雪と氷のQ&A
カテゴリー:氷

Q13

とけない氷はあるのかな?

前に、雪の科学館で氷のペンダントを作りました。すぐにとけてしまい、悲しかったです。とけない氷があったら作りたいです。とけない、とけにくい氷の作り方をおしえてください。(あやかさん / 石川県・8歳)

 あやかさん、雪の科学館の氷のペンダント、すぐにとけてしまって残念でしたね。でも、とけない氷というのは、ざんねんながら作ることはできません。氷に限らずいろいろな物質は、とける温度が決まっています。氷は、この温度が0度ですので、部屋の中(室温は20度くらいですね)に氷をおいておくと、すぐにとけてしまうのはしかたがないことなのです。

 雪の科学館で氷のペンダントを作ったときの氷は、きれいな透明(とうめい)の氷だったと思います。台所にある冷凍庫(れいとうこ)で氷をつくると、普通(ふつう)は白くにごった氷になりますね。これは、最初に水にとけていた空気が、氷ができるときにはき出されて、空気の泡(気泡(きほう))として氷の中に閉じ込められたからです。気泡がたくさん含まれた氷は、とてもとけやすいのですが、気泡の入っていない透明な氷はとけるのに少し時間がかかります。室温であればやがてとけてしまうことにはちがいないのですが、雪の科学館の氷は、それでも少しはとけにくい氷になっています。このような透明な氷は、台所の冷凍庫でも少しくふうをすると作ることができます。まず、水にとけた空気を追い出すためには、冷やす前にいちど沸騰(ふっとう)させます。この水が冷めたら冷凍庫に入れるのですが、なるべく空気にふれないようにして、できるだけゆっくりと冷やしてこおらせると、気泡の少ない透明な氷になります。ためしてみて下さい。

(回答掲載日:2020年12月14日)

#単結晶#実験#氷の不思議
Q12

雪や氷の文化的な意味

北国には、雪や氷に関する伝統行事がたくさんあります。たとえば、諏訪湖の御神渡りや花巻のタロシ滝の計測などなど。金沢では氷室の仕込みが復活されています。でも、最近は温暖化のせいでこうした伝統行事がなくなりつつあります。自然現象が起きないことで、文化や伝統が消えてしまうのでしょうか?消えることでどんな影響があるのでしょうか?(ふくむら よしみさん / 茨城県・49歳)

 雪や氷に関する伝統行事が、地球温暖化のためになくなりつつあることは、大変残念なことです。伝統行事は、本来その土地の自然や気候、さらにそこに住む人々の生活様式などによって生まれて発展し、そして長年に渡って継続されることで生まれてきたものであると思います。このため、本来備えていた条件が変化してしまうと、その行事を実施していくことの意義や目的が薄れていくことになります。特に、雪や氷に関する伝統行事は、温暖化により雪や氷が少なくなったり無くなったりすると、行事そのものを実施することが困難となり、だんだん消えていく方向になるのはある程度はしかたがないかと思います。しかし、伝統行事が一旦消えてしまうと、後世になって復活再現することは極めて困難になります。したがって、これらの伝統行事の記録や保存などの活動が極めて重要になります。伝統や文化は、人々がどのような生き方をしてきたかの記録でもありますので、だれもが意識を高くして、消えてしまうことがないように努めていきたいですね。

 文化や伝統が消えてしまうということは大変残念なことですが、その一方で現代に生きる私達は、いま新たに多くの文化や伝統を作り出しつつあるといっても良いかと思います。最初はごく限られた人たちが行っていることであっても、やがて社会に浸透し、誰もが行うような行事として発展するものがあれば、新たに文化や伝統を作り出したことになります。百年後二百年後には、その時の伝統行事として継続されているかもしれません。すなわち、伝統や文化というのは、廃れるものもあれば新たに生まれるものもあります。ただ、古い文化や伝統を懐かしがるだけではなく、未来に向けて新しい文化や伝統を作っていくといこうという気持ちを持つことも、とても大切ではないでしょうか。

(ご質問ありがとうございます。伝統や文化に関する話題ですので、その人その人で考え方も対処のしかたも異なると思います。従いまして、この回答は私自身が個人的に考えていることにもとづいています。他にも、さまざまなご意見や考え方があると思います。)

(回答掲載日:2020年12月14日)

生活・文化 #文化#環境問題
Q11

植物は凍らない?

冬のとても寒い日でも椿などの花が咲いていたり草が生えていたりしますが、0度以下でも植物は凍らないのでしょうか?(なっちゃんさん / 石川県)

 生き物は、植物でも動物でも体が凍ると普通は死んでしまいますね。このため、寒い冬を凍らずに生き延びて、次の春にまた活動ができるように、生き物たちは特別なしくみを持っているのです。植物と動物では、そのしくみは異なりますので、まず植物について見てみましょう。

 植物が凍らないしくみのひとつは、冬になるとその体の中にたくさんの糖分やアルコール分などの成分を生成することです。水道水などのきれいな真水を冷やすと、通常は0度になると凍ってしまいます。しかし、水に糖分やアルコール分などが含まれていると、0度では凍らずに氷点下の温度になっても液体のままでいることができます。少し難しい言葉ですが、このことは「氷点降下(ひょうてんこうか)」と呼ばれていて、水に含まれる物質の濃度が高くなるほど、水が氷に変わる温度が低くなるという現象です。冷凍庫などに甘いジュースなどのペットボトルを入れておくと、真水のボトルよりも凍りにくくなりますが、これはジュースに大量に含まれる砂糖による氷点降下のためです。野外にいる植物も、冬が近づいてだんだん寒くなると、体内に糖分やアルコール分などを溜め込んで、この氷点降下のために体内の水が凍るのを防いでいるのです。実際、冬の寒さが厳しくなると野菜の甘さが増して、おいしくなると言われますね。これは、寒さに対抗するために、その体内に糖分を溜め込むためなのです。

 いっぽう、動物にも寒い冬を凍らずに越して、翌年また活動を再開するものがたくさんいます。人間と同じような哺乳類などは、自分で体温を調整する事ができます。しかし、魚や昆虫などの変温動物は自分では体温調節ができません。このような動物の体温は、周囲の環境の気温とほぼ同じになっていますので、冬になると氷点下まで下がります。それでも、多くの動物は凍ることなく、寒い冬を生き延びることができます。このような動物は、植物よりももっと複雑なしくみで体が凍ることを防いでいることが知られています。そのひとつは、動物の体内には不凍タンパク質と呼ばれる特別なタンパク質が含まれているからなのです。このタンパク質は、動物の体内での氷の生成を制御して、体が凍ることを防ぐという機能を持っているのです。おなじ動物でも、夏の間はこのタンパク質が含まれていないので、急に氷点下の温度にすると、体は凍ってしまうことが知られています。冬が近づくと、体内でこのタンパク質を生成して、寒さに備えた体に体質改善しているのですね。

 このように、氷点下の環境に住む生き物たちは、自分の体をいかにして凍らせないかという複雑なしくみを持っているのです。逆に、そのようなしくみを獲得した生き物だけが、冬の寒さの中でも生き残ることができたとも言えるでしょう。ここにも、生物の命のしくみが隠されているのですね。

(回答掲載日:2020年12月14日)

その他の現象 #植物#氷点降下#自然現象
Q10

氷の硬さ

マイナス10度とマイナス20度の氷は硬さが違いますか? 教えてください。(たかしさん / 石川県・10歳)

 中谷宇吉郎先生は、「氷は金属である」という言葉をのこしています。

 金属は、普通はとても硬いですが、温度が高くなるとだんだん柔らかくなります。テレビなどで刀を作るところを紹介した番組を見たことがあると思いますが、鉄を炎で真っ赤に焼いてそのままハンマーなどで叩くと、簡単に伸ばしたり曲げたりすることができます。これは、硬い鉄であっても温度が高くなると柔らかくなることを利用しているのです。氷もこの鉄と同じように、温度によって硬さが変化します。ご質問にあるようにマイナス10度とマイナス20度では、より温度の低いマイナス20度のほうが硬い氷になっています。

 しかし、氷の硬さというのは、鉄の硬さとは少し違う性質を持っています。氷は結晶ですので、一つの結晶の粒でできた氷(単結晶の氷と呼びます)を用意して力を加えると、どの方向から力を加えるかによって硬さが大きく違うことが知られています。実は、氷の結晶というのは、ちょうどたくさんの枚数の紙を重ねた束のような構造をしています。

 紙の束としてトランプを考えてみましょう。図にあるように、トランプを重ねた束にいろいろな方向から力を加えてみましょう。たとえば(a)図のように、トランプの束を水平に置き、トランプの上や横から力を加えると、束は簡単に曲がりますね。これは、トランプどうしが少しずつ滑って、束全体としては曲がりやすくなるためで、トランプの束はこの方向にはとても柔らかい性質をもつことになります。しかし、(b)図のように束を縦に置いて縦方向に力を加えると、いくら力を加えてもトランプの束は簡単には曲がりません。この場合には、いくら力を加えてもトランプどうしが滑ることがないからです。

 このように、トランプの束は力を加える方向で硬さがまったく違います。氷の結晶が、このトランプの束と同じ性質を持つことを発見したのも、中谷宇吉郎先生なのです。中谷宇吉郎雪の科学館には、氷の結晶が紙の束と同じような性質を持つことを示す実験結果の写真も展示されています。今度雪の科学館を訪問したときには、気をつけて探してみて下さい。

(トランプの実験は簡単ですので、ぜひ自分でもやってみて下さい。トランプは、プリンターの用紙の束や少し厚めの本などでも代用することができます。)

(回答掲載日:2020年12月14日)

#単結晶#実験#氷の不思議#温度
Q8

絶対零度と氷について

氷だったものが、マイナス273度になると、なぜ気体になるのですか?氷のままの物質もありますか?( 標識君 / 東京都・7歳 )

 はじめに、マイナス273度という温度は、どんな温度かを説明しましょう。この温度は、これ以上はもう下がらないギリギリの温度で、絶対零度とも呼ばれています。

 マイナス273度を説明するまえに、温度というのはどういうものかを考えてみましょう。

 氷は、水の分子が順番にきれいにならんでできた固体ですね。結晶ということばを聞いたことがあると思いますが、このような分子がきれいにならんだ固体のことを呼びます。しかし、水分子は結晶の中にあっても完全に止まっているのではなくて、かならずブルブルと振動をしています。この氷の中の水分子のようすを動画でしめしたものが、産業技術総合研究所の灘浩樹先生のホームページにありますので、参考にして下さい ⇒ コチラをクリック

 このブルブル振動の大きさが、じつは温度にあたります。温度が高いほど、水分子はより大きくブルブルしているのですね。では、温度が下がるとどうなるでしょう。この水分子のブルブル振動は、だんだんおさまってきて、ある温度になると完全に止まってしまうはずですね。この分子のブルブルが止まってしまう温度が、マイナス273度なのです。いったん分子のブルブルが止まると、それ以上温度は下がりませんので、マイナス273度より低い温度はないということになります。

 さて、ご質問の「マイナス273度になると気体になるのですか」ということについては、実はどんな物質でもマイナス273度では気体ではなくて固体になっています。そして、その中の分子のブルブルも完全に止まった状態になっています。氷は、温度が高いと水蒸気になっていますね。しかし、水蒸気は温度が下がると水に変わります。コップに冷たい水を入れると外側がくもるのは、水蒸気が水滴となってコップにつくからです。この水滴は、もっと温度が下がると氷に変わります。この氷の温度をさらにどんどん下げていくと、やがてマイナス273度まで冷やせるはずですが、その時にもういちど気体にもどることはありません。ずっと、氷のままで冷えていくだけです。氷以外のどんな物質でも、温度が下がると、水と同じように気体が液体に、そして結晶へと変わっていきます。したがって、マイナス273度では、どんな物質であっても気体に変わることはなく、結晶のままでいると考えられています。

 マイナス273度という温度は、とても不思議ですね。この温度では、今回のご質問のほかにも、とても面白いことがたくさん起きることが知られています。ぜひこれからも興味をもって、いろいろと調べてみてください。

(*漢字のふりがなつき回答はこちら)

(回答掲載日:2020年10月22日)

その他の現象 #氷の不思議#温度
Q5

電子レンジに氷をかけたらどうなる?

コップに氷を入れて電子レンジで溶かそうとしましたが少ししか溶けませんでした。なぜですか?(ひなさん / 石川県・6歳)

 ひなさん、とてもおもしろいことに()がつきましたね。ちょっとむずかしいお(はなし)になりますが、がまんしてください。

 まず、(みず)(こおり)は、目には見えないほどのものすごく小さな粒(水分子と言います)がたくさんあつまってできています。水のなかでは、この粒つぶがグチャグチャに詰まっているのですが、氷のなかでは粒つぶが順番にきれいにならんでいます。

 この粒つぶは、水や氷のなかで動き回ったり、ブルブルふるえたりしています。電子レンジは、水のなかの粒つぶのブルブルをより大きくするはたらきをもっています。このため、電子レンジにコップの水を入れるときゅうに熱くなるのです。しかし、氷の中の粒つぶは、きれいに並んでいますので、もともとブルブルしにくいはずですね。ですので、電子レンジに氷を入れても粒つぶのブルブルが大きくなりにくいので、氷は電子レンジに入れても溶けにくいのです。

 ちょっとむずかしいので、ジグソーパズルを思い出してください。ジグソーパズルは、たくさんのピースでできていますが、このピースひとつひとつがこの水や氷のなかの粒つぶだとしましょう。パズルであそぶ前には、たくさんのピースはグチャグチャになっていますね。このピースをぜんぶ箱に入れて箱をゆらすと、ピースはかんたんに動き回ったりブルブルしたりして、まざりあいます。では、パズルができ上がるとどうなるでしょう。ぜんぶのピースは順番にきれいにならんでいて、ピースどうしがしっかりとくっついています。このパズルを、同じようにゆらしてもピースは動きませんね。このあそぶ前のジグソーパズルが水、できあがったパズルが氷だとおもうと、箱をゆらす力が電子レンジの力になります。

 このように、おなじ力でゆらした場合に、水のなかの粒つぶはブルブルしやすく、氷のなかの粒つぶはブルブルしにくいので、氷はなかなか溶けないのです。

 やっぱり、まだむずかしいですね。まわりのおとなといっしょに、もういちどこのこたえを読んでみてください。

(回答掲載日:2020年8月18日)

 

(* 漢字のふりがなつき回答はこちら)

 

生活・文化 #実験#氷の不思議
Q4

透明な氷のつくりかた

一度、沸騰させた水で氷を作ると透明度が高くなるのはなぜですか?他に、透明な氷をつくる良い方法はありますか?(かほくのアマビエさん / 石川県・38歳)

 通常、水には空気が大量に溶け込んでいますので、それを凍らせると空気は気泡として氷の中に取り込まれてしまいます。このため、氷は白く濁って透明度が低くなってしまうのです。

 水を冷やす前にいちど沸騰させると、水に溶けた空気は追い出されてしまいます。このため、気泡として取り込まれる空気の量が少ないので透明度が高くなるのです。透明な氷を作る工夫はこの他にもいろいろありますが、どの方法も氷に取り込まれる気泡の数を減らす工夫です。

 まず、水をゆっくり冷やすと、氷ができる速度も遅くなります。このため凍る時に気泡が発生してもすぐに逃げてしまい、氷には取りこまれないようになります。家庭の冷凍庫で氷を作るときは、沸騰させた水を使うことはもちろんですが、製氷皿の下に熱を伝えにくいものを敷く、あるいはタオルで製氷皿を包むなどをすると、氷がゆっくり出来ますので気泡の少ない透明な氷になります。しかし、氷を作るのにかかる時間は大幅に延びてしまいます。

 また、凍る時に発生した気泡が逃げやすくするためには、水の容器全体を均等に冷やすのではなく、ある一定の方向に凍らせることも有効です。氷屋さんで売っている氷は、全く気泡がなく非常に透明です。これは、工場でできるだけ時間をかけて、一定方向からゆっくり凍らせることで、気泡を入りにくくしているのです。

 また、水をかき混ぜるなどの方法で、発生した気泡を素早く取り除いてしまうなどの工夫もされています。

(回答掲載日:2020年8月17日)

その他の現象 #単結晶#実験#氷のつくりかた#氷の不思議

Q&A検索

Q&Aは検索けんさくができます。
検索けんさくは「キーワード」「カテゴリー」「タグ」の3つの方法ほうほうがあります。

キーワード検索

キーワードを入力して検索けんさくしてください。
カテゴリーをえらぶとそのカテゴリーのなかからキーワードと一致いっちするQ&Aをさがすことができます。

カテゴリー検索

になるカテゴリーをえらんでください。
そのカテゴリーにてはまるQ&Aをさがすことができます。