教えて館長!雪と氷のQ&A

皆さまから寄せられた雪や氷の質問・疑問に、古川館長がお答えしました!

古川義純先生

古川 義純(ふるかわ よしのり)先生

中谷宇吉郎雪の科学館 館長 / 北海道大学 名誉教授


日本結晶成長学会の会長や、北海道大学の低温科学研究所の所長などを歴任し、国際宇宙ステーション「きぼう」で氷の成長の宇宙実験を行ったことでも知られています。


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Q19

雪が青や緑に見える条件について

大雪が降った日に雪が青く見えました。とても不思議に思って雪の表面や中心部、地面近くなどの温度やその雪の状態を記録しました。その時の雪の表面の温度(青く見えた部分)は-23度でした。 そして2回目の雪が青く見えて多く雪が降った日にも記録しました。温度は-5度と1回目の記録と比べてみて降り積もった雪の温度は雪が青く見える理由とあまり関係がなかったと言うことがわかりました。2回目の大雪の記録をつける時に固めた雪と固めていない雪とで青く見えるのかということを比べてみました。すると固めた雪は緑色に見えました。同じ場所でも湿度などの条件を揃えられていなかったので結果が正しいのか分かりませんが、雪の密度が関係しているではないかと思いました。 雪は本来色がついておらず透明で光の反射や吸収により青い光を反射すると言う事は分かるのですがなぜ青く見えるのか、その条件は何なのかと言う事を知りたいです。(Machiさん / 富山県・11歳)

 雪といえば真っ白なイメージですが、それが青く(時には、緑色に?)見えることがあるというのは、不思議ですね。質問の中にある「雪は本来色がついておらず透明で光の反射や吸収により青い光を反射する」というのを、もう少し詳しく説明しましょう。

 雪が青く見えるという場所は、太陽の光が直接あたっている積雪の表面ではなく、積雪の断面にあいたくぼみのような少し影になった場所だと思います。実際、このくぼみの内側から外の光を透かすように見たときに、青みがかかって見えることが多いはずです。すなわち、この青い光は、積雪の中を透過してきた光を見た場合にしか見えません。

 さて、積雪は細かな氷の粒の集まりでできています。はじめに、氷を太陽の光(白色光)が透過するときに、光の強さがどう変わるかを見てみましょう。太陽からの光をガラスのプリズムで屈折させると、赤い光から紫の光まで7色に別れますね。光は波の性質を持っていますので、この色の違いは光の波長に対応しています。氷は無色透明と言いますが、実際には完全に透明ではなく、入射した光はごくわずかですが氷に吸収されます。この光が吸収される割合が、光の波長(すなわち、光の色)によって異なります。実際は、赤い(波長の長い)光のほうが青い(波長の短い)光よりも、吸収されやすいという特性があります。すなわち、氷の中を通過する太陽光(白色)は、赤い光がより早く弱くなることになり、割合として青い光のほうが強くなります。このため、青みがかかるのです。最初に述べたように、積雪も氷の粒でできていますから、光が積雪を通過するときにも、この性質が現れてきます。積雪のくぼみから外を透かして見る場合しか青く見えないのも、理由がわかりますね。

 これと同じ現象は、氷の塊でできた氷河や南極の氷山などでも見ることができます。この場合は、まさに氷の塊の中を光が通過しますので、青い光の成分の割合より多くなり、積雪の場合よりもっと青みがかかって見えることがあります。また、水中が青く見えるというのも同じ原理です。イタリアのカプリ島には、「青の洞窟」という有名な場所があります。ここは、海岸の切り立った崖の波打ち際にできた洞窟で、その内部に海水が流れ込んでいます。この洞窟の中に入ると海水が真っ青に輝くことで、この名前がついています。これは、太陽光が海水を通過して洞窟の入口から内部に差し込むときに、赤い光の成分が海水に吸収されやすいためにおきる現象です。氷と海水の違いはありますが、どちらも同じ原理で青く見えているのです。

 最後に、積雪が青く見える条件ですが、氷を通過する光の吸収は特に温度による大きな変化はありません。また、積雪の密度が高いと光の散乱(散乱は氷の表面での反射が主な原因で、青く見えることと直接は関係ありません)のため、通過してくる光の強さは素早く減少します。しかし、一方で密度が高いと、氷の粒の中を通過する長さは増えるはずで、より青みがかかることになります。両方の効果が複雑に関係しますので、その条件を明確に述べることは困難です。

(回答掲載日:2021年3月30日)

その他の現象 #光#雪の不思議#雪の色
Q18

雲が凍らない理由

上空は寒いのに、雲が凍らないのはなぜですか?また、雲が空に浮かんでいられるのはなぜですか?教えてください。(Kitutukiさん / 岐阜県・13歳)

 雲は、小さな水滴(雲粒)がたくさん集まってできています。雲粒の大きさは、直径で3〜10μm(すなわち、0.003〜0.01mm)程度でとても小さいものです。上空に行くと気温は下がり、やがて0℃より低くなります。雲粒は小さいとは言っても水でできていますから、このような温度になると凍ってしまってもおかしくないですね。

 実際には、気温が0℃以下であっても、雲粒は凍らずに水滴のままでいることができます。これは、水のもつ「過冷却」という性質によります。中谷宇吉郎雪の科学館では、ペットボトルに入れた水を冷凍庫で−5℃程度まで冷やしても、凍らずに液体のままでいることを示す実験を毎日行っています。この実験で作っている水が「過冷却水」と呼ばれるものです。この過冷却水は、ペットボトルを叩いたり、振ったりすると、簡単に過冷却の状態が破れて凍ってしまいます。それは、ペットボトルに与えた振動が氷を作るきっかけになるためです。また、振動がなくても、水の中に含まれているゴミやペットボトルの容器についた傷などがきっかけになって、やがて凍ってしまいます。

 しかし、雲粒の場合は、非常に小さいのでその内部にはゴミなどが入っていることはあまりありません。また、空気中に浮かんでいるので、容器の傷などの影響もありません。このため、ペットボトルで作る過冷却水より、もっと低い温度まで簡単に過冷却してしまいます。条件が良いときには、雲粒は−40℃程度まで凍らずに、液体の状態でいることができます。雲は、驚くほど低温になっても、凍らずにいることができるのですね。

 最後に、雲が空に浮かんでいられる理由ですが、雲を作る雲粒が非常に小さいことに関係しています。雲粒は、小さいとは言っても、もちろん地上に向かってゆっくり落下していきます。しかし、雲ができるときには、大気が上に向かって上昇していることが多いので、小さな雲粒も大気の流れに沿って上昇していきます。このバランスが取れているため、雲は空に浮かんでいることができるのです。

(回答掲載日:2021年3月30日)

その他の現象 #雲#過冷却水#水の不思議
Q17

雪は食べちゃダメですか?

雪はおいしそうなのに、お母さんは食べたらダメだといいます。 なぜ雪は食べてはいけないのですか?(カオリさん / 石川県・6歳)

 ふったばかりの雪は、まっしろでふわふわしていて、食べたらおいしそうですね。雪とおなじようなかきごおりは、食べてもへいきなのに、雪は食べてはいけないのはちょっとふしぎですね。でも、お母さんのいっていることは、正しいです。

 それは、そらからふってきた雪は、くうきのなかにうかんでいる小さなゴミなどをたくさんくっつけているからです。もしこんど雪がつもったら、きれいなコップに雪をつめて、とかしてみてください。そのとけた水をよく見ると、小さなゴミがうかんでいるのが見えるはずです。ゴミが見えなくても、水にとけてしまうものがはいっているかもしれません。ですので、そらからふってきた雪は、あまりきれいとはいえません。お母さんがいうとおり、食べてはいけません。

 さいしょにおはなしをしたかきごおりは、きれいな水をれいとうこでこおらせてできたこおりをけずってつくります。雪とちがって、かきごおりにはゴミははいっていませんので、おいしく食べることができるのです。でも、食べすぎておなかをこわさないようにしてくださいね。

(回答掲載日:2021年3月23日)

#雪の不思議
Q16

雪と氷のちがい

雪と氷の違いは何ですか? 細かい氷が雪と呼ばれるのですか?( ジェットストリームさん/石川県 )

 まず、雪も氷もH2O(1個の酸素原子(O)と2個の水素原子(H))という物質の固体(結晶)であるということから説明を始めましょう。H2Oに限らず、様々な物質は、温度と圧力によって液体であったり固体であったり、そして気体であったりします。この、温度と圧力の条件で、物質がどの状態を取るかを示す図は「相図」と呼ばれて、科学研究の場ではきわめて重要なものです。H2Oの3つの相( 3態とも呼びます)については、それぞれ「水」、「氷」、および「水蒸気」と特別な呼び方で呼ばれます。すなわち、H2Oという物質の固体としては、それがどのようにして出来たか(水が凍ってできたのか、水蒸気が凝華(注)してできたのか)や形状(かたまりなのか、細かな粒状なのか)とは全く関連なく、常に「氷」と呼ばれます。したがって、物質として見た場合は、「氷」という呼び方がより上位の言葉と言えます。

 しかし、最初に述べたように、実際には雪と氷は並列に記載されることも多く、時には混乱を招いていることも事実です。ご質問にあるように、細かい氷が「雪」ということもできますが、氷を削って作ったかき氷は、細かな粒の氷であっても雪とは呼びません。 

一般には、そのできかたによって区別していることが多いように思われます。すなわち、水蒸気からできた氷の結晶を「雪」、液体の水が凍ってできた氷の結晶はそのまま「氷」と呼んでいます。雪が降って積もったものは「積雪」と呼び、やはり雪の一種ということになります。

ただ、この区別にも例外がないわけではありません。たとえば、南極やグリーンランドなどで見られる巨大な氷の塊である氷床は、表面に降り積もった積雪がだんだん深くなると、自重で圧縮されて氷に変わります。これは、積雪が圧縮される過程で、その内部でまだ空気の流通(通気性)がある場合は「積雪」と呼び、さらに圧縮されて空気の流通がなくなると「氷」に変わるというように分けられます。すなわち、もともとは水蒸気からできた雪であっても、積雪になって圧縮されると「氷」に変わるということになります。

 このように、雪と氷の違いを明確に分けようとすると、それには当てはまらないものが出てきてしまいます。雪と氷、もともとは同じものですので、これは仕方がないことかもしれませんね。

 

 

(注)逆に、氷が直接水蒸気に変わる場合は「昇華」と言います。水蒸気から氷が生成する場合も、従来は同じ言葉が使われていました。しかし、混乱を避けるために、近年この言葉が提案され徐々に使われるようになっています。

(回答掲載日:2021年3月6日)

#氷の不思議#雪と氷の違い#雪の不思議
Q15

氷のすき間について

はじめまして。 小学校で4年生を教えています。 氷になると液体の水より体積が大きくなると学習します。その理由は氷ができる時にすき間ができるとのことですが、ふと疑問に思いました。 そのすき間は水にとけている空気なのか、それとも真空なのでしょうか。 氷の結晶構造のすき間の中に酸素や窒素の分子が入り込める余地はあるのでしょうか。(くすもとさん/大阪府・43歳)

 コップに入れた水を冷凍庫に入れて凍らせると、体積が約9%増加します。水も氷も多数の水分子が集合してできていますが、このことは水中より氷の中の方が水分子の詰り方がほんの少し疎らであることを意味しています。液体の水では、水分子は不規則に混じり合っています。これに対し、結晶である氷では、水分子は三次元的に規則正しく配列しています。下に示した図は、氷の結晶中での水分子の配列を示しています(産業技術総合研究所 灘浩樹先生提供)。水分子はH2Oですので、灰色の大きな球が酸素原子(O)、赤の小さな球が水素原子(H)を示しています。1個の酸素原子は、隣り合った4個の酸素分子と水素結合で結ばれていて、この結合の上に水素原子が1個ずつ配置されています。液体の水が凍って、このような結晶構造を作るときに、水分子が少しずつすき間を開けながら配列を作るので体積が増えるのです。

 とはいっても、このすき間はせいぜい水分子の大きさですから、ここに窒素や酸素などの他の分子が入り込むことはできません。最初に述べたように、コップに入れた水を冷凍庫で凍らせると、透明な氷ではなく真っ白な氷になってしまうことが多いですね。水中に溶けていた窒素や酸素の分子は、水が凍っても氷の内部には入れないので、気体として現れるしかありません。このとき生じた気体の泡(気泡)は、氷が成長するときに氷の中に取り込まれてしまいます。すると、この気泡に当たった光が散乱を起こし、氷は透明ではなく白く見えるのです。

 

 ところで、気泡を含んだ氷にどんどん圧力をかけていくとどうなるでしょう。気泡は、圧力とともにだんだん小さくなり、やがて氷の中から消えてしまいます。このとき、気泡の中の窒素や酸素はどうなってしまったのでしょうか。実は、氷の結晶の格子の中に取り込まれてしまっているのです。先程の話と矛盾しているようですが、圧力が高くなると水分子の配列そのものが変化して、無理やりすき間を作り、窒素や酸素の分子を取り込むことができるようになるのです。この特別な氷はエアハイドレート結晶と呼ばれ、実際に南極大陸を覆う氷床の深部で発見されます。氷床は、何十万年もの間に降り積もった雪が積み重なってできた、厚さが最大4キロにも及ぶ氷の塊です。このため、その深部では氷にものすごい圧力がかかっているので、気泡がエアハイドレート結晶に変化したのです。氷床は、深くなるほど古い空気を貯め込んでいます。まさに、”空気の化石”ですね。

(回答掲載日:2021年3月6日)

#氷の不思議
Q14

最新の研究について

現在行われている、雪結晶についての面白い研究はありますか?古川館長が特に気になっているものがあれば教えてください。(Kentoさん / 富山県)

 私は、雪の結晶だけではなく氷(雪の結晶も氷のひとつ)のさまざまな特性に興味があります。その意味では、特に雪の結晶の問題だけに焦点を絞るのは難しいのですが、その中でも興味深い研究を二つ紹介したいと思います。

 最初は、氷の結晶の表面構造を分子のレベルで解明しようという試みです。この研究は、北海道大学低温科学研究所の佐﨑元(さざきげん)先生を中心とするグループが行っています。氷の結晶は、大気中から飛び込んでくる水分子が一個一個順番に氷の結晶の格子に取り込まれることで成長します。このとき、氷の結晶の表面ではどんな事が起きているのかを、佐﨑先生たちは分子のレベルで顕微鏡観察するという試みを行っています。このような観察は非常に難しく、これまで世界中の誰もが成功していなかったものですが、佐﨑先生たちは新しい顕微鏡を独自に開発することで、初めて観察を可能にしました。これによって、結晶が成長するしくみを議論することや、表面で起きるさまざまな興味深い現象の本質を明らかにすることができるようになります。この研究は、雪の結晶を直接扱っているわけではありませんが、結晶の成長のしくみが分子レベルで明らかになると、雪の結晶の生成や形の変化のしくみも詳しく解明できるようになると、世界中の研究者から期待を集めています。

 もう一つは、新しく開発した人工雪成長装置で雪の結晶の成長実験を行っている北海道教育大学の高橋庸哉(たかはしつねや)先生の研究です。高橋先生は、垂直風洞と呼ばれる装置を作り、この中で雪の結晶を1個だけ空中に浮かせながら、成長させるという実験を行っています。人工雪の成長装置といえば、中谷宇吉郎先生の実験装置が有名です。この装置は対流型といって、水蒸気を含む空気が対流によって流れてくる中で雪の結晶を成長させています。したがって、中谷先生の作った人工雪は、対流による空気の流れに逆らうように成長しますので、結晶の形には少しゆがみが生じます。一方、1960年頃にイギリスの研究者たちが新たに開発した拡散型人工雪成長装置では、対流ではなく拡散によって水蒸気が流れるのを利用しています。この装置では、空気そのものに流れがありませんので、水蒸気の供給に偏りができにくく、比較的対称性の良い形となります。しかし、これらの装置では、雪の結晶は細い糸の上などに固定されて成長します。したがって、天然の結晶のように空中に浮遊して成長する結晶とは、結晶形の決まる条件などが異なる可能性があります。高橋先生の実験では、雪の結晶を空中に浮かべて成長させますので、天然の結晶の成長を完全に再現することができます。この実験は低温実験室で行うもので大変過酷な実験ですが、この研究が完成すれば、結晶の形に対する空気の流れの効果などが詳細に解明されるはずです。

 このような研究が進展することで、中谷先生の雪の研究が現代の最先端研究の中でも生かされることになります。中谷先生も大喜びされるのではないでしょうか。

(回答掲載日:2020年12月25日)

#実験#研究
Q13

とけない氷はあるのかな?

前に、雪の科学館で氷のペンダントを作りました。すぐにとけてしまい、悲しかったです。とけない氷があったら作りたいです。とけない、とけにくい氷の作り方をおしえてください。(あやかさん / 石川県・8歳)

 あやかさん、雪の科学館の氷のペンダント、すぐにとけてしまって残念でしたね。でも、とけない氷というのは、ざんねんながら作ることはできません。氷に限らずいろいろな物質は、とける温度が決まっています。氷は、この温度が0度ですので、部屋の中(室温は20度くらいですね)に氷をおいておくと、すぐにとけてしまうのはしかたがないことなのです。

 雪の科学館で氷のペンダントを作ったときの氷は、きれいな透明(とうめい)の氷だったと思います。台所にある冷凍庫(れいとうこ)で氷をつくると、普通(ふつう)は白くにごった氷になりますね。これは、最初に水にとけていた空気が、氷ができるときにはき出されて、空気の泡(気泡(きほう))として氷の中に閉じ込められたからです。気泡がたくさん含まれた氷は、とてもとけやすいのですが、気泡の入っていない透明な氷はとけるのに少し時間がかかります。室温であればやがてとけてしまうことにはちがいないのですが、雪の科学館の氷は、それでも少しはとけにくい氷になっています。このような透明な氷は、台所の冷凍庫でも少しくふうをすると作ることができます。まず、水にとけた空気を追い出すためには、冷やす前にいちど沸騰(ふっとう)させます。この水が冷めたら冷凍庫に入れるのですが、なるべく空気にふれないようにして、できるだけゆっくりと冷やしてこおらせると、気泡の少ない透明な氷になります。ためしてみて下さい。

(回答掲載日:2020年12月14日)

#単結晶#実験#氷の不思議
Q12

雪や氷の文化的な意味

北国には、雪や氷に関する伝統行事がたくさんあります。たとえば、諏訪湖の御神渡りや花巻のタロシ滝の計測などなど。金沢では氷室の仕込みが復活されています。でも、最近は温暖化のせいでこうした伝統行事がなくなりつつあります。自然現象が起きないことで、文化や伝統が消えてしまうのでしょうか?消えることでどんな影響があるのでしょうか?(ふくむら よしみさん / 茨城県・49歳)

 雪や氷に関する伝統行事が、地球温暖化のためになくなりつつあることは、大変残念なことです。伝統行事は、本来その土地の自然や気候、さらにそこに住む人々の生活様式などによって生まれて発展し、そして長年に渡って継続されることで生まれてきたものであると思います。このため、本来備えていた条件が変化してしまうと、その行事を実施していくことの意義や目的が薄れていくことになります。特に、雪や氷に関する伝統行事は、温暖化により雪や氷が少なくなったり無くなったりすると、行事そのものを実施することが困難となり、だんだん消えていく方向になるのはある程度はしかたがないかと思います。しかし、伝統行事が一旦消えてしまうと、後世になって復活再現することは極めて困難になります。したがって、これらの伝統行事の記録や保存などの活動が極めて重要になります。伝統や文化は、人々がどのような生き方をしてきたかの記録でもありますので、だれもが意識を高くして、消えてしまうことがないように努めていきたいですね。

 文化や伝統が消えてしまうということは大変残念なことですが、その一方で現代に生きる私達は、いま新たに多くの文化や伝統を作り出しつつあるといっても良いかと思います。最初はごく限られた人たちが行っていることであっても、やがて社会に浸透し、誰もが行うような行事として発展するものがあれば、新たに文化や伝統を作り出したことになります。百年後二百年後には、その時の伝統行事として継続されているかもしれません。すなわち、伝統や文化というのは、廃れるものもあれば新たに生まれるものもあります。ただ、古い文化や伝統を懐かしがるだけではなく、未来に向けて新しい文化や伝統を作っていくといこうという気持ちを持つことも、とても大切ではないでしょうか。

(ご質問ありがとうございます。伝統や文化に関する話題ですので、その人その人で考え方も対処のしかたも異なると思います。従いまして、この回答は私自身が個人的に考えていることにもとづいています。他にも、さまざまなご意見や考え方があると思います。)

(回答掲載日:2020年12月14日)

生活・文化 #文化#環境問題
Q11

植物は凍らない?

冬のとても寒い日でも椿などの花が咲いていたり草が生えていたりしますが、0度以下でも植物は凍らないのでしょうか?(なっちゃんさん / 石川県)

 生き物は、植物でも動物でも体が凍ると普通は死んでしまいますね。このため、寒い冬を凍らずに生き延びて、次の春にまた活動ができるように、生き物たちは特別なしくみを持っているのです。植物と動物では、そのしくみは異なりますので、まず植物について見てみましょう。

 植物が凍らないしくみのひとつは、冬になるとその体の中にたくさんの糖分やアルコール分などの成分を生成することです。水道水などのきれいな真水を冷やすと、通常は0度になると凍ってしまいます。しかし、水に糖分やアルコール分などが含まれていると、0度では凍らずに氷点下の温度になっても液体のままでいることができます。少し難しい言葉ですが、このことは「氷点降下(ひょうてんこうか)」と呼ばれていて、水に含まれる物質の濃度が高くなるほど、水が氷に変わる温度が低くなるという現象です。冷凍庫などに甘いジュースなどのペットボトルを入れておくと、真水のボトルよりも凍りにくくなりますが、これはジュースに大量に含まれる砂糖による氷点降下のためです。野外にいる植物も、冬が近づいてだんだん寒くなると、体内に糖分やアルコール分などを溜め込んで、この氷点降下のために体内の水が凍るのを防いでいるのです。実際、冬の寒さが厳しくなると野菜の甘さが増して、おいしくなると言われますね。これは、寒さに対抗するために、その体内に糖分を溜め込むためなのです。

 いっぽう、動物にも寒い冬を凍らずに越して、翌年また活動を再開するものがたくさんいます。人間と同じような哺乳類などは、自分で体温を調整する事ができます。しかし、魚や昆虫などの変温動物は自分では体温調節ができません。このような動物の体温は、周囲の環境の気温とほぼ同じになっていますので、冬になると氷点下まで下がります。それでも、多くの動物は凍ることなく、寒い冬を生き延びることができます。このような動物は、植物よりももっと複雑なしくみで体が凍ることを防いでいることが知られています。そのひとつは、動物の体内には不凍タンパク質と呼ばれる特別なタンパク質が含まれているからなのです。このタンパク質は、動物の体内での氷の生成を制御して、体が凍ることを防ぐという機能を持っているのです。おなじ動物でも、夏の間はこのタンパク質が含まれていないので、急に氷点下の温度にすると、体は凍ってしまうことが知られています。冬が近づくと、体内でこのタンパク質を生成して、寒さに備えた体に体質改善しているのですね。

 このように、氷点下の環境に住む生き物たちは、自分の体をいかにして凍らせないかという複雑なしくみを持っているのです。逆に、そのようなしくみを獲得した生き物だけが、冬の寒さの中でも生き残ることができたとも言えるでしょう。ここにも、生物の命のしくみが隠されているのですね。

(回答掲載日:2020年12月14日)

その他の現象 #植物#氷点降下#自然現象
Q10

氷の硬さ

マイナス10度とマイナス20度の氷は硬さが違いますか? 教えてください。(たかしさん / 石川県・10歳)

 中谷宇吉郎先生は、「氷は金属である」という言葉をのこしています。

 金属は、普通はとても硬いですが、温度が高くなるとだんだん柔らかくなります。テレビなどで刀を作るところを紹介した番組を見たことがあると思いますが、鉄を炎で真っ赤に焼いてそのままハンマーなどで叩くと、簡単に伸ばしたり曲げたりすることができます。これは、硬い鉄であっても温度が高くなると柔らかくなることを利用しているのです。氷もこの鉄と同じように、温度によって硬さが変化します。ご質問にあるようにマイナス10度とマイナス20度では、より温度の低いマイナス20度のほうが硬い氷になっています。

 しかし、氷の硬さというのは、鉄の硬さとは少し違う性質を持っています。氷は結晶ですので、一つの結晶の粒でできた氷(単結晶の氷と呼びます)を用意して力を加えると、どの方向から力を加えるかによって硬さが大きく違うことが知られています。実は、氷の結晶というのは、ちょうどたくさんの枚数の紙を重ねた束のような構造をしています。

 紙の束としてトランプを考えてみましょう。図にあるように、トランプを重ねた束にいろいろな方向から力を加えてみましょう。たとえば(a)図のように、トランプの束を水平に置き、トランプの上や横から力を加えると、束は簡単に曲がりますね。これは、トランプどうしが少しずつ滑って、束全体としては曲がりやすくなるためで、トランプの束はこの方向にはとても柔らかい性質をもつことになります。しかし、(b)図のように束を縦に置いて縦方向に力を加えると、いくら力を加えてもトランプの束は簡単には曲がりません。この場合には、いくら力を加えてもトランプどうしが滑ることがないからです。

 このように、トランプの束は力を加える方向で硬さがまったく違います。氷の結晶が、このトランプの束と同じ性質を持つことを発見したのも、中谷宇吉郎先生なのです。中谷宇吉郎雪の科学館には、氷の結晶が紙の束と同じような性質を持つことを示す実験結果の写真も展示されています。今度雪の科学館を訪問したときには、気をつけて探してみて下さい。

(トランプの実験は簡単ですので、ぜひ自分でもやってみて下さい。トランプは、プリンターの用紙の束や少し厚めの本などでも代用することができます。)

(回答掲載日:2020年12月14日)

#単結晶#実験#氷の不思議#温度
Q9

国や場所によって雪の結晶の形は違う?

いろんな形の雪の結晶がありますが、場所によって降る雪の形は違うのですか?たとえば石川県に降る雪はどんな形が多いとかアメリカはこんな形とかあるのですか?(しゅんさん / 石川県・13歳)

  雪の結晶の形は、結晶が生成するときの大気の温度(気温)と水蒸気の量(湿度)によって決まります。雪の結晶は、上空の雲の中で生成されますので、そこでの気温と湿度が形に反映されているのですね。中谷宇吉郎が人工雪の実験をもとに、結晶形と気温・湿度の関係を示したものが良く知られたナカヤ・ダイヤグラム (※画像1) です。

 ご質問にある「場所によって降る雪の形が違うのか」ということですが、異なる場所であっても結晶が生成される雲の中の条件が同じであれば結晶形も同じになりますので、基本的に場所による違いはありません。一方、同じ場所で結晶を観察していても、上空の雲の中の条件は刻々と変化しますので、それに応じて形も変化します。

 中谷宇吉郎は、雪の研究を開始した当初に、北海道の十勝岳で数年の間におよそ3000枚の雪の結晶の写真を撮影しました。そして、それらをもとに、代表的な雪の結晶の形として約40種類に分類しました。その後、多くの研究者が世界各地で雪の結晶の観察を継続しましたが、この中谷の分類表にはほとんどすべての結晶形が含まれていたことが明らかになっています。これは、一つの場所であっても長期間にわたって観察を続ければ、ほとんどすべての雪の結晶形を見ることができることを意味しています。この事実も、雪の結晶が降る場所によって形が異なることは無いということを示しています。

 ただし、例えば南極や北極のように、普通は人が住まないような平均気温が極端に低い場所では、そこでの結晶の成長条件に合った結晶形が降りやすいということは起こります。実際に、南極の昭和基地では、日本やアメリカのような中緯度の地域に降る結晶形とは異なる、特別な形の雪結晶が発見されています。その後の研究で、これらは気温が極端に低いときに生成される結晶形であることも明らかになっています。したがって、これも場所による違いというよりも、場所によって結晶の生成条件が異なっていたという方がより正確ということになります。

(回答掲載日:2020年11月1日)

#結晶の不思議#自然現象#雪の不思議#雪の形
Q8

絶対零度と氷について

氷だったものが、マイナス273度になると、なぜ気体になるのですか?氷のままの物質もありますか?( 標識君 / 東京都・7歳 )

 はじめに、マイナス273度という温度は、どんな温度かを説明しましょう。この温度は、これ以上はもう下がらないギリギリの温度で、絶対零度とも呼ばれています。

 マイナス273度を説明するまえに、温度というのはどういうものかを考えてみましょう。

 氷は、水の分子が順番にきれいにならんでできた固体ですね。結晶ということばを聞いたことがあると思いますが、このような分子がきれいにならんだ固体のことを呼びます。しかし、水分子は結晶の中にあっても完全に止まっているのではなくて、かならずブルブルと振動をしています。この氷の中の水分子のようすを動画でしめしたものが、産業技術総合研究所の灘浩樹先生のホームページにありますので、参考にして下さい ⇒ コチラをクリック

 このブルブル振動の大きさが、じつは温度にあたります。温度が高いほど、水分子はより大きくブルブルしているのですね。では、温度が下がるとどうなるでしょう。この水分子のブルブル振動は、だんだんおさまってきて、ある温度になると完全に止まってしまうはずですね。この分子のブルブルが止まってしまう温度が、マイナス273度なのです。いったん分子のブルブルが止まると、それ以上温度は下がりませんので、マイナス273度より低い温度はないということになります。

 さて、ご質問の「マイナス273度になると気体になるのですか」ということについては、実はどんな物質でもマイナス273度では気体ではなくて固体になっています。そして、その中の分子のブルブルも完全に止まった状態になっています。氷は、温度が高いと水蒸気になっていますね。しかし、水蒸気は温度が下がると水に変わります。コップに冷たい水を入れると外側がくもるのは、水蒸気が水滴となってコップにつくからです。この水滴は、もっと温度が下がると氷に変わります。この氷の温度をさらにどんどん下げていくと、やがてマイナス273度まで冷やせるはずですが、その時にもういちど気体にもどることはありません。ずっと、氷のままで冷えていくだけです。氷以外のどんな物質でも、温度が下がると、水と同じように気体が液体に、そして結晶へと変わっていきます。したがって、マイナス273度では、どんな物質であっても気体に変わることはなく、結晶のままでいると考えられています。

 マイナス273度という温度は、とても不思議ですね。この温度では、今回のご質問のほかにも、とても面白いことがたくさん起きることが知られています。ぜひこれからも興味をもって、いろいろと調べてみてください。

(*漢字のふりがなつき回答はこちら)

(回答掲載日:2020年10月22日)

その他の現象 #氷の不思議#温度
Q7

降雪と大気の湿度の関係について

上空から降ってくる雪の粒は地上付近の気温がある程度高いと溶けて雨になってしまうということは知っていたのですが、地上付近の気温がある程度高くても湿度が高いと氷のまま降ってくるという話を聞きました。この原理について考えてみたのですが上手く説明できなかったので館長さんの説明を聞いてみたいです。よろしくお願いします。(折部やすなさん / 東京都・16歳)

 ご質問にある「地上付近の気温がある程度高くても湿度が高いと氷のまま降ってくる」という現象があることは、私も初めて伺いました。いろいろと考えてみましたが、うまく説明できる理由は見つかりません。

 しかし、これとは逆の現象、すなわち「地上付近の気温がある程度高くても湿度が低いと氷のまま降ってくる」ということであれば、大いに可能です。すなわち、上空から降り落ちる雪の結晶は、落下途中で湿度が飽和点より低くなると昇華(固体である雪の結晶が直接水蒸気に変化する現象)を開始します。昇華のためには大量の熱(昇華熱と呼ばれます)が必要になりますので、その結果として結晶そのものが冷やされ、温度が下がってしまいます。したがって、地上付近で気温が0より高くなっても、結晶の温度はまだ0より低い状態に保たれる場合があり、雪の結晶は溶けずに氷のままで降ってくるということになります。

 大気の湿度が低くなればなるほど昇華は激しく起こりますので、雪の結晶の温度はより大きく下がることになります。これを気温の側から見ると、湿度が低いほど、より気温が高くなるまで雪の結晶が溶けずに降ってくるということになります。気象学の分野では、湿度と降雪との関係について様々な観測や研究が行われています。実際,湿度が50%以下になると、気温がプラス5以上でも雪の結晶は溶けずに降ってくるという観測結果もあります。

 最後に、氷の昇華に必要な熱は、一体どれくらいの大きさでしょうか。例えば、0の氷1gを昇華するために必要な熱は、100gの水の温度を6.8℃上げるために必要な熱とほぼ同じになります。たった1gの氷が昇華するだけで、こんなにたくさんの熱を吸収するのです。昇華による雪の結晶の冷却効果が、いかに大きいかが分かりますね。

(回答掲載日:2020年8月25日)

#昇華#自然現象#雪の不思議
Q6

器に入れた土では霜柱が作れない理由

冬になると,庭の湿った土や苔が生えている場所や裏庭に霜柱ができます。自分で霜柱を作りたくて発泡スチロールの器に湿らせた土を入れ、庭の霜柱が良くできる場所に置いてみましたが、土ごと凍結するだけで霜柱はできませんでした。また,小さな冷凍庫を用意して、その中でも実験をしてみたのですが,冬に外に置いていたのと同じで土ごと凍るだけでした。器をプチプチで包むといいと聞いたのでやってみましたが、やっぱり土がカチカチになるだけで霜柱は見当たりません。どうやったら、家の冷凍庫でニョキニョキ生える霜柱ができますか?冷凍庫は-8度から-10度くらい。土は花壇の土を使っています。(氷博士になりたいにゃーこさん / 栃木県・11歳)

 とても面白い実験にチャレンジしていますね。感心しました。

 さて、土を冷やすだけでは残念ながら霜柱を作ることはできません。その理由を説明する前に、庭の霜柱はどのような条件でできているかをもう一度考えてみましょう。

 霜柱は、冬の晴れた夜に地表付近の大気が冷やされて、気温が氷点下に下がった時に良くできます。しかし、気温が氷点下になった時でも、霜柱のできた土の温度はまだプラスですので、土そのものは凍っていません。すなわち、まだ凍っていない土が、気温が下がることで表面から冷やされた時に霜柱がよくできるということになります。さらに、地表面にできた霜柱は、地面に直立するように細長く伸びていますが、その先端で成長するのではなく地面と接した根もとで成長しているのです。まだ凍っていない湿った土に接している霜柱の根もとでは、土の中の水分を吸い寄せながら氷が成長すると言う性質を持っています。このため、根もとから氷の塊をまっすぐに持ち上げるようにして、霜柱ができるのです。

 地面の土の中まで凍ってしまうほど寒い時には、土の表面にはもはや霜柱はできなくなってしまいます。土自体が凍ってしまったものは、凍土と呼ばれています。北海道などのように気温が低い地方では、霜柱より凍土になってしまう場合が多くなります。

 では、実験の話に戻りましょう。容器に詰めた湿った土を冷凍庫に入れると、土全体が急に冷やされますので、すぐに全体が凍ってしまいます。この時には、上で説明したような湿った土の表面だけが冷やされるという霜柱ができるための条件が実現できません。プチプチで包むと確かに冷える速さは遅くなりますが、土全体が冷えて凍ってしまうということには変わりがありませんので、やはり霜柱はなかなかできません。冷凍庫の中で霜柱を作ろうとすると、湿った土を凍らせないように何らかの方法でプラスの温度に保ちながら、土の表面だけが冷凍庫の冷気にさらされるような工夫をすることが大事です。すなわち、湿った土の温度と冷気の温度が、十分大きく異なるようにすることが鍵です。

 研究室などで行われている実験でも同様な工夫がなされて、初めて霜柱を作ることができます。実験としては大変難しいのですが、是非チャレンジしてみてください。

(回答掲載日:2020年8月24日)

生活・文化その他の現象 #実験#研究#自然現象#自由研究#霜柱
Q5

電子レンジに氷をかけたらどうなる?

コップに氷を入れて電子レンジで溶かそうとしましたが少ししか溶けませんでした。なぜですか?(ひなさん / 石川県・6歳)

 ひなさん、とてもおもしろいことに()がつきましたね。ちょっとむずかしいお(はなし)になりますが、がまんしてください。

 まず、(みず)(こおり)は、目には見えないほどのものすごく小さな粒(水分子と言います)がたくさんあつまってできています。水のなかでは、この粒つぶがグチャグチャに詰まっているのですが、氷のなかでは粒つぶが順番にきれいにならんでいます。

 この粒つぶは、水や氷のなかで動き回ったり、ブルブルふるえたりしています。電子レンジは、水のなかの粒つぶのブルブルをより大きくするはたらきをもっています。このため、電子レンジにコップの水を入れるときゅうに熱くなるのです。しかし、氷の中の粒つぶは、きれいに並んでいますので、もともとブルブルしにくいはずですね。ですので、電子レンジに氷を入れても粒つぶのブルブルが大きくなりにくいので、氷は電子レンジに入れても溶けにくいのです。

 ちょっとむずかしいので、ジグソーパズルを思い出してください。ジグソーパズルは、たくさんのピースでできていますが、このピースひとつひとつがこの水や氷のなかの粒つぶだとしましょう。パズルであそぶ前には、たくさんのピースはグチャグチャになっていますね。このピースをぜんぶ箱に入れて箱をゆらすと、ピースはかんたんに動き回ったりブルブルしたりして、まざりあいます。では、パズルができ上がるとどうなるでしょう。ぜんぶのピースは順番にきれいにならんでいて、ピースどうしがしっかりとくっついています。このパズルを、同じようにゆらしてもピースは動きませんね。このあそぶ前のジグソーパズルが水、できあがったパズルが氷だとおもうと、箱をゆらす力が電子レンジの力になります。

 このように、おなじ力でゆらした場合に、水のなかの粒つぶはブルブルしやすく、氷のなかの粒つぶはブルブルしにくいので、氷はなかなか溶けないのです。

 やっぱり、まだむずかしいですね。まわりのおとなといっしょに、もういちどこのこたえを読んでみてください。

(回答掲載日:2020年8月18日)

 

(* 漢字のふりがなつき回答はこちら)

 

生活・文化 #実験#氷の不思議
Q4

透明な氷のつくりかた

一度、沸騰させた水で氷を作ると透明度が高くなるのはなぜですか?他に、透明な氷をつくる良い方法はありますか?(かほくのアマビエさん / 石川県・38歳)

 通常、水には空気が大量に溶け込んでいますので、それを凍らせると空気は気泡として氷の中に取り込まれてしまいます。このため、氷は白く濁って透明度が低くなってしまうのです。

 水を冷やす前にいちど沸騰させると、水に溶けた空気は追い出されてしまいます。このため、気泡として取り込まれる空気の量が少ないので透明度が高くなるのです。透明な氷を作る工夫はこの他にもいろいろありますが、どの方法も氷に取り込まれる気泡の数を減らす工夫です。

 まず、水をゆっくり冷やすと、氷ができる速度も遅くなります。このため凍る時に気泡が発生してもすぐに逃げてしまい、氷には取りこまれないようになります。家庭の冷凍庫で氷を作るときは、沸騰させた水を使うことはもちろんですが、製氷皿の下に熱を伝えにくいものを敷く、あるいはタオルで製氷皿を包むなどをすると、氷がゆっくり出来ますので気泡の少ない透明な氷になります。しかし、氷を作るのにかかる時間は大幅に延びてしまいます。

 また、凍る時に発生した気泡が逃げやすくするためには、水の容器全体を均等に冷やすのではなく、ある一定の方向に凍らせることも有効です。氷屋さんで売っている氷は、全く気泡がなく非常に透明です。これは、工場でできるだけ時間をかけて、一定方向からゆっくり凍らせることで、気泡を入りにくくしているのです。

 また、水をかき混ぜるなどの方法で、発生した気泡を素早く取り除いてしまうなどの工夫もされています。

(回答掲載日:2020年8月17日)

その他の現象 #単結晶#実験#氷のつくりかた#氷の不思議
Q3

雪質について

粉雪や玉雪など降雪における雪の状態の差は、どのような構造の差として観察されるのでしょうか。またその差は如何にして生まれるのでしょうか。(きすけさん / 岐阜県・30歳)

 粉雪や玉雪というのは、降雪における雪の呼び方としては科学の世界で使われる言葉ではありませんが、前者はかなり小さな雪粒がバラバラで降っている状態、後者は多数の雪粒がくっついて一塊になって降っている雪を示すと思われます。

 上空の雲の中で生まれた雪の結晶は、雲の中で水蒸気を集めて落下しながら成長し、やがて地上に達します。このとき、地表付近の気温がまだ充分に低く氷点下の場合は、雪の結晶はそのままバラバラの状態で地上に達します。これが粉雪の正体です。

 一方、地上付近の気温が0℃前後になると、雪の結晶の表面は薄い水の膜で覆われた状態になります。このような結晶が落下の途中で衝突すると、水膜を通して互いにくっつき、少し大きな雪粒になります。このような雪粒どうしの衝突が繰り返し起きると、最後には数百個もの雪の結晶が一塊になった巨大な雪粒が生成されます。これは、いわゆるボタン雪と呼ばれるもので、大きなものは数センチにも達し、降っている時には玉のように見えますので、これを玉雪と呼んでいるものと思います。

 それでは、なぜ気温が高いと雪粒どうしがくっつき合うのでしょうか。氷の粒である雪は0で溶けます。したがって、温度がプラスになると雪は半分溶けて濡れた状態になります。さらに、気温がマイナスであっても0に近いと、氷の表面は薄い水の膜で覆われていると考えられています。雪粒の表面にこのような水膜が存在すると、雪粒どうしが衝突すると、水膜を通してくっついてしまうのです。海岸で砂の像を作る時に乾いた砂ではうまく作れませんが、湿った砂では簡単に作ることができます。これも、砂粒の表面に水の膜があると砂粒どうしがくっつき易くなるからです。積もった雪でも、気温が低いとパウダースノーになったり雪だるまが作りにくくなったりします。これも雪粒の表面での水膜と関係しているのです。

(回答掲載日:2020年8月12日)

#自然現象#雪の不思議#雪の形#雪の種類
Q2

雪の結晶パターン

雪の結晶には色々なパターンがあるのはなぜですか。(224さん/神奈川県・12歳)

 雪の結晶は、ひとつひとつ形(パターン)が異なっているとよく言われます。とても不思議ですね。これは、雪の結晶がどのようにしてできるのかに関係しています。

 雪の結晶は、上空の雲の中に目に見えないほどの小さな氷の粒である雪の赤ちゃんが生まれることから始まります。この雪の赤ちゃんは、雲の中を落下しながら、周りの水蒸気を吸収して徐々に大きく成長します。そして、雲の下にいる私たちの目に触れる頃には、目に見えるほどの大きさになっているのです。

 この時に、雪の結晶がどんな条件で大きくなったかで結晶の形は違ってくるのです。雲の中を落ちてくる結晶は、ひとつひとつその道筋が異なりますので、結晶ができる条件も結晶ごとに異なるはずですね。

 私たちが目にする結晶は、すでに長い道筋をたどって成長してきたものですので、いろいろなパターンの結晶が観察されるのです。

(回答掲載日:2020年7月31日)

#結晶の不思議#雪の不思議#雪の形
Q1

雪に色はある?

雪の色は当たり前に白いと思っていますが本当に白いのでしょうか。雪に色がないのはなぜですか?(yo-yoさん/東京都・45歳)

 雪と言えば白いものの代表格ですが、雪を作っているものは小さな氷の粒ですので、それ自体は無色透明です。氷の粒がたくさん集まると白く見えるのですが、その理由は簡単ではありません。

 光が氷の小さな粒に当たると、いろいろな方向に反射します。反射した光は、またすぐそばにある氷の粒に当たり、さらにいろいろな方向に反射します。このような過程を繰り返すと、雪全体では光を様々な方向に乱反射することになります。

 一方、光は波の性質を持っていますので、太陽からの光はいろいろな波長の光の集合体です。いろいろな波長の光が均等に混じり合っていると、私たちの目には白く見えます。したがって、小さな氷の粒の集合である雪は、太陽からくる様々な波長の光を乱反射させるので、白く見えるのです。

 私たちの身の回りには、雪以外にも白く見えるものはたくさんあります。例えば、空に浮かぶ雲は、無数の小さな雲粒が集合してできています。この雲粒は、水滴ですので無色透明ですが、これらに太陽光が当たると雪と同じように乱反射するので白く見えます。

 雪の科学館の中庭の「グリーンランド氷河の原」では、人工の霧を見ることができます。霧が白く見えるのも、雲の白と同じしくみなのです。

(回答掲載日:2020年7月31日)

生活・文化その他の現象 #光#雪の不思議#雪の色