき、軒先で外気にさらされると再び冷やされて凍り始めます。こうして、小さな氷のかたまりが軒先にぶら下がります。軒先には屋根からつぎつぎと融け水が流れてきますので、この水は軒先の氷のかたまりの表面に薄い水の膜を作りながら流れ落ち、最後にかたまりの下からしたたり落ちます。この膜を作って流れる水は、氷点下の外気で冷やされますので、水の膜の内側(氷の側)から凍りついて、中の氷をゆっくり太らせます。さらには、かたまりの先からも凍っていきます。こうして、氷のかたまりはだんだん太さを増すとともに長さも長くなっていき、つららになります。

つまり、つららが大きくなるときには、必ずその表面に薄い水の膜ができていなければなりません。このときには、表面のデコボコのデコの部分にもボコの部分にも、同じように水の膜ができているはずですので、どちらの部分でも少しずつ凍りついて、氷が太くなっていきます。決して、凍ったり融けたりしているわけではなく、つららの表面ではどこも凍っていくばかりで、融けるところはないことに注意してください。では、デコボコはどうしてできるのかですが、デコの部分とボコの部分ではほんの少しだけ水の膜の厚みが違います。デコの部分が水の膜が少し薄いので、外気で冷やされやすく、凍るのが速くなります。こうして時間がたつと、つららの表面にはデコボコの模様ができてしまうのです。

 最後に、デコボコの間隔がおよそ1cmであるというのは、つららの表面にある水の膜の中での流れや外気からの冷やされ方などを考えると、うまく説明できることが明らかになっています。つららについては、参考に上げたコラムにも説明があります。

参考 http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/publish/11oriori36.pdf 

(回答掲載日:2022年2月28日)

その他の現象 #つらら#自然現象
Q39

ひょうやあられが降る条件

ひょうやあられは、どういう時に降るものですか?(怜さん / 長野県)

 ひょう(雹)やあられ(霰)は、よくひとくくりで呼ばれますが、その特徴や成因はかなり異なります。それぞれについて、違いを見てみましょう。

雪の結晶は、大量に浮かんだ雲粒(直径が0.01ミリ以下の大きさの水滴)の中に発生した氷の粒が、時間とともに周囲の水蒸気をもとに大きく成長することで作られます。雪の結晶は、成長するとともに重さが増すので落下速度も大きくなります。すると、結晶の周りの空気の流れにより、結晶に雲粒が衝突して粒のままで凍りつく場合があります。このような雪の結晶は、雪の結晶の分類表にもある「雲粒付きの雪結晶」ということになります。このとき、雲が非常に濃い(雲粒の数が非常に多い状態)場合には、雲粒がつぎつぎと衝突して凍りつきます。最後には、もとの雪の結晶はもはや見えなくなり、凍りついた雲粒の塊になってしまいます。これが、「霰」と呼ばれるものです。実際に降り落ちた霰を拾い上げて、凍りついた雲粒を丁寧に外していくと、最後には元になった雪の結晶が残っているのを確かめることができます。

 一方、雹は、白い霰とは異なり、透明な氷の塊として降ってきます。これは、霰ができるときよりも、もっと大量に雲粒が衝突すると、衝突した雲粒はもはやその場で凍りつくことができず、氷の表面を水の膜で覆ってしまうほどになります。雹は、この水の膜が凍ることで、透明な氷の塊としてだんだん大きく成長することで生成されるのです。したがって、氷の塊である雹は非常に重く、雲の中を高速で落下することになります。雹が大きく成長するためには、雹の落下速度に匹敵するような強い上昇気流があることが重要です。これによって、雹は長い時間雲の中に滞在することができ、大きな塊に成長できます。このような強力な上昇気流が生じるには、極端に発達した積乱雲が必要で、竜巻などを引き起こすこともまれではありません。雹は、竜巻などの発生と合わせて観測されることが多いのは、このためです。雹といっても、大きさはせいぜい直径で1センチ程度のものがふつうですが、場合によってはゴルフボール程度の大きさになることもあります。また、まれに直径が10センチを超えるものが観察されたという記録もあります。さらに、雹は必ずしも冬の季節に特有なわけではなく、積乱雲の発達しやすい夏の猛暑のときに降ることも少なくありません。落下速度があまりに大きいため、上昇気流から抜け出すとあっという間に地面に到達してしまうので、真夏の気温でも融けて水にもどるひまがないからです。

(回答掲載日:2022年2月17日)

その他の現象 #霰#雹#自然現象
Q38

飛行機の上空で窓に雪の結晶のようなものが?

国際線の飛行機に搭乗したとき、上空で窓に雪の結晶のようなものが張り付いていましたが、あれはどのような現象だったのか教えて下さい。(雪男さん / 石川県・40歳)

 飛行機の窓は、アクリル樹脂の板でできていて、3層の構造になっています。国際線の飛行機は、高度が10キロメートル以上を飛行するので、外気の気温は−50℃以下にもなります。このため、外気に直接触れている一番外側の窓板は、急激に冷やされた状態になっていて、3層の窓板の隙間にある大気に含まれる水蒸気が氷として凍りつくことがあります。これが、雪の結晶のようなものが張り付いたものの正体で、窓霜と呼ばれるものです。窓霜は、北海道などの寒冷な地域では窓ガラスの表面にできるものとして知られていますが、断熱の行き届いた建物ではめったに見かけなくなりました。飛行機の窓で見られるというのは、快適な機内と外気との温度差がいかに大きいのかを物語っています。飛行機が空港にいるときやそれほど高度の大きくない国内線での飛行では、外気温はそれほど下がりませんので、このような現象が見られる機会は少ないと思います。窓霜についての詳しい説明は、本Q&AのQ35の回答を御覧ください。

 ちなみに、飛行機の窓は3層になっているというお話をしました。これは機内の気圧を保つために十分な強度を持つ窓とすることが主な役割ですが、この窓霜の発生をできるだけ抑えるという工夫もあります。窓板を注意深く見ると、どこかに小さな穴があけてあるのに気がつくと思います。この穴は、3層の窓の中間の窓板にあいていて,窓板と窓板の隙間の空気を出し入れする役割をもっています。飛行機の機内の空気は、非常に乾いた状態にあるので、この空気が出入りすることで窓霜の発生を抑制することができるのです。

(回答掲載日:2022年2月4日)

その他の現象 #窓霜#自然現象
Q37

雪の溶け方

大雪が降った後の二日後に見かけたものです。誰も踏まれていない路面の雪が溶け、泡泡のようなとてもかわいい形になっています。指で突くと、とても薄くてすぐに破れました。なんで雪が溶けると、こんな形になるんでしょうか?(ナナハチさん / 東京都)

 最初に、氷屋さんで売っているような透明な氷の塊を急いで溶(融)かしたいときにどうするかを考えてみましょう。塊のままでおいておくとなかなか溶けませんが、塊を砕いて小さな粒にすると早く溶けます。これは、氷が溶けるときには必ず塊の表面から溶けるからで、同じ氷の量で較べると粒が小さいほど表面がたくさんあるので、早く溶けることになります。さらに、最初はギザギザした形の氷の塊を溶かすと、溶けるとともに全体に丸みを帯びてくるということもよく経験することです。これは、粒の尖ったところほど溶けやすいという性質があるからです。

 さて、ご質問にある積雪は、雪の結晶が降り積もったものですので、小さな氷の粒でできています。したがって、積もったあとで気温が0℃以上になると、表面から溶け出すことになります。表面ほど溶けやすいはずですので、小さな雪の粒は更に小さくなっていきます。また、雪が溶けない氷点下の気温であっても、小さな氷の粒は直接水蒸気へと蒸発(科学的には、“昇華”と呼ぶのが正しいのですが、ここでは分かりやすく蒸発を使います)し、溶ける場合と同じように表面が多いほど蒸発しやすくなります。こうして、積もった雪の粒は、時間とともに小さくなり、やがて消えていくのです。このような過程で、泡が重なったようなかわいらしい形が現れたと考えられます。さらに、溶けたり蒸発したりすることで、雪粒どうしの結びつきが弱くなるので、指でつつくと簡単に壊れてしまうのです。

(回答掲載日:2022年1月31日)

#自然現象#雪の不思議
Q36

雪の気配

明日は雪が降るよ、という予報が流れた日は、あたりがしんと静まり返っていて、誰もいないような気がします。雪には気配というものはあるのでしょうか?(hiraさん / 東京都)

「気配」という言葉は、科学の世界では使いませんので、「予兆(あるいは、前兆)」などで置き換えて考えてみましょう。最近では、地震の発生や火山の噴火などの自然現象が起きる時に、予兆があるかどうかが議論されたりしますので、ときどき耳にする言葉かと思います。さて、ご質問の「雪が降る」という現象にもこのような予兆があるかと言うと、その可能性は小さいと思われます。天気予報も、地球の大気の動きなどを予測して、未来の天気の変化を予報するもので、予兆とは異なります。しかし、東京のように一冬に一、二度しか雪が降らない地域では、普段は現れない特別な気象条件になっていることが多いかと思います。すなわち、少なくとも雪が降るには気温が氷点下、あるいはプラスでも0℃に非常に近い状態になっている必要がありますし、天候の悪化に向けて気圧が急に下がるなどということもあると思います。このような急激な気象変化があると、体調の変化を感じたり、普段とはどこか違うという感覚を持つ方もいます。

 この質問に回答するにあたり、東京や加賀市に住む何人かの人に、雪が降る前になにか普段と違う感じがするかどうか聞いてみました。多くに皆さんは、あまりそのような感じはしないということでした。しかし中には、「「雪が降る」という予報がでるのは東京ではかなり珍しいので、なんとなく周囲もそわそわして「早く帰らなきゃ」という雰囲気になったり、帰り道でいつもとは段違いの冷え込みと静けさを感じた記憶があります。」と回答をくださった方がいます。質問者の方が感じられたことも、おそらくこのような感覚ではないかと思います。

 一方、雪が積もってしまうと、あたりがとても静かになった感じがするというのは多くの方が経験されることと思います。これは、積もった雪が音の伝わりや反射を弱めるためと考えられます。詳しい説明は、Q30の回答を参照してください。

(回答掲載日:2022年1月31日)

#雪と音#自然現象#雪の不思議
Q35

窓霜

窓霜の模様は何種類ありますか。教えてください。(まどしもさん / 秋田県・12歳)

 窓霜とは、外気で冷やされた窓ガラスの表面にできる霜のことです。最近では、建物の断熱性能も上がり、めったに見ることができなくなりましたね。

 窓霜の模様については、雪の結晶の分類表のようなものはありません。しかし、窓ガラスの表面にできた氷には、実は2つの種類があることを説明したいと思います。一つは、窓ガラスの表面に水蒸気(気体)から直接氷の結晶が生成したものです。冬の寒い朝などに、地表にあるさまざまな物体の上にできる霜とでき方が同じですので、窓霜と呼びます。一方、窓ガラスの表面に氷ではなく水滴ができ、ガラス表面全体が水の膜で覆われた状態になることがあります。その水の膜が、更に冷却されて凍ると、氷の薄い膜ができる場合があります。これは、窓氷と呼ばれるもので、窓霜とは異なります。窓霜と同じように、やはり複雑な模様ができます。両者は、成因が違いますので本来区別しないといけないのですが、同じよう模様をひと目で区別するのはなかなか難しいこともあり、区別せずにどちらも窓霜(あるいは窓氷)と呼んでいる場合も少なくありません。

 ところで、窓霜は気体である水蒸気から生成されると説明しましたが、このしくみは実はエピタキシャル成長と呼ばれる最先端の結晶成長法と関連します。エピタキシャル成長とは、基盤となる結晶の上に薄膜状の結晶を作る方法のことで、半導体結晶の生成などで広く使われる重要な先端技術です。この薄膜結晶の方位や特性は、基板の結晶の特性で大きく変わります。氷の場合でも、ガラスではなくヨウ化銀(AgI)やコベリン(CuS)などの結晶表面で水蒸気から氷結晶を成長させると、方位が決まった氷の薄膜結晶ができることが知られています。身近な窓霜の生成のしくみが、最先端の半導体技術と共通点があることは驚きですね。

(回答掲載日:2022年1月7日)

その他の現象 #窓霜#自然現象
Q34

晴れている時に降る雨や雪

時々、日が照っているのに雨が降ったり雪が降ったりすることがありますが(私の住んでいる地域では「狐の嫁入り」「狸の嫁入り」と呼んだりします)、何故このような現象が起こるのですか?仕組みを知りたいです。(翠さん / 東京都・17歳)

 日が照っているのに雨が降る、いわゆる「天気雨」という気象現象ですね。この天気雨(雪の場合も現象としては同じですが、天気雪とはあまり言いません。)が起きるしくみは、いくつか考えられます。雨は、上空の雲の中で生成された雪が下層に落下し、溶けて水滴となったものです。しかしながら、雪が雨となって地上に達するまでには、ある程度の時間がかかります。この間に、上空の雲が消滅してしまうと、雨が地上に降り落ちるときには、太陽が現れて日が差しているということが起こります。また、上空にかなり強い風が吹いていると、雨粒が地上に達するまでに雲が風に吹き飛ばされてしまい、太陽が顔を出していることもあります。このようなときに、日が照っているのに雨が降るという現象が起こります。

 一方、地上の気温が0℃以下(プラスでも0℃に近い場合は、溶けずに雪のままで降る場合があります。Q7の回答参照)では、上空の雲で生成した雪が溶けずに地上に達します。同じように、雪が地上に達するまでに上空の雲が消滅したり、吹き飛ばされたりすると、“天気雪”の状態になります。特に、雪は雨粒に較べてゆっくり落下するので、上空の雲で雪が生まれてから地上に達するまでに30分から1時間ぐらいの時間がかかります。もし、上空に風速10m/秒の風が吹いていると、雪は誕生から落下するまでに30kmから60kmも水平方向に飛ばされることになります。こうなると、自分のいるところは晴れていても雪が舞うということも十分に起こりそうですね。

(天気雨という気象現象を「狐の嫁入り」や「狸の嫁入り」などと呼ぶというのは面白いですね。これは、「日が照っているのに雨が降るなど、普通ではありえないほど不思議」という意味で、同じようにありえない不思議な現象である「狐の嫁入り」や「狸の嫁入り」になぞらえていると考えられます。)

(回答掲載日:2022年1月7日)

その他の現象 #自然現象
Q33

氷の分子は目で見られる?

特殊な顕微鏡などを使えば、氷の分子を実際に目で見ることはできますか?氷の分子は本当に六角形に手を繋いでいるような形になっているのか自分で見てみたいです。(雅紀さん / 東京都・15歳)

 顕微鏡と言えば、肉眼でレンズを覗き込む光学顕微鏡を思い浮かべます。しかし、近年ではさまざまなタイプの顕微鏡が開発されていて、中には原子や分子が観察できると謳ったものもあります。しかし、原子や分子と言っても、例えばボールのような固体がどんどん小さくなったものではありません。原子の構造は、中心に原子核があってその周囲を電子が雲のようにまとわり付いているというイメージです。したがって、このような原子あるいはいくつかの原子が結合してできた分子が「見える」とは言っても、ボールを見るようにその実物が見えるわけではありません。いくつかのタイプの顕微鏡について、見えるというのはどういうことかを考えてみましょう。

 最初に光学顕微鏡を考えてみましょう。これは、光は波であることを使って、レンズによる光の屈折により観察物を拡大して見えるようにしています。したがって、光の波長よりも小さなものは、原理的には見ることができないという限界があります。人間の目で観察できる光(可視光)の波長は、せいぜい400nm(0.0004mm)程度ですので、どんなに工夫をしてもこれより小さなものは見ることできません。原子や分子の大きさは、せいぜい0.1〜1nm(水分子の大きさは、0.37nm)ですので、光学顕微鏡で見える限界の1/1000の大きさです。すなわち、光学顕微鏡では原子や分子を見ることは不可能です(下記の注を参照)。

 それでは、光よりも短い波長を持つもので観察したら、もっと小さなものを見ることができるのではないかと、当然思います。こうして開発されたのが、光の代わりに電子線を使う電子顕微鏡です。電子線の波長は、可視光の1/1000程度ですので、原子や分子の大きさにほぼ匹敵する長さになります。すなわち、電子顕微鏡を使うと、大きめの原子や分子は見る事ができる可能性がでてきますが、かなり小さな部類に入る水分子を見るのはそれでもかなり困難です。また、大きめの原子や分子が見えると言っても、超強力な電子線を発生できる特別な電子顕微鏡を使わないと実際には難しいので、誰でも使えるわけではありません。

 一方、走査型トンネル顕微鏡(STM)、あるいは原子間力顕微鏡(AFM)と呼ばれる顕微鏡ではどうでしょう。これらの顕微鏡は、先端が鋭く尖った針で観察物の表面をなぞり、その表面の凸凹の状態を検知するものです。針の先端で感じた表面の凸凹の情報を再構築してモニター画面上に表示できるように工夫しています。私たちも、物体の表面を指先でなぞると、その表面の凸凹を感じることができる場合がありますが、この方法は意外と敏感なのです。その感度を十分に上げてゆくと、結晶表面の原子や分子の並び具合さえ検出することができます。しかし気をつけたいのは、この顕微鏡では実際に原子や分子が見えたということではなく、表面の凸凹の分布から原子や分子の存在や配列の様子を読み取っているということです。現在、世界最先端の性能を持つ顕微鏡では、氷の表面での水分子の分布を検出できる可能性があることが知られていますので、近い将来氷の表面で水分子が配列している様子を検出できるかもしれませんね。

 

(注:光学顕微鏡では、原子や分子を見ることは原理的にできません。しかし、2つの光の波が到達する時間の違い(位相差と言います)をうまく使うと、結晶表面などにある原子1個分の“段差”を観察できます。北海道大学低温科学研究所の佐﨑元先生のグループでは、この原理を使った世界最先端の光学顕微鏡を開発して、氷結晶の表面での水分子1個分の段差を観察しています。詳しい紹介は、Q14の答えを参照してください。)

(回答掲載日:2022年1月7日)

#観察
Q32

雪の結晶の名前

雪の結晶の形の名前はどのように付けたのか教えてください。(かたかたさん / 長野県・10歳)

 雪の結晶の形には、いろいろな名前がつけられていて、覚えきれないほどですね。しかし、名前のつけ方には、特に決まりや約束があるわけではなく、その形の特徴をとらえて名前がつけられていると思います。たとえば、雪の結晶の最も典型的な形は、樹枝状結晶と呼ばれるものです。これは、6本の枝がそれぞれ樹木の枝のような形をとることで名づけられています。樹枝状結晶のことは、英語ではデンドライトと言います。これは、もともと岩石などの内部に見られる樹の枝のような模様のことを呼ぶ言葉です。これが、雪の結晶にも使われるようになったと思われます。しかし、1931年に発行された「Snow Crystals」(W. A. Bentley and W. J. Humphreys、 Dover Pub. C.、 New York)という有名な雪の結晶の写真集の中には、まだデンドライトという呼び方は使われていません。これに変わる言葉として、シダ植物の指す “フェルン、fern”という言葉が、使われています。樹枝状結晶は、シダの葉のような放射状の形を持つので、そのように呼ばれたのでしょう。その後に発表された中谷宇吉郎先生の雪の結晶の分類表(1936年に発表された)には、樹枝状とシダ状の両方が使われています。このように、雪の結晶の形の呼び方も、研究の発展などさまざまな理由で変化するのです。

 しかし、ここで大事なことは、雪の結晶に名前をつけるためには、単に形の見た目の特徴だけではなく、その形ができた過程などを正確に把握していなければならないということです。その名前を聞くだけで、結晶のいろいろな特徴が頭に浮かぶというような名前をつけることができれば、理想的です。極端な話をすると、結晶の形に番号やアルファベットなどの記号を割り振るということも可能です。しかし、これではいちいち結晶の形を説明しないといけません。とても、不便なことになってしまいます。結晶の形に名前をつけるのも、実は慎重でなければならないのです。

(回答掲載日:2021年12月24日)

#雪の不思議
Q31

雪の形状

雪には様々な形がありましたが、雪が作られるときに、一番多い形はなんですか(とうろもこし™さん / 石川県・11歳)

 雪の結晶の形は、結晶ができるときの気温と大気中の水蒸気の量(一般には湿度と言いますが、結晶ができるためには湿度は100%以上でなければいけません。)の条件で決まります。したがって、雪が生成されている上空の雲の中がどのような条件かで、できる結晶の形も変化し、その結晶が一番多い形であると言えます。

 このことは正しいのですが、実際にはそう簡単な話ではありません。まず、雲の中の条件と言っても、雲の上層部と下層部では気温も水蒸気の量も大きく異なります。一般には、上層ほど気温が低くなります。雪の結晶は、このような雲の中を上層から下層に向かって落下しながら生成されますので、結晶のできる条件は時々刻々変化します。このため、私達が地上で観察する結晶の形は、その結晶がどのような経路をたどってきたか、すなわちどのような生成条件の変化を経験してきたかで、大きく異なります。

 しかし、地上で観察する雪の結晶では、いわゆる樹枝状結晶と呼ばれる綺麗な六本の枝が伸びた結晶が多いと思います。これは、マイナス15℃前後の狭い気温条件で生成されます。この樹枝状結晶は、細い枝の先端がどんどん伸びるので、他の温度領域と比べて、結晶のサイズの増加が急速であるという特徴があります。私達が住んでいる地域では、地上の気温が−15度よりも下がることはめったにありませんので、上空の雲の中には必ずこのマイナス15度の気温の領域が存在します。このため、雪の結晶は、落下途中にこの気温の領域を必ず通過することになります。このとき、一気に樹枝状に成長するので、どうしてもこの結晶が観察される機会が多くなると言えます。

 一方、南極などのもっと気温の低い地域では、上空にはマイナス15度という温度領域が存在しない場合もあります。このようなときには、樹枝状結晶はあまり見られず、もっと低温で生成されるような結晶形が増加することもあります。

 このように、その時に降っている雪の結晶のうち一番多い形は、上空の雲の中の条件によって変化するということになります。中谷宇吉郎先生の有名な言葉に、「雪は天から送られた手紙である」というのがあります。これは、上空の雲の中の気象条件が、地上で観察される雪の結晶の形に影響を与えているということを示しています。でも、この手紙を読み取るのは、そう簡単なことではなさそうと言うことがわかると思います。

(回答掲載日:2021年12月24日)

#雪の不思議#雪の形
Q30

雪と音、眠りについて

大雪が降り積もった夜はまわりの音が消えて「しーん」となっている気がします。 また、その翌朝は「いつもより、静かだなぁ」と感じます。 そのせいなのか、よく眠れた気もします。 除雪車の音は確かに聞こえるけれど、音が遠くに聞こえるような感じです。 雪には「防音の働き」があるのでしょうか?(茶々さん / 北海道)

 静かになるとよく眠れるのかどうかは、人それぞれであると思いますが、確かに雪が降っていたり積もっていたりすると、静かに感じられますね。音は空気の振動で伝わりますが、雪が降っていると空気の振動が雪で減衰されてしまうので、音が伝わりにくくなります。しかし、降雪時にとても静かに感じられるときには、いわゆるぼたん雪と呼ばれる粒の大きな雪が降っている場合が多いのではないかと思います。このぼたん雪は、雪の結晶が多数絡み合って降ってくるもので、比較的気温の高い時に見られます。このようなぼたん雪は、空気の振動を減衰する効果が大きいと思われます。このため、とても静かに感じられるのです。私は、北海道に住んでいますが、気温の低い真冬にはぼたん雪を作らず、雪の結晶がバラバラで降ってくることが多くなります。このようなときには、あまり周囲が静かになったという感じがしません。

 また、新雪が積もった朝などは、雪がやんでいてもとても静かに感じられますね。これは、積もった雪にも同じように音を減衰する効果があるからです。

 さて、ご質問の「防音の働き」があるかどうかですが、これは防音をどう捉えるかで答えが変わります。防音とは、音を吸収するだけではなく、音の反射を防ぐような構造にするとか、音を伝えやすい隙間を作らないとか、さまざまな要因が複雑に関連して達成されるものです。したがって、雪の降る夜の静けさと防音の働きは分けて考える必要がありそうです。

(回答掲載日:2021年12月3日)

生活・文化 #雪と音#雪の不思議
Q29

ふわふわかき氷と砂糖水

先日テレビで、ふわふわのかき氷を作るには、砂糖水で作った氷を使うといいという放送を観ました。天然の氷で作ったようになるそうです。なぜ砂糖水の氷でかき氷を作るとふわふわになるのでしょうか?(ミキさん / 石川県・33歳)

 私はテレビの番組を視聴していないのですが、砂糖水で作った氷は溶ける温度が0℃よりも低くなります。このことが、かき氷のでき具合に関係していると考えられます。

 砂糖などの入っていない純粋な水で作った氷は、0℃で溶けます。天然の氷も同じで、通常は何も溶け込んでいない真水が凍ってできていますので、この氷も0℃で溶けます。かき氷は、冷凍庫などに保管していた氷の固まりを取り出して、そのまますぐに削って作ることが多いと思います。冷凍庫の温度は−20℃近いので、ここから取り出した氷の固まりをすぐに削ると、溶ける温度よりもかなり低い温度のままで削ることになります。温度の低い氷は大変硬いので、これを削るとなかなかふわふわのかき氷にはなりません。しかし、冷凍庫から出した氷をしばらく室温においておくと、温度が上がって少し柔らかくなります。この氷を削ると、ふわふわのかき氷になるはずです。天然の氷で作ったかき氷はふわふわになるというのはよく聞きますが、実はこの原理を利用しています。すなわち、冷凍庫から出した氷をすぐに削るのではなく、しばらく室温において温度を上げてから削っているのです。

 さて、砂糖水を凍らせた氷は、溶ける温度が0℃よりも低くなります。これは、「モル凝固点降下」という現象で、砂糖に限らず水に溶かした不純物の量が多くなるほど溶ける温度が下がることを示しています。砂糖水の氷を冷凍庫に入れておくと、やはり−20℃近くに冷えているはずですが、溶ける温度との温度差は純粋な氷の場合より小さくなります。したがって、冷凍庫から取り出してすぐの状態で較べると、砂糖水の氷のほうが柔らかいということになります。したがって、冷凍庫から取り出してすぐの氷でも、ふわふわのかき氷ができるのだと考えられます。

 ところで、溶けていた砂糖は、氷になるとどこに含まれているのでしょうか?氷の固まりは、たくさんの小さな氷の粒が集まってできています。粒のひとつひとつは氷の結晶ですので、結晶の内部には砂糖などの分子は入り込むことができません(Q20の回答も参考にしてください)。したがって、砂糖水が凍ると、砂糖を含まない氷の粒がたくさんでき、砂糖は粒の外に押し出されることになります。このため、粒と粒の間の境目には濃縮された砂糖水の膜が残ります。この膜は、溶ける温度が非常に低くなりますので、冷凍庫の中でもまだ液体のままで残ります。すなわち、氷の粒と粒の間に潤滑剤を塗りこんだような状態になります。これが、氷の固まり全体を柔らかくする作用をもたらしているのです。

(回答掲載日:2021年10月12日)

生活・文化 #かき氷#実験#氷の不思議#砂糖