雪と氷のQ&A
カテゴリー:氷

Q98

宇宙の水(氷)の総体や身体の氷

①以前、「宇宙の水の総体はかわらず、循環しながら水はあるので、太古の水を私たちは雨や雪などを通して飲んでいるのだそうですよ」と教えていただいたことがあります。その通りでしょうか? ②循環した水が、氷となって雪となって空から降ってくる時に植物や動物やいろいろなものを通過した氷や雪も、水のように記憶を運びますか?その時は結晶やなにか固有の特性はありますか?(Cuuさん / 岐阜県)

 水は、水素と酸素が結合した分子(H2O、水分子)でできた物質です。したがって、水そのものには、太古のものや現在のものというような区別は、存在しません。現在私達の周りのある水は、宇宙が誕生し進化する過程で、ある時に大量の水分子が生成され、それらが現在の地球や宇宙空間にそのままで残されているというのは、もちろんそのとおりです。しかし、最初に述べたように、水は一つの物質に過ぎないので、宇宙で初めて生成された頃の水と現在私達の周りにある水の間には何ら違いがなく、両者を区別することも意味のないことです。

 また、一つの物質に過ぎない水には、それが記憶を持つというようなことも、なんらかの意図を持つといったことも、絶対にありえません。したがって、水がどのような循環をしたとしても、水にその記録が残ると言ったこともありません。さらに、雪や氷は、水という物質が固体の状態になって存在しているだけですので、その水が過去にどのような循環をしたかということは、雪や氷の特性に影響を与えることもありません。雪や氷の結晶形や特性は、その結晶がどのような過程を経てできたかに依存します。しかし、これは科学的な考察の結果としては、結晶ができるときの気象条件によって形が変化するということであって、決して人間の意図や記憶、意識といったものを反映するものではないことも明らかです。

 水、氷、雪というと、私達のきわめて身近にあることや、生き物の生命維持に重要な役割を果たしているというようなことから、水そのものが何らかの記憶を持つとか、人間の意図を理解できるというような怪しい言説が流布されることがあります。しかし、水という物質そのものが、そのような性質を持つことは、科学的に絶対にありえないので注意が必要です。このことに関連する質問の回答が、本Q&AのQ.81にもありますので、そちらも合わせて御覧ください。

  (回答掲載日:2024年9月6日)





#宇宙#水の不思議#氷の不思議
Q96

雲の仕組みと氷、雪との関係性について

私は小学5年生で、夏休みの課題で図書館の本を使った調べ学習というのを「雲」というテーマで調べています。本を読んでいくうちに、過冷却の仕組みが、雲から雪になるイメージと関係あることが分かったのですが、そちらのホームページでも、0℃でも水が凍らない理由から過冷却の仕組みが理解できました。でもとても難しくて、完ぺきな理解は出来てません。他にも、雲と氷、雪の関係性にあてはまる言葉や仕組みなどをいろいろ調べたのですが、最後は結果どのようなことだったのかっていうまとめの所にまだたどりつくことが出来てません。雲、雪、氷と全体を見ようとすると、とても難しいなと思っています。雲と結びつくような言葉だったり、氷と雪の関係性などをもう少しくわしく分かりやすく知りたいな、教えてもらいたいなと思って問い合わせをしました。(めーたすさん / 石川県・10歳)

 とてもよく調べて勉強していますね。大事なポイントに気がついていて、感心しました。過冷却という現象が、雲、雪や氷の生成などと密接に関連しているとよく説明されます。しかし、ではどんな関係があるのかは、とても難しい問題で、なかなかうまく説明することができません。ここに何か問題がありそうだということに気がついただけでも、素晴らしいと思います。ご質問に関連する話題で、いくつか説明しましょう。

 まず、雪の結晶は上空の雲の中で作られます、と説明され、あまり疑問に思うことがありません。しかし、このことは、液体の水の過冷却と雪の結晶の成長との関連について考えることで、その理由がわかります。雪の結晶は、その結晶の周りにある空気中にある水蒸気から、直接できてきます。しかし、雪の結晶が大きくなるためには、周囲の水蒸気が使われますので、結晶の周りの水蒸気の量はだんだん減ってくるはずですね。雪の結晶がさらに大きくなるためには、この水蒸気がどこかから追加されないといけません。この水蒸気を追加するしくみに、実はこの過冷却という現象が大事な役割を果たしているのです。すなわち、雲の中にある雪の結晶の周囲には、水蒸気だけではなく、たくさんの雲粒(過冷却した水でできた小さな水滴)が存在しています。この雲粒は、だんだん蒸発をして、周囲の空気に水蒸気を追加する役割を果たしているのです。すなわち、過冷却した雲粒から雪の結晶に向かって水蒸気の流れができていて、この流れによって雪の結晶は大きくなり続けることができるということになります。この雪の結晶が大きくなり続けることを「結晶の成長」と言いますが、雲の中でこれが起きる理由になります。(なぜ、過冷却した雲粒から雪の結晶に向かう水蒸気の流れができるのかというのも、疑問ですね。そのことも説明できるのですが、さらにむずかしいお話になってしまいますので、また他の機会に説明しましょう。)

 また、雪と氷と言うことについても、少し説明しておきましょう。雪も氷も、どちらも融ければ液体の水ですので、どちらも、全く同じ物質です。ではなぜ、この2つの呼び方があるのかということを考えてみましょう。一般に、雪と呼ぶときには、雪の結晶やそれが降り積もった雪(積雪)などがあります。これらの共通点は、上空の雲の中で“水蒸気から直接氷の結晶ができたもの”が、もとになっているということです。一方、氷は、液体の水を冷やして凍らせることでできたものと言うことができます。氷を削ってかき氷にすると、雪のように真っ白でふわふわになりますが、これを雪とは呼ばないのはこのためです。このように、本来は全く同じものであるのに、そのでき方の違いで呼び方が変わるのは、とてもおもしろいと思いませんか?雪や氷以外のものでは、このようなことは絶対にありません。また、この他にも自然界にある雪や氷には、その状況の変化によって、さまざまな呼び方があります。それらがどのようにしてできたのかを調べると、雪と分類すべきか氷と分類すべきかを分けることができると思います。このような視点で雪や氷を眺めて見るのも、とても興味深いのではないかと思います。

(回答掲載日:2024年8月25日)

#雪#氷#氷の不思議#雪の不思議
Q93

飲める水と飲めない水に結晶の差はある?

飲める水と飲めない水に結晶の差はありますか? この結晶があれば飲める、または、飲めないの判断が出来る結晶はありますか?(furucocoさん / 石川県・11歳)

 水は、私達の身体の中にも大量に含まれていて、体重のおよそ60%が水分です。したがって、水そのものには毒性はなく、飲める水と飲めない水などの区別はありません。しかし、“この水は飲めない”ということは、よく言ったり聞いたりする言葉ですね。これは、水そのものというわけではなくて、その水にどんなものが溶け込んでいるのかということが、その違いの原因です。私達が飲む水には、必ず何かが溶け込んでいます。溶けているものに毒性がなく、なおかつ食品として使われるものであれば、その水を飲んでも問題はありません。逆に、食品でないものや私達の身体に害を及ぼすものが溶けこんだ水は飲むことはできません。

 さて、ご質問にあるような水が凍ってできた氷の結晶については、それが飲める水と飲めない水の区別できるかということですが、その目的には使うことはできません。もちろん、何も溶けていない水からできた氷と、何かが溶けている水からできた氷に、その特性や形に違いが起こることはありえます。それは、結晶ができるときに、水に溶け込んでいるものが影響を及ぼすからです。しかし、それは溶けているものが無害なのか有害なのかには関係ありませんので、結晶を観察したとしても、その結果で飲める水か飲めない水かの判断はできません。

  (回答掲載日:2024年8月4日)

#水#結晶#水の不思議#氷#氷の不思議
Q90

氷の結晶について

今から60年前の頃のお話しですが、麦茶を製氷室にいれて早く冷やそうとして、取り出すのを忘れていた時のことです。 麦茶を入れていた容器は1リットル程度が入る半透明のプラスチック製の横長の、注ぎ口が広口の8cmほどあるタイプのものでした。 まだ凍った様子がなかったので、そのまま コップに注ごうとした時に、容器の淵に雪印のマークと同じ形の直径1.5cm程度の氷の結晶を見つけました。 手で摘まんで採ろうと試みましたが、駄目でした。 このことを父に話したところ、氷の核になる元は麦茶の中には無数にあるため、大きな結晶に成長する可能性はあり得ないと一喝され、大変落ち込んだ経験があります。 雪の結晶が、液体の水の中で成長することが実際ある訳で、こうした事例の研究がされているのか、教えていただきたいです。岡田龍雄さん / 大阪府・72歳)

 麦茶を冷やしたときに六角の氷結晶が観察されたとのことですが、もちろんこのような結晶が生成することはありえることです。このご質問だけでは、結晶ができていた状況が明確ではありませんが、観察された結晶が麦茶の内部でできていた(麦茶が凍ってできた)と考えて、回答いたします。

 液体の水を容器に入れて冷却すると、水はやがて過冷却の状態(0℃以下でも凍結せず、液体のままの状態)になります。その中に、氷の微結晶が生成されると、雪の結晶と同じように、六角の結晶形に発達することは良く知られています。このような結晶の生成については、これまでに多くの研究が行われています。六角の枝のできるしくみや六角の対称性が生じる理由なども明らかにされています。近年では、国際宇宙ステーションの中での氷の結晶の生成実験なども行われました。ごく最近では、氷の結晶が成長する様子を分子の大きさの分解能で観察する試みも行われるようになってきました。

 しかし、過冷却水中で氷の結晶の生成過程を観察することは、通常ではそう簡単ではありません。それは、過冷却の度合いを制御することが困難であることや、水中で同時にたくさんの微結晶が発生すると互いに影響をしあってきれいな結晶形になりにくいことなどの理由が考えられます。ご質問の場合では、容器に入れた麦茶がゆっくりと冷やされていく途中で、たまたま、ごく少数の氷の微結晶が生成されて、それらが独立して成長したのだと考えます。なぜこのようなことが起きたのかは明確には答える事ができませんが、決してありえない現象ではありません。

 最後に、純水と麦茶を使った場合の違いですが、麦茶の場合は純水よりも凍る温度が少しだけ低くなっている可能性があります。しかし、結晶のでき方などには大きな違いが生じているとは考えにくいので、純水からの氷の生成と同じであると考えて差し支えありません。

 

 (回答掲載日:2024年5月12日)

#円盤結晶#氷#氷の不思議
Q89

氷の中の白い部分

家で氷を作ったとき、とうめいにならず、真ん中に白い部分ができます。白いものはなんですか?(マークさん / 大阪府・8歳)

 れいとうこで水を冷やして、氷を作ると、外がわはとうめいなのに、真ん中あたりは白くにごっていて、とうめいにはなりません。これは、水がこおるときに、水に溶けていた空気が、あわとしてあらわれて、それが氷の中にとじこめられているからなのです。このあわがたくさんあると、そこにさしこんだ光がいろいろな方向にはね返されるので、白く見えるのです。

 と言っても、少しむずかしいですね。氷の中にあわがたくさんできると白く見えるということを、2つのことに分けて考えてみましょう。

 まず、さいしょは、氷の中に空気のあわができるのはなぜか、です。コップにきれいな水道水を入れて、さとうやしおを入れるときれいにとけてしまいますね。これとおなじように、空気も水の中にたくさんとけているのです。水は、いつでも空気にさらされていますので、知らないうちにたくさんの空気がとけています。この水を、れいとうこの中にいれてこおらせると氷になるのですが、水とははんたいに、この氷には空気はほとんどとけることができません。このため、空気がとけた水が氷にかわるとき、よぶんな空気ができてしまうことになります。このよぶんな空気が、小さなあわとなってでてくるのです。このあわが氷の中に入ってしまったものが、真ん中の白く見える部分になります。

 では、つぎに、あわが入っていると白く見えるのはなぜかを考えてみましょう。あわの中みは空気ですので、あわが白くなっているわけではありません。しかし、氷の中にあわがあると、さしこんだ光がはね返されて(ちょっとむずかしいことばでは、反射(はんしゃ)と言います)くるので、そこにあわがあることがわかります。この光をはねかえす小さなあわが、氷の中にたくさんあるときは、一つのあわではねかえされた光が、近くにあるほかのあわで、またはねかえされるということが、おこります。こうすると、光がいろいろな向きにはねかえされることになって、あわがたくさんあつまったところが、白く見えるようになるのです。これを、光の散乱(さんらん)とよびます。

 ところで、冬になると、空から真っ白な雪がふってきます。つもった雪もまっ白ですね。この雪は、小さな氷のつぶでできていることは、知っていますね。氷はとうめいですので、雪をつくっている氷のつぶを一つだけとりだすと、やっぱりとうめいで、白くはありません。しかし、この氷のつぶがたくさんあつまると、そこにさしこんだ光がいろいろな方向にはねかえされて、白く見えるようになるのです。氷の中のあわが白く見えるのと、そのしくみは同じですね。

 何かが白く見えるからと言って、それがいつも白いものでできているというわけではないというのは、とてもおもしろいですね。

 

(回答掲載日:2024年4月26日)

#氷#氷の不思議
Q78

フワフワのかき氷

この前見学に行って、カルピス水でかき氷を作るとフワフワになると教えてもらいました。家でやってみたら、フワフワになりました。なんで、カルピス水だと、フワフワになるのですか?(りのさん / 長野 県・8歳)

 夏の暑い日に食べるかき氷は、とても美味しいですね。カルピス氷でかき氷を作ると確かにフワフワになります。実際は、必ずしもカルピス氷ではなくても、さとう水を凍らせて作る氷でもフワフワになります。

 カルピスを溶かした水は、とても甘いので、糖分がたくさん含まれています。さらに、カルピスは牛乳から作るので乳成分も含まれています。このため、カルピスを溶かした水を冷やして凍らせると、水道水をただ凍らせた普通の氷に比べて、とても柔らかい氷ができます。これは、水中の糖分や乳成分は、水が凍るときに吐き出されて、氷の粒と粒の間に取り残されてしまうからです。このような柔らかい氷では、カンナで木を削るとできるうすいカンナくずと同じように削れます。このため、フワフワのかき氷になるのですね。

 では、糖分などを含まない水を凍らせて作った固い氷では、絶対にフワフワのかき氷にはならないのでしょうか。このような固い氷でも、ものすごくよく切れるカンナなどで、非常にうすく削ると、やはりけっこうフワフワした氷くずになります。しかし、うすく削るのはなかなかむずかしく、かき氷にできるほどたくさんの氷を削るのは簡単ではありません。

(回答掲載日:2023年8月29日)

#かき氷#氷の不思議
Q74

こおりのしつもん

こおりはどうしてかたまるの?(たちかわももさん /東京都・5歳)

 コップに入れた水を、冷凍庫の中に入れておくと、だんだん冷やされて、やがて固い氷になってしまいますね。冷やすだけなのに、水が固まってしまうのはとても不思議ですね。

 私達の身の回りには、水だけではなく“液体”のものがたくさんありますね。たとえば、台所には、牛乳や油、酢など、いろいろな液体があります。このような液体は、どれも冷やされると固くなってしまう性質を持っています。液体が固くなる温度は、その種類によって違います。水は、ちょうど0度で固い氷に変わります。

 ももさんのお家の台所にあるいろいろな液体を少しだけコップに入れて、冷凍庫で冷やしてみてください。水と同じように冷やされると固くなるはずです。もし、温度計があったら温度を測ってみると、どの温度で固くなるかが分かります。お父さん、お母さんといっしょに実験してみてください。 

 水が冷やされると固い氷に変わることは、この「雪と氷のQ&A」コーナーのQ23の回答にも説明があります。参考にして下さい。

 

(*漢字のふりがなつき回答はこちら)

(回答掲載日:2023年5月15日)

 

#水の不思議#氷の不思議
Q70

氷の中に雪の結晶はできますか

こどもたちが氷の中に雪の結晶のようなものを見つけたのですが、氷の中に結晶ができることってあるのですか?(ゆりぐみさん / 静岡県・4歳)

ゆりぐみのみなさんへ

 とてもおもしろいものを、みつけましたね!すきとおったこおりなかにできているので、ちょっとみえにくいですね。でも、ちゅういして、かんさつしてくれたので、みつけられたのだとおもいます。かんしんしました。

 みなさんがみつけた、ゆきのけっしょうのようなものは、こおりのなかで、こおりがとけてできたものです。なまえは、「チンダルぞう」と、いいます。こおりに、たいようのひかりがあたると、あたためられて、こおりがとけます。こおりはすきとおっているので、なかでとけだすようすも、みえるのですね。そのとき、ゆきのけっしょうとおなじように、ふしぎと、ろっかくのかたちができるのです。これは、こおりのなかにできるので、「こおりのなかにあな」ができたということになりますね。このあなのなかには、こおりがとけてできたみずが、たまっています。

 こおりがとけてできたあなが、そらからふってくるゆきのけっしょうとおなじように、ろっかくのかたちをしているのは、とてもふしぎですね。これは、ふわふわのゆきのけっしょうと、かたいかたまりのこおりが、じっさいはおなじもの、で、できているからなのです。

 みなさんのまわりにあるしぜんのなかには、おもしろいことがたくさんかくれています。これからも、ちゅういして、おもしろいことをさがしてみてくださいね。きっと、まだまだ たくさんみつかるとおもいます。みつけたら、またおしえてください。

 

先生がたへ

 子どもたちが、とても面白いことをみつけましたね。氷に太陽の光が当たると、表面から融け出すだけではなく、氷の内部にまで射し込んだ光のために、内部でも融け出すことがあります。すなわち、氷の中にできた穴ということになりますが、内部は液体の水で満たされています。これは、一般にチンダル像とよばれるものです。(チンダルとは、19世紀に活躍したイギリスの有名の物理学者の名前で、この現象の発見者です)雪の結晶も氷ですので、チンダル像も同じように六角の形を作って融けていきます。この六角というのは、氷の持っている結晶としての性質を反映しています。また、雪の結晶は、その外形の内側が氷(固体)ですが、このチンダル像では、内部が水で外部が氷(固体)です。すなわち、両者は、正と負の関係になっています。このためチンダル像のことを、「負の結晶」と呼ぶこともあります。また、このチンダル像の中には、必ず丸い円盤のようなものがあります。これは気泡ですが、中身は水蒸気だけで満たされたています。このため、蒸気泡と呼んだりします。氷は融けて水になると、体積が減少します。(氷が水に浮かぶのも同じ理由ですね)この体積が減った分が空隙として残りますので、このような気泡ができるのです。

 この現象は、氷に光があたって融けていく過程では、しばしば起きます。しかしながら、氷の中の水の詰まった穴ですので、氷と水の区別がつきにくく、とても見えにくいですね。このため、実際にこの現象に気づく人は意外と少なくて、見過ごされがちです。子どもたちが、そんな現象を見つけたということに、とても驚かされました。これは、先生がたが子どもたちの自然への興味をうまく引き出していらっしゃるからであろうと想像し、大変感銘を受けました。

 最後に、チンダル像を実際に作ることができるかですが、今回質問にいただいたタライに入れた水を凍らせて氷を作るというのは、実はとても良い方法です。水面に張った氷を取り出し、それに強い光(太陽光や電球の光など、手をかざすと暖かい光が最適。最新のLEDライトの光は、適当ではありません)を当てて氷を融かすと、チンダル像が現れて、だんだん大きくなる様子が見えるはずです。見えにくい時は、以下のような工夫をすると見やすくなるかも知れません。氷を底が平らで透明なガラス皿に入れて、皿の下に少し隙間を開けて白紙をおきます。この氷に光を当てて融かすと、氷の中にできたチンダル像が影絵となって白紙に映るので、見えやすくなります。試してみて下さい。また、中谷宇吉郎雪の科学館では、来館者への体験実験のなかでこのチンダル像を紹介しています。機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。

(回答掲載日:2023年2月23日)

(画像提供:ゆりぐみ様)
#チンダル像#光#実験#氷の不思議
Q66

氷について

ペンダントは他にも何でできますか?(いちごぱふぇさん / 石川県・12歳)

  雪の科学館では、来場した皆さんに氷のペンダントを作ってプレゼントするという実演を行っています。このようなペンダントは、もちろん氷以外のものでも作れないことはないですが、氷のペンダントのように簡単には作ることができません。氷は、0℃で融けますので、簡単に融かすことができますので、ペンダントもすぐに作れます。しかし、他の物質を使うと融かすための温度はもっと高かったり、あるいは低かったりします。そうすると、私たちの手には熱すぎたり冷たすぎたりして、さわるのもそう簡単ではないですね。氷は、私たちが素手で触っても平気な温度である0℃で融けたり凍ったりできることが、ペンダントを作りやすくしているのです。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#氷のペンダント#実験#氷の不思議
Q63

結晶について

日常だったらどうやって作れますか。( まーさん / 石川県・12歳)

  雪の科学館では、雪や氷の結晶のことを皆さんに紹介していますが、私達の身の回りを見渡してみると、雪や氷以外にもいろいろな種類の結晶があります。例えば、台所にある塩も結晶です。塩の結晶は、虫眼鏡で見てみると簡単に観察することができます。また、濃い塩水を作ってお皿に入れてそのまま何日か置いておくと、水面に小さな塩の結晶ができるのを観察することもできます。これは、水分が蒸発して塩水の濃さがまして、塩が結晶として出てくるからです。

 さらに身の回りのものでは、氷砂糖なども結晶です。おやつに食べるチョコレートも結晶でできているのですよ。粉末の薬なども、小さな結晶の粒でできているものがたくさんあります。また、お母さんの持っている宝石なども、自然の中で作られた鉱物の結晶をきれいに削ったものでできています。さらには、テレビとかスマートフォンなどの電子機器には、いろいろな半導体と呼ばれる結晶が使われています。

 このように、私たちの身の回りには、さまざまな種類の結晶がありますが、これらを作るのは簡単ではありません。冷凍庫で水を冷やすだけで作れる氷の結晶は、実はもっとも簡単に作れる結晶なのです。

(回答掲載日:2023年2月14日)

その他の現象 #結晶#雪#氷
Q61

氷をできるだけ冷やす

氷をできるだけ冷やしたらどれだけ大きくなるのですか。氷はどれだけ冷えるのですか。(milk さん / 石川県・11歳)

 私達の住んでいる地球には、いろいろな場所に氷があります。冬になると空から降ってくる雪の結晶も氷ですし、南極などにある巨大な白い塊も氷です。同じ氷であっても、大きさがまったく違いますね。実は、氷を冷やすだけでは、氷の大きさの違いを説明することはできません。それは、氷のでき方がどうかということに関係しています。空から降ってくる雪の結晶は、雲の中に含まれる水蒸気からできます。このため、なかなか大きくなることができず、私達が地上で見る雪の粒は、大きくても1cm程度です。一方、南極などではとても気温が低いので、降り積もった雪がとけることなくいつまでも残ります。雪は、毎年降り積もりますので、やがて巨大な雪の塊になります。すると、自分の重さで雪の粒が押されて、最後には大きな氷の塊に変わってしまいます。南極では、大陸全体が平均で2500mもの、巨大な氷のかたまりで覆われていることになります。

 このように、冷やされるということよりも、そのでき方によって氷の大きさも大きく違ってくるのですね。

(回答掲載日:2023年2月14日)

#実験#氷の不思議
Q49

体積の膨張

氷に関する初歩的な質問をいたします。水が氷ると体積が膨張(9%程度)しますが、氷を冷やし続けたときに膨張は止まって一定を保持すると考えてよろしいのでしょうか。(トシさん / 神奈川県・67歳)

 ご質問には、二つの異なる現象が含まれています。まず、「水が氷ると体積が膨張(9%程度)します」は、液体の水と固体の氷の体積の違いを示しています。一方、後半の「氷を冷やし続けたときに膨張」は、固体である氷の体積が温度により変化する現象です。したがって、二つは分けて考えなければなりません。

 まず、前者は、水が氷に変わるときに体積が9%増加することで、氷のほうが水よりも軽くなります。一般に、ある物質が液体から固体に変わると体積は小さくなります(固体は液体に沈む)ので、この性質は氷に特有なものです。氷山や流氷が海に浮かんでいるのはこのためです。この性質は、地球の気候や生命に進化などにも深く関わっています。

 一方、後者は、どんな物質であっても、その固体は温度の上昇とともに膨張します。例えば、線路のレールは、真夏の暑い日は膨張して長さが伸びるのはよく知られていますが、まさにこの現象です。氷も同様で、温度の上昇とともに同じことが起こり、膨張します(逆に言えば、温度の低下とともに収縮します)。長野県の諏訪湖などで観察される御神渡りと呼ばれる現象は、湖面に張った氷が寒気で収縮して割れ目が入り、そこにできた薄い氷が気温上昇で膨張して割れて、氷がせり上がるためと考えられています。しかし、この膨張(収縮)の割合は、水が氷の変わるときの体積の増加に比べれば極めて小さい量です。(温度の変化が1℃に対して、体積は0.016%変化)したがって、氷を冷やし続けたときの体積の変化は、ほとんど起こらないように見えるのだと思います。

(回答掲載日:2022年7月1日)

#体積#氷の不思議
Q47

ファミリーレストランの氷

ファミリーレストランの飲み物に入っている氷が大きくくぼんでいるのはなぜですか?(伸一郎さん / 石川県・10歳)

 確かに、レストランなどで飲み物に入っている氷には、不思議なくぼみがあるものが多いですね。この氷には、もう一つ大きな特徴がありますが気がつきましたか?その特徴は、家庭の冷凍庫で作った氷とくらべると、とても透明できれいであることです。氷にできたくぼみは、じつはこのことと関係があります。

 はじめに、家庭の冷凍庫で作った氷を見てみましょう。この氷は、白っぽくてあまり透明ではありません。家庭の冷凍庫では、容器に入れた水をそのままで静かにおいて凍らせます。このときに、水に溶け込んでいた空気が細かな泡となって出てきて、氷の中に閉じ込められてしまいます。このため、できた氷は白っぽく透明ではなくなってしまいます。

 では、レストランなどで使われる氷にもどりましょう。この氷は、水を凍らせるときに出てきた泡を、上手に逃してあげることができるくふうをして、作っています。そのくふうとは、氷を作る容器に最初から水を入れておくのではなく、ノズルの先端から吹き出る水を容器に吹きかけながら凍らせるのです。こうすると、水が凍りついて泡が発生しても、水の流れのために泡が吹き飛ばされてしまい、泡を含まない透明な氷ができるのです。このような氷の作り方では、容器が氷で埋められてくると、ノズルからの水で泡を吹き飛ばす効果が弱くなり、最後はどうしても空気の泡が氷に取り込まれてしまいます。このため、容器が完全に氷で埋めつくされる前に、まだくぼみが残っているときに凍らせることをやめます。このため、氷にくぼみが残ってしまうのです。くぼみが残るというのが、透明な氷を作るための秘密なのです。

(回答掲載日:2022年6月7日)

#氷の不思議
Q46

冷凍庫の氷

氷屋さんから買った氷を2ヶ月冷凍庫に入れて置いたら小さくなってしまいました。なぜですか。(康二さん / 岐阜県・10歳)

 私たちの良く知っている水は、普通は液体の状態ですね。しかし、水は液体の状態だけではなく、氷点下の温度になると固体の氷に変わりますし、空気の中には気体の水蒸気として水分が含まれています。このように、水というのは、液体であったり、固体であったり、気体であったりと、その時の条件によっていろいろな状態に変化します。

では初めに、液体の水をコップに入れて、ふたをしないでそのままおいておくと、どうなるかを考えてみましょう。コップの水の量は、時間がたつとだんだん少なくなって、やがて消えてしまうはずです。これは、液体の水が“蒸発(じょうはつ)”して、水蒸気となって空気中に逃げていったからですね。これと同じように、冷凍庫の中に氷の固まりを入れておいても、氷の表面からは水分が水蒸気として空気中に逃げていきます。このため、氷の固まりは、融けることがなくても、だんだん小さくなってしまうのです。水分が、液体の水から気体の水蒸気になることを、蒸発と言いましたが、固体である氷から直接気体の水蒸気に変化することを、“昇華(しょうか)”と呼んで、区別しています。

この昇華という現象は、ドライアイスでも観察されます。ドライアイスは、二酸化炭素の固体ですが、室温においておくと融けることなく気体の二酸化炭素にもどり、やがて消えてしまいます。冷凍庫においた氷と、同じことが起きているのですね。

(回答掲載日:2022年3月8日)

#氷の不思議
Q44

氷の食感と溶け具合

美味しい氷は?溶けやすい氷と溶けにくい氷ってあるの?(まささん / 栃木県)

 氷を融かすには、熱が必要です。その熱の量は、融解熱と呼ばれるもので、氷の量に応じて決まります。したがって、融かす氷が、固まりであっても、ふわふわのかき氷であっても、氷の量が同じであれば必要な熱の量は同じです。にもかかわらず、実際にはふわふわのかき氷のほうが、固まりの氷よりも早く融けてしまうのはよく経験することです。これは、氷そのものが融けやすい、あるいは融けにくいということではなく、氷を融かすのに必要な熱がいかに早く氷に届くかの違いです。実際、同じ氷の固まりを二つ用意して、フライパンにのせて火にかけた場合と、そのまま室内に放置した場合を較べると、当然前者のほうが早く融けてしまいますね。これは、同じ形の氷の固まりであっても、それが融けきるのに必要な熱が、フライパンにのせたほうがすばやく氷に伝わるからです。すなわち、氷自体に融けやすい氷や融けにくい氷の区別があるのではありません。同じ量の氷に、素早く熱が加わって急速に融けるのか、逆に熱が伝わりにくくてなかなか融けないのかの違いを、このように表現しているのだと思われます。

 また、氷の形状や融け方が食感にも関連することは確かでしょう。しかし、同じ氷であっても、ふわふわのかき氷が好きな人もいれば、少しザラザラしたかき氷の方が好きな人もいるはずです。美味しいと感じるのは人それぞれですので、一概にこれということは困難です。

(回答掲載日:2022年3月8日)

#氷の不思議
Q33

氷の分子は目で見られる?

特殊な顕微鏡などを使えば、氷の分子を実際に目で見ることはできますか?氷の分子は本当に六角形に手を繋いでいるような形になっているのか自分で見てみたいです。(雅紀さん / 東京都・15歳)

 顕微鏡と言えば、肉眼でレンズを覗き込む光学顕微鏡を思い浮かべます。しかし、近年ではさまざまなタイプの顕微鏡が開発されていて、中には原子や分子が観察できると謳ったものもあります。しかし、原子や分子と言っても、例えばボールのような固体がどんどん小さくなったものではありません。原子の構造は、中心に原子核があってその周囲を電子が雲のようにまとわり付いているというイメージです。したがって、このような原子あるいはいくつかの原子が結合してできた分子が「見える」とは言っても、ボールを見るようにその実物が見えるわけではありません。いくつかのタイプの顕微鏡について、見えるというのはどういうことかを考えてみましょう。

 最初に光学顕微鏡を考えてみましょう。これは、光は波であることを使って、レンズによる光の屈折により観察物を拡大して見えるようにしています。したがって、光の波長よりも小さなものは、原理的には見ることができないという限界があります。人間の目で観察できる光(可視光)の波長は、せいぜい400nm(0.0004mm)程度ですので、どんなに工夫をしてもこれより小さなものは見ることできません。原子や分子の大きさは、せいぜい0.1〜1nm(水分子の大きさは、0.37nm)ですので、光学顕微鏡で見える限界の1/1000の大きさです。すなわち、光学顕微鏡では原子や分子を見ることは不可能です(下記の注を参照)。

 それでは、光よりも短い波長を持つもので観察したら、もっと小さなものを見ることができるのではないかと、当然思います。こうして開発されたのが、光の代わりに電子線を使う電子顕微鏡です。電子線の波長は、可視光の1/1000程度ですので、原子や分子の大きさにほぼ匹敵する長さになります。すなわち、電子顕微鏡を使うと、大きめの原子や分子は見る事ができる可能性がでてきますが、かなり小さな部類に入る水分子を見るのはそれでもかなり困難です。また、大きめの原子や分子が見えると言っても、超強力な電子線を発生できる特別な電子顕微鏡を使わないと実際には難しいので、誰でも使えるわけではありません。

 一方、走査型トンネル顕微鏡(STM)、あるいは原子間力顕微鏡(AFM)と呼ばれる顕微鏡ではどうでしょう。これらの顕微鏡は、先端が鋭く尖った針で観察物の表面をなぞり、その表面の凸凹の状態を検知するものです。針の先端で感じた表面の凸凹の情報を再構築してモニター画面上に表示できるように工夫しています。私たちも、物体の表面を指先でなぞると、その表面の凸凹を感じることができる場合がありますが、この方法は意外と敏感なのです。その感度を十分に上げてゆくと、結晶表面の原子や分子の並び具合さえ検出することができます。しかし気をつけたいのは、この顕微鏡では実際に原子や分子が見えたということではなく、表面の凸凹の分布から原子や分子の存在や配列の様子を読み取っているということです。現在、世界最先端の性能を持つ顕微鏡では、氷の表面での水分子の分布を検出できる可能性があることが知られていますので、近い将来氷の表面で水分子が配列している様子を検出できるかもしれませんね。

 

(注:光学顕微鏡では、原子や分子を見ることは原理的にできません。しかし、2つの光の波が到達する時間の違い(位相差と言います)をうまく使うと、結晶表面などにある原子1個分の“段差”を観察できます。北海道大学低温科学研究所の佐﨑元先生のグループでは、この原理を使った世界最先端の光学顕微鏡を開発して、氷結晶の表面での水分子1個分の段差を観察しています。詳しい紹介は、Q14の答えを参照してください。)

(回答掲載日:2022年1月7日)

#観察
Q29

ふわふわかき氷と砂糖水

先日テレビで、ふわふわのかき氷を作るには、砂糖水で作った氷を使うといいという放送を観ました。天然の氷で作ったようになるそうです。なぜ砂糖水の氷でかき氷を作るとふわふわになるのでしょうか?(ミキさん / 石川県・33歳)

 私はテレビの番組を視聴していないのですが、砂糖水で作った氷は溶ける温度が0℃よりも低くなります。このことが、かき氷のでき具合に関係していると考えられます。

 砂糖などの入っていない純粋な水で作った氷は、0℃で溶けます。天然の氷も同じで、通常は何も溶け込んでいない真水が凍ってできていますので、この氷も0℃で溶けます。かき氷は、冷凍庫などに保管していた氷の固まりを取り出して、そのまますぐに削って作ることが多いと思います。冷凍庫の温度は−20℃近いので、ここから取り出した氷の固まりをすぐに削ると、溶ける温度よりもかなり低い温度のままで削ることになります。温度の低い氷は大変硬いので、これを削るとなかなかふわふわのかき氷にはなりません。しかし、冷凍庫から出した氷をしばらく室温においておくと、温度が上がって少し柔らかくなります。この氷を削ると、ふわふわのかき氷になるはずです。天然の氷で作ったかき氷はふわふわになるというのはよく聞きますが、実はこの原理を利用しています。すなわち、冷凍庫から出した氷をすぐに削るのではなく、しばらく室温において温度を上げてから削っているのです。

 さて、砂糖水を凍らせた氷は、溶ける温度が0℃よりも低くなります。これは、「モル凝固点降下」という現象で、砂糖に限らず水に溶かした不純物の量が多くなるほど溶ける温度が下がることを示しています。砂糖水の氷を冷凍庫に入れておくと、やはり−20℃近くに冷えているはずですが、溶ける温度との温度差は純粋な氷の場合より小さくなります。したがって、冷凍庫から取り出してすぐの状態で較べると、砂糖水の氷のほうが柔らかいということになります。したがって、冷凍庫から取り出してすぐの氷でも、ふわふわのかき氷ができるのだと考えられます。

 ところで、溶けていた砂糖は、氷になるとどこに含まれているのでしょうか?氷の固まりは、たくさんの小さな氷の粒が集まってできています。粒のひとつひとつは氷の結晶ですので、結晶の内部には砂糖などの分子は入り込むことができません(Q20の回答も参考にしてください)。したがって、砂糖水が凍ると、砂糖を含まない氷の粒がたくさんでき、砂糖は粒の外に押し出されることになります。このため、粒と粒の間の境目には濃縮された砂糖水の膜が残ります。この膜は、溶ける温度が非常に低くなりますので、冷凍庫の中でもまだ液体のままで残ります。すなわち、氷の粒と粒の間に潤滑剤を塗りこんだような状態になります。これが、氷の固まり全体を柔らかくする作用をもたらしているのです。

(回答掲載日:2021年10月12日)

生活・文化 #かき氷#実験#氷の不思議#砂糖
Q23

どうして水は0℃以下で氷になるのですか?

れいぞうこでできるような「氷」のことをしらべています。ひゃっかじてんでは、「氷 水がこおって固体になったもの。ふつうは、0℃以下でこおりになる。」とかいてありました。1.どうして水は、0℃以下になると氷になってしまうのですか? 2.ぴったり0℃でも氷になれるのですか? よろしくおねがいします。( すずき あやなさん / 福岡県・7歳 )

 氷は、水が凍って固体になったものと言っても、なんだかよくわからないですね。すこし難しいお話になりますが、説明しましょう。

 まず、水や氷は、“水分子”と呼ばれるとても小さな粒が集まってできています。コップに入れた水は、たくさんの水分子がぐちゃぐちゃになって詰め込まれていると思ってください。温度が0℃より高いときには、コップの中の水分子は、自由に動き回ることができます。このため、コップを斜めにすると水は流れ出してしまいます。しかし、温度が下がってくると水分子はだんだん動きにくくなり、やがて0℃になると、もう動き回ることができなくなってしまいます。こうなると水は、かたまりの氷に変わってしまい、コップから流れ出すこともできなくなります。

 氷の中の水分子の様子をもう少し説明しましょう。実は、氷の中では水分子のようすとはとても異なっていて、水の中のぐちゃぐちゃではなく、とても規則正しく並んでいます。このように分子が規則正しく並んでいるものを、「結晶」と呼びます。氷は、水が凍ってできた結晶なのですね。

 少し難しいと思いますので、ジグソーパズルを思い出してください。ジグソーパズルのピースを水分子だと思うと、ジグソーパズルを始める前はピースがぐちゃぐちゃの山になっていて、簡単にかき混ぜることができます。これが、“水”のなかの水分子のようすです。そして、ピースをきれいに並べて、ジグソーパネルを完成させると、ピースはもう自由に動けなくなります。これが、“氷”と言うことになります。こうすると、水と氷の中での水分子の様子が少しわかりやすいですね。おうちのジグソーパズルで確かめてみてください。

 また、「水が凍って氷に変わる温度は0℃」とよく言いますね。しかし、私たちが温度を測るときにどうするかを考えてみましょう。温度を測るためには、どこかに基準となる温度を決めておかないといけません。この基準の温度として、私たちは“水が氷に変わる温度”を0℃と決めているのです。水は、私たちの身の回りにある、もっとも大切なものです。このため、水が氷に変わる温度をもっとも大事な基準の温度として、0℃としたのです。

 また、ぴったり0℃でも氷になれるのかは、そのとおりです。しかし、水をゆっくり冷やしていくと、実際には0℃以下になっても氷にならずに、水のままでいることもあります。これは、最初に水が凍り始めるときの、氷のできかたによリます。少し難しい言葉ですが、0℃以下でも凍っていない水を、“過冷却水”と呼びます。雪の科学館では、実際に過冷却水を作って、この水が凍る様子を実演しています。科学館に来る機会がありましたら、ぜひ実演に参加してください。科学館の公式YouTubeチャンネルにもその様子を紹介しています。

 

  ▶ YouTube 動画 

〈過冷却水のせつめいは 6分30秒からはじまります〉

 

(*漢字のふりがなつき回答はこちら)

 

(回答掲載日:2021年8月5日)

#水の不思議#氷の不思議#温度
Q22

4℃のナゾ

水は4℃で体積が最小になると過去に習いましたが、なぜ4℃なのでしょうか。不思議なので知りたいです。よろしくお願いします。(かしわさん / 岐阜県・31歳)

 水は、他の物質にはない不思議な性質をたくさん持っています。ご質問にある体積が+4℃(厳密には、+3.98℃)で最小になる(言い換えると、密度が最大になる)というのもそのひとつです。この性質を持つ物質はとてもまれで、ほとんどすべての物質の液体は融点(結晶が融ける温度)の時に体積が最小で、温度が上がれば体積はだんだん大きくなっていきます。

 この不思議な性質は、水が凍って氷の結晶になると水に浮かぶということとも関連しています。氷の結晶というのは、水分子が三次元に規則正しく並んだ構造をもっています。このとき隣り合った水分子どうしは、水素原子を介して結合しています。この結合を水素結合と呼びます。すなわち、氷の結晶とは水素結合の三次元的な組み合わせで出来ているとも言えるのですが、これがけっこう隙間の多い構造を作るのです。このため、水中の水分子がバラバラに配置した状態にあるときよりも、氷の結晶中の水分子間隔のほうが大きくなっています。すなわち、液体の水の状態よりも、体積は氷のほうが大きくなる(密度が小さくなる)ことになります。

 では、本題に戻りましょう。氷が溶けると液体の水に戻りますが、まだ0℃に近い温度では水の中の分子がすべてバラバラになっているわけではありません。すなわち、隣接する水分子どうしで水素結合を作っているものが、ごく一部ですが残っています。このような水分子のかたまりは、「クラスター」と呼ばれます。このクラスターは、発生してもすぐに壊れてしまうのですが、水中のあちこちで発生していますので、全体として、常に一定の割合の水分子がクラスターになっています。この効果は、水全体の体積を増加させる(密度を減少させる)ことになりますが、温度が上昇するとクラスターも発生しにくくなりこの効果は弱まります。一方、さらに温度が上昇すると、水分子はより活発に動き回るようになりますので、分子間隔はだんだん拡大し、水全体の体積を増加させる(密度を減少させる)効果が働きます。この2つの効果が相殺するのがちょうど4℃という温度になります。このため、この温度で水の体積は最小(密度は最大)となるのです。(図を参照して下さい。)

 他の多くの物質でも、それを溶かした液体の中では、水中と同じことが起きています。しかし、物質の固体(結晶)は、それが溶けた液体よりも体積が小さい(密度が大きい)のが普通ですので、融点の時に液体の体積が最小で温度が上昇すると体積は一方的に増えていきます。したがって、氷のこの性質はとても奇妙なのですが、シリコンなどごく一部の物質では同じ性質があることが知られています。これらの物質の結晶は、実は氷と同じような隙間の多い構造をとることも明らかになっています。

 

*「クラスター」という言葉は、コロナの蔓延が始まってから誰もが知るものになりましたが、もともとは「なにかの集団」という意味で、さまざまな分野で使われています。

 

(回答掲載日:2021年7月12日)

#水の不思議#温度
Q20

カラフルな氷は作れますか?

娘が氷に色をつけたいと言い、絵の具や食紅を入れて凍らせてみましたが綺麗にできませんでした。成功する方法はあるのでしょうか。(山崎景子さん / 東京都・43歳)

 氷にカラフルな色を付けることができたら、楽しいですね。しかし、残念ながら氷そのものに色を付けることはできません。それは、氷は水分子が立体的に規則正しく並ぶことでできた結晶で、この結晶の内部には絵の具や食紅などの成分は入ることができないからです。結晶の中に入るには、規則正しく並んだ水分子を無理やり押しのけないといけません。これはとても困難なことで、空気中の酸素や窒素などの分子でも、結晶の中には入り込むことができません(本Q&AのQ4Q14の回答も参照して下さい)。このため、水に絵の具や食紅を入れて凍らせても、氷ができるときに氷の外に押し出されてしまい、氷には色がつかないのです。

 しかし、凍った食品であるシャーベットやアイスクリームなどには、きれいな色がついているものがありますね。これらは、いろいろな工夫をして含まれている氷ができるだけ小さな粒になるようにしているのです。氷の粒(一つの氷の結晶)の中身にはもちろん色を付けるものは入っていません。しかし、氷の粒の表面や粒と粒とのすき間などには、これらのものを貯めておくことはできます。この原理を使うと、できるだけ氷の粒を小さくすることで、食品全体として色をつけることができるのです。

 家庭でも、アイスクリームやシャーベットは作ることができますね。このときのコツは、原料を冷やしながらよくかき混ぜることだと思います。かき混ぜることで、水分が凍るときに、氷の粒があまり大きくなる前に細かく砕かれてしまったり、たくさんの氷の粒が新たに作られたりします。「できるだけ氷の粒を小さく保ちながら、全体を凍らせる」ということが、全体として色をつけることに結びつくのです。繰り返しになりますが、あくまで氷の粒(すなわち、結晶)そのものには色はついていないことに、注意してください。

(回答掲載日:2021年3月30日)

生活・文化 #実験#氷のつくりかた#氷の不思議

Q&A検索

Q&Aは検索けんさくができます。
検索けんさくは「キーワード」「カテゴリー」「タグ」の3つの方法ほうほうがあります。

キーワード検索

キーワードを入力して検索けんさくしてください。
カテゴリーをえらぶとそのカテゴリーのなかからキーワードと一致いっちするQ&Aをさがすことができます。

カテゴリー検索

になるカテゴリーをえらんでください。
そのカテゴリーにてはまるQ&Aをさがすことができます。